機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第8話 X 討伐隊、開戦

(別視点)

 

タルバたち三人は討伐隊の結成を町の開拓団支部で待っている間、悶々(もんもん)と過ごしていた。

 

なるべくはやく結成されて欲しいと思う反面、またあの森に行かなければならない不安がある。そんな中、一報(いっぽう)が入った。

 

「もう人員が集まったんですか⁉ 」

 

「ああ、ちょうどいいことに人員が余っていたそうだ 」

 

一報はザルマンから直接もたらされた。

 

なんでも先日の大雨で周辺の魔境へ通じる山道が大規模な土砂崩れで埋まってしまったとのこと。その先の森林一帯を狩り場にしていた狩猟者たちが開店休業状態になってしまったらしい。

 

普通ならまだ拠点が未整備な魔境なんて思うように稼げないから誰も行きたがらないだろう。そこに珍しい魔物を狩れるかもしれない機会が来たら腕に自信のあるものや物好きが手を上げるのも道理とうなずける。ザルマンも思いのほか速く安く済んだとほくほく顔だ。

 

ただ、同行する三人にとっては必ずしもいいことばかりではない。狩人は基本荒くれ者が多い。少なくとも三人はそう思っている。

 

うまみはなくとも人のためにと手を上げた人間ではなく戦闘狂とただの物見遊山ではアクの強いメンツになりそうだ。正直言えば行きたくはない。

 

だが置いていった開拓村の面々とほっぽり出してきた仕事の手前それを口に出すのは(はばか)られる。せめて魔物に殺されるより先に人間に殺されることがないようにと祈った。言葉には出さなくとも三人の思いはいつも一緒だった。

 

知らせを聞いた翌朝、狩猟ギルドから派遣された5人の狩猟者と顔を合わせる。自己紹介もそこそこに連れ立って町をでる。まずは開拓村まで行き、そこから遭遇(そうぐう)地点に向かう手筈(てはず)となった。

 

町から開拓村までの道中、自分たちの予想は概ね正しく深い部分で間違っているということを理解することとなった。

 

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(別視点)

 

「おい! そこのおまえたち。遅いぞ! 気合い入れてついてこい! 」

 

リーダー格の狩猟者からきつめの叱咤激励(しったげきれい)が飛ぶ。

 

(げき)を飛ばしたのは獣人の女性で名はサリューという。この中では唯一の三ツ星の狩人であり実力主義の狩猟者の中では必然的に彼女がリーダーとなる。それなりの強行軍を強いられてきた三人は疲労も相まって反感に似た気持ちを抱く。

 

「んん? おまえ達疲れてんのか? 荷物持ってやるよ 」

 

しかし粗野で粗暴なだけの狩猟者だと思ったがそれでいて面倒見は悪くない。たまに見せる気遣いに評価を改めざるを得ない。

 

「ほら! オマエ達も持ってやれよ 」

 

残りの四人の狩猟者も口数は少ないがとくに嫌がるそぶりもなく協力してくれる。休憩のときもテキパキと連携して三人の飲み物なども用意してくれる。狩猟ギルドでは狩猟する対象によって即席で組を作ることが多い。

 

この五人は今回初めて組を作るようだがすでに息の合った行動を見せている。この分ならこのまま問題なくあの化け物を退治してくれるだろう。

 

、、、そう思っていたときがこの三人にもありました

 

問題が起きたのは三人が最前線の開拓村に戻ってきた時だ。開拓村に派遣されていた開墾ギルドの農業指導員。いわば農業責任者であり村の重鎮(じゅうちん)でもある。

 

それを討伐隊の面々が拉致(らち)同然に引きずっていったことだ。五人は指導員を取り囲んで交渉という名の脅迫(きょうはく)を行う。

 

指導員は緑小人という種族である。どうやらタルバ達がもたらした魔物の情報から、その種族固有の魔術が非常に有効であると踏んでどうしても連れて行きたいらしい。いや、行きたいではなく連れて行くらしい。

 

五人の説得は終わりが見えない。緑小人はその名の通り肌が緑色で背が低い種族である。その緑小人を取り囲んでいる様は子供を恐喝(きょうかつ)している大人にしか見えない。途中から集まってきていた村の面々も険しい表情で事の次第を見守っている。

 

それでも狩猟者の存在は恐ろしいらしく誰も止めに入ったりしない。自然とその視線は連れてきたタルバ達に向く。しかし、自分達だって恐ろしい。止めようがない。そうこうしているうちに交渉? は次の段階に入った。

 

泣き落としとか()めちぎりとか言えばいいだろうか。後ろに回っている髪を肩まで伸ばしている女性は両手で肩をもんだりしている。「君がやらなきゃ誰がやる」「英雄になれる機会だよ」とか言ってる。

 

とうとう折れたのか五人と一人はその場を解散した。村の雰囲気はぎすぎすしたものが(ただよ)っているが五人はあっけらかんとしている。周辺のことを気にもとめず村の広場で野営の準備を始めだした。

 

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ウサギへの憑依を練習しだして数日、かなり上達した。ウサギを動かしているとウサギは疲労する。ウサギは腹が減る。草を食べてみる。

 

草を口に入れた瞬間味覚を切るべきだったと思った。もう遅い。後の祭り。

 

いや、、、ウマいぞ。草がウマい

 

苦みの中にも甘味や酸味、コク、うまみを感じる。細かな風味もはっきりと感じ取れる。

 

ああ、、、草うま

 

ウサギに憑依(ひょうい)したせいで味覚までウサギになるのか。ウサギの味覚、鋭い。

 

しばらく、もしゃもしゃもぐもぐとまったり咀嚼(そしゃく)する。食べたら出すものもある。便意も認識できる。俺は久しぶりに生きている感覚を味わった。

 

憑依の練習の後、土の採取のために移動を繰り返しているとテントを発見した。

 

あの三人が置いていったものか。随分と慌てていた。テントをしまう余裕はなかったのだろう。

 

テントの素材を確認すると撥水(はっすい)加工をされた繊維(せんい)でできているようだった。

 

興味をひかれたので開けて中に入ってみる。中には大きめのリュックが三つと小さめのリュックが三つ転がっている。軽くするために置いて行ったのだろう。

 

リュックの素材を確認すると若干魔力反応が強めの皮で作られている。何の皮だろう? まあそれはいいか。

 

、、、ちょっと物色してみようか

 

この世界の技術水準などに興味をひかれたのでリュックの中身を開けて出してみる。金属製のコンロやランタン、調理器具類に水筒。麻っぽい材質でできたロープ。これは測量器か、よくわからんな。分度器みたいなのを組み合わせたようなスコープ。食料もあるな。瓶詰や缶詰がある。

 

って、缶を作る技術があるのか!

 

この世界の科学技術は結構発展しているらしい。魔法の存在と何か関係があるのだろうか? 何とも言い難いな。

 

いろいろと物色してみたが一番興味がひかれたのは魔石が埋め込まれた使い方のわからない物体だ。全体的な形は銃身を切り詰めた拳銃に似ている。ガラスがはめ込まれているが何を意味するのか。わからないからほおって置くか。

 

中身を一通り確認した後リュックに元通りに詰める。

 

金属製品が欲しいが()()は前の世界では犯罪だったから気が引ける。おそらくこちらの世界でも犯罪だろう。おおよそ今の自分は人間の範疇(はんちゅう)にないが人間とコンタクトをとる時のために節度は保っておきたい。

 

物色の後、憑依の練習や土の採取をしていると土の採取量が目標量に達した。これでアルミニウムを精製して金属鎧を作ろうと思う。

 

ほかに何を作ろうかなどと考えていると不意に気配を感じた。ウサギに憑依したことで魔力の気配のようなものを感じとれるようになっていた。生物機能をコアが模倣したのかもしれない。

 

気配は俺をぐるりと囲むように存在している。数は六。少しずつ包囲網は(せば)まってくる。

 

、、、この気配はおそらく人間かな? 、、、敵意がある

 

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(別視点)

 

討伐隊五人は緑小人の男性、テセムルの説得に成功し、彼を連れて開拓村を出発する。開拓ギルドの三人の案内でとりあえず彼らが荷物を捨てていった場所まで行くことになった。到着してみるとテントや中の荷物は無事だった。

 

ここを拠点にして森の探索をしていくという算段だったため、タルバ達は設営を開始しようとしたが討伐隊のリーダーであるサリューがそれを止めた。

 

「まだしなくていいぞ 」

 

タルバはいぶかしげにサリューをうかがうが、彼女はなぜが上機嫌だ。

 

「運がいいな。今日中にケリがつきそうだ。ケイル、あんたの取り分は減りそうだな 」

 

「ぬかせよ。まだ始まってもいないぜ 」

 

五人全員が荷物を降ろし装備品のチェックなどを行い、そうかからないうちに準備が完了する。三人とテセムルは要領(ようりょう)を得ていないが緊張感の高まりを感じて何も言えないでいる。

 

「さて、今回はテセムルもいるから詳しめに()り合わせをするよ 」

 

異論は認めないとばかりにサリューが仕切り始める。

 

「そこら中にある魔力痕跡、不自然にへこんだ地面、足跡。獲物は想定通り土壌系の純魔力生物(アキアトル)でいいだろう。アキアトルの魔力なんて知らないけどここのも知らない魔力だからね 」

 

残りの四人はサリューの言葉にうなずく。セインはサリューの言葉にあたりを見回すが、なるほど言われてみればそこかしこに微妙な魔力痕跡や地面のわずかなへこみがある。

 

足跡をたどると草の上に不自然に土がついている部分が見られる。三人のなかでは魔物の探索にすぐれたセインだったが狩猟者にはまったく(およ)ばないなと落胆もしたが流石だとも思った。

 

「土壌系の純魔(アキア)なら緑小人の固有魔術の土壌操作で拘束することができるはずだ。テセムルはあたしの合図があったら魔術を使用すること。いいねっ! 」

 

サリューはテセムルを凝視(ぎょうし)し、有無を言わさぬ口調で言い渡す。テセムルは同意するしかなかった。

 

タルバはそれでテセムルに脅迫まがいの説得をしていたのかと納得した。開拓村に緑小人が派遣されていることを事前に調べていたに違いない。即席の討伐隊だが用意周到なことだと思った。

 

サリューはテセムルを安心させるように言う。

 

「獲物はアキアだ。アキアは魔力保有量の割に戦闘力が低いとも言う。下手にびびったりしないように 」

 

タルバは魔力量が膨大であればいくら割合が低くても強力になるだろうとも思ったが口には出さない。

 

続けて言う。

 

「相手は魔力痕跡の消し方もわからないようなひよっこだ。おまけに表層をうろついている未熟な個体だろう。特殊個体かなんかしらないがたいしたヤツじゃない。いつも通りにサクッと狩るよ! 」

 

サリューが宣言すると一斉に動き出す。どうやらすでに方向までわかっているらしい。動けないでいるテセムルに手で合図をだし行動をうながす。最後にタルバ達に指示を出す。

 

「あんたたちは設営を開始。ここでお留守番だよ 」

 

サリューにそう言われた三人は内心ほっとして首を縦に振って同意した。

 

相手に気づかれないように気配を消し、足音を立てないように移動する。目標の痕跡をたどりながら進んでいくと濃密な気配への兆候(ちょうこう)を感じ取る。気配を消そうとしない、狩人の一行にはそのあけすけさにやや面喰う。

 

しかしすぐに切り替えて気配の方向に進む。

 

(やっぱり近くにいたねえ )

 

すぐに対象を発見する。一旦停止した後、バラバラに動き出し獲物を円形に囲むような配置に移動する。お互いの位置を確認しながらじりじりと円を(ちぢ)めていく。

 

(やっこさんのほうも気づいたようだね )

 

戦闘の開始は静かに訪れた。

 

 

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