途中からまだ少ししか出来ていない桟橋を渡ってテントまで戻ってくる。
今日みたいな不意の接触を減らすためにもやはり桟橋は必要だ。ログハウスも桟橋も出来るだけ早く作りたいとは思うがなかなか難しいな。
亜空間を使っているからひとに協力してもらうのも無理だし…
亜空間を使わなければもっと掛かるかも知れないから無駄な話か。そもそも魔境に建築に来るやつなんているのか?
そんな阿呆みたいな人間は俺ぐらいなもの…
やめよう、これ以上は良くない…
テントの中で昼食を取るとログハウスの建築に取りかかる。
土台になる杭は昨日打ち込んでおいたのでそこに横木を設置していく。横木の上に丸太を並べていき家の床になる部分が出来上がった。
次に壁を作っていく。できた床よりも小さめの壁にして家の外に足場が出来るようにする。
上下の部分を平らに加工した丸太を重ねる。両端は斜めに切断して壁同士を直行させる構造だ。
しかし、これだと床材の丸くなっている部分に隙間が出来てしまうな。屋内の床は板材で底上げするようにしよう。
壁材を積んでいくと樹木魔術で木材同士を接着剤で付けたように接合していく。
プラモデルを作ってるみたいだな…
出入り口方面を除く三面を作り上げると明かり取りの窓枠を壁をくりぬいて作っていく。
水魔術を使用してウォーターカッターのように水を射出する。それで切断していき四角く繰り抜いた後に窓枠を取り付けていく。
窓穴を繰り抜いたときに出てきた四角い木材を加工して分厚い戸を作る。両開きの窓になるように加工した。
残りの壁をドア部分を避けて組み上げていくと今度は出来上がった壁の上に天井を作っていく。
丸太の上の部分を除いた三面を平らに削り、それを並べて隙間なく敷き詰める。これで箱型の居住部が完成した。まだ屋根を作っていないが水が洩ってくることはないだろう。中に入れば雨を凌ぐことは可能だ。
補強のために八つある角の接合部分に三角材を釘で打ち付けた後、床部分に角材を組み上げてその上に板材を張って平らな床を作った。
次にドアを作って取り付ける。
板材と魔鉄製の板を挟んで重ねていき頑丈な戸板を作るとドア用の大きな蝶番を使用して設置する。内開きと外開きのどちらにするか迷ったが外開きにした。ドアノブを回して手前に引く魔物はまさかいないだろう。これなら閉じるだけで防ぐことが出来る。
ノブや鍵を取り付けてドアが完成した。
これで一応形にはなったかな?
後は屋根を作りたいところだが先に寝床となるテントを中に持ってこよう。また雨が降るかもしれない。
ペグを外してからタープを外し、テント本体を崩さずに中に入れようとする。だが、入口にちょっと引っかかった。めんどくさいので亜空間にしまって中で取り出す。
寝床を準備してから夕食の準備に取り掛かった。調理スペースが増えたしそのために寝床を片付ける手間もない。
床の上に調理器具を広げて料理を開始する。
やはりこう言うときはカレーだな…
タマネギを切って炒める。飴色になるまで炒めて横に置いておく。
鍋の底で豚バラ肉の厚切りを炒めて火が通ると角切りの野菜を加えて更に炒めていきある程度火が通ると水を加えて煮込んでいく。
その間に先に炒めてあったタマネギに小麦粉を加えてさらに炒める。
鍋の中にカレールウを入れて混ぜて溶かしていき、そこに炒めたタマネギと小麦粉を入れてとろみを付けていく。
市販のカレーはスープカレーみたいなやつだがとろみを加えると家庭のカレーのようになった。
味の傾向はちょっと異なるが雰囲気は出る。
焦げ付かないようにかき混ぜつつ洗い物をする。水魔術と音響魔術を複合して超音波洗浄を行っていく。
洗い物が終わると今度は鍋をかき混ぜ加熱している間にパンを焼いていく。
パンが焼ける間は少し手持無沙汰になった。その時間を有効に使いたい気持ちになる。そこで一つ思いついた。
今日はあれに挑戦してみるか…
器具の洗浄に使用して汚れた水から汚れだけを分離して浄化できないか試すことにする。そうすれば水の使用量を減らせるし水術の練習にもなる。
なかなか難しいな…
そう簡単にできるとは思っていなかったが想定よりも難易度は高いかも知れない。
それでも夕食が完成する頃には三割の水の中に汚れを移す事が出来るようになった。水を亜空間にしまって食べ始める。
とろみのあるカレーはどこか懐かしい感じがする。味もなんとなく家のカレーに似てきているような気がする。
カレーを飲みこんでからパンをかじる。
小麦のどっしりとした風味と甘味はカレーの濃い味をしっかりと受け止めてくれる。
これはこれで悪くない。しかし…
やはり家カレーに近づけると白米で食べたくなる。この世界のどこかにあるとは思うがそれが本懐ではないからどうでもいいと切り捨てたいところではある。
なかなか難しい所ではあるけれど…
人の心はままならないものだな
家カレーに近づけたのは失敗だったかな?
食べ終わると残りのカレーは亜空間にしまい、食器を同じように洗浄していく。
洗浄が終わると再び水の浄化を試していく。水をうねうねと操っているといつの間にか夜が更けていった。
そろそろ寝るか…
明かりを消して眠りに就く。
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次の日の早朝はやはり濃霧が立ちこめていた。桟橋の建築はしにくいだろう。霧が晴れるまではログハウスの建築を行うことにした。
居室を塞ぐ天井の上に屋根が乗る台座を作っていく。
その上にハの字型になるように丸太を並べていく。側面を平らにして密着するようにして並べる。下面に切り欠きを作っていてそこに台座が引っかかり安定するようになっている。
ハの字の頂点、丸太が合わさる部分一帯を削って直線的な角を作るとそこにハの字型の板材を被せて樹木魔術で接触面を一体化させる。これで屋根が完成した。
ああ、そうだ。
屋根の端にコの字型をした木のレールを設置してその端から木製のパイプを下に伸ばして陶器製の大きな
いずれ使うかもと思って購入しておいて良かった。
時間があるときにキッチンを作ってここに溜まった水を使えるようにしたいな。
その場合排水の浄化をどうするかが問題になるがそのときに考えよう。
ログハウスもほぼ完成した。霧が晴れてきたので
途中まで出来ている部分を渡っていき建設途中の末端まで来る。まだまだ水位が高くなっている泥地へと躍り出て木を抜きながら杭を打ち込んでいった。
打ち込みながら進んでいき頃合いを見て杭に横木を通して板を張っていく。
そうやって建設していたらいつの間にか日が暮れてきた。作業を中断して拠点に戻る。
サラダを作りパンを焼いて残りのカレーと共に食べて夕食を済ませると調理台やベッドなどを作成し、設置してから就寝する。
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次の日は霧が出ている時間から作業を開始する。早く完成させたい気持ちがあった。
昨日の雨はまだ残っている。水位は少しずつ下がってきているが抜けきるにはまだまだ掛かりそうだ。
それはそれとて泥地を進みながら杭を刺していく。
木を除去しながら杭を刺していき板を張りながら戻る。魔物が寄ってきたら威嚇して追い払う。
そうこうしながら何日か経過すると桟橋の建設も半分を超えただろうか? そんなときに木の上を渡ってくる魔物の接近を感じた。
こちらの威嚇を意に介さず向かってくる。
けっこう強い魔物だな…
気配からもかなりの強さを感じる。この森林地帯の生き物の中で頂点にいる、そんな魔物かも知れない。
中級上位ぐらいはあるか…
戦闘は避けられないようだ。
せっかく作った桟橋を壊されては
俺は桟橋から木の上に飛び移ると枝を渡って接近してくる魔物にこちらからも向かう。
10秒も掛からず接敵した。
10メートル程の距離でお互いの姿がはっきりと見えるように対峙する形になった。
ずいぶんと自信があるのか? それとも好奇心が強いタイプか?
正面からくることにちょっと戸惑いがある。
相手の姿はなんとも言えない形をしていた。
全体的なフォルムはリスに似ている。短めの手足に鋭い爪がついていて枝や幹を掴んでいる。ふわふわの毛で覆われた尻尾は長く大きい。それだけならリスだと思っただろうが顔つきは犬のようにマズルが長めで肉食を思わせる。
キツネザルみたいなヤツか? だが指の感じがサルとは違う気がするな。手足も短い。
生物種は良くわからんがまあそれはいい。問題はこいつをどうするかだが…
最初は仕留めようかとも思ったが仕留めたところで別の個体がやってくるように思える。
縄張りを作るタイプかはわからないが、もしそうならこいつが桟橋に一番近い縄張りを持っているのだろう。ここで圧倒して撃退すれば桟橋を警戒して近寄ることがなく、なおかつ他の個体が桟橋に接近するのを防いでくれるかも知れない。
殺さずにお帰りいただこうか…
方針を決めるとちょうど同じタイミングで相手から仕掛けてくる。
樹木魔術か…
リスザルは枝に魔力を通して強化すると体重を掛けてしならせる。反動を利用して飛ぶと枝から枝に弾丸のように飛び移りこちらの死角に回り込もうとしてくる。
ならばこちらも…
樹木魔術を使い、相手の動きに合わせて枝から枝に跳ねるように飛び移っていく。
後を追うような形になると
とりあえず一発殴るか
魔力を腕に込めて殴りかかる。空中で避けようのないタイミング。確実に捕ったと思った。
しかし、拳は空を切る。
リスザルは空中で急停止すると方向を変えて、スーッと泳ぐように飛んでいった。
よく見ると足と足の間に皮膜のようなものが広がっている。それで空気を捕まえて滑空しているのだろう。
器用に体をひねり木々の間を縫うように飛んでいき見えなくなる。
モモンガかよ…
相手の姿は見えなくなったがプレッシャーはまだ感じる。逃げたわけではないようだ。
どこから来る?
なかなか魔力の
こちらも移動して相手を探す。
どこだ?
索敵に集中するとどうやら俺を中心に縦横無尽に飛び回っているようだ。かなり速い。いろいろな方向から気配がするように感じる。
普通じゃあり得ないな…空気魔術か
枝に着地せずに高速で飛び回っている。魔術以外には考えられない。
他にも魔術が使えるのか? それともこれで打ち止めか?
警戒していると微かに空気を裂くような音が聞こえた。
―……シュッ……
俺が枝から枝に飛び移っている途中で何かが高速で飛んでくる。
―キンッ
魔力の気配と風切り音を捉えて手甲で弾き飛ばす。攻撃は防いだが体制が崩れて地面に落下させられる。
即座に空気魔術で足場を作るとそれを蹴って飛び適当な枝に着地した。するとそのタイミングで顔めがけて先ほどの攻撃が飛んでくる。
―バシッ
顔面まで20センチ、そのぐらいの距離でそれをつかみ取る。
手のひらの中のそれは長さ15センチ、太さ5ミリぐらいの棒状のものだった。両端は鋭く尖っている。
どうやら毛が変化したもののようだった。
ヤマアラシかよ…
いよいよどういう生き物なのかわからなくなってきた。サンプル用にそれを亜空間にしまう。
魔力変異がだいぶ大きいのだろう。魔物の分類は難しい、そんな言葉を思い出す。
再び毛針が飛来してくると今度は余裕を持って人差し指と中指の間に挟んで受け止める。
相手に手ごわいと思わせてこちらを避けるようさせたい。出来るだけこちらの力を誇示しておく。
三本目の毛針を亜空間にしまいつつ挑発的な魔力を周囲に放った。
こちらに余裕があることをことさらにアピールしつつ攻撃の分析を行う。
毛針を受け止める瞬間まで魔力線が通っていた。空気を媒体にして毛針に魔力を供給して威力を上げている。ここら辺の木なら簡単に貫通できるだろう。
高速で魔力線を延ばすのは難しい。魔力線を含む射程距離は15メートルと言ったところか。かなりの使い手だ。フィジカルより魔術に特化した魔物。そう言ったところか。
次の攻撃に備えて動かずにいる。移動中を攻撃される方が厄介だ。
相手はこちらに動いて欲しいのかなかなか次の攻撃をしてこない。じっと待っていると焦れたのかようやっと次の攻撃が放たれる。
攻撃は右側から来た。ただの牽制なのか先に来た三発よりスピードは遅い。
軌道を読んで右手で掴もうと手を伸ばす。しかし、空を切った。
毛針は掴まれる直前で軌道を変えるとカーブを描いて右手を避けていった。
カーブ中に加速し出し、いきなり最高速を抜き去っていく。
不意を突く必殺の一撃…だが…
―バシッ
右脇腹に突き刺さる直前、左手で掴み取り完全に防いでやった。
この攻撃はある程度予想していたんだよ…残念だったな…
受け止めてわかったが高速回転も加わっていた。魔力防御なしで受ければ心臓まで貫通されていただろう。
ここら辺の魔物ではおそらく一番強い相手だろうな。相手の実力もわかったことだしそろそろこちらからも攻撃することにしよう。
―大規模複合魔術
自分を中心として球を描くように魔力域を薄く広げていく。媒体は空気だ。範囲は半径20メートル。魔力域の中をヤツは動き回っている。領域の中なら手に取るようにわかる。
―
空気を構成する分子がぶつかり合い静電気が発生し、そこに雷の性質の魔力を流していく。
相手は何をするのか気づいたようだがこちらの方が速い。
―雷樹界
魔力域全体に細かな雷が発生する。
一瞬のうちにヤツの全身に細かな雷が降り注ぎ電流が流れていく。
ある程度防御はされたが戦意を
地面に落下した後、泥も落とさずに逃げ去っていく。
わざわざ
群れるタイプではないだろうから仲間を引き連れてお礼参りに来ることもないだろう…ないよな?
脅威が去ったので桟橋の所に戻って建設を再開した。