機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第91話 魔術談義③ x 魔術講座③

さて、何を聞こうか?

 

「とりあえずはリオンは執筆しながら、俺は変換の練習をしながらなにか話すとしようか 」

「満足しないことは確定なんだね… まあ、いいけど。レインにはリーンを守ってもらいたいし戦いに関係する話にしようか? 」

「確かにそれがいいだろうな。どういう話なんだ? 」

「レインが腰に()いている剣は魔鉄製だよね。それも等級がかなり高いものだ。違うかな? 」

 

当たりだ… あまり吹聴したくはないが変に隠し立てすると逆に怪しい。ここは正直に答えよう。

 

「確かにそうだ。これは正確にはわからないが七等級ぐらいの魔鉄だな。伝わってしまうか 」

 

まあ、これぐらいの量なら手に入らないこともない。大丈夫だろ…

 

「そこまで良いものだと簡単だね。魔力を帯びていない物質はこの星上には存在していないとされているんだけど、魔鉄のように魔力を大量に帯びているものを一般には魔力化物質と言うんだ 」

 

特に気にしている感じはない… 気にしすぎだったか…

会話に集中しよう。

 

「…そういえばそうだったな 」

 

少し遅れ気味に答えたがそこまで不自然でもないだろう。リオンの言ったことは当たり前すぎて普段は意識しないことだ。おさらいになるな。

 

「魔鉄に等級があるように魔力を帯びる量には物質ごとに違いがある。魔鉄は測定方法が確立されているから等級で表されるけど世の中のほとんどの物質はそうもいかない。そこで大まかな捉え方があるんだけど魔力格という考え方がある 」

「格が高い低いの格だな 」

「うん。魔力を多く含める物質ほど魔力格が高いと言うね。魔力格が低い物質だとその許容量を越える魔力を流し込むと魔力が拡散して物質の結合がほどけてしまうんだ。魔力崩壊と言うんだけど、その場合でも分子自体には変化はないんだけどね 」

 

“雷閃”が崩壊しかけた原因でもあるな。あのときは崩壊一歩手前で留まったが…

 

「魔力格はもちろん生き物の肉体にも適用される。格が高い肉体ほどより大きな魔力を使うことが出来る。だから肉体の魔力格を上げることが強くなるための近道とも言える。

 物質が平常時に持っている魔力を固有魔力といい、それに加えて外から加える魔力を余剰魔力という。その合計が攻撃力に影響するからね 」

 

肉体に魔力圧を掛けまくることだよな。でもかけ過ぎたら体が溶けていたのか。今更ながらに気づいたが危うかったんだな。まあ、その手前でわかったと思うけど…

 

「だけど格を上げることが強くなる唯一の方法じゃない。魔力を流し込んで操作する物質の量も重要になる。体格が大きいほど一度に使える魔力は多くなるね…

 大きさがすべてじゃないけれどより上位の魔物ほど体は大きくなる傾向にある。魔力的な強さを求めた結果でもあるし質量も武器になるし

 水や空気、土といった魔術は魔力格を確保するのが難しいから威力を出したければ量に頼ることになるね 」

 

日々の筋トレにもそう言う意味がある。魔術の大規模化もそうだな。方向性は合っていると…

 

「単純なぶつかり合いだと速度とかの物理力に加えて固有魔力と余剰魔力の合計に物質量を掛け合わせたものの総量がものを言うね

 そこに物体の性質とかいろいろな条件が加わってくるけどやはり最終的にものを言うのは基礎力だね。どれだけ魔力を込めることが出来るのかが重要になる。あとは魔力を有効に使えるかどうかだね 」

 

そこでいったん話を区切って考えるように上を向いた。

 

「ちょっとその鉄材をかしてもらっていいかな? 」

 

そう言うとリオンは筆を止めて椅子から腰を浮かす。こちらへと寄ってきた。

 

手の中の鉄に魔力を込めるのを止めて差し出すとリオンはそれを受け取る。

 

何をするかと見ていると、手、特に指に魔力を込めて力任せに挟み込んだ。するとミシミシと音を立てて指がめり込んでいき鉄片がひしゃげていく。

 

鉄片の厚さは1センチは越えている。なかなかの力だ。

 

「力任せに魔力を使えば僕でもこのくらいはできる。魔力を込めていない動かない物体に対してはね… 効率を度外視して大規模な魔術を使えば上位の魔物でも圧倒することは出来ると思う…

 でも戦いには戦いのやり方があるんだろうね。僕では中級はおろか三ツ星の狩猟者にも勝てない 」

 

それは過小評価しすぎだと思う。リオンやリーンの魔力量なら常に強化しつつ索敵に魔力域を広げる事も出来るんじゃないかな? 中級でも上の方に届くと思う。

 

でも妹を心配しているのは伝わったよ。命をかけるとまでは言えないけど、いざとなったら正体をばらしてでも守るぐらいには決めたよ。

 

それを伝えることはできないけどな…

 

「その曲げた鉄は戻してくれるのか? 」

「ん? ああ、そうだね 」

 

リオンはかなりの魔力を込めて魔術を使用する。固定化の進んでない自由度の高い魔術だろう。ひしゃげた鉄片は徐々に時計が巻き戻るように元の形を取り戻していく。

 

「これで元に戻ったかな? ありがとう、返すよ 」

 

鉄片を受け取る。直したところがわからないぐらいには戻っている。

 

しかし、魔力の消費が大きかった。変化もゆっくりだった。鉄魔術が苦手というのはあながち間違いではないのだろう。

 

「なかなか楽しい話だったよ。授業の終わりにはここを訪ねるようにするよ。リオンがいたならまた有意義な話をしよう 」

「そうだね。もう、少しお昼を過ぎちゃったね… また明日話をしよう。授業の手伝いをする件、よろしく頼んだよ 」

「ああ、任せておくといい 」

 

もう乗りかかった舟だな…

 

自宅に戻ると可能な限り性質変換の練習をして次の日の授業に備える。

 

次の日に授業に出て変換効率を70%程度まで上げるとフラン先生の魔術を実際に触れて学んでみる。

 

俺が魔術を魔術回路レベルで理解できるからだろうか。前の段階より魔術の段階の方が修得が早かった。

 

「もうそこまで出来るようになったんですかっ!? すごいです! 」

「先生の教え方が良かったお陰ですよ。ありがとうごさいます 」

「またまた。褒めすぎですよぅ 」

 

そう言いつつもまんざらでもない様子。ふふふって感じに表情がくだけている。すぐに教師の顔が()がれるのはどうかと思う人もいるかな? でも俺はそう言うの好きだな。

 

「明日から俺も授業を手伝わせてもらいますよ。リオンから言われているので 」

 

他の生徒の目もあるので教師に戻ってもらうか。真面目な話をしてみる。

 

「リオン教授からですか? レインさんが手伝ってくれるなら頼もしい限りです。是非ともお願いします 」

 

すぐに教師の顔に戻る。流石は教授だ。

 

先生は他の生徒の進み具合を確認しながら実演などをして教えていっている。

 

俺も明日からどのように教えていくか考えるために他の生徒達の様子をうかがってみる。

 

進捗はまちまちのようだな。まだ第一段階がうまくいっていない生徒も多い。進んでいる人でも第二段階が自在にできていないぐらいか。

 

岩人は種族的に適性があるというのは本当のようだ。徒人より進みが速い。

 

隣に座る岩人の青年もなかなかいいところまで進んでいる。もう後一歩のところで自在に魔力の切り離しが出来そうなところまで来ている。

 

がんばれ! 愛でるんだ! 猫だと思え! 犬でもいいぞ! 妖精さん? それでもいいぞ! 一緒に踊れ!

 

こころのなかで応援しているとふと何処かでこの岩人に会ったことがあるような既視感を覚えた。

 

どこかで会ったか? どこでだ?

 

可能性があるのは学院に来てからだがすれ違ったことがあるぐらいでこんなに引っかからないだろう。

 

記録を探っているとやがて該当の記録にぶち当たった。その瞬間、脳裏に電流が走る。

 

ああ~っ! こっ、こいつは…

俺を囲んでボコボコにした連中にいたわ…

 

あのときは全身を革鎧で包んでいたからだいぶ印象が違うが確かにこの顔は間違いない。

 

出会ったのは北の辺境においてなお最果ての場所だ。そこからここ王都にどんな経緯で流れてきたのだろう? 狩人は辞めたのかな? ギルドから脱退しても免許がなくなるわけではないし一時的なものか?

 

考えても仕方がないな。話のきっかけがあれば聞いてみるのもいいだろう。

 

別に最初から恨みなんてものは無いがこんな再会の仕方をすると因縁(いんねん)めいたものを感じるな。

 

むこうはこっちの事なんてわからないだろうし、俺は俺で気づくまでだいぶかかっている。感動の再会なんて感じでもないか。

 

手の中の鉄片に意識を戻すとぐにゃぐにゃに変形していた。制御が乱れていたようだ。

 

しかし、鉄魔術にもだいぶ慣れてきたな。そろそろ術式の構成でも考えてみるか…

 

その前に元の形に戻せるかな、これ?

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

授業が終わってリオンの部屋に訪れると部屋の主はギートを飲みながらくつろいでいた。

 

「もう執筆はいいのか? 」

「とりあえず今書かないといけないものはないかな? 」

 

今はギートを楽しむことにしたらしい。こちらにかまうことなく香りと味を楽しんでいる。

 

「ギートが好きなのか? 」

「うん、そうだね。これは頂き物だけど自分でも買って飲むよ。リーンは苦いから嫌いって言うけど僕は好きだな。苦いのがいい 」

 

それならこちらも勝手に楽しむことにしよう。部屋の中の蔵書を適当に漁ってみる。

 

タイトルから興味を引かれるものはなかった。だが部屋の所々に置物のようなものがあったり、魔導具とおぼしきものが置いてあった。

 

適当に触っているとギートを飲み終えて満足したのかリオンが話しかけてくる。

 

「待たせたかな? それじゃまた何か話をしようか。レインには妹のことで世話になっているし、フラン教授の授業も手伝ってもらうし… レインの為になる話ができるといいね 」

 

少し根に持っているのかな? 所々強調して言ってくる。特に妹のって部分。普通に流すけどな…

 

「そうだな。この間の魔素の話の続きというか魔力についての話をしてくれるか? いまいち掴み所がないところではあるんだよな 」

「そうだねぇ… 理論的な話しになってしまうから参考にはならないと思うけどいいかい? 」

「別にかまわないさ。急ぎすぎるとおろそかになる部分もあるだろう。基礎的な部分もたまにはやらないとな 」

「それはいいことだね。前回の魔素の話から進めて今回は魔素から魔力に転換されるところから始めようと思うのだけれど、例のごとく魔素から魔力への転換を観測できたことがない。だから提唱されている説についての話になるよ 」

 

リオンはそう言うがこちらとしては参考になればいい。

 

「そうなるだろうな。それは了承しているよ 」

「うん、なら問題ないね…

 まず魔力について話さなければならないのが魔石についてだね。魔石は魔力が集まって物質化したものであるのはほぼ確定しているんだけど魔石の作用によって魔素から魔力に転換していると言う説が一つある 」

「ほぼってのはどういうことなんだ? 」

「人工魔石は知っているよね。あれは消滅しかかっている小さい魔石に特殊な機器で魔力圧をかけて人為的に大きくしたものなんだ。そのことから魔力が結晶化しているものと言える

 ただ魔石は生物の体内で生成されたりアキアトルのように自然環境で発生することは知られているけど魔石が誕生する瞬間を観測できたことはない。人工的に無から魔石を発生させたこともね。だからほぼなんだよ 」

「そう言うことか 」

 

なるほどな… 人工魔石についてはよく知らなかったけど…

 

「第二の説としては生物の活動が魔素を魔力に転換させると言うものがある

 魔石は生物の中で生成されることが多い。より強力な魔物ほど大きな魔石を持っている場合が多い。小さい生物ほど魔石を持ちにくい

 生命活動が魔素になにかしらの影響を与えているというのは事実としてあると思う 」

「だがアキアトルは生命活動を行っていない。無生物である石なども魔力を帯びている。それも魔境の深層に行くほど多くの魔力をな。その説に会わない現象もあるな 」

「そうだね。そこで第三の説がある。それは物質であるならば魔素を魔力に転換できるという説だ

 魔力は物質に宿って物質に影響を及ぼす。原子核と電子の間に定着すると言われているね。魔力が物質と相性がいいなら魔素にもそう言う性質があるはずだ。そう言う説だね 」

 

ん~、どうかな?

 

「その説にも問題があるな。魔鉄のように他と比べて魔力格が高い物質は存在している。その説が正しいならすべての鉄は同じように魔鉄になってないとならないはずだ 」

「それで第四の説の登場だ。環境要因説だね。何かしらの環境が作り出している場が魔素を魔力に転換しているって説だ

 地中の高圧の環境が魔素を魔力に転換させて魔鉄に変化させる。魔境の深層の方が魔力に満ちている。海や湖の深い場所の方が魔力で満ちている。レインも実際に訪れてみて実感できているだろう? 」

 

湖の深い場所… 例に挙げただけだよな?

 

「確かにそうだな。だがそれだけでは説明がつかないものも感じている。但し書きがつきそうだな 」

「うん、そうだね。ざっと主な説を上げてみたけれど、どれもが決め手に欠ける。実際はすべての説で上がってきた要因が複雑に影響し合って状況を形作っているというのが今の一般的な解釈だね。良くわかっていないとも言うけど 」

「なるほどなぁ… 細かい説まで上げていったらきりがなさそうだな。結局、魔素そのものを観測してその挙動を調べなければ結論は出ないんだろうな 」

「そうなんだよねぇ~… そこに行き着いちゃうんだ…結局はね 」

 

リオンはそのことに落胆している様子はなく、むしろ研究しがいがあるといった前向きな姿勢を持っているんだろう。軽い調子ながらも目は真剣で輝いている。流石は研究者と言ったところか。

 

 

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