宇宙世紀実録 補助空母〈アインシャムス〉戦記   作:WAST0101

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第二話 ツインテール

 この戦闘の数十分前

エゥーゴ所属

アンティータム級補助空母〈アイン・シャムス〉

女性パイロット用ロッカールーム

第一種戦闘配備が発令されている。それでも二人のパイロットは、髪型について意見を交わしていた。

ウィーンのバレリーナのような容姿 -ただし、髪型はツインテールだった。

「ザヤ・テン教官。実戦だっていうのに、まだツインテールで“部隊のアイドル”をやらなきゃいけないんですか?」

声をかけられたのは二十代半ばの女性だ。

褐色の肌に栗色のセミロングのストレートヘア。切れ長の瞳と高い鼻梁が、極東と中央アジア双方の血を物語っている。

「レオノーラ・ネメッツ曹長……いや、レオ。

部隊のアイドルなんて……」

言いかけて、ザヤは言葉を切った。

戦場で“長く続く”などと口にするのは、あまりに縁起が悪い。

「……誰にでもできる役目じゃないわ。せっかくなら、楽しみなさい」

優しく、それでいて反論を許さない口調だった。

「一年戦争の頃、私は楽しんだものよ」

レオは肩をすくめ、金髪の結び目を指さす。

「でしたら、ツインテールはもう少し後ろで。

先にいくほど細くなる形がいいです。ヘルメットの中で、一番安定しますから」

その“拘り”に、ザヤは思わず微笑に近い表情を浮かべた。

「教官って、あのシーマ少佐の海兵隊にいたんですよね。

……怖くなかったんですか?」

「訓練は厳しかったけど」

ザヤは即答した。

「少佐も、仲間たちも……優しかったわよ」

その言葉を区切るように、艦内放送が流れた。

 

……MS搭乗、出撃準備。

レオは振り返り、ネモにマラサイのバックパックを背負わせた機体へ向かう。

年長の整備班員たちは、娘や姪を見るような眼差しで彼女を見送っていた。何人かは、口元に笑みを浮かべながらも、拳を強く握りしめている。

初陣。

 

レオはハッチを閉じる。

武者震い -いや、これは恐怖か、それとも昂揚か。自分でも判別できないまま、笑みが浮かんでくるのを感じた。

 

一方ザヤは、整備班にサムズアップを返しながら、

ネモ、百式、ディジェ、マラサイ -寄せ集めの機体に乗り込む。

フェダーイン・ライフルを、機体のマニピュレーターに確かに掴ませた。

出撃サインが灯るまでの僅かな時間。

 

ザヤの脳裏を、過去の記憶が高速で駆け抜けていく。

 

〈リリー・マルレーン〉での日々。

厳しい訓練。

それでも、自分の前では妙に紳士的だった先輩たち。

そして -シーマ・ガラハウ少佐。

少佐は、かつてこう言いながら、ザヤの髪を結ってくれた。

「ザヤ。すぐにゲルググで出撃して、連邦恭順派の艦隊に合流しなさい。私たちは、毒ガスの罪からは逃れられない……でも、あなたは違う」

部隊のアイドルとしての、最後の役目だった。

ザヤは、駄々をこねなかった。

 

そして0083年。

再会への淡い期待と、コロニー落としの阻止限界点で突きつけられた最悪の裏切り。

ジオン残党への恨み。

ティターンズへの、決して消えない憎悪。

-その行き着く先が、エゥーゴだった。

 

出撃サインが灯る。

ザヤは、今はないツインテールの存在を感じながら

静かに操縦桿を握り込んだ。

 

 

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