宇宙世紀実録 補助空母〈アインシャムス〉戦記   作:WAST0101

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前回から少し間が空いてしまいましたが投稿しました。


第四話 前編 リゲルグ 片腕切断

そのシルエットを見た瞬間、ハミドの胸から力が抜けた。

——助かった。

ラース大尉のリゲルグだ。

アクシズが生み出した重MS。

ゲルググを超える火力と装甲を持つ、前線では頼れる切り札だ。乗り手次第では最新鋭機と互角以上に戦える機体。機体色は旧量産カラー——待ち望んだラース大尉の機体だ。

その両脇には、二機のMSが随伴している。

一方は、洗練された青色の装甲に包まれたアクト・ザク。

もう一方は、銀と赤の装甲を持つ騎士然とした機体——ギャン・エーオース

ハミドは通信回線を開いた。

「ラース大尉! こちらハミド曹長。カイトとコトハは——」

言葉が、喉で詰まる。

通信回線の向こうから、ラースの声が返ってきた。

「……すまん、ハミド曹長」

その声は、いつもの冷静さを保っていた。

だが、その奥に——後悔が、滲んでいた。

ラースは戦闘宙域を一瞥する。交戦中を示す光輝の数が、消えつつある。

単機で待つハミド。

凶事を、悟った。

         *

「ラース大尉、我らギレン派だけでも伴に進軍しておけば」

アクト・ザクから、勢いづいた声が飛んできた。

それに対して、ギャン・エーオースが鼻で笑うように

「誰かさんが、キシリア様の仇討ちを貶めなければ予定通りに進めたはずだ」

「黙れ」

ラースの声が、通信回線を切り裂いた。

怒気。

だが、それ以上に——後悔が、前に出ていた。

「……このとおりだ、ハミド曹長。ギレン派とキシリア派の同志の溝が深くてな。銃を向け合う始末で、仲裁していたら、先行していた君たちとドズル派を援護できなくなった」

ラースは、言葉を切る。

「両派とも、代表機以外は母艦に帰ってもらった」

ハミドは、その言葉の意味を咀嚼した。

(……戦力の逐次投入?)

リゲルグ、アクト・ザク、ギャン・エーオース。

たった三機。

それも、互いに反目し合っている。

「君も母艦に戻れ、ハミド曹長。私たちは戦闘宙域の残存機と生存者を探す」

ラースの声は、命令の形を取っていた。

だが——

ハミドは、操縦桿を握る手に力を込めた。

「……了解しました、大尉」

逃げる、という選択肢。

それは、正しいはずだった。

だが——

(……俺は、何のために戦っているんだ?)

その問いに、まだ答えは出ない。

         *

シャミラムとディンのジムⅢは、戦闘というより掃討の局面に移っていた。

残存するジオン残党機は、もはや組織的抵抗を放棄し、生存のために抗う。

その抗いが潰える寸前

センサーが、三つの新しい反応を捉えた。

「——新規敵影、三機」

ディンの声が、通信回線に響く。

シャミラムは、モニターに映る機影を確認した。

リゲルグ。

アクト・ザク。

 

ギャン・エーオース

「……追加ステージね」

 

 

シャミラムの声は、相変わらず涼やかだった。

だが、その瞳は——冷徹な計算を、始めていた。

残弾数。

推進剤。

機体の損傷状況。

そして——敵の編成。

勝率、78%。問題なし

「ディン、アクト・ザクとギャンを抑えられる?」

「大戦機ですよね……やってみます」

ディンの声に、僅かな緊張が混じる。

シャミラムは、手早くAIからの作戦提案に眼を通し、スラスターをふかす。

一組のMAVがギア・チェンジした。

         *

 まずは、ディンが動く。温存していた肩部のミサイルランチャーの一斉射撃。ネオ・ジオンの三機はそれぞれ回避運動をとり、編隊が乱れる。

 

 ディンはリゲルグを襲う軌道をとると見せかけたところに、接近戦用のギャン・エーオースが割って入る。ここでアクト・ザクからの援護射撃があれば苦しくなるところだが、故意かどうかは別としてその一撃はこない。

ディンはバルカンで牽制しつつギャン・エーオースから離れる。

 

シャミラムのジムⅢとラースのリゲルグは互いの射撃を回避しながら、接近戦へと向かう。

ラースはビームサーベルを抜く”間”を作るため、半ば回避を前提に最後の射撃をした。

シャミラムは

「行ける……」

と、呟くとシールドでそのビームを正面から受ける。粉々になったシールドが機体を叩き、塗装を剥ぐ。

が、彼女は気にせず加速する。

そして、ビームサーベルの抜き打ちでリゲルグを袈裟懸けに切り裂こうとした。

辛うじて体を捻って致命傷を防いだリゲルグ。だが武装を持ち替えようとした右腕を音もなく切り落とされた。オイルが吹き出す間も無く凍りつく。

コクピット内に響いたアラートに教えて貰うまでもなく、戦況が不利に傾いたことを悟ったラース。

 

彼はセンサーで損傷した友軍機が撤退したことを知ると、左手で抜いたビームサーベルを構え、バックパックのミサイルランチャーを斉射した。

シャミラムもたまらず回避運動をとる。この隙にラースは撤退信号を出し、自分もウイングバインダーの高加速で離脱コースをとった。

 

ディンを相手に、MAV戦術の悪い手本のような連携をしていた二機も潮だと見たか離脱を開始した。

ディン「隊長、追撃は?」

シャミラム「ギャンとアクト・ザクの原隊が待ち伏せている可能性は?」

ディン「アリ、ですね。こちらも退き時ですか」

 

それぞれの母艦を目指す生き延びたMSのスラスターの痕跡。

 

それも僅かな時間に消えていった。

 




次回はエゥーゴ側母艦アンティータム級補助空母<アインシャムス>でパイロット四人が集結。「駆妖衛(くようえい)」司令 金 開琳(ジン カイリン:満州人、清朝皇帝愛新覚羅氏末裔!?)が登場します。
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