宇宙世紀実録 補助空母〈アインシャムス〉戦記 作:WAST0101
「それではレオ、初陣の後ですまないが、例の宿題を聞かせてもらおうか」 ジンが教師のような口調でレオを促した。
「あ、はい。ザビ家の公王継承順に基づくアクシズ内の派閥分析ですね」 レオは自分のノートパソコンからファイルを探す。
ザヤが一瞬だけ心配そうな眼で彼女を見た——ジンの採点基準は時に厳しい。
レオが立ち上がり、発表を始めた。
パソコンの内蔵のプロジェクターが資料を映し出す。
「まず、ザビ家の公王継承順については、デギン以降の死去順に継承されていったという素朴な解釈があります。
(a)デギン→ギレン→キシリア→ミネバ、の順です。
これに対し、キシリア派などが掲げる、父殺しであるギレンを認めない説。
(b)デギン→キシリア→ミネバ、です。
この二説に対し、ザビ家の内紛を埋没させたい一派が提唱したのが、ギレンとキシリアは在位期間があまりにも短いため認めないという説—— (c)デギン→ミネバ、の順です」
(ここまでは、ジオン共和国内でも語られている話だ。ギレンとキシリアの死に関して俗説に惑わされなければ、この程度は出来る——)ジンはそう値踏みしながら、先を促した。
「さらにこの三説それぞれに対し、ミネバの実父であるドズル——ご存知のようにデギンより先にソロモンで戦死しており在位はありませんが——を、デギンと同格に置くという主張もあります。
これを(a′)(b′)(c′)とします。
アクシズ内ではドズル派が主流とみられていますので、(c)、(c′)が優勢かと」
「……ここまでで、ご質問はありますか」
レオは発表資料から目を上げた。声が、わずかに上擦っている。 ディンは手も挙げず、菓子を一口かじりながら言った。
「結局どの説でもミネバ・ラオ・ザビに行き着くのは変わらない。で、本題はそこじゃないんでしょ」
レオはそれを受けて、続けた。
「はい。ドズル派が優勢の中、ギレン派は最低でも(a′)、キシリア派は(b′)まで妥協せざるをえません。それどころか(c)を表向き掲げることで、呉越同舟が成立している可能性もあります。 ギレン派については、デラーズ紛争時に回収されたデラーズ・フリートの残党が多いと思われます。キシリア派については、連邦のα任務部隊がキシリア副官だったトワニングのグワレイと接触しており、侮れない勢力を有しているかと」
ジンはにっこりと笑った。 「よく出来ました。ハマーンとしては(c)(c′)で固めておきたいところだろう。たとえ(a′)(b′)で各派が妥協していたとしても、ギレンやキシリアの血統を名乗る者が出てくれば、ミネバより継承上位者が生まれることになる」
一息おいて、ジンは付け加えた。
「それと……ザビ家のイエの問題については、昔、身内が痛い目に遭ってな」
口角の角度を上げると
「まあ、見方によっては笑える話だから、お茶請けがわりに聞いてくれ」
後編に続く