万象、紙に綴れば   作:Mebius217

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第1話:箱庭の孤独と、紙上の生命

 

 

 

「……また、増えてる」

 

 

 

下校途中、綴眞白(つづり ましろ)は通学路にある古びた神社の鳥居を見上げ、小さく息を呑んだ 。 そこには、赤黒い泥をこねくり回したような、人型とも獣型ともつかない異形が三匹、重なり合うようにしてへばりついていた。それらは「ギ、ギギ……」と、濡れた雑巾を絞るような不快な音を立てながら、通り過ぎる人々を濁った眼で見下ろしている。

 

もちろん、隣を歩く同級生たちには、その異形の姿も見えなければ、耳を刺すような鳴き声も聞こえていない。

 

 

(無視。絶対に、無視……)

 

 

眞白は俯き、視線を地面に固定した。4歳の頃、この「怪物」が自分にしか見えないのだと気づいたあの日から、彼女のモットーは「徹底した無視」である。変に反応して「あの子、変なものを見てる」と後ろ指を指されるのは、内向的で気弱な彼女にとって死ぬよりも耐えがたいことだった。

 

 

 

学校での眞白は、いつも教室の最後列で静かに読書をしているような、目立たない少女だ。 友人がいないわけではないが、心から打ち解けられる相手もいない。彼女の豊かな想像力は、時として「今の沈黙、変に思われたかな」「私の顔、何か付いてたかな」といった過剰な被害妄想へと繋がり、彼女をさらに内向的にさせていた。

 

彼女にとっての「世界」とは、この薄気味悪い化け物たちから目を逸らし、波風を立てずにやり過ごすべき、ひどく息苦しい場所だった。

 

 

家に戻り、自室の扉を閉めて鍵をかける。そこが眞白にとって唯一、自分を偽らなくていい「箱庭」だった。

 

 

「ふぅ……」

 

 

学生カバンを放り出し、彼女は学習机の引き出しを開ける。そこには色とりどりの折り紙が、グラデーションごとに整然と並べられている。 眞白は、1から何かを作り出すことが大好きだった。特に折り紙は、平面であるはずの紙が、折り筋一つで複雑な立体へと変貌を遂げる。その過程が、まるで魔法のようで心地よかった。

 

彼女は一枚の白い折り紙を手に取る。 指先を動かし始めると、彼女の意識は一気に集中へと向かう。周囲の音が遠のき、世界が手元の一点へと収束していく。

 

すると、彼女の体から、薄らとした「湯気」のようなものが立ち上り始めた。 それは陽炎のように揺らめき、ほんのりと青白い輝きを帯びている。彼女はまだ、それが人間の負の感情から漏れ出す「呪力」というエネルギーであることを知らない 。ただ、物心ついた時から自分の中に溜まっているこの「力」を、彼女はごく自然なものとして受け入れていた。

 

 

「よし、できた」

 

 

数分後、彼女の手のひらの上には、今にも鳴き声を上げそうなほど精巧な「鶴」が鎮座していた。

 

 

眞白は、その紙の鶴に、指先から立ち上る「力」をそっと流し込んだ。 彼女にとって、これは最高の手遊びだった。外では絶対に見せられない、自分だけの秘密の遊び。

 

 

「……いって」

 

 

彼女が念じると、紙の鶴がピクリと震えた。 カサリ、カサリと乾いた音を立てて、翼が広がる。次の瞬間、それは重力を無視するようにふわりと宙に浮き、眞白の頭上を優雅に旋回し始めた。

 

 

「すごい……今日は一段とスムーズに動く」

 

 

眞白の瞳が輝く。彼女はこの数年間、自室でこの力の性質を密かに調べ続けていた。わかったことはいくつかある。まず、この力は自分以外の人には見えないらしいこと(以前、居間でこっそり呪力の塊をこねていた時、目の前を通った母親が全く気づかなかったためだ)。そして、この力を「形状」に流し込むことで、その形に応じた自律的な動きを与えられること。

 

「動かせるのは、私が折ったものだけ……。粘土じゃダメだったし、ただの紙屑も動かない。私が『形』を決めて折ることに意味があるんだ」

 

彼女は、この不思議な力の行使を、心の中でこう呼ぶことに決めた。

 

 

 

『折紙呪法(おりがみじゅほう)』

 

 

 

陰陽師や忍者の術のような、少し古風で、けれど自分の本質を射抜いたようなその名前は、驚くほどしっくりと彼女の心に馴染んだ。

 

 

眞白は、旋回する鶴を見つめながら、さらなる想像を膨らませる。今は小さな鶴だが、もしもっと大きな紙で、もっと強い猛獣を折ったらどうなるだろうか。あるいは、紙の性質そのものを変えることができたら?

 

 

(もし……あの電柱にいた化け物を、この鶴が追い払ってくれたら)

 

 

そこまで考えて、眞白は慌てて首を振った。いけない、いけない。関わらないと決めたのだ。あんなおぞましいものに関わったら、自分の平穏な日常が壊れてしまう。

 

けれど、彼女の内側に眠る「膨大な呪力」は、彼女の意志とは裏腹に、静かに、しかし確実にその出力を増していた。彼女は気づいていない。自分がただの手遊びだと思っている呪力操作が、ベテランの術師すら驚嘆させるほどの高度なレベルに達していることに。そして、その才能が、いずれ彼女を「無視」できない場所へと引きずり出すことを。

 

 

「……でも、いつか。もっとたくさん友達ができて、高校デビューとかしちゃったりして、その時にこの力が役に立ったらいいな」

 

 

そんな、少しズレた、けれど彼女らしいささやかな願いを胸に、眞白は再び新しい紙に手を伸ばした。 彼女の部屋には、命を宿した紙の動物たちが、主人の想像力に呼応するように静かに集まり始めていた。

 

 

これが、後に「呪術高専」という異界で花開く、ある天才術師の、静かすぎる序章であった。

 

 

 

 




こんにちは!初めまして!

呪術廻戦のアニメを見てたらいい感じの術式が思い浮かんだので初めてですがAI使って小説作ってしてみました。

多分そんな続きませんがよかった見てってください。

2026/02/13:矛盾修正
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