三輪の兄貴   作:器用貧乏ならっこ

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前回の後書きで『次回で天与呪縛編終わり』と言ったが……あれは嘘だ。

「矛盾はひどいなあ…執筆者の心とかないんか?」


特級呪霊と三輪の兄貴

「これで任務の説明を終わります。何かご質問はありますか三輪一級術師」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「かしこまりました。それでは帳を降ろします、ご武運を」

 

京都に行った翌日、俺は一級呪霊の祓除任務に出ていた。帳の中に入ってまずは呪霊の詳細な位置を探知、それから祓う。

 

「さてと、それじゃやりま……え? これ本当に一級呪霊?」

 

前言撤回、この呪力の圧は……間違いなく特級。それもかなり上澄みだ。

 

「っ!?」

 

「おや、仕留めたと思ったのですが……それなりにやるようですね」

 

速い! 後少し気づくのが遅かったら間違いなく致命傷を負っていた! それほどの速さ!

おそらく俺がこれまで戦ってきた呪霊とは格段にレベルが違う!

 

「死にたくないなあ……」

 

「それが遺言ということで構いませんね?」

 

出し惜しみはできない。スピードは俺の方が上回っているがパワーはあちらのほうが上、

それに術式も未だ不透明……ならやることは。

 

「(術式を使わせる間もなく速攻で祓う!)術式解放! 『高速演算(こうそくえんざん)』」

 

霧矢の術式が今、解き放たれる!

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

三輪霧矢の生得術式……その術式効果は読んで字の如く『高速演算』

 

本来は思考速度を上昇させるだけの術式だが、彼はそれを電気信号の活性化と解釈した。

 

それによって俊敏性の上昇、反応速度や動体視力の向上を可能にする。

 

圧倒的な手数と瞬発力、それに加えて常軌を逸した思考速度と反応速度。

 

それらを持つ三輪霧矢は僅か高専入学4ヶ月後で異例の速度での一級術師昇格を果たし……

 

ー現代最速の術師ー (五条悟を除く) と呼ばれるまでに至った。

 

 

 

 

「フッ!」

 

(速い! 先ほど私の攻撃を避けた時とは比べ物にならない速さ! それも私の攻撃動作を封じる形での先制攻撃!)

 

霧矢は攻める。呪霊の術式がどんなものか分からない以上、彼はそれを発動させる隙を作らないことを徹底的に意識していた。

 

(一撃一撃の重さはそこまでではありませんが、手数が多すぎる! これは……抜け出せない!)

 

だが呪霊もタダでは転ばない。発動速度が一番速い術を発動させなんとか霧矢を吹き飛ばそうとする。だが、それよりさらに早く彼は動いた。

 

(ッ!? その一瞬で後ろに回り込みますか!)

 

術式の中にも発動速度がそれぞれ異なるものがある。大技を使うには相応のタメと呪力の起こりで察せられる可能性がある。

 

霧矢は相手がそれを鑑みて大技を使うことはないと考えていた。故に速度で攻める。

 

霧矢の目論見は成功している。実際呪霊は彼の手数に手も足も出ていないことは火を見るより明らかな状態だ。だが、その呪霊は特級……それも天候への畏怖の感情から生まれた自然呪霊。

 

高い知性と高度な呪力操作、そして自身の術式の本質を既に掴んでいた。

 

生まれて間もないと言えども呪霊は既に霧矢の猛攻を耐え凌ぎ、反撃する術を獲得している。

 

「領域展開。『ー』」

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

(特級呪霊だ。もちろん領域展開くらいの技はできると思っていた。だから掌印を組ませるどころかそもそもほとんど反応すらできない超至近距離から攻撃をしてそれを封じていたのに……!)

 

「シン・陰流。『簡易領域』」

 

それは領域から身を守るための弱者の領域。霧矢は呪力の起こりを感じ、咄嗟にそれを展開した。

 

(簡易領域の条件を変更して……よし、押し合いは成立しているな)

 

霧矢はフルオート迎撃機能・簡易領域のバフ効果を捨て、より長い時間呪霊の領域から耐える選択をした。それは本来ならば決して間違いではない。ただ一つ誤算があるとすれば

 

(これで……っ!? 嘘だろ……なんで当たるんだよ!)

 

その領域には必中効果が付与されていない。呪霊は掌印を組まずに呪印で領域展開をする代わりに必中効果の付与を禁止する縛りを設けた。それが奇しくも決定打となった。

 

数多の風の刃が襲いかかる。霧矢は簡易領域を解除し、それらを避けることに集中した。

 

だが相手の本領は中遠距離型、距離を離された霧矢に逆転の芽はないに等しい。

 

(ッ!? 上から……?)

 

加えて上からも襲いかかる空気の重圧。それは霧矢を地に縫い付けるには容易い圧力だった。

 

(反転術式を……っ)

 

そう思い身体を治そうとした時には既に彼の意識は闇に落ちていた……

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

『霧矢ってさ、感情というか、自我をあんまり出さないよね』

 

そう五条先生から言われた時、そんなことはないと反論した。すると

 

『でも霧矢は結界術も上手いし、反転術式だって出来る。でもなぜか領域展開はできないよね』

 

『領域展開は自身の心象風景を結界に落とし込んで発動する結界術。霧矢は自分の心象風景がどんなものかイメージできる?』

 

それくらいできる……そう思っていたが何故かイメージができなかった……

 

『ほらやっぱりできないじゃーん! はあ……霧矢は強いんだからもっとエゴ出していいんだよ』

 

『誰かのためにじゃなくて、自分のために強くなる。そう思って頑張りな』

 

(俺……なんのために呪術師やってるんだっけ……)

 

『お前からは熱が感じられない』

 

初対面の時に金次からそう言われた。綺羅羅は気まずそうにしていた。

 

だけどその後で3人一緒に任務に行った時に全員ボロボロで死にかけた後、なんとか任務を終えて家入さんに治療してもらったことがあった。

 

その時に病室で金次から

 

『あの時は悪かった。お前、いい熱持ってんじゃねえか』

 

そう言われたのを俺は覚えている。

 

(その時俺は……何を……そうか、死にたくないと思ったのか)

 

(死にたくない、そう思って立ち上がった。負けたくないと思った)

 

(死んだらそこで終わりだから、みっともなく足掻いてでも生き抜きたいと思った)

 

それが俺のエゴだ。俺の”熱”だ!

 

(まだ……負けてない! 俺はまだ死にたくない!)

 

「ッ!? まだ意識があるというのですか!? 早くトドメを…!これは、まさか!」

 

呪霊は一時的に術式が焼き切れている。故に近づくしか攻撃手段はない。

 

だが、それよりも早く霧矢は準備を終えた。

 

今まで彼に足りなかったのは自身の剥き出しの本性!他を顧みない自分だけの生きる目的!

 

それを死の間際にて彼は掴み取り、無事生還した!

 

既に条件は満たされている。

 

結ぶは奇しくも師と同じ印。ー帝釈天印ー

       

「領域展開! 『改加演築(かいかえんちく)』」

 

霧矢の意地が花開く!




Q、『改加演築』ってどんな領域?
A、膨大な情報を高速で処理・演算できるパーソナルな機械にできることは大体できる領域。

(内緒やで、ぶっちゃけ改加演築ってあんまりかっこよくないと思うねん。誰かいい感じに名前つけてくれへんか。)
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