元自衛隊員、学園都市で教師になる  〜今を生きる者のアリア編   作:風間しんや

15 / 18
第十五話

第十五話

その現象は、白石たちの方でも確認される

「白石隊長!あれを!」

隊員の一人が叫んでその事態を知らせる、彼はその呼び指す方向に視線を向けると唖然とする

「な、なんだ……あれは……」

彼がそれをまじまじと見ようとするが、地響きが彼を現実に戻す

「……っ!!」

「撤退!撤退!生徒の人命を最優先に撤退!」

 彼は即座にそう叫んだ

 

 

 地響きの後極太のレーザーがDU地区の路面を焼く、その絵はまさに大怪獣のそれと同じだ

アリスを除いた地上にいたほとんどの姿が見えず、そこにはエコーと真っ赤に焼けた路面だけだった

「先生!」

 アリスは上空から叫ぶ

アリスの叫びが、焼け焦げた大気を震わせる。

極太のレーザーが通過した跡は、溶岩のように赤く爛れ、アスファルトは泡立ち、鉄骨は飴細工のように曲がっている。

視界を覆う熱煙。

通信も、沈黙。

「……応答してください……先生!」

アリスの声がわずかに震える。

そのとき。

赤熱した地面の一角が――

わずかに揺れた。

瓦礫が、押し上げられる。

黒煙の中から、片膝をついた影が現れる。

「……派手にやってくれるな」

信也だった。

 その後ろにはヒナがいた

「先生、大丈夫?」

 と彼女が尋ねると

「大丈夫……まぁもうちょい遅かったら死んでたケド」

 とさらりと言う信也に若干呆れつつもヒナは差し出された信也の手をとり、立ち上がる

「……全員、応答を」

 と彼がハンズフリーに手をやる

「…………」

 少しのノイズの後、最初の一人が声を出す

「サオリだ、アマリアと一緒にいる、どちらともまだいける」

 サオリからだった、それに続き

「……リラだよ!セリナお姉ちゃんが今リラに包帯巻いてくれてるの!」

と元気な様子のリラ、彼女に包帯を巻いているセリナはボロボロだが、それを我慢しているようだった

「セラフィナです、サツキって人とキサキって人、アヤネといます、サツキって人はなんか腰が抜けたって言ってますが他は大丈夫です」

セラフィナは完全に座り込んでるサツキに呆れながら告げる

そこまでの通信を聞き、最後に空を見上げる信也

アリスは周囲を飛んでまわり、全員の位置を把握すると腕で大きく丸を形作る

それを確認して信也は一瞬笑みをこぼし、告げる

「再度反撃に出る!」

 そう告げた後、彼は言う

「役割を伝える!」

 

 「アヤネ、セリナ、サツキ、キサキは後退、白石の部隊を呼んできてくれ」

 「「「「了解!」」」」

 「サオリとヒナはアマリア、セラフィナ、リラの援護に、アリスも上空から援護を」

 「「「了解!」」」

 「そして、アマリア、セラフィナ、リラ……君たちはさっきのあの火力を持って、奴を叩け!」

 「「「任務了解!」」」

 アマリアたちはその場にいない彼に向け敬礼をする

指示を終えた先生は、一呼吸挟み、告げる

「全員、かかれ!」

 

その号令と同時に――

ベアトリーチェ・エコーの視線が、戦場を再走査する。

「戦闘継続ヲ確認」

「排除優先度、再設定」

ヒナが地を蹴る。

爆発的な加速。

その横をサオリが滑るように走る。

アマリアはすでにスコープを覗いている。

「……中枢発光部、0.7秒周期で脈動」

「次の収束まで、4秒」

セラフィナが応じる。

「なら3秒で詰める」

リラが笑う。

「いっくよー!」

ベアトリーチェ・エコーの周囲に、再び光杭が生成される。

だが――

上空からの高速射撃。

アリスだ。

「射線、分断します!」

光杭が撃ち落とされ、爆散。

その隙をヒナが突き抜ける。

「――ッ!!」

拳撃。

衝撃波。

ベアトリーチェ・エコーの装甲表層がひび割れる。

「近接戦闘……非効率」

即座に反撃。

至近距離レーザー。

だがサオリが割り込み、弾丸を叩き込む。

「先生には触れさせないっ!」

爆煙。

その背後から。

アマリアの声。

「今」

セラフィナとリラが左右へ展開。

三方向同時射撃。

一点集中。

ベアトリーチェ・エコーの中枢光が激しく明滅する。

「損傷率……上昇」

だが。

その瞬間。

地面が波打つ。

「広域制圧、展開」

光のリングが地面を走る。

全員が跳躍。

間一髪。

ヒナが空中で舌打ちする。

「さっきより速い……!」

アロナの声が飛ぶ。

「先生!自己進化が止まりません!学習速度が指数関数的に増加しています!」

信也は目を細める。

「なら……進化前提で叩く」

彼はハンズフリーを強く握る。

「アマリア、次の脈動タイミングに合わせろ」

「ヒナ、サオリは一瞬でいい、動きを止めろ」

「アリス、上空から中枢を照らせ」

「全員で“誤差”を叩き込む」

ベアトリーチェ・エコーが両腕を広げる。

「抵抗ハ非合理」

信也が即答する。

「合理じゃなくていい」

「勝つ」

次の瞬間。

ヒナが真正面から突撃。

サオリが同時に弾丸を撃ち込む。

視界妨害。

一瞬の停止。

アリスが叫ぶ。

「今です!」

アマリアが引き金を引く。

セラフィナ。

リラ。

三連同調射撃。

中枢へ直撃。

轟音が鳴り響く。

光が弾け飛ぶ。

ベアトリーチェ・エコーが初めて、明確に膝をつく。

「誤差……増大……」

だが。

次の瞬間。

背後に、巨大な影が立ち上がる。

光の骨格。

装甲が再構築される。

サイズが、倍化する。

ヒナが息を呑む。

「……は?」

ベアトリーチェ・エコーの声が、重低音で響く。

「適応完了」

「第二形態、固定」

その頭上に、かつてない規模の光輪が展開される。

戦場全体を覆うほどの巨大な砲撃陣。

アロナが絶叫する。

「先生!今度こそ都市単位です!!」

「やる前に叩くッ!」

 と先生は叫ぶ

「アリス、サオリ、ヒナで同時攻撃!その後に間髪入れずアマリア、セラフィナ、リラの同時攻撃、その後にさらにアリス、サオリ、ヒナの第2次攻撃!火力でねじ伏せる!」

 無茶のある作戦だが、彼女たちは承諾する

それにサオリは軽く笑う

「先生らしいな」

ヒナは自身の武器を確認しながら言う

「やるだけね」

 その最中、アリスは高度を取る

 

「再度ノ抵抗ヲ確認……」

 ベアトリーチェ・エコーが降臨を回転させ、呟く

「愚行」

 

 「第一波!撃てぇ!!」

 深夜の叫び声と共にヒナとサオリは全弾掃射し、上空からアリスは全砲門を展開して撃つ(ハイマットフルバースト)

 3方向から放たれた弾丸の雨は頭部へ全て命中する

「演算負荷……上昇」

 そこに僅かな硬直が確認される、信也が叫ぶ

「第二波ッ!」

 アマリアは既にスコープを覗いており、敵の頭部を捉えており、その一撃を叩き込む

セラフィナとリラもそれぞれも武器を構え、弾丸の雨を降らす

「損傷率……急上昇」

 顔を覆っていた装甲が剥がれるのが見える

最後の一撃を信也は叫ぶ

「第三波ッ!!叩き込めっ!!」

 そこにリロードを終えたばかりのサオリとヒナが信也の前に立ち、あるだけの弾丸を撃ち込み、アリスは急降下しながら全砲門を構え、全出力を一挙に解放する

 

轟音が、爆光が、衝撃波が戦場を洗う

そして、ベアトリーチェ・エコーが初めて後退する

「……力が……体が……」

 その時、声は機械混じりではなく、聞き馴染んだ声だった

そして、ベアトリーチェ・エコーのヘイローは軋み、巨大な光輪が歪み始める

「救済は……」

 

「必然……」

 

「我は……「私は」……正し――」

 

彼女が言いかける中、1発の弾丸が中枢を貫く

スコープから目を離してため息をつくアマリア

ベアトリーチェ・エコーの体は光が内側から弾け飛び、巨大な躯体が崩れ落ちながら爆ぜる

光輪が、「ヘイロー」が砕け、赤く澱んだ空は消えていく

躯体が崩れ落ち、静止する

青い空が戻ってくるのと同時に、風が戻り、鼻に焦げた匂いが突き抜ける

誰も動かず、その躯体を見守る

「敵反応、消失しました」

 アロナがそう告げると

サオリは息を吐き

ヒナはその場に座り込む

 

信也はその「ベアトリーチェ」だったものを見つめ

 そしてゆっくり言う

 

「サオリ、ヒナ、アリス、アマリア、セラフィナ、リラ……お疲れ様」

 

 その時、崩れた躯体の奥、微かな光が瞬く。それは誰の目に止まらないほど小さく、気づかれることなく、消える

 

 信也は空を見上げ、言う

「帰ろう、みんな」

 

 

 ベアトリーチェ・エコーの討伐から数時間後、DU地区は封鎖される

先に撤退した白石の部隊と、重機群

「重機?こんなのどこから……?あれ?よく見たら待機組もいるじゃないか」

救急医学部のセナが信也のそばで彼に包帯を巻く中、信也は白石へ疑問を投げかけていた

「ええ、何でもキヴォトス近海の島での活動の後に寄ったと聞きますが……それにしたって装備が綺麗なんですよね」

 と白石も不思議な様子

「……ま、災害派遣ってことで話を通せば何とかなるか、ほぼ自力での復興不可能だし……」

 と荒れ果てたDU地区を苦笑いで見ながら言う信也

「……ですね」

 と同じく苦笑いで返す白石

 

 少し離れた場所ではサオリは瓦礫に腰掛けながらスクワッドの面々と話しており

ヒナはほぼ全身に巻かれた包帯をアコなどの風紀委員会の面々に心配されながらも視線を街に向け

アマリアは救護騎士団の面々に治療をしてもらってるセリナと話し

セリナとリラは、セリナに診てもらった傷をハナエに確認してもらっている

アリスは後から駆けつけたケイを抱えて街の状況を確認している

 

信也は黒服に連れられ、戦闘のあった場所へと戻ってきていた

瓦礫の中央にあるのは「ベアトリーチェ・エコー」だったもの

今は回収対象として数名の隊員が常駐している

黒服はその残骸を観察する

「しかし……「人工的な神秘を持った」存在……か」

信也は訝しみながら言う

「クックック……興味深いですね」

「お前はそうなんだろうが、こっちとしては面倒事なんだよ……ったく、こりゃ幕僚長に……いや、幕僚長で何とかなるか……?」

 と呟く中で、白石が言う

「師団長の言いたいことは分かります、この技術(人工キヴォトス人)はせめて拡大でも抑えないと……」

 「……ああ、少なくとも今のうちは大丈夫だが、条約の見直しや各国の関係見直しもあるだろうな」

 と話す二人

すると信也は黒服に近づき黒服の頭を両手で掴む

「お前も手伝えよ?」

 にっこりとした顔に見えない圧があったのは確かであり、黒服は

「……ハイ」

 と答えるのだった

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。