元自衛隊員、学園都市で教師になる  〜今を生きる者のアリア編   作:風間しんや

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第十六話

 

あれから数日

シャーレオフィス

ここでは今、連邦生徒会がてんやわんやと働いている

サンクトゥムタワーはそれこそ戦闘の被害は受けてなかったが、大規模な工事や、ベアトリーチェ・エコーの躯体の回収作業などがありあまり立ち入れるような状況ではなかった、そのため急拵えの拠点としてシャーレオフィスが抜擢された、ちなみにだが、“災害派遣”で派遣されて来た自衛隊の拠点としても機能している

 

 その一角にある教室では、今ある“議題”を中心に話し合いが行われていた

「新たな「制度」、ですか?」

ユウカが尋ねる

「……ああ、先のヴァルグラントとの戦争、さらに数ヶ月前なら虚妄のサンクトゥム戦、いずれの「有事」の際、言い方は悪いが統率が取れず、危うく崩壊しかけた。それを反省して、今後起こり得るかもしれないキヴォトス……いや「国家の有事」を考えれば必要とも言える制度だ」

「なるほど」

 と誰かが納得すると

「ただ、それだけではない」

 と同席していた白石が口を開く

「先の戦争で保護したアマリア、セラフィナ、リラの3名は現状の扱いでは単なる「保護」に過ぎず、出身国とも言えるヴァルグラント連邦は彼女たちの戸籍を廃棄している。」

 「……つまり、3人は「無国籍」と言うことだ」

と白石と信也の言葉で驚く面々

「そのため、これを一度に解決できる制度、または法の整備が必要ってことだ」

 と信也は言葉を続ける

 少しの間教室に沈黙が流れる

 

 すると端末を操作していたユウカが顔を上げて発言する

「無国籍の受け入れ制度を新設する……それ自体は理解できます。ただし前例がありません。前例がないということは、「歯止め」も効かないということです」

「歯止め?」

 誰かが反応する

「はい、3人を救うための制度が、将来的に“意図的な戸籍放棄”を誘発する可能性があります。国外勢力が『キヴォトスに行けば身分が保障される』と判断した場合、人工流入、政治圧力……最悪の場合は「浸透工作」も起こり得ます」

 そのユウカの発言に場の空気が変わる

信也は腕を組む

「……つまりは、“善意が穴になる”ということさ」

ユウカ:「はい」

さらに白石が静かに補足する

「さらに言えば、連邦生徒会が市民権付与の最終決定権を持つことになります、それは実質的に国家継承権に近いものになる」

 誰かが小さく息を呑む

 

 キヴォトスは「学園都市」だ。

だが今、議題は「国家主権」そのものだった

 

 信也は天井を見上げる

「皮肉なもんだ、「戦争を防ぐための制度」が、「国家らしさ」を強めるものになるんだから」

 

 「「必要」だから、です」

 ユウカは即答する、それにリンも頷き、口を開く

「統率が取れなかったのは事実です。ヴァルグラント戦もあの時(虚妄のサンクトゥム)も。緊急時の「指揮権」、「戦力統合」、「避難誘導」、「情報統制」。全てが「場当たり的」なものでした。」

 それはその「有事」の際に立ち会ってきた彼女だからこそ言える言葉だった

すると、端末の操作を終えて立ち上がったユウカが発言する

「私一個人の意見ですが、これは如何でしょう?」

 ユウカはスクリーンに端末の資料を投影する

 

 そこに表示されたのは――

 

《有事統合管理法(仮称)》

 

・「非常事態宣言」の明文化

・連邦生徒会による「一時的統合指揮権」

・「無国籍者の特例保護」及び「純市民権制度」

・審査機関の「独立性」確保

 

「純市民権……?」

信也が眉を上げる

「はい。即時完全市民権ではなく、一定期間の審査付き身分保障。「居住権」、「教育権」、「医療保障」は付与。ただし、参政権は「段階的付与」。これで「安全保障」と「人道」の両立を図ります。」

ユウカの案は強い案だった

白石は頷く

「悪くありません。ヴァルグラントとの外交カードにもなる」

「だが」

信也は真剣な面持ちで口を開く

「それは連邦生徒会の「権限拡張」だ。ここに参列している学園はともかくそれ以外の学園が反発する恐れもある」

 そう信也が言った直後、教室のドアがノックされる

「失礼します」

そう言って入ってきたのはアマリアだった

彼女は一瞬躊躇し、言う

「……私たちのことで議論していると聞いて、来ました」

誰も何も言わずにいると、アマリアは言葉を続ける

「私は保護されるだけの存在ではいたくありません。ここで学び、生き、「守る側」にもなりたい。それが許される制度なら……どんな形でも受け入れます」

 

 その言葉は、先ほどまで信也たちが並べてきた法律用語よりも重かった

 

 信也はゆっくりと息を吐く

「そうだな、「制度」は人のためにある。「人を枠に押し込む」ためじゃない」

 そして彼は言う

「何でもいい、草案を全てまとめろ。反対派も含めて全学園代表会議にかける。それでいいな?」

 信也がそう言うと

「はい!」

 と満場一致の理解を得る

 

窓の外では、復興工事のために重機が動いている

そして彼らもまた、話し合って「国家の形」を作る

 

 

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