元自衛隊員、学園都市で教師になる 〜今を生きる者のアリア編 作:風間しんや
第六話
キヴォトス 大平洋側に面したある港湾
霧の濃い朝方、先生はその港湾で何かを待っていた
その彼の後方には防護服やガスマスクなどを着ている救護騎士団、救急医学部が待機していた
そしてその周りをアリウス分校の生徒が厳重に守っていた
先生のそばで待機していたサオリは尋ねる
「先生……本当に私達で良かったのか?私達よりもヴァルキューレの方が」
「そうだね、確かにこういうのはヴァルキューレの仕事だけど……今回の物は本当に隠して運ばなきゃいけないからヴァルキューレのような少し目立つのは避けたいんだ」
と先生は言う
それにサオリは「なるほど」と言う
すると先生は静かに言う
「来たな……」
先生がそう言うとその濃い霧の中から輸送艦が一隻進んでくる
輸送艦「にほんばれ」の停泊後、出てきたメンバーに先生は敬礼する
「任務ご苦労!」
彼はそう言うとその出てきたメンバーもまた敬礼する
「はっ!」
そう答えたのは先生から特例を受けて来た、彼の部下白石達だった
「来てすぐ悪いが荷下ろしにかかってくれ、今回は少し急用なんでな」
彼は腕を下ろしながら言う
「了解!」
彼等はそう答えすぐさま運んできたものの荷下ろしに掛かる
次々と降ろされるものを見ていた先生、すると
「隊長」
と声がかかる、振り返るとそこには榊 原がいた
「榊原か、どうした?」
と先生は尋ねると
「今回、私もよろしいですか」
と彼女は尋ねる
彼女――榊原は先生の指揮する特別行動小隊(別名信也小隊)で薬品、薬剤に関しての知識に長けており、医療関係の仕事では引っ張りだこである
「やってもいいが……これまでよりも難易度の高いオペレーションになるぞ」
彼はそう告げる
「問題ありません、私はその覚悟も決めてここに来ました」
彼女はそう答える、それは決意に満ちた目だった
「……分かった、頼むぞ」
「はっ!」
そして、輸送艦は港を離れる、キヴォトスに残るのは榊原と他数名の隊員、それ以外はもしまた必要なものを持ってくる場合になったときのために日本へと帰還していった
その帰りは何事もなく薬品を運び込む場所まで行き無事に準備は終わるのだった
数時間後
「では今回のオペレーションのプランを話します」
榊原は救急医学部、救護騎士団の前に立ちプランを説明しだす
「まず、様々な組み合わせの薬剤を試作、それを対象のDNAに試し、効果のあるものを選出していきます」
「そしてその次にその効果のあったものをより実用性、効力の強化に充てていきます」
「おそらくそれが効果てきめんになるのには幾度もの試作が必要になってくると思います、しかし、それによって得られる結果は必ず人命を救うことに繋がります、諦めず必ずこのオペレーションを成功させましょう」
榊原はそう告げるとセリナ達は「はい!」と答える
「では、始めましょう」
そこからは榊原の指示で彼女達は動く
「人数を二十人ずつに振り分けそれぞれ班を編成します一番目から10番目まで編成された班は対象のDNAの解析、それ以降は各班それぞれ5種類ほどの薬剤を生成してもらいます」
榊原はそう言うと「了解!」と応えすぐさま班が編成される
救護騎士団、救急医学部、その他有志で集った医学関係に精通した生徒などで編成されその規模はとても大きかった
それ以外は先生の指揮で動く
「機材搬入はB口から、組み立て班は各員持ち場に!機材の取り扱い、組み立てはエンジニア部の指示を聞いて行うように!」
先生は大きな声で空間で作業をする生徒と隊員へ指示を出す
彼等がいるのはミレニアムの中にある使われてない施設であり、エンジニア部などが出入りしやすいところに位置している
キヴォトス最高の技術の宝庫だからか人や物資が集まりやすいためここになっている
眼下では生徒や隊員が走りアマリア達の調整施設が整備されていく
「溶接作業は隊員に!」
「各作業に隊員2名は必ず付けよ!」
と隊員達が最も声を出して作業を行っている
一部の生徒はそんな自衛隊の姿に少し驚きつつも作業を行う
「ありがとうございます、先生」
とユウカが歩いて先生の元へ来る
「動員できる生徒は全員出したんですが、やはり人手が足りなくて」
とユウカは申し訳なさそうに言う
「いや……これで良い、私も彼らも」
と先生は言う
それにユウカは首を傾げる
「私もだが、その私の部下もまた同じ志だから、こうして人、特に子供の役に立てるのが一番気持ちがいいんだ」
と先生は言う
ユウカはそう言われ下を見てみると確かに隊員の表情はにこやかだ、作業や緊急時などはよく緊張した顔になる先生だが、隊員達は生徒が尋ねてきたときはにこやかな顔でまるで子供が道を聞いてきたときのようなそんな対応をしているからだ
作業が終わる頃には、ミレニアムの外はすでに夜だった。
榊原たちが残業を続ける中、先生はふとアマリアたちの病室を訪れた。
静かな機械音だけが響く中、彼女たちは眠っている。
先生はベッドのそばに立ち、小さく呟いた。
「あと少しで……必ず、助ける」
その声に応えるように、アマリアの指が微かに動いた。
それが夢か、意識の反応かは誰にもわからなかった。
「……あとは、時間との勝負だな」
静かな独り言のあと、彼は病室を去った。