ソリテールの東京散策日記♪   作:小松将夫

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ソリテール東京散策日記♪

胸に大穴が開いた。

魔力探知範囲外からの長距離のゾルトラーク。

 

「ふふっ」

 

命乞いはと聞かれて、泣き叫んで助けてもらう予定だったのに、何故かしら、まったくそんな気分にならないのよね。むしろ、清々しい負かされ方をしたのは何故かしら。

さてこれから私は死ぬのだけれど、どこにいくのか、消えてなくなるのか。

ずいぶん長く生きた気がするけれど、やはりほんのちょっと死ぬのはちょっと怖いわね。

でも少しわくわくする。

フリーレンがゾルトラークを私に向かって放つのが見える。

私はただ見ているだけしかできなかった。

 

清涼とした風が頬を撫でるのに気づいた。

何か、ほっぺたに花弁がついている。

私はゆっくりと目をあけた。

 

見知らぬ石畳の大地。

固い。足場を魔法でトレースする。

うっすらとした石畳ではなく、深く掘り下げた地面に溶かした石を被せてる。

どんな製法でこんな手間のあるものを作ろうと思ったのかは分からないけれど、なかなか文明の進んだ場所にきたようね。

私はいったいどんな姿をしているのかしら。

そう思って角のある場所を探ってみた。

そこには確かに角があって、自分の顔を両手で触ってみると、何時もの顔があった。

 

もう一度、周辺をみわたしてみる。

なんだかとても広い空間。

空がなんだか高い位置にある。

天気は快晴、本当にどこを見渡しても雲ひとつなかった。

 

人間がまばらだが歩いている。

ほっぺたにピンク色の花弁がついている。

周囲にもそれらしい木に花が咲いていた。

この土地独特の植生だ。

石の粒で固めた土地に所々、土をかけて木を植えている。

なんだろう。魔法を通じて土地を見ると、とても、ちぐはぐなのに、魔法を抜きで見ると、とても良い庭に見える。

 

遠くで子供たちがはしゃぎながら走りまわる声が聞こえる。

中年の人間の女たちの話し声がきこえてくる。

 

わかることは、どうやら私は間違って人間の天国に来てしまったらしい。

通り過ぎる人間の顔をよく観察する。

すると向こうもこちらをチラリと観察してくる人間がいた。

その顔には、薄っすらと好意が見てとれる。

人間を騙すために都合のいい顔だから、こういった視線は慣れている。

ただ、ここの人間たちはそれなりに顔立ちがいい。

堀が浅いのだが、何というか妙な凛々しさがある。

あと女の化粧は実に巧妙だった。

もう少しここで人間を観察してみよう、暖かい風が心地よいから。

 

遠くで大きな箱が動いているのが見える。

その中で人間が箱を操作している。

魔法で解析をかけてみたら、馬車とは比べものにならないくらい複雑な作りをした箱だった。

ここは一体なんなのかしら。

とても大きな庭のようにもみえる。

お城?にしては高い壁がない。

あぁ、きっと人間の天国だから外敵がいないんだ。堀はきっと装飾品。その辺に植えられているのは、とある地方でも見たことがある街路樹と呼ばれる景観保管のための木々。

 

ここにあるのはそのくらい。

びっくりするほど物がない。

 

ゆっくりと固められた砂粒の上に立つ。

後ろには高い壁のように建っている建造物が何本もみえた。

遺跡ではなくとても機能的で、一つ一つに解析をかけてみると大勢の人間がまるで蟻塚みたいに入っている。

大樹よりずっと背の高いそれらは太い鉄の柱が何本も支えて出来ていた。

 

目の前をいくつもの人間が鉄の塊に乗って運転をしている。

数人の人間が縞模様の白線の前で止まっている。私の予測が正しければ彼らは鉄の箱が通っている道を横断したいのだとおもう。まるで、羊の大群が目の前を通り過ぎるときに黙って通り過ぎるのを眺めている人間たちの姿が私の瞼の裏でダブって見えた。

 

私の目の前で赤色だった魔法の光が緑色にかわる。その瞬間、鉄の箱たちは止まり、逆に止まっていた時間が動き出すように人間たちは鉄の箱が横に走っていた通路を縦に歩きはじめる。私はずっとそれを観察した。やがて魔法の緑色の光が点滅して再び赤色になった。すると今度は横に設置されていた3色の魔法の色が緑になる。

なるほど、赤になると止まりなさい。青になると通行許可、点滅は赤色に変わる合図。

人間たちは規則正しくこのルールを守っている。守らなかったらどうなるか、鉄の箱とぶつかって死にたくはないでしょう。速度はそれほど出ていないように見えるけど、鉄の箱と衝突した人間はただでは済まないことは、このルールをきちんと守っている人間たちをみれば明白だ。

私もまねしてみよう。おそらく時間が経てば再び緑色の魔法の光が点灯するはずだ。

少し時間が立つと私の周りに人間たちが集まりはじめた。

恐らく一緒に、この横に敷かれた白線の上を渡りたいのだろう。

目の前の魔法の色が緑に変わる。周囲の人間が一歩踏み出した後に、私もそれに続いて通りを横断した。

もしここで私が赤になっても立ち止まったらどうなるんだろうと思いながらも、直感がそれはやめておいたほうがいいと告げる。

人間と一緒に通路を横断し終えて振り返ると、再び魔法が赤になった。

私と横断し終えた彼らは、どこか一か所に向かおうとしている。

不思議とついて来いといわれるような気がして、私は彼らと同じ方向へ着いていった。

 

 

彼らについていくとオレンジ色の大きな建物に吸い込まれるように入っていった。

私はそのオレンジ色の建物を眺める。他にもその建物をながめている人間が何人かいて、手に細長いタロットカードのようなものを持って何か操作していた。あれは、多分、その場面を記録して記憶する魔法の媒体かな。人間の天国には面白いものがあるのね。しかもそのカードに耳を当てて喋っている人間がいる。その喋っているカードをよく聞いてみると向こう側から声がきこえてくる。なるほど、一種の通信魔法の道具なのね。

ソレが分かったところで私もほかの人間と同じようにオレンジ色の建物に入っていく。

 

 

中は広い空洞になっていて、それでいて所々に装飾が施されていた。誰かの居城かしら?

細い通路が何本かあり、ひとつはゲートがついている。

そのゲートを人間たちは先ほどのカードをかざしたり、更に薄いカードをかざして通過していた。

何が驚きかといわれれば、かざしているものがそれぞれ異なるのにゲートを通過できているということだ。

多分内蔵されている識別魔法の系統が同じだから形状が異なってもゲートが読み取ることができるのだろう。

私もアレらが欲しいのだけれど、どうやったら手にはいるのかしら?

とりあえずあのゲートを観察してみましょう。それから私は30分ほどずっとゲートを観察した。

中には音がなって通れなくなる人間がたまにいたりして、その時にゲートから「ザンガクブソクです」と音声が流れ出た。

 

ずいぶんと親切な魔法ね。それと、残額不足ということは、あの門は通行料を徴収するようにできてるんだわ。

 

そうなると、どうしたものかしら。残額というからにはお金が必要なのだけれど、残念ながら私にはこの世界の通貨を持っていない。では、一気に飛び越えてしまうという方法は、、、

ダメね、監視がいるもの。どうしようかしら。

そんなことを思っていると あの、 と声をかけられた。

 

「もしかして財布をなくしましたか?」

 

そういわれたので振り返ってみると、人間の男がひとり、困っていると勘違いした私に話しかけてきた。こういうことはたまにある。人間を欺くためにつくられた私の顔は、こういったものを惹きつけやすいのだ。とりあえず話を合わせてみようかしら。

 

「えぇ、実は財布をどこかに落としてしまって、どうしたらいいか」

 

「じゃあ、駅員さんに聞いてみましょう」

 

そういわれるがままに私はエキインという、この施設の係の者の場所まで案内された。ソリテールです と名乗ったが勿論私の荷物など出てくるはずもなかった。

 

「ちょっとこっちに来てもらってもいいですか?」

 

そういって何かの装置のまえにつれていかれ、紙切れを渡された。その紙切れの精巧さといったら息をのむほどだ。私は人間の男に指示されるまま紙を装置に通した。そして彼の言うとおりに画面に表示されたパネルを押す。

すると、人間たちがゲートを通るときに使っているカードが一枚出てきた。

 

「それを使えばある程度はどうにかなりますんで、それじゃ」

 

そう言ってゲートのほうに向かう男の服の袖を私は強く引っ張った。

「あの?」と困惑する男。

私はこの人物を頼りにしなければならないと思った。

 

「お願いがあるの、私、この土地にさっきついたばかりでよく分からなくて、だから貴方にこの土地のことを教えてほしいの」

 

自慢ではないが上目づかいでこういったお願いをすると、大抵の男は断れない。

男は困惑しながらも「分かりました」と応じてくれた。

 

「それで、どこか行きたい場所はありますか?」

 

「行きたい場所?あなたに任せるわ」

 

私が彼の提案に対してそういうと、彼は更に困惑した様子になった。

そういえば出会ったのなら挨拶するのが人間社会の基本だろう。

 

「さっきも言ったけど私の名前はソリテール、貴方は?」

 

「自分ですか?黒淵孝高(くろぶちよしたか)って言います」

 

クロブチヨシタカ、多分、クロブチって呼ぶのが筋かしら。

 

「じゃあクロブチに任せるわ」

 

「いえ、任せるっていわれても・・・そうですね、とりあえずソリテールさんは食事は済ませましたか?」

 

「いいえ、まだだけれど」

 

「ソリテールさんってコーヒー大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よ。飲んだことはあるわ」

 

「わかりました。じゃ、スタバで」

 

そういわれてオレンジ色の建物を一度でて、先ほどの公園の近くまで足を運んだ。

公園の中にあるコーヒーショップみたいだ。

この世界のコーヒーはどんな味がするのだろうか、私はそれが楽しみだった。

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