ソリテールの東京散策日記♪   作:小松将夫

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スタバ

私はクロブチという人間の男とスターバックスというコーヒーショップに入店した。

 

「ソリテールさん、スタバは初めてですか?」

 

「えぇ、お洒落なコーヒーショップね」

 

少し列ができていて徐々に私たちの順番が回ってくる。

商品を受け取った人間たちは笑顔で自由に空いている席についていった。

 

「ご注文をお伺いします」

 

店員がこちらに聞いてくる。

 

「グランデチョコレートチップエクストラコーヒーノンファットミルクキャラメルフラペチーノウィズチョコレートソースとグランデバニラノンファットアドリストレットショットノンソースアドチョコレートチップエクストラパウダーエクストラホイップ抹茶クリームフラペチーノをお願いします」

 

「えっ?」

 

聞き間違いかしら?今、呪文の高速詠唱を聞いた気がするのだけれど、待って、前の人間は普通に店員にトッピングを聞いていなかったかしら?クロブチヨシタカは魔法使いだったの?

 

そうして何事もなかったかのように注文?された商品が私とクロブチに手渡された。

なるほど、これがグランデチョコレート、いわゆるチョコぱふぇね。飲み物というよりは食べ物かしら。クロブチが注文しなれているってことはここの常連なのね。

 

「あぁ、先に聞いておかなかった自分が悪いんだけど、ソリテールさん甘いもの大丈夫?」

 

「えぇ、好きなほうだから心配しないで」

 

窓際の席について向かい合って二人でパフェをたべる。まるで人間の男女の恋人のよう。甘いチョコレート、その下には少し苦い、でも甘いコーヒーが。

 

「良かった。甘いもの苦手だったらどうしようかと思ったけど、大丈夫そうですね」

 

「そんなに心配だったの?」

 

「何か、失礼な言い方ですけど、ソリテールさんってどこか肉食的な感じがしたので」

 

「ふふっ」

 

随分と察しのいいわね。どこか抜けている感じのする人間だと思ったのだけれど、さっきの注文といい、私を見る目といい、鋭い所があるわ、クロブチは。なんというか妙な魅力があって、何故だか少し魔王様を思い浮かべるわ。優しいところとか妙に強引なところとか。

甘さとちょっとした苦味って、どうしてこうも高揚感が沸いてくるのかしら。人間の食性について前から甘いものに関しては疑問に思うところが多々あったきがする。大して栄養価が高いわけではないのにやたら太る食べ物をどうして食べようとするのか。だけど今日分かったわ。これほどの高揚感を味わえるなら体に悪くても食べちゃうんじゃないかしら。

ふふっ、変ね。昔人間からビスケットを貰った時にはここまでの高揚感は得られなかったはずだけれど。

 

「そういえば気になったのだけれど、マッチャって何かしら?」

 

「抹茶ですか?ソリテールさんは海外の人なのでなじみがないと思いますが、日本の文化的な飲み物なんですよ」

 

「そうなんだ・・・少し、飲んでみてもいいかしら?」

 

そういうと、クロブチは急にむせ返った。

そして申し訳なさそうに手を前にして何かを訴えかけてくる。

最後にはその手を頭にあてて何か思い当たる節があったかのように呟いた。

 

「あの、新しいものを買ってきますね」

 

「いえ?私はあなたが飲んでいるその飲み物を少しだけ分けてほしいのだけれど、新しく買う必要なんてないわ。だってお金がもったいないじゃない」

 

私がそういうとクロブチは天井を少し見上げて、その後、何か意をけっしたように、ゆっくりと彼は抹茶フラペチーノを差し出した。

私は両手でグラスを受け取って彼が口につけたストローで抹茶フラペチーノを飲んだ。

 

なるほど、なんというか、コーヒーとはまた別の苦味ね。コーヒーがよどみのある苦味なら、抹茶は清涼感のある薄味な苦味。

この世界の人間はこういった味を楽しむのね。なんだか私の知っている世界とは随分と何からなにまで違うみたいだけど。それでも仕方がない。どこの誰の手違いかは知らないけれど、人間の天国へ連れてきてくれたのだから、それなりに楽しみましょう。

 

「ねぇクロブチ、私のフラペチーノチョコレート食べないの?」

 

「勘弁してください」

 

「あなたが紳士的な人でよかったわ」

 

なんてからかってみる。

彼は呆れたように私をみつめている。

そして私はその呆れた顔にゆっくりと抹茶フラペチーノを返した。

すると彼は余計にあきれた表情になったが、少し顔を赤くしながら私が口につけたストローで抹茶フラペチーノを飲んでいる。

私は今どんな顔をしているだろうか?なぜか満面の笑顔が魔法越しに見えた。

 

スターバックスを出て空を見上げると、まだ少し日は高い位置にあった。

 

「次はどこに連れていってくれるのかしら?」

 

私がそう聞くと彼は「どこか行きたい場所があったりしますか?」と質問を質問で返してきた。

 

「少し見晴らしがいいところがいいわ」

 

「だったら、あそこがいいな。無料だし、今日なら空いてるだろうし。少し並ぶかもだけど」

 

「どこかしら?」

 

「少し高い場所です」

 

彼がそう言って歩き出したので、私も後ろをついていく。

私たちは再びオレンジ色の建物に向かって歩き出した。

オレンジ色の建物の名前はトウキョウエキというらしい。

東京駅に入ってあの通路に差し掛かる。

彼は懐からカードを一枚取り出して カイサツ に触れた。軽やかな音とともにゲートを通過する。

私も彼に習って彼からもらったカードで改札を通る。ピピっと音がして私もゲートを通過することができた。

クロブチと一緒にデンシャに乗る。中には人間がたくさんいて空いているせきは一つしかなかった。

 

どうぞ、といって空いている一つの席を進められる。

私はありがとう といって緑色のシートにすわった。

外の景色を見ると鉄の柱でできた建物ばかりだけど、太陽光がガラスを反射して街全体が明るくなっているのは、なんだか少し綺麗におもえた。

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