透き通る世界の闇医者は人の呪い(現在 改訂の可能性あり)   作:宙は空である

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天敵

教室を出てから、しばらく歩いた。

だが、人の気配は一切ない。

 

まあ、そりゃそうか。

こんな廃墟に好き好んで来るやつなんて、そうそういない。

 

仮に人がいたとしても、相手が呪術師でもない限り何も起きることはない。

俺は――呪霊だ。

一般人には見えない存在。

 

……つまり理論上は、女の子に対してあんなことやそんなことを、

気づかれずにできる存在とも言えるわけで――

 

「……やらないけどな」

 

自分で考えて、自分で呆れながら、廃墟を抜ける。

 

空気が変わった。

 

崩れた校舎の外に広がっていたのは、

西洋風の建物が連なる街並みだった。

それに薬莢がそこら中に散らばっていた。

 

「……ここ、日本だよな?」

 

呪術廻戦の舞台は日本だった。だから、ここも日本だろうと思っていたが、どう見ても、俺の知っている日本じゃない。これじゃ、前世で培った土地勘が使えない。

思わず天を仰ぐ。

 

上を向いた視界に映ったのは透き通る空。

そして、その中央に浮かぶ巨大な光輪。

 

「……嘘だろ」

 

前世ではかなりの数のゲームをしていた俺は、

この空は見覚えのあるものだった。

 

「……ここ、ブルアカじゃないか」

 

ブルーアーカイブ。

 

正直、前世の俺は友達に勧められて、少しプレイした程度だが、友達曰く。

 

表向きは、少女たちが透き通った青春を送る物語。

だが実態は、身売り、政争、果ては生贄。

「青春どこ行った?」と言いたくなる出来事が平然と起きる世界らしい。

 

その友達はハッピーエンドが好きだったため、「何が気に入ったの?」と聞いた。確か友達は「どんな危機的状況でも先生と生徒たちが解決していくのがいいんだよ」と言っていた。それに俺は「なるほど」と納得したんだっけ。

 

そんなことは今はどうでもいい。

 

問題は__俺が、今、その世界にいること。

 

友達が言っていたが、ブルアカ詰みポイントが多すぎるらしい。たしか……

 

正規の世界線を引けなければ詰み。

正規でも、先生が生徒の足をなめなければ詰み。

 

思い出してみると詰みポイントが多すぎるな。友達はハッピーエンドになるといっていたが、良くてだれかとの死別を経験するビターエンドにしか行きつかないだろ…

だが、今の俺の体は、真人と同じものだ。つまり、あの某メロンパンという大きなデメリットが存在しないこの世界なら、完全無欠の最強術式、無為転変を持っている。俺が先生のそばにいて危なくなったらその原因を無為転変すれば、万事解決だ。

 

「とりあえず、先生だね」

 

確か先生は連邦生徒会所属だった。そして、ブルアカのプロローグからサンクトゥムタワーと連邦生徒会は近い立地にあることが分かる。好都合なことにここから天に伸びる巨大な塔は見えている。

 

「そういえば連邦生徒会にもネームド生徒はいたよな」

 

アオイやモモカ、それにリンちゃんもいたはずだ。

 

「せっかくブルアカに来たんだ。一度は見とかないといけないね」

 

俺は基本視認されないから、ネームド生徒とはおしゃべりできないのは残念だけど、実際にこの目で見れるだけでも僥倖だろう。

 

「よし!それじゃ、しゅっぱ~つ!」

 

そういって俺はサンクトゥムタワーを目印に歩き始めた。

 

 

_______

_____

___

 

 

 

 

しばらく歩いたところでようやく第一村人を発見した。そいつは模範的なスケバン生徒の風貌をしていた。道のど真ん中で陣取り、まるで獲物が歩いて来るのを待っている様子だ。

おそらくカツアゲ対象を待っているのだろう。

まぁ、俺は呪霊、一般人には視認できない。こいつがカツアゲしようと道のど真ん中にいようと関係のないことだ。

そう思い、スケバンの横を通り過ぎようとしたとき、

 

「おい、そこの兄ちゃん。ちょっと止まってくれや」

 

どこかの運のない奴が獲物となってしまったらしい。まあ、俺は今、呪霊だし、何もできることはおそらくない。かわいそうなカツアゲ被害者予備軍にはおとなしく被害者になってもらおう。

そして俺は再び歩き出したそのとき、

 

「おい!無視してんじゃねぇよ!そこのツギハギ野郎」

 

「え?もしかして俺?」

 

「そうだよ。お前以外だれがいんだよ」

 

「……キッショ。なんで見えてんだよ」

 

呪霊なのに、普通に視認されている。

 

ネームド生徒と話せないのは残念だと思っていたけど、

カツアゲされそうになってまで話したいかと言われると、話は別だ。普通に気分悪いし…

 

「あぁん? 何ぼやいてんだよ」

 

「いや、こっちの話。気にしないで」

 

「ムカつくが……まあいい。

兄ちゃん、金目の物、置いてってくれや」

 

はぁ……やっぱりカツアゲか。

 

「見ての通り、何も持ってないよ。

よそ当たってくれ」

 

「いいや、何か持ってるだろ!」

 

次の瞬間、彼女は躊躇なく引き金を引いた。

 

飛んできた弾丸は、明らかに異質だった。

 

本能が激しく警鐘を鳴らす。

 

「――まずい!」

 

反射的に地面を転がり、遮蔽に飛び込む。

 

「そういえば、生徒は神秘とかいう謎パワーを持ってたっけ」

 

でも、今の銃弾は急所に喰らえば死ぬという予感があった。

 

「もしかして神秘は正のエネルギーなのか?」

 

もしそうなら、最悪だ。

 

真人の身体は、魂を知覚しているものの攻撃以外ほぼきかない。

だが、この世界の生徒は、例外なく神秘をまとっている。

 

正のエネルギーは、呪霊にとって致命毒。

 

――“圧倒的アドバンテージ”は、完全に潰されたかもしれない。

 

「魂の核に当たったら即死とか、

ハードモードすぎるだろ……!」

 

文句とは裏腹に、口角が上がる。

 

……ああ。

やっぱり、こういう状況は嫌いじゃない。

 

まだ神秘イコール正のエネルギーと決まったわけじゃないが、弾丸には、当たらないほうがいいだろう。

 

「まずは、隙を作るか」

 

俺は地面の砂を掴み、口に放り込んだ。

 

真人になってから、

まだ一度も魂を弄っていない。

 

――でも、できるよな?

 

魂を、粘土みたいに動かすイメージ。

この場面で、最も効果的な形。

 

次の瞬間、身体が膨張し、

内包した空気を凄まじい勢いで吐き出した。

 

爆発的な砂煙が、街道を覆う。

 

「――っ!?」

 

「ダメだろ。戦闘中に敵から目を離すなんて」

 

スケバン生徒の背後から声。

 

「無為転変」

 

その瞬間、スケバン生徒の意識は闇に落ちた。

 

無為転変を使い、気絶を強制させたスケバン生徒を見下ろし、俺は掌に視線を落とす。

 

「……やっぱり、正のエネルギーだよな」

 

無為転変を行う際に触れた部分の皮膚は、ひどくただれていた。

 

生徒は神秘をまとっている。

つまり、俺にとっては触れるだけで毒になる。

 

「これなら、一般人全員虎杖の方がマシだな……」

 

この世界は、天敵だらけ。

正直、先生の安否がどうこう言ってられる場合ではない気がする。このままじゃ安全に生活することすらできない。

 

「……いつか、解決しないとな。もちろん、倫理的な方法で」

 

ふと、疑問が浮かぶ。

 

「にしても……なんで俺、生まれたんだ?」

 

目の前のスケバン生徒からは神秘は漏れているが、

呪力はほとんど感じられない。

 

――長年、微弱な呪力が集積した結果か。

 

それが一番、あり得そうだった。

 

「他にも呪霊がいれば、

もう少し楽だったんだけどな……」

 

主に、身代わりや実験体として。

 

「……まあ、仕方ないか!」

 

そう言って歩き出す。

日は落ちかけているが、連邦生徒会は超ブラックだ。

どうせ夜でも開いているだろう。

 

そんな、根拠のない楽観を抱きながら。




本小説での呪霊は正のエネルギーが当たった箇所は消し飛ぶ、という設定で進めていきます。
本文中で、無為転変の使用の際に生徒に触れた主人公の手がただれていたのは、生徒が纏っている神秘に触れたためです。
早速の独自設定・独自解釈となり申し訳ありません。
今後もこのようなことが多々あると思いますので、温かい目で見てもらえると幸いです。

ちなみに主人公の友達(前世)の推しはアズサです。

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  • そんなもん書くなら本編かけ
  • 評価乞食しないなら書いて欲しい
  • どちらもありうる…そんだけだ
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