透き通る世界の闇医者は人の呪い(現在 改訂の可能性あり)   作:宙は空である

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評価、お気に入り登録、感想ありがとうございます。

前話での「削れた魂」という描写ミスについてのご指摘をいただいたので、「消失した魂」に表現を修正しました。

この小説では
呪霊にとって反転術式は致命的な特攻であることから、
真人にも何らかの深刻な影響が及ぶだろうと考え、
本作では「正のエネルギーに触れた部分の魂は消失する」という解釈を採用しています。

これは作者個人の解釈であるため、違和感を持つ方もいると思いますが、温かい目で見てもらえると嬉しいです。

これからも独自解釈が増えていくと思いますが、何卒よろしくお願いします。


ちなみに今回少し短いです。


起点

明かりのつかない電球、物音一つ聞こえない空間。

少し不気味な人形、薄暗い診療所。

 

「あー、暇だなぁ」

 

そんなところに俺はいた。

 

俺が闇医者を開業してから、二日ほど経った。

 

「なんか人来ないんだよね」

 

使われていないベッドを眺めながら、ぼやく。

よく考えてみれば当然だ。

空き家に突然できた闇医者なんて、誰も認知できない。

それに医者にお世話になるなら、いつも利用している医者にお世話になるという人が多いだろう。

 

「今考えれば、当たり前か」

 

今、俺がしないといけないことは俺がすべてを治せる名医*1だということを、実績込みで宣伝していくことだろう。

道端に倒れている怪我人を片っ端から治して、俺の存在を知らしめれば、患者も来るようになるだろう。

 

「よし!じゃあいこうか」

 

我ながらいい案を思いついたね。

 

そう思って、外に出ることにした。

 

言い方は分かんないけど、移動診断?ってやつだ。

 

診療所から外に出て歩き出そうとしたその時、一発の流れ弾が俺に向かって飛んできた。

 

「うわっ、危なっ!」

 

弾が当たりそうな部位を、咄嗟に変形させて避ける。こんなところで無駄に魂を消滅させたくない。回復にも時間かかるし…

 

「もうさ……弾丸一発で死ぬ可能性があるやつもいるんだから、むやみやたらに撃つの、やめてほしいね」

 

周囲からは怒鳴り声と発砲音が鳴り止まない。

この街、ブラックマーケットの治安は、底を突いている。

 

その辺を歩くだけで命の危険を感じるのも十分不便だし、住みにくい。

 

そんなことを思いながら、気の向くままに歩きだす。目的はもちろん怪我人生徒の捜索。

俺のことが見えない一般人を治しても仕方ないからね。

 

「ん?」

 

すると向こう側から生徒と大人が揉めている声が聞こえてくる。

 

「お、おいっ!なんだ。この報酬は話と違うじゃないか…!」

 

「いえ、間違ってませんよ。移動費や装備の費用を差し引いたら、

報酬の1割程度しか残らなかっただけです。」

 

「私も後の用事がありますので、これで失礼します。次も、よろしくお願いしますね」

 

「クソッ……」

 

……そういえばこの街にはもう一つ、キショいところがあった。

それは自分本位な大人たちが、誰かを蹴落とす光景を

公然と見せつけてくるところだ。

 

真人の体になってから、俺は人の魂を知覚できるようになった。

 

喜んでいる魂は、軽やかに弾み。

怒っている魂は、トゲトゲしく威嚇する。

 

じゃあ、この街の連中が誰かを蹴落とす時は?

 

――豚だ。

 

醜く、餌を求めて這いずり回る、

生理的に受け付けない動き。

 

せめて、そういうことは見えないところでやってくれ。

そんなマナーすら存在しないのが、ブラックマーケットだ。

 

「ま、それと同時に空気が一番いいのもここなんだけどねー。今のところは」

 

そんな無法地帯だからこそ人の憎悪がたまる。

だが、人間が人間を憎むときの感情は基本醜いし、背景なんて碌なものはない。

ハァ……ほんとに難儀な体になったものだ。

 

しばらくブラックマーケットを、気の向くままに歩き回った。

だが、宣伝になりそうな怪我人はいない。

 

この世界の生徒はやたら丈夫だ。

怪我人自体が少ない。

逆にこの争いの絶えないキヴォトスの一般人はかなりの頻度で怪我をする。

だが、一般人からは、俺は見えない。

宣伝になりそうな怪我人からは除外される。

 

まさか、ここでも呪霊であることが足を引っ張るとは。

マジで不便だなこの体…

 

「せめて、生徒の助手がいれば話が変わるんだけどなぁ」

 

助手がいれば、一般人の治療ができる。あぁ、先ほどまで無意味だった六人ほどの怪我人たちが有意義な宣伝道具に……

 

そんなことを考えながら歩いていた、その時。

 

「た、助けて!」

 

路地裏から、生徒が飛び出してきた。

 

反射的に身を引く。

 

「え? ちょっ――!?」

 

俺が進行方向にいたせいで、彼女は速度を殺しきれず、そのまま転んだ。

 

危なかった。あのまま恋愛漫画のワンシーンみたいになった瞬間、俺は消滅していた。

 

転んだ生徒がこちらを向く。

 

「な、なんで避けるんですか!?受け止めてくれてもいいじゃないですか!」

 

「だって、触れたくないし」

 

「ひどい!?」

 

そのやり取りの最中、路地裏から怒鳴り声が響く。

 

「おい! どこ行った!」

 

「さっき、この路地を抜けたぞ!」

 

「ひっ……」

 

生徒の魂が、怯えて縮こまるのが見えた。

 

「す、すみません……今、追われてて……。

何とか、助けてもらえませんか……?」

 

言い分は図々しい。でも、藁にもすがるって顔だ。

 

路地裏を覗くと、そこには――俺が嫌悪する、あの魂の形。

 

「……いいよ。あいつらが焦る様子、見たいし」

 

改造昆虫を十二体ほど取り出し、路地裏に放り込む。

燃費は最悪、使う魂の量も莫大。

でも、今はなれないといけない。

 

次の瞬間、それらは形を変え、壁となった。

壁がこちらに向かってきていた大人の行く手を阻む。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「壊れないぞ?!これっ!」

 

壁を叩く音がむなしく鳴り響く。

 

「えぇい!回り込め! 逃がすな!」

 

目の前の光景を見ていた生徒は

 

「え……な、なに、これ?」

 

ひどく困惑した様子だった。

 

「あはは。見た?アイツらの焦りっぷり」

 

前世からそうだったけど、やっぱり嫌いな奴らがうまくいってないところを見ると気分が良くなるよね。

 

「あ……はい……見ました」

 

「じゃ、俺はもう行くから。じゃあね」

 

そういって、俺は上機嫌に歩き出す。さっきまでの不快な思いが嘘のようだ。

 

「あっ……あのすみません。ありがとうございました」

 

「いいよ、いいよー」

 

この時の俺はまだ知らなかった。

 

まさか、あいつが俺に呪いをかけていくなんて。

*1
無為転変のおかげ






倭助「……作者」

作者「んー?」

倭助「お前は弱いから」

  「小説をかけ」

  「手の届く範囲でいい。書ける奴は、書いとけ」

  「駄文でも評価されなくても」

  「とにかくかいておけ」

  「お前は大勢の小説に囲まれて死ね」

  「俺みたいにはなるなよ」

作者「……倭助さん?」

倭助「…………」

作者「……評価、感想、お気に入り登録、お願いします……」

これやってみたかったんですよね

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