ダンジョンに炎柱がいるのは間違っているだろうか   作:kursk

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神会

神会。

オラリオに住まう神々が定期的に集まり、様々な事柄を議論する場だ。

ファミリア間の問題、街の治安、ダンジョンの状況。

そして、神々が特に楽しみにしているのが、冒険者たちのランクアップと、二つ名の決定だった。

 

数か月ぶりの会合には、多くの神々が広間に集まっていた。

「さて、本日最後の議題に移ろうか」

 

議長役を務めるのは、胡散臭い笑みを浮かべた美男子の神ヘルメスだった。

いつもの癖で、羽を指した帽子に触りながら、彼は大きく息を吸い込んだ。

 

「お待ちかね、ランクアップ報告だっ!! 各ファミリアの主神は報告を頼むよっ!」

 

神々が、順に報告を始めた。

名づけをめぐって、ネタに走る神々と眷属の名誉を守ろうとする主神の間で、阿鼻叫喚の騒ぎが繰り広げられる。神会の風物詩だった。

 

騒動がひと段落したところで、ヘルメスが問いかける。

 

「他に報告はあるかな?」

ざわめいた広間が、次第に静かになった。

もうこれで祭も終わりか――。

多くの神々が考え始めたタイミングで、アストレアは切り出した。

神々が飽きてからのほうが、無難な二つ名で手早くまとめられると判断してのことであった。

 

「私からもいいかしら」

凛とした声が、広間に響き渡った。

神々の視線が、声の主に集まる。

 

「アストレアだ」

「下界に降りていたのか。相変わらずの新妻感がたまらんな」

「ぜひ膝枕してほしいっ!!」

 

はやし立てる男神たちを無視して、アストレアは静かにつづけた。

 

「私のところの煉獄杏寿郎がレベル2に到達したわ」

 

アストレアの言葉に、広間がざわめいた。

「そういえば、眷属を一人作ったと噂で聞いたような?」

「レンゴク・杏寿郎……聞いたことはないな。どうせ大したことないんだろう」

 

神々が、囁き合う。

アストレア・ファミリアは、オラリオでは最小ファミリアの一つだ。団員は一人だけ。それも、つい最近できたばかりである。

神々が知らないのも無理はなかった。

 

そこに、像の仮面をかぶったインド風の男神が立ち上がって、大声で割って入った。

 

「ガネーシャ、超推薦!! 杏寿郎には、ガネーシャも多いに助けられた! ガネーシャの子どもが闇派閥にインファントドラゴンを擦り付けられたときに、討伐してくれたっ!!! ガネーシャ、超感激!!!!!」

 

ガネーシャはとても五月蠅い変神として有名だったが、同時に、彼の眷属たちは、オラリオの治安を守る最大手ファミリアの一つであった。

その発言は決して無視できるものではない。

 

「ふうん」

広間の一角で、赤い髪の女神が目を細めた。

ロキ。悪戯と策略を司る神。そして、オラリオ最強の一角を占めるロキ・ファミリアの主神。

神として司る特性――と主に女神としての身体的な貫禄の差――のために、実に冷ややかな態度であった。

 

「レベル2か。それで?」

ロキの声には、興味のかけらもなかった。レベル2など、珍しくもない。毎回、何人もの冒険者がレベル2に到達する。

その程度の有象無象など、相手にするまでもないと言わんばかりだった。

 

しかし、アストレアの次の言葉が、広間の空気を一変させた。

「彼がレベル2に到達するまでにかかった期間は、六ヶ月よ」

 

一瞬、広間が静まり返った。

そして、爆発するような喧噪が起きた。

 

「六ヶ月!?」

 

「嘘だろ!?」

 

「そんな馬鹿な!」

 

神々が、信じられないという顔でアストレアを見た。

レベル1からレベル2への到達。それは、冒険者にとって最初の、そして最も重要な壁だ。多くの冒険者が、この壁を越えられずに終わる。越えられたとしても、通常は二年はかかる。

 

六ヶ月。

それは、常識では考えられない速度だった。

 

「アストレア、それは本当なのかい?」

ヘルメスが、真剣な顔で尋ねた。

 

「ええ。本当よ」

アストレアは、真っすぐにヘルメスを見つめ返して答えた。

 

「彼がオラリオに来たのは、六ヶ月前。私の眷属になったのも、同じ時期。そして、先日、レベル2に到達した」

 

「偉業は?」

 

「インファントドラゴンの単独での討伐よ」

 

広間が、再びざわめいた。

 

「ガネーシャが言っていたやつか」

「レベル1で、単独で? バカな、あり得ない!」

 

インファントドラゴンは、上層の最深部に出現する強力なモンスターだ。中層で活動できるレベルのパーティでさえ苦戦する相手だ。

 

「ほんまかいな? うちらの神血かて、そこまで急な成長をもたらすもんやない。アストレア、何か他神に言えへんことやっとんちゃう?」

ロキが、身を乗り出した。

先ほどまでの退屈そうな表情は消え、目には猜疑の光が宿っている。

 

ざわめきが広がる。

ロキに賛同するような声も多い。

 

「そいつ、そもそもどんな奴なんや?」

アストレアは、杏寿郎について語った。

極東から来た少年であること。母の教えを胸に、弱き者を守ることを誓っていること。炎を纏って戦う、独特の剣術を使うこと。

そして、毎夜のように街を見回り、闇派閥の構成員から市民を守っていること。

 

「夜の守護者、か」

ヘルメスが、顎に手を当てた。

 

「最近、一部の区画で闇派閥の動きが少し鈍っているという報告がある。一人の少年がよく見回りをしているからだとも聞くが」

 

「ええ。彼は、ダンジョン探索だけでなく、街の治安維持にも尽力しているわ」

 

「ほう……」

神々の目に、いよいよ興味の色が浮かんだ。

記録を大幅に塗り替える六ヶ月でランクアップした少年。インファントドラゴンを単独で倒した猛者。そして、街の治安を守る正義の味方。

 

ヘルメスが、手を叩いた。

「じゃあ、彼の二つ名を決めようか」

 

「二つ名か……」

神々が、顎に手を当てた。

 

「炎を纏って戦うんやろ?」

ロキが、にやりと笑った。

 

「ほな、『燃えカス』とかどうや」

「却下ね」

アストレアが、即座に言った。

 

「えー、ええやん。インパクトあるやろ」

「論外よ」

「じゃあ、『火の玉少年』は?」

「却下」

「『焼き芋職人』」

「却下よ」

「『炎上系主人公』」

「ロキ、あなた本気で言ってるの?」

 

アストレアの声には、怒りが滲んでいた。

ロキは、げらげらと笑った。

 

「冗談や、冗談。怒んなや。これだから正義の神は堅苦しくてあかんわ」

 

「全く……」

アストレアは、溜息をついた。

神会での二つ名決定は、いつもこうだ。神々は、退屈しのぎにふざけた名前を提案する。冒険者にとっては一生ものの名前なのに、神々にとっては遊びの一つでしかない。

 

「『紅蓮の剣士』とかは?」

「ありきたりだな!」

「『極東の炎』」

「出身地を入れるのはなあ」

 

神々が、あれこれと意見を出し合う。しかし、どれも決め手に欠けた。

 

「ねえ」

フレイヤが、口を開いた。

広間が、静かになった。フレイヤが発言すると、神々は自然と耳を傾ける。彼女の言葉には、不思議な力があった。

 

「その子は、弱き者を守るために戦っているのでしょう?」

「ええ」

 

アストレアが、頷いた。

 

「そう」

フレイヤは、微笑んだ。

「良い子ね」

「……」

「だから」

 

フレイヤは、神々を見回した。

「良い二つ名を考えてあげましょう。彼にふさわしい名前を」

 

神々が、顔を見合わせた。

フレイヤがこう言うと、逆らう者はいない。彼女の言葉には、有無を言わせぬ力があった。

 

「そうだな……」

ヘルメスが、顎に手を当てた。

「炎を纏って戦う。弱き者を守る。正義のために剣を振るう。その全てを表す名前……」

 

「『正炎』はどうだ?」

ガネーシャが、大声で救いの手を差し伸べた。

 

「正義の眷属と炎! 合わせて、正炎!! うむ、ガネーシャみたいだっ!!」

「ガネーシャにしていは、悪くないな」

 

「『正炎』か」

ヘルメスが、その名を口にした。

 

「私も賛成だわ」

フレイヤが、微笑んだ。

 

「アストレア、どう?」

 

正炎。

杏寿郎の姿が、脳裏に浮かんだ。

毎日ダンジョンに潜り、毎夜街を見回り、弱き者のために戦い続ける少年。炎のような眼差しで、真っ直ぐに前を見つめる少年。

 

その名は、けれんみがなく、実に真っ当で、彼にふさわしかった。

「……良い名前だと思うわ」

アストレアは、笑みを浮かべた。

 

「彼の在り方を、よく表している」

「では、決定だな」

ヘルメスが、宣言した。

 

「アストレア・ファミリア所属、レンゴク・杏寿郎。二つ名は『正炎(イグニス・ユースティティアエ)』とする!」

 

 

 

神会が終わり、神々が帰参の途につき――。数刻したころ。

主神を象った巨像の本拠へと、ガネーシャと団長のシャクティは帰参した。

 

ファミリアの広間で、シャクティが一息ついていると。

「あ、お姉ちゃん! お帰り~!!」

 

シャクティと同じ青色の髪をボーイッシュにまとめた少女が、元気いっぱいに駆け寄ってきた。

アーディ・ヴァルマ――シャクティの年の離れた妹で、まだ11歳になったばかりの少女だった。

最近、ガネーシャの神血を授かりレベル1になったものの、本格的な冒険はまだこれから。

 

「アーディ、いつも言っているだろう。ファミリア内では団長と呼べ、と」

シャクティは頭が痛いという表情で注意した。

 

「はーい、分かったよ、お姉ちゃん!」

まったく分かっていないであろう、溌溂とした声。

 

「まったく……」

 

「それで、どうだったの? ガネーシャ様のお伴で神会に行ったんでしょ?」

 

「まあ、いつも通りだ」

 

シャクティは興味津々のアーディに、少し疲れたように応じた。

この暗黒の時代。都市の治安改善と警邏を担う『憲兵』の長として、シャクティの負担は限界に達しようとしていた。

 

「そっかぁ。明るい話はなかったの?」

 

姉の苦労を知ってか知らずか――否、知っているからこそ――アーディは良い話をせがむ。

 

「そうだな……。明るいと言えるか分からないが、新しくできたアストレア・ファミリアのレンゴクという者が、半年でランクアップしたらしい。今までの記録をぶっちぎりで破ったということで、神々が大いに沸いていた」

 

「半年で!? すごい、どんな人なんだろう。もしかして、始まりの英雄(アルゴノゥト)みたいな人なのかなぁ。いつか会ってみたい!」

 

アーディは青色の瞳を爛々と輝かせて、シャクティの話に食いついた。

 

「そうだな……。以前、うちのサーラたちが、十二階層で闇派閥の奸計に嵌められて、全滅しかけたことがあっただろう?」

 

「相手に調教師がいて、インファントドラゴンを怪物進呈されたっていうアレ?」

 

アーディは綺麗な形の眉をしかめた。

モンスターが好きで調教師の訓練もしている彼女にとって、冒険者を殺すために怪物進呈する闇派閥の調教師は許しがたい存在だった。

 

「そうだ。インファントドラゴンが混じったのは偶然らしいが。その窮地を救ってソロでインファントドラゴンを倒したのが、ランクアップの偉業だそうだ」

 

「ええええ! レベル1でそんなことができるの!?」

アーディは目を丸くして驚きの声をあげた。

 

「ふつうは無理だろうな。そして、だからこそ、『偉業』と認められたのだろう。サーラたちの件で少し話をしたが、性根が真っすぐで炎のような性格の少年だった」

シャクティはそのときの杏寿郎の姿を思い出した。

インファントドラゴンとの闘いで満身創痍だったとはいえ、それでも傷ついたサーラを見捨てずに連れ帰った正義の眷属。聞けば、道中も、かの女神の意志を体現したような振る舞いだったという。

 

「そういえば、その者は、一人で夜の見回りをしているらしい。さすがは正義の女神アストレア様の眷属といったところか。いずれ、巡回で協力することもあるかもしれないな」

 

「そうなるといいなあ! いっぱいお話をしたい」

期待に胸を躍らせながら、アーディが呟いた。

 

「そうだな」

シャクティは、本当にその通りだと思った。

今は暴れまわる闇派閥に対応しきれず、後手後手に回っている。

救えなかった命、消えてしまった笑顔、壊れた家屋。

あまりにも多くの犠牲が、彼らの手によってもたらされた。

他のファミリアも治安維持に協力してくれているとはいえ、純粋に手が足りない。

けれども――あの炎のような少年が成長すれば、頼れる仲間になるのではないか。

最大手ファミリアの一角を占めるガネーシャ・ファミリアの団長として、そう願わずにはいられなかった。

 

 

 

一方、そのころ。

ロキ・ファミリアの本拠「黄昏の館」では、幹部たちが集まっていた。

広い会議室の中央には、大きなテーブルが置かれている。その周囲には、帰ってきたばかりの主神を取り囲む三つの人影があった。

 

ロキが、どっこいせと声をあげながら、ソファーに身を投げ出した。

「今日の神会、面白い話があったで」

 

「アストレア・ファミリアの新人のことかい?」

フィンが、興味深そうに尋ねた。

「レンゴク・杏寿郎、ヒューマン、十五歳。半年前に、女神アストレアとともにオラリオにやってきて、わずか六か月でレベル2に到達。インファントドラゴンを単独討伐したと聞いている」

「知ってたんか」

「情報は、常に集めているからね」

 

フィンは、クールに微笑んだ。

 

「それに、彼の噂については、時折、耳にしていたよ。レベル1なのに、ただ一人で夜に見回りをしている者がいるとね」

「ほう」

ガレスが、腕を組んだ。

「それは、立派な心がけじゃのう。じゃが……レベル1だと、闇派閥の集団相手ではきついはずだが」

「それでも、襲われた商人や親子を守ったことが何度もあるという話だよ。きっと、かなり強いスキルか何かを持っているのだろうね」

 

「ふむ……」

 

リヴェリアが、顎に手を当てた。

「六ヶ月でレベル2。それは、確かに驚異的な速度だ。しかし、それだけでは、まだまだ闇派閥に対抗できるわけではなかろう。危ういな」

 

「そうやな」

ロキが、頷いた。

「レベル2なんて、闇派閥の幹部連中から見たら、まだまだひよっ子や。せやから、問題は、そいつがどこまで伸びるかやな」

 

「それについては」

フィンが、書類を取り出した。

「興味深いデータがある」

 

「なんや?」

 

「彼のステイタス。正確な数値はもちろん分からないが、ギルドで集めた記録から推測すると……」

 

フィンは、書類に目を落とした。

「彼は、何か特殊なスキルを持っている可能性がある。成長を加速させるような、レアスキルを」

 

「馬鹿な、そんなものがあるなどと聞いたことはない」

リヴェリアが愕然とした表情を浮かべる。

 

一方のロキは半信半疑に呟いた。

「さすがにそれはありえへん……と言いたいところなんやが。下界の神秘は超越存在にも測りかねるところがあるからな。まあ、そんなレアスキルがあるとして、アストレアのとこにおるんは気に食わんけど」

 

「アストレア・ファミリアは、正義を掲げるファミリアだよ」

フィンが、窘めるように言った。

「きっと彼も、闇派閥とは真っ向から対立するだろうね。それが正義の女神のありかただ。だとすれば、彼が成長すれば、闇派閥にとっては大きな脅威になるだろう」

 

「せやな」

ロキは、天井を見上げた。

 

フィンが続けた。

「状況を注視する価値はある。彼が順調に成長して、ファミリアの眷属が増えれば、いずれは我々とも協力関係を築くことになるかもしれない」

 

ロキは、頷いた。

 

「フィン、そいつの情報を集め続けてくれ。どんな奴か、なんでそんなに成長が早いのか、もっと詳しく知りたいんや」

「ああ、分かっているよ」

 

 

 

――その同じ頃、大手ファミリアで噂になっているともしらず、アストレアは宿に帰った。

その夜、杏寿郎は見回りを控えて、アストレアを待っていた。

アストレアの帰還を察するや、笑顔で出迎えた。

 

「お帰りなさい、アストレア様!」

 

「ただいま」

 

アストレアは部屋に入ると、杏寿郎の隣に座った。

 

「神会は、どうでしたか!?」

「あなたの二つ名が決まったわ」

 

「二つ名……!」

杏寿郎の目が、輝いた。

「それは目出度い。なんという名前ですか!」

 

「『正炎』よ」

「正炎……」

 

杏寿郎は、その名を噛みしめた。

正しい炎。

「良い名前だ……母上が聞いたら、きっと喜んでくれるでしょう」

 

「ええ、きっと」

アストレアは、微笑んだ。

「あなたの母上も、きっと誇りに思っているわ。こんなに立派な息子に育ったことを」

「……ありがとうございます。その名に恥じないよう、これからも努力を続けてまいります!」

 

杏寿郎は、深く頭を下げた。

 

「それで――これからはどうやっていくつもりかしら、杏寿郎?」

ひとしきり喜びを共有したあと、アストレアが問いかけた。

 

「ギルドによると、中層ではモンスターの襲撃が上層の比ではないらしく、ソロでの戦闘は自殺行為だそうです。パーティを組むことを強く推奨されました」

 

「そうね……。とはいえ、このご時世では、見知らぬ者とパーティを組むのは難しいでしょうね」

アストレアは手を顎に当てて、考え込むようにつぶやいた。

野良パーティに参加したはよいものの、闇派閥が紛れ込んでいて、パーティが壊滅したという話はよく耳にする。

自然と、冒険者はファミリア内や気心の知れた者同士で固まるようになり、野良のパーティ募集は怪しげなものばかりになっていた。

 

「はい。レベル2の身体に慣れる必要もありますので、しばらくは上層で調整しつつ、十三階層を軽くのぞいてみようと思います!」

 

「それが良いかもしれないわね。ただ――十三階層とはいえ、中層は中層。無茶はダメよ」

アストレアは軽く念を押した。

杏寿郎は放っておくと無茶をしすぎる傾向がある。

しかも、当人はそれが無茶だと気が付いていないのだ。

 

「もちろんです!」

杏寿郎はハキハキと返事をして、つづけた。

「そういえば、以前、十二階層で闇派閥に襲われていた冒険者ですが」

 

「ガネーシャの子だったかしら?」

アストレアは思い出すようにつぶやいた。

 

「はい。サーラというのですが、彼女がお礼をしたいと宿を訪ねてきました。私が夜の見回りをしているという話をしたら、ガネーシャ・ファミリアの警邏に同行してみないかと誘われました」

 

「そう……。街中での捜索や捕縛、尋問には、ダンジョンとは違った技術が必要よ、杏寿郎。ガネーシャの子どもたちは、その道に長けていると聞くわ。色々と学ぶ良い機会かもしれない」

アストレアは、これも杏寿郎の成長につながると感じた。

それに、こういう地道な努力を通じて、ガネーシャ・ファミリアや他のファミリアとのつながりもできるかもしれない。

それは、めぐりめぐって、彼自身の力となるだろう。

もう十分に速いスピードで成長しているのだ、これからは人との接し方を学んで、視野を広げてほしい。

――もちろん、ガネーシャのようになっては困るけど。

言葉に出さずに、そのように付け足した。

 

「はい、俺も常々そう感じていました! 何でも、ファミリアに入団したての若い子どもに手取り足取り教えるそうで、ついでにどうかということのようです」

杏寿郎は有難いという思いを隠そうともせずに、瞳を輝かせた。

 

主神とただ一人の眷属があれこれと相談しているうちに、夜が更けていった。




ここまでで、最初の区切りとしたいと思います。
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