オルクセン王国史異聞   作:chise1950

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・本作品は、「オルクセン王国史」の世界観や設定などをもとにした、二次創作です。
・オルクセン王国史本編から見て、さらにIF物的な展開です。
・「星歴800年」を開始時点としています(本編の60年前)
・原作1巻読了後推奨
(原作以前を舞台にしているため、本編のネタバレはないはずです。
 世界観と人物が把握できていればという程度)


オルクセン王国史異聞(4)

数日後。

私はゲオルクを呼んで、ここスコルにいる黒エルフの主だった者と話をした結果を伝えた。

「ゲオルク殿。私は貴方の話を信じることにした。機を見て貴国のグスタフ王と話をしたい。

それはそれとして、一族には触れを出す。シルヴァン川北岸に集結せよとな。オルクセンが当方に攻め込んでくることを「想定」して訓練を行う、と伝える。

これは幼な子を除き全員参加させる。村は全部で300ほどあるが、工夫して伝令を出すしかあるまい。とにかく北部から優先だ。」

「それは良いお考えですな。

オルクセンが攻めてくると言った方が皆さま真剣に対応されるかもしれませんが、そう指示するとその後が面倒になるやもしれません」

「そうだと私も思う。故に訓練だと伝える。

問題は子供だ。幼な子は、これも訓練だとしてスコルより北の者はまずスコルに保護者とともに集合させる。

スコル以南の者は、私と古い付き合いのヴァスリーの村に集合させる。

彼女のいるところはシルヴァン川から北に30キロ程度のところだ。何かあってもまだ何とかなるだろう。

スコルに集まる幼な子が400名ほど、ヴァスリーの村も同じぐらいだろう。しかしこれが時間がかかりそうだ。しかしやらねばならんだろう。」

「そのとおりかと思います。承知しました。

それでは馬車を置いていけるだけ置いておきますので、いざという時が来ましたらご使用ください。

足りぬかもしれませんが、ないよりはよいでしょう。」

「こちらにもないわけではないが、助かる。

その代わりと言っては何だが、ゲオルク殿にはこちらから添え役を付けよう。ともに南下の上ヴァスリーにも伝えてくれ。

そうだ、そういえば、往路は彼女のいる村には立ち寄らなかったのか?

彼女からは、魔術通信でファーレンス商会の商人が向かっているとだけ連絡が来たのだが…。」

「失礼しました。実は途中にそれなりの規模の村があることは存じておりましたが、村の方を驚かせてはまずいと思いまして、我々はそちらに対して通過するという連絡をしつつ、脇道を通って参りましたので、直接ご挨拶はしておらんのです。

「そうだったか。なぜ魔術通信でそんな連絡が来たのか、ようやくわかった」

「すべてこちらの方の手前勝手な判断によるものでございますので…」

「いや、いい。今日にでも使者は出す。

しかし実際にはどう動くか…牛や鶏の世話をしている者もいる。離れたくないと言う者もいるだろう。

まとまるかどうかはわからんが…。とにかく伝えるしかない。

また近年のことだが、我々は白銀樹より多くの若子を授かっている。故に戦えない、年少の者が多いのだ。彼らは大事に守らねばと思っている。

そのほかだが、南部の者には合わせて保存食を作れと指示を出す。

移動する後続の者のために必要となるかもしれない。それぐらいだ、今できることは。

何かあれば…ないことを私は願っているが…。

もし貴方に騙されたなら、笑い話にしてやってもよいが、ファーレンス商会に請求書を送るぞ。それでよいか」

「結構です。この度の話はあまりに信じがたい話であり、皆様が受け入れにくいことは承知しております。」

「いや、確かのあの白エルフの低俗新聞はなかなか効いたぞ。

私などばかばかしくて怒る気にもなれんが、心の底から憤慨している者もいる。族長に対する侮辱は、黒エルフ全体に対する屈辱であると。

しかし、その一方で、これもまた陰謀ではないかと思う者もいるのだ。

そうは言っても、日ごろから白エルフに反感を持っている者もいないわけでもない。

従軍経験がある者は、軍事行動中に嫌がらせを受けたという者もいるし、そうでなくても日常の生活で圧迫されていると感じている者もいるのも確かだしな」

「我がオルクセンでも、昔から続く黒エルフと白エルフの微妙な関係については存じております。

しかし、ご事情はわかります。今の状況でできることも限られるのは事実でしょう。わかりました。

では、私は族長閣下のご使者とともに戻ります。オルクセンへは私だけで帰還いたします。」

「貴方だけで戻るのか」

「はい。私は戻り、状況をオルクセンにて報告いたします。その上で王が皆と協議するでしょう。

また、フェルディナント中尉には、グスタフ王から改めて命が下されております。しばらくの間、連絡将校及び黒エルフの皆様の護衛の任に当たるようにとのことです。ですので、何かありましたら、フェルディナント中尉とヨハン少尉にお申し付けください。両名も任務を承知しております」

「わかった。必ず連絡する」

「族長閣下。一つよろしいでしょうか」

ゲオルクが低く強い声で言う。

「族長としての決断を、お間違えなきよう。」

私は黙って頷く。

「これは私個人の勝手な思いでございますが。

もし…我らが戦うとしても、正々堂々と、戦場で相まみえる方が余程、すっきり致します」

「その通りだ。しかし、あんな実直な軍人と、あんな美味な料理を作る軍人の軍とは、戦いたくないな。」

私は窓の外を見る。村の中にすっかり溶け込み、あれこれと村の用事をこなし始めているオークたちの姿が目に入る。その中には、あの中尉と、あの少尉の姿も混じっている。

「両名にはその族長閣下のお言葉を伝えておきます。きっと喜ぶことでしょう」

 

 

翌日、ゲオルクは帰還するためにスコルから去った。

私は彼に、グスタフ国王への返答をしたためて預けたほか、執務室に置いていた、白銀樹の苗木を植えた小さな鉢をいくつか、彼に託した。

「白銀樹は邪悪な環境では育たない。もしこれが枯れるなら、やはり貴方がたは我々にとって信用できない存在だということだ。」

「大事にさせていただきます。きっと根付きますよ。そうさせてみせます、必ずや」

白銀樹の苗の入った袋を背負ったゲオルクは、何度もこちらを振り返りながら、力強い足取りで進んでいく。

『本当に彼は、オークなのだろうか。』

私は自問せずにはいられなかった。

 

 

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