魔法少女リリカルなのは~Extreme Heart~ 作:nakazero
ジュエルシードとの戦闘から数時間が経ち、辺りがすっかり暗くなっている頃。
時間でいえば、深夜に入る前の午後11時半を回っていた。
既に多くの家の部屋の明かりが消え、殆どの人が寝静まっているこの時間。
「ふぁあああああ・・・・」
だが、この部屋の明かりはまだ灯っており、その部屋からは欠伸の声が聞こえてくる。
そんな時間なら、もう小学生は寝ている時間なのに、この高町家の次女、なのはは未だに起きていた。
いや、正確にいえば・・・
「あーあ・・・・こんな事、明日にでも出来るのにぃ・・・」
(そう言って、サボるのはマスターの悪い癖です。言うよりもまず手を動かしてください。)
「うぅ・・・・わかったよエクス。」
彼女の相棒のエクスによって、起こされているといった方がいいのかもしれない。
いや、彼女も身体的に成長したとはいえ、眠いのは眠いのだが、何せ先程までジュエルシードとの戦闘を行っていたのだから、出来る事ならすぐにでも寝たかった。
だがこのエクスは、創った製作者の方針の故か、かなり人間じみたAIとなっており、特になのはに対しては本当に容赦がない。
(さぁマスター!次は・・・・)
「もう勘弁してよぉ・・・」
現に、こうしてなのはにジュエルシードについて調べてさせているのだ。
そうさせるエクスに対し、なのはは懇願の表情をつくって訴えるが、エクスには効果がないようだった。
まぁ・・・・
カタカタカタカタカカタカタカタカタ!!
そう言うなのはの手は、普通の速さではない速さで動いてはいるのだが・・・・
「ねぇ、ユーノ君も手伝って?」
そう言ってなのはは、ベット横にある台の上にいるユーノに頼んでみたのだが・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(シーン)」
当のユーノはなのはの問いかけに無反応のまま突っ伏していた。
「あれ?ユーノ君ってば?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(シーン)」
再度問いかけるが、結果は先程と同じで沈黙だった。
「あれれ?」
(無理ですよマスター。ユーノさんは先程の家族会談と戦いとの疲労でノックアウトしてますから・・・)
エクスからそう言われて、あぁとなのはも理解した。
先ほどとは、前話の最後で語ったこの部分。
その後高町家で、ユーノが家族全員相手に事情を話すことになり、ユーノが苦労するのだが・・・・←この部分である。
戦闘後の事を簡潔に話すとこうなるが、実際はもっと面倒なことになっていた。
まずはじめに、家族への会談、ここから話そうと思う。
回想シーン
「では君は、自分の所為で散らばってしまったジュエルシードを探す為にここに来たというわけだね。」
「はい、その通りです。」
士郎の質問にフェレット姿のユーノは、シュンとした表情で頷いた。
「では君がなのはを巻き込んだということでいいのかな?」
恭也が剣呑な表情でユーノを見る。
「ヒッ!!」
「こらお兄ちゃん。そんな顔しないでよ。ユーノ君が怖がってるよ。」
「う・・・わかった。」
恭也に睨まれたユーノは怯えたのを見て、なのはが細い眼で恭也を見る。
それに恭也や軽く恐怖を感じたので、直ぐに表情を抑えた。
「それでユーノ君は、一人でジュエルシード集めるつもりなの?」
「はい・・・そのつもりでした。でも、なのはさんが協力してくれることになって・・」
美由紀の問いにユーノがそう答えると、その言葉に家族全員がなのはを見る。
「にゃはは・・・というか、流石にこれは、ユーノ君だけじゃ対処できない問題だし、何より、このまま放っておいたらこの地球そのものがなくなりかねないから。」
なのはの言葉に全員が驚愕の表情になる。
「そ・・そんなに危ないものなのか?!」
「はい・・・・それに今、いつジュエルシードが発動してもおかしくない状況ですから。」
恭也の問いに、ユーノが肯定し補足する。
「だから、家族のみんなには悪いんだけど、この件に関わるのを認めてくれないかな?」
そう言うと、なのはは家族を見渡した。
家族の表情はどれも暗いものだった。
「なのは・・・俺たちが手伝うことは出来ないのか?」
士郎が僅かな希望にすがるような声でなのはに問うが、なのははゆっくりと首を横に振る。
「駄目だよ。私たちが関わるのは、お父さんたちの日常とは違う非現実的なものなの。もし関わったら、今度は怪我だけじゃすまないと思う。」
そう言うとなのはは俯きながら拳を握り締めた。
かつて、士朗が裏家業で行っていた事故を思い出すかのように深く握る。
そう、今度自分が関わるのは家族が知らない分野。つまり魔法という自分が旅をしていた時に関わってきたものだ。とてもじゃないが、家族には関わって欲しくないのがなのはの本音だった。
「そうか・・・・・。」
そう言うと士郎は、静かに目を閉じた。
なのはやユーノ、そして家族全員が士郎の言葉を待った。
「・・・・・・わかった。ならユーノ君の件はなのはに任せよう。」
「「「!!!」」」
士郎の言葉に、なのは以外の全員が驚愕の表情になる。
「父さん!本気で言ってるの!?」
「そうだ!なのはをまた危険な事に巻き込むかもしれないのに!!」
美由紀と恭也が直ぐに反論するが、対し士郎の表情は穏やかであった。
「確かに、私達でなのはの助けになるのならなってやりたい。しかしなのはの願いは私達には関わってほしくないと言っているんだ。なら、子の要望を聞いてやるのが親というものだ。」
そう言って士郎はなのはに視線をおくり、微かにほほ笑んだ。
「・・・・お父さん。」
なのはは改めて父親の、勘の鋭さに敬服した。
本来自分が言うべき事を、自分の代わりに述べてくれたのだ。
「もちろん、なのはが言ってくれたら、その事に私達は全力でサポートするつもりだ。その事は覚えていてほしい。更にジュエルシードに関して定期的に報告をする事。以上を厳守するというのなら、なのはの好きに動いてくれて構わない。」
その言葉になのははゆっくりと頷いた。
ふと桃子に視線をおくると、桃子は苦笑しながらこちらを見ながら頷いた。
両親は、自分達は手を出さない事を約束し、その代わりとして自分の娘の無事を保証する方法をとったのだ。
危険な道に自分の娘を送り出すというのは余程の覚悟がなければ出来ない事だ。
だからこそ、その覚悟を無駄にする事は、絶対に出来ない。
「お父さん、お母さん、お姉ちゃん、お兄ちゃん。」
なのはは家族全員を見渡す。
「約束するよ。私高町家の次女、高町なのはは必ず家族の元に帰ってくる事をこの不屈の心に誓って約束します。」
そうきっぱりと告げた。
「本当に良かったの?あなた?」
家族会議後、それぞれが各部屋に戻った後、桃子は士郎に問いかけた。
「心配ない、と言えば嘘になるさ。何せやっと帰ってきてくれた娘が、今度は魔法という私達では理解できない事に関わろうとしているのだから・・・」
本音を言えば、士郎は直ぐにでも止めさせるつもりであった。
やっと、自分達も元に帰ってきてくれた我が子をまた手放す様な感覚とらわれてしまったからだ。
でも、何故かそれを言う事は出来なかった。
「しかし、なのはの瞳を見た時、何故か大丈夫だと思ってしまったんだ。あの子なら、なのはなら大丈夫だという思いが。」
そう言うと、士郎は天上を見上げた。
「あの子の瞳には、光もあれば闇もあるのに澱みがなかった。」
なのはの瞳は恐ろしい程透き通っていた。
まるで不純物など一切ないガラス玉のように。
普通の人間なら光の部分もあれば闇の部分もある。
それが一番に表れるのが瞳なのだ。
闇に染まっている人の瞳は、酷く澱んでいる。
誰であれ、微かに染まっているのが普通なのだ。
だが、なのはにはそれがなかった。
「多分なのはは、数々の世界をめぐり、知り、学び、鍛え、そして至ったのだろう。私達以上に世界を知る者に。」
だからこそ、士郎は許可したのだ。
自分にはなのはを止める事は出来ない。
なら、せめてなのはの帰るべき場所をつくり、待とう。
あの子が安心して帰ってこれるように。
「あなたがそう言うのなら、私も信じるしかありませんね。」
士郎の姿を見ていた桃子がそう言った。
「桃子・・」
士郎が桃子を見ると、彼女は苦笑しながらも微笑んでいた。
「私も、あの子を信じています。それになのはは、私達以上に世界を見ている。そんな感じがして、私も信じてみたくなりました。」
両親は感じていた。
なのはが恐らく、自分達以上に世界の不条理と向き合っていたのでないかと。
救えるものもあれば救えない者もあると
それをなのはは学び、知ったのだろうと。
だとしたら・・・・なのははどうするのだろうと・・・・・
答えは・・・・・・なのはにしかわからない。
「とまぁ、こんなことがあったわけで、今に至るというわけなんだよね。」
『誰に対して言っているのですか?マスターは。』
つまり結果を言えば、家族は渋々ながらもジュエルシードに関わることを認めてくれたということだ。
これは喜ぶことであろう。
「でも、流石に一人で全部のジュエルシードは集めるのはきついよね。」
『確かにそれには同意します。』
そこまでいくと、次に考えるべきは、ジュエルシードを回収に関してだ。
現在のジュエルシードを封印出来るのは、自分とユーノの二人だけだ。
しかも、ユーノは持っているデバイスを完全には扱えないらしく、その結果が今回の怪我につながっているので、実質なのは一人での作業となる。
そう考えると、単独での回収は体力的に、そして時間的に不適格だ。
「・・・・うーん。どうしよっか?」
なのはは解決策を模索するが、これといっていい案が浮かばなかった。
一つ時空管理局に協力してもらうという案も思いついたが、なのは自身が管理局にあまりいい思い出がないので結局却下した。
それきり両者は黙りこみ、なのはのキーボードを打つ音だけが辺りを包む
どれほどの時が流れたであろうか・・・
実際、時間にしては1分もたっていないのかもしれなかったが、両者にはそれ以上に長く感じたであろう。
そして
『・・・・・・・・・・マスター』
エクスが口をひらいた。
「・・・・・・・・何?」
『・・・・マスターの、意をそぐわないのであれば、案が一つありますが?』
自分の相棒が何かを提案しようとした
が・・・
「駄目だよエクス。」
なのはは即刻却下した。
『・・・・・・・』
まるで、有無を言わせぬかのように。
『理由をお聞きしても?』
「駄目だよ。その案は却下だよ。」
エクスの問いになのはは直ぐに否定した。
『しかしマスター。現時点ではこれが良策なんですよ?』
「それでもだよ。駄目なの。」
もう一度エクスが言うが・・・
なのはは決して首を縦に振ろうとしない。
なのは自身、エクスの言いたい事はわかっている。
そしてそれが、現時点で他にいい案がない状態での、最善の策だということも理解している。
でも、だからこそ駄目なのだ・・・
だって・・・・
「・・・・だって、あの子は・・まだ。」
なのはの動いていた手が止まる。
『マスターにだってわかっている筈ですよ。もうあの子は何時でも起きる事が出来ると。そして、あの子自身がそれを望んでいると・・』
「・・・・・・・」
『もういいのではないですか。あの方に頼っても。』
エクスの言葉になのはは何も言わず、そっと自分の胸に手を当ててゆっくりと眼を閉じた。
「・・・・・・・・」
目を閉じ、なのはは微かに呟いた。
その瞬間、なのはの視界は真っ暗に包まれる。
同時に軽い浮遊感を味わいながら、意識を自分の中へとそして、更に奥へと入って行く。
入って行くごとに、徐々に暗さは更に暗くなり、やがて漆黒に染まっていく。
そしていくらかの後、なのはは漆黒の地面に足をついた。
辺りは、光すらない暗黒が広がり、音すらもない世界。
その世界こそ、なのはの心の中の世界。
自分という存在を構築すべき根幹の部分。
「・・・・・・・・・」
その世界の中でなのはは、目を閉じ、後はひたすらに待った。
目の前に彼女が現れるのを・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
どれくらいの時が過ぎたのだろうか・・・・
【・・・・やっと来たのですね。待ちわびていましたよ】
幼い少女の声が聞こえ、なのははゆっくりと目を開ける。
視線の先にいたのは、小さい女の子だった。
身長はおそらく130前後
さっぱりとしたショートヘヤで色はなのはと同じ色
その瞳はハイライトがなく、漆黒で染まっている。
服は、黒を基調とし、所所に赤のラインが入っている服を着ており、奇しくもなのは通う筈だった学校の制服に酷似していた。
【幾らこちらが語りかけても答えてくれませんし、どうしようかと思いましたよ】
「ごめんね___。出来ればあなたには・・・・・本当の事を云えばゆっくりと眠っていてほしかった。あなたの事を考えたら、何も出来なかった自分の罪を、もう一度見ているような気がしていたから、だから私はあなたから目を背けた。自分の罪から逃げる為に・・・」
【・・・・・・・・・】
なのはの告白に、___は静かに聞いていた。
「でも、そんなのは意味がないって、心をどこかで気づいていたの。エクスにも言われちゃったし、だからもう逃げるのはやめようって思ったの。逃げてたって何もならない。だから・・・・」
【もう言葉はいらないでしょう。】
なのはが言う前に、___がそれを遮った。
【あなたは自分の罪を認め、前に進む事を決めている筈です。今さら何を迷うのです?】
そう言うと___は手に持っていた杖をなのはに向ける。
【私はあなたであり、あなたではない存在。あなたが勝てば、私はあなたに協力しましょう。でも、私が勝てば・・・】
「私が・・・・・・私ではなくなるんだよね。」
【そういうことです。】
___の杖から、複数の魔力弾が精製される。
その色は、灼熱のごとく赤い色
まるで、見ているだけで、焼き尽くされそうな思いにとらわれる程に・・・
【私に協力してほしいなら、私に勝てばいいんですよ、高町なのは。】
「・・・・うん、そうだね。あなたに勝つ為に、そして私が前に進む為に、私はここにいるんだもんね。」
なのはは、首に下がっている輝石に手を触れる。
そして・・・・
【さぁ、いきますよ!高町なのは!!】
「いくよ、___!!」
なのはの世界で、彼女の世界を埋め尽くすほどの巨大な爆発が起きた。
戦いがどうなったのか?
その結果は、なのはにしかわからない・・・・・
なのはが目を閉じて僅か数秒後、なのははゆっくりと目を開けた
「エクスの言った通りだった。」
『・・・・・・・・・・・・』
「あの子はそれを望んでいた。そして例え自分が出てきても心配ないよって言ってた。」
言葉を紡いでいくなのはの声は微かに震えていた。
「でも、もしそうなったら。今度はただじゃすまないかもしれない事もわかっている。わかった上であの子は、私に協力するって。」
『・・・そうですか。』
エクスはそれしか言わなかった。
自分の主に、辛い事を言っている事を理解している。
それでも、彼女はこの方法を選ぶだろう。
辛く、戦いの道を・・・不屈の心を宿したからこそ進まなければならない道を
そう感じながら、エクスは自分の主の為に、策を模索し続けるのだった。
その日、なのはは自らの道を定め、歩きだした。
もうここからは、誰も止める事は出来ない。
もし止めれるとすれば・・・・
それこそ、神のみぞ知るということだろう。
次回作はできれば、今年中に出す予定です。
ではまた