ニチアサ世界に居ていいタイプじゃないやつが主人公の話 作:Revak
魔法少女。
それは悪の組織ブラックジャールを打倒す少女たちの事。
ブラックジャールは二千二十四年に活動を開始した悪の組織だ。
怪人を繰り出し街を破壊し人々を襲い、恐怖の感情を集める組織である。
目的は当然のように世界征服。それを成すために日夜悪事を企てている。
「今日こそあなたを倒すわ! ラビットジャーク!」
日曜朝の〇〇県〇〇市の公園でブラックジャールの幹部と一人の魔法少女が対峙していた。
幹部はウサギの仮面をつけた身長百七十八センチほどの男だ。
執事服を着用し仮面からでもわかるつらの良さをしている。
「ワールッル! 今日こそお前をニンジンにしてやる! スターセブン!」
魔法少女は最近妖精ククルの力で魔法少女となった少女、魔法少女名スターセブン、本名虹川ゆりがスタッフを手に勇敢に立ち向かっている。
スターセブンは魔法少女らしい虹色のフリフリの服を着ている。スカートは短くパンチらしそうだ。
虹色の髪に虹色の瞳をしている。歳は十二かそこらだろう。
その二人を遠くから眺めているのは魔神ディノク事本名不破泰二だ。
不破はかつて異世界に召喚されたことがある元一般人だ。
召喚された先で暴れに暴れて初日に国を一つ滅ぼした。
そのあとなんやかんやあって魔神の力を手にして世界を崩壊寸前まで持って行った正真正銘邪悪の権化である。
村を焼き、街を破壊した存在だ。
それだけではない。男は肩から肉を引き裂き妊婦は腹を裂いて中の胎児を食らい女を食らった(物理)化け物の類である。
おおよそ魔法少女とかのファンシー世界に居ていいタイプの悪ではない。ダクファンにでもいるべき邪悪である。
何なら部下の大悪魔が人間牧場経営してたりした。
もちろん邪悪だったので討伐されたが、魔神の力で不死となっていた不破は殺せないという事で異世界に追放されたのだ。
結果不破はこんな世界に来ているのである。この世界が哀れに思えてくる。
この世界にごみ処分のようにぶち込まれたのだ。この世界は泣いていい。
その気になれば惑星破壊も余裕な化け物がディノク事不破である。インフレ極まっている。
不破は特に何もするでもなくキッチンカーで買ったクレープをむしゃむしゃと食べている。
視力は魔神になったことで強化されているのでスターセブンとラビットジャークが魔法の応酬を繰り広げているのを見れる。
不破は関わる気がないのでなんかやってんな、程度で見ていた。
基本ブラックジャール側は死者を積極的に出そうとはしてないのでここでのんびり観戦してても問題ないだろう。魔法少女側としては避難してほしいだろうが。
まぁ距離離れてるしいいだろと不破はのんびりチョコのクレープを食べ進める。
この公園は結構広い。
東京ドームとかの馬鹿げた広さはないが公園内に喫茶店があるぐらいには広いのだ。
同じ公園内にいるってだけでスターセブンたちからすれば不破は視界の端っこに映る程度なので邪魔にはならないだろう。
不破はなんとなく魔法少女と悪の幹部の戦いを見守る。
見てても雑魚同士がなんかやってんなぁとしか思えなかった。
不破が居た世界では音速を超えて動くのは半分常識みたいな世界だった。不破に至ってはその気になれば光速の半分は出せるのだ。もっと本気を出せば光速を超えれるが。
そしてそれを倒したのが異世界の住人であり、割と超高速起動戦闘は日常だった。
その身からすれば音速どころか時速百キロにも満たない速度で繰り出される魔法の弾幕は見ててあくびがするぐらいには遅い。
「お」
そうして見てるとラビットジャークが放ったニンジン型の魔法弾が不破に向かって飛んできた。
しょうがないなと不破は右手のクレープではじいた──弾いてしまったのである。
「あ」
気づいた時にはもう遅い。弾幕とクレープが衝突し見事にクレープは破裂四散した。
「俺のくれぇぇぇぇぷ!!!」
不破泰二は金持ちである。眷属作成能力を持っており電子生命体の眷属を作ってそれに株やらFXをやらせることで簡単に大金を稼いでいる。
その身からすればクレープ程度また買いなおせばいいが、それでも自身が買った物が無惨に破壊されたという事実に不破は怒り狂った。
瞬間不破は音速を優に超える速度で移動。ラビットジャークの眼前まで移動し右手で頭を掴んだ。
「え」
突然の第三者の乱入にラビットジャークの思考が止まった。
そのまま地面に向かって急降下。ラビットジャークの頭を公園の地面に叩きつけた。
地面に蜘蛛の巣上のクレーターが生まれ、ラビットジャークは苦悶の声を出した。
「このまま死ね」
不破はラビットジャークを掴んでいる右手に力を籠める。
握力だって人知を超えている。人間の頭だってトマトのように簡単に握りつぶせる不破からすれば魔族の頭ぐらい簡単に潰せる。
「え、エスケープ!」
そうラビットジャークが叫んだ途端露となってラビットジャークは消えた。
これぞ悪の組織御用達の緊急脱出手段の転移能力だ。これがあるゆえに魔法少女たちはブラックジャールを逃がし続けている。
「逃がすか」
だが不破は甘くない。
空間の揺らぎに手を突っ込んだ。
魔神の力は強大だ。転移した先に手を入れるなど造作もない。
「ひぃ」
小さな悲鳴が漏れた。それはラビットジャークのものだった。
「こ~んに~ちわ~」
不破は頭を突っ込みラビットジャークが居る場所──ブラックジャールの拠点の一つに侵入した。
空間の罅から不破は身を乗り入れる。
そこは何かの実験場のようだった。SF映画でよく見る緑色の培養液が詰まった人が入ってもなお余りあるポッドが多数設置されている。
そこにはラビットジャークが怯えたように震えていた。
不破は全身を入れた。
「な、なぜ、どうやって」
「んなもんどうでもいいだろ──人の食事邪魔した罰だ。死ね」
不破に人だったころの倫理観は殆どない。
己の邪魔するなら大人だろうが子供だろうが等しく死ねと思っている。だからラビットジャークを殺す。
不破は怯えて腰を抜かしたラビットジャークの頭を右手でつかんだ。
「たすけ」
「死ね」
不破は頭を掴んで背骨事引き抜いて殺した。
びしゃっと赤い血が舞い散る。
「ゴミムシに相応しい末路だな」
ふん、と鼻を鳴らすと不破は頭を適当に放り投げた。
己が来た裂け目に入り不破は元居た公園に戻ってくる。
「あ、あなたは……?」
そこには当然スターセブンが居て、急に乱入してきた不破に疑問を抱いていた。
「あー……」
さてどうしようと不破は悩んだ。
一応やろうと思えば記憶操作やら精神操作やら出来る。
だが相手は魔法少女だ。耐性を持っていてもおかしくない。
となると下手なことは出来ない。
「俺は通りすがりの一般人だ。じゃあな」
「待ってください、私と話を──」
駆け寄ってくるスターセブンをしり目に不破は一キロほど跳躍しこの場から立ち去った。
「……なんだったんだろう」
そこには何が何だかわかってないスターセブンだけが取り残されていた。