ニチアサ世界に居ていいタイプじゃないやつが主人公の話 作:Revak
「……はっ」
魔王城の玉座の間で玉藻は目覚めた。
「……問題はないか、玉藻」
そう心配そうな声を出すのはブラックジャール首領の魔王サタナエルだ。
玉座に座ったまま問いかけている。
周囲には他の幹部やブラックマンの姿はない。
「も、申し訳ありません! 、サタナエル様。敗北……いえ。敗死してしまいました」
「……気にするな。相手が強大だったというだけだ。死んだときのことを覚えているか?」
「はい……不破が『死ね』といった瞬間、わらわたちは死にました」
「……相手は発した言葉を現実に出来る能力を持っているとみるべきだな。さて、どうするか……我らの強大な敵となる。魔法少女以来の」
サタナエルは頭を悩ませる。
現状敵と呼んでいいのは魔法少女の三人ぐらいだったがここに第三勢力がやってきた。
自身が向かえばどうにか出来る自信はあるが、自分が直接出るのはなしだ。
魔王としての宰務に追われている以上仕事をこなさなければならないし、戦う暇もないし魔力を戦闘で浪費するわけにもいかない。
となると
「──四天王全員で不破を殺す……か?」
リスクが高い。
発した言葉を現実に出来る以上雁首揃えて向かえばその場で全員殺されるかもしれない。死んだところで蘇生は出来るがコストは重い。
となればもう一つ。強敵を殺すのに古来から城州されてきた手段。
「──暗殺をするのだ。玉藻」
「畏まりました、魔王様」
そう。正面切って倒せないのならばからめ手で攻めればいい。
実に単純な心理だった。
■
つい先日ラビットジャークと魔法少女スターセブンこと虹川ゆりが戦っていた公園で。
不破は椅子に座り深いため息を吐いていた。
ため息の原因は当然ブラックジャールだ。
自分をわざわざ殺しに来たブラックジャールを当然不破は殺したいと思っている。自身の害になるのならばみな死ねが常に不破だからだ。
だが、殺しに行く手段がない。
不破は空間移動系の能力を持っているが、それは移動先の空間を知っているのを前提になる。
ブラックジャールがどこの亜空間に居るのかわからないため空間移動の力で移動しようにも行き先がわからないのである。
そのため先手を打って滅ぼしに行くというのが出来ない。
ならば相手が撤退、または襲来した時に生まれる空間の揺らぎを元に空間を捻じ曲げればいいか、と不破は考える。
だが、それでは足りないことを不破は知らない。
あの転移先はブラックジャールが多数持つ拠点の一つにすぎず、本拠地ではない。
そのために拠点の一つを潰したところでブラックジャール全体に影響はあまりないのだ。流石に百や二百拠点を潰せば影響は出てくるだろうが長期的になるだろう。
そして不破は今更になって魔法少女たちに『殺すぞ』といったことを後悔していた。
子供にひどいことを言ったのを後悔しているわけではない。共通の敵を持っているのに共闘ではなく敵対を選んだことを後悔しているのだ。
魔法少女ならばブラックジャールの拠点を知っているかもしれないのにわざわざ敵対し情報を捨てた結果となったのだ。
(うーん。魔法少女拷問して情報聞きだすか?)
だが悪手だとも思う。
知っていて移動も可能になればいいがそうでない場合対ブラックジャール用の戦力を減らすことになる。
正直魔法少女が全員死んだところで戦力的には不破が居れば誤差の範囲なので死んでもいいが、的が減るのは困るとも思う。
「どうしたもんかな……」
不破は眉を潜めながらチョコバナナクレープを食べ進める。
そこに妖精ククルがやってきた。
たまたま行き先が被ったのだろうかと思ったが確実に不破の目を見てふわふわと飛んできている。
何の用だと更に不破の機嫌が悪くなる。
ククルが不破の隣に浮かんだ。
「久しぶりクル」
「何の用だ害獣」
「害獣呼びはさすがに心に来るルね。今日は前と同じ、共闘の願いに来たル」
「言わなかったか? 次来たら殺すと」
「それは魔法少女に対してル。妖精のククルには言ってないルね」
「屁理屈を……」
不破は機嫌が悪くなるがまぁちょうどいいとも思う。
「おい、この前ブラック……ジャール? が俺を殺しに来た。何か知らんか?」
「ブラックジャールが? となるとやっぱラビットジャークを倒した事だと思うルね」
「倒してない、殺したぞ」
「それはすごいルね。だけど、奴ら──四天王に死は意味ないル。奴らは蘇ることが出来るルね」
「……なるほど。それで俺の情報が漏れたわけだ」
はぁ、と不破はため息を吐いた。
「共通の敵を持つものどうし、共闘した方がいいと思うル」
「……情報だけくれれば勝手に俺が殲滅してやるが」
「無理ルね。奴らを倒すには魔法少女の力……天力が必要ル。いくら強くとも天力を持たない身では奴らを真に倒すことは出来ないル」
「なんだそりゃ」
「奴らの首領魔王サタナエルは魔力生命体ル。死んでも世界に魔力……負の感情がある限り何度でも蘇れるル。けど天力を使えば魂事消滅させられるルね」
「なんだ、魂ぐらい俺でも破壊出来るぞ」
魂破壊は魔神の標準装備だ。他者の魂に干渉し魔族にするも破壊するも自由である。
もちろん自分の魂は干渉されないよう何十層もの魔術層によって防御されている。
「そ、そうルか……けど、やっぱり協力は必要ル。手数は多い方がいいルね」
「……まぁ、そうだが……」
鉄砲玉は数多い方がいいとは不破も思う。
「だが俺嫌われてるだろ。殺意振りまいた殺人鬼みたいなイメージ持たれてるだろ」
「それは……まぁ、そうルね……」
ククルも援護のしようがなかった。
「けどゆり……スターセブンは心強くて他の二人と違って君と協力したいと言っていたル」
「……メンタル強いなそいつ」
不破はクソでかため息を吐いた。
「仕方がない、すんごい嫌だが餓鬼共利用してとっととブラックジャールぶっ殺すぞ」
「ありがとうル! じゃあ連絡先交換するル!」
ククルは異空間からスマホを取り出した。
「妖精もスマホ使うのか……」
不破はちょっと少年少女の夢が壊れるのではないかと思いながら同じく異空間からスマホを取り出した。
「これはゆりのお母さんに買ってもらったル」
「そうか……」
手早くメッセージアプリの友達登録を済ませる。
「じゃあ早ければ明日にでも話し合いするル。どこでするかはまた連絡するルね」
「ああ、わかった」
じゃあねーとククルは飛んで行った。
不破はあんなファンシー生物が空飛んでてこの街の人間は何とも思わないのだろうかと妙な心配をした。
だが不破に認識阻害が効いていないだけで街の住人にはしっかりと効いているので問題はない。
「じゃあ、俺も行くか……」
不破は椅子から立ち上がる。
取りあえず腹減ったからステーキでも食いに行くかと不破は歩き出した。