ウィスキーピーク――サボテンのような巨大な岩がそびえ立つその島は、霧に包まれた「歓迎の町」などではなかった。43年前のこの島は、食うか食われるかの賞金稼ぎたちが牙を研ぐ、文字通りの「処刑場」である。
黒舟(ヘカテ)号が接岸するやいなや、数百人の武装した賞金稼ぎたちが、獲物を見つけたハイエナのように港を包囲した。
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アレン「……あー、だっる。降りる前から囲まれてるじゃないっすか」
アレンが『斬月』を担ぎ、あくびをしながらタラップに立つ。
マキナ「ちょうどいい。アレン、昨日の海軍戦では遊びが過ぎたようだな。……ここらで、どちらが真の『死神』にふさわしいか白黒つけようではないか」
マキナが蒼黒い槍を構え、アレンを挑発するように薄く笑った。
アレン「競争っすか? ……いいっすよ。負けた方は、リースのド下ネタに一晩中付き合うってのはどうすか?」
マキナ「……それは死ぬより辛い罰だな。受けよう。数はキースに数えさせる」
キース「おっけー! ウチが特等席でカウントしてあげるよん! スタート!!」
キースの合図とともに、二つの影が船から爆発的な速さで飛び出した。
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マキナの戦いは、残酷なまでに美しい。
彼女が地面に足を下ろした瞬間、半径30メートルの地面が**「覇王色の覇気」**の圧力で陥没する。
「な、なんだこの女……!? 槍を振るう前に、体が動か……っ!」
賞金稼ぎたちが次々と泡を吹いて倒れていくが、マキナは止まらない。気絶すら許さぬ速度で、槍『灰塵』を旋回させる。
マキナ「**『灰塵・葬列』**」
一突きで十人の心臓を正確に貫き、一振りで数十人の四肢を断つ。マキナの歩く後には、文字通り「塵」すら残らぬ静寂が広がっていく。
マキナ「30……50……ふん、手応えがないな」
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対するアレンは、町の中心部へと突っ込んでいた。
アレン「おらぁ! どけよ、モブども!」
アレンは『ゴロゴロの実』の雷速で敵の間を縫い、**武装色**で硬化した拳と蹴りで肉体を粉砕していく。だが、数に物を言わせて迫りくる賞金稼ぎたちの波に、アレンの「戦闘狂」の血がさらに沸騰した。
アレン「……あー、もういいや。出し惜しみはやめだ」
アレンは『斬月』を両手で構え、腰を深く落とした。
彼の体から、これまでの蒼白い雷光とは違う、禍々しい「黒」と「紅」の入り混じった覇気が溢れ出す。それは、彼の武装色の覇気と、斬月に秘められた負のエネルギー、そしてゴロゴロの実の放電が混ざり合った、未知の波動だった。
アレン「これ、前世で見た時からずっとやってみたかったんすよね……」
アレンが精神を集中させると、巨大な包丁型の『斬月』に、莫大な量の覇気と電力が収束していく。刃の周囲の空間が、あまりの密度に歪み、バチバチと黒い稲妻を放つ。
「……喰らえ 月牙天衝(げがつてんしょう)!!!」
アレンが『斬月』を全力で振り抜くと、刃の先から**巨大な三日月型の斬撃**が放たれた。
それはもはや「斬撃」という概念を超えた、純粋な破壊の奔流だった。漆黒の覇気を纏った雷の刃が、地を削り、家屋を粉砕し、射線上にいた百人以上の賞金稼ぎたちを、悲鳴を上げる暇もなく飲み込んでいく。
ドォォォォォォォォォォォォォン!!!
ウィスキーピークのサボテン状の岩の一つが、その一撃だけで半分に叩き割られた。
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アレン「……うお、マジかよ。威力高すぎて引くわ」
アレン自身が驚くほどの破壊力。だが、その瞳には高揚感が満ち溢れていた。
アレン「あはははは! まだまだ行けるっすよね!?」
アレンは再び『斬月』を構え、今度は横一線に振り抜く。
アレン「**『月牙・乱舞』!!**」
何発もの黒い三日月が町中に放たれ、逃げ惑う賞金稼ぎたちを無慈悲に刈り取っていく。
ライカが船の上から「アゲアゲじゃん! アレン、マジで死神っぽーい!」と全裸で手拍子を送り、シズが「ひ、ひぃぃ……治療する対象が原形を留めてませんぅ……」と涙目で震えている。
キース「120……150……ちょ、アレンくん! 数えるのが追いつかないんだけどー!」
キースの悲鳴のようなカウントが響く中、アレンは返り血を浴びながら笑い、敵を斬り伏せ続けた。
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一時間後。
ウィスキーピークの「町」だった場所は、クレーターだらけの荒野へと変わっていた。
アレン「……184。マキナ様、俺の勝ちでいいっすよね?」
アレンが肩で息をしながら、折れた武器の山の上に座り込んでマキナを見た。
マキナ「……182。……チッ、端数の二人分、私が見逃したか」
マキナは不機嫌そうに槍を収めた。どうやら、アレンの『月牙天衝』が広範囲すぎて、マキナが仕留めるはずだった獲物まで奪ってしまったらしい。
マキナ「よし、アレン。勝負は認めよう。……ただし」
マキナがアレンに近づき、耳元で冷たく、しかし艶っぽく囁いた。
アレン「勝者は敗者の望みを聞くのがルールだ。……今夜、私の部屋に来い。その新しい『技』、もっと詳しく教えてもらわねばならんな」
アレン「……え、それってご褒美っすか? それとも、また地獄の特訓っすか?」
マキナ「……ふふ、どうだろうな」
アレンが困惑していると、背後からユリナがやってきて、彼のアタマを豪快に叩いた。
ユリナ「アレン! 街を半分壊すなんてやりすぎや! おかげで買い出しに行ける店が全部潰れたやんけ! 責任取って、今からウチと一緒に瓦礫の中から使えそうなスパイス探すんやで!」
アレン「……結局、重労働じゃないっすかーー!!」
アレンの叫びが、半壊したサボテン岩に木霊する。
グランドライン最初の島、ウィスキーピークは、死神海賊団の圧倒的な暴力と、いつも通りのカオスによって、伝説の一歩を刻んだのであった。
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