アラバスタへの本格的な進軍を5日後に控え、ナノハナの港に停泊する黒舟(ヘカテ)号。
灼熱の太陽が甲板を焼き、逃げ水が砂浜に揺れる中、アレンは自室の作業机で頭を抱えていた。
手元の羊皮紙には、この世界には存在しない、しかしアレンの記憶には鮮明に残っている「図面」が描かれていた。
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アレン「……あー、だっる。マジで悩むわ、これ」
アレンが描いていたのは、四輪駆動のオフロード車両――いわゆる「ジープ」の設計図だった。
これから向かう先は、見渡す限りの熱砂が広がるアラバスタの砂漠。ログポースに従って進むにしても、徒歩での移動は過酷を極める。食料、水、そして何より女性陣の体力を考えれば、広大な砂漠を高速で駆け抜ける「車」があるに越したことはない。
だが、アレンのペンはそこで止まっていた。
アレン(車……。この海賊の世界において、それは完全なオーバーテクノロジーだ)
この時代の移動手段といえば、船、海獣、あるいはキャメルといった動物たちが主流だ。ベガパンクのような天才ならいざ知らず、一介の海賊がエンジンを積み、タイヤを転がす鉄の塊を走らせる。それは世界の均衡を、技術の進歩を歪めてしまうのではないか。
アレン「……何を今更、っすよね」
アレンは自嘲気味に笑い、自室の設備を見渡した。
リースの能力と自分の電力を組み合わせた全自動洗濯機、無限にフルーツを生産するビニールハウス、そして21世紀の概念を反映させた大浴場の電気風呂。
この船自体が、すでにこの時代の常識から大きく逸脱した「異物」なのだ。
アレン「船の中なら『個人の趣味』で済むかもしれないけど、外に持ち出すとなると話が別っすわ……。海軍に見つかれば、間違いなく設計図ごと狙われる。ロックスみたいな奴らがこれを手にしたら、戦場が変わっちまう」
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エリス「……Wait. あんた、さっきから何ブツブツ言ってるのよ」
不意にドアが開き、エリスが顔を出した。
彼女は昨日のマキナとの一件以来、アレンに対して「警戒」と「興味」が入り混じった複雑な視線を送っていたが、今日は少し心配そうな顔をしている。
アレン「エリスさん……。ノックくらいしてくださいよ」
エリス「したわよ! あんたが心ここにあらずで返事しなかっただけでしょ。……My heart tells me... 今のあんたの心、すごく重苦しいわね。何か……取り返しのつかない罪でも犯そうとしてるみたいな音」
エリスはアレンの隣に座り、机の上の図面を覗き込んだ。
エリス「……何これ? 馬車……じゃないわね。車輪が四つあって、妙に角張ってる。……これが、あんたの世界の乗り物?」
アレン「そうっす。……『車』って言うんすよ。これがあれば、砂漠なんて数日で横断できる。……でも、作っていいのか悩んでるんすわ。俺たちのエゴで、この世界の文明をかき乱していいのかって」
エリスはしばらく図面を見つめ、それからアレンの目を見て、ふっと小さく笑った。
エリス「あんたって、時々本当に変なところで真面目よね。……最低なくせに」
アレン「……一言余計っすよ」
エリス「いい? 私はこの世界に送られた時、最初は絶望したわ。でも、あんたたちの船に来て、冷たい飲み物があって、温かいお風呂があって……。それがどんなに『オーバーテクノロジー』だろうと、私は救われた。技術は、誰かを助けるためにあるんでしょ?」
エリスの言葉に、アレンの胸のつかえが少しだけ軽くなる。
アレン「……誰かを、助けるため……」
エリス「あんたがこれを作って、誰かを虐殺するために使うなら私は全力で止めるわ。でも、みんなの砂漠越えを楽にするために作るなら……それは『優しさ』なんじゃないの? ……感謝しなさいよね、私が背中を押してあげたんだから!」
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リース「……ん。……話は、聞こえてた」
いつの間にか、リースの尻尾がドアの隙間から覗いていた。彼女は無造作に部屋に入ってくると、アレンの手から図面を奪い取った。
アレン「リースさんまで……」
リース「……この構造、面白い。……内燃機関(エンジン)は不要。……アレンの電気を動力にする『モーター』で代用すれば、騒音も抑えられる。……シャーシは私の能力で一瞬。……タイヤは、ゴムの実に似た素材を合成すればいい」
リースは無機質な瞳を輝かせ、アレンを見つめた。
リース「……アレン。この技術が未来を変えるなら、私たちがその『未来』になればいい。……海軍が怖ければ、使い終わった後に私がバラしてスクラップに戻す。……それで解決」
アレン「……流石っすね、リースさん。合理的すぎて笑えるっすわ」
アレンは立ち上がり、大きく伸びをした。
迷いは消えた。
この世界を救うためでも、変えるためでもない。
仲間たちが過酷な砂漠で倒れないように。
そして、自分が少しでも「だるい」思いをせずに済むように。
アレン「よし。……作りますか。死神海賊団専用、砂漠走破用装甲車……名付けて**『ヘカテ・ランナー』**っす!」
ライカ「あはは! ネーミングセンス、相変わらずダサいねアレンくん!」
いつの間にか集まっていたライカが笑い飛ばし、ユリナが「ほな、ウチは車内食の準備やな!」と腕を鳴らす。
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そこからの5日間は、まさに「魔改造」の日々だった。
アレンの精密な電気加工、リースのクラクラの実による分子レベルの造形。
ライカが空気を制御して溶接箇所を冷却し、シズが疲労した二人に栄養剤を打ち込む。
エリスも「仕方ないわね」と言いながら、見聞色で機械の微かな歪みを探り、調整を助けた。
そして上陸予定日の前夜。
黒舟(ヘカテ)号の倉庫には、漆黒のボディに死神の紋章が刻まれた、無骨で美しい巨大な四輪駆動車が鎮座していた。
リース「……ん。……傑作。最高時速は120キロ。……砂嵐も関係ない」
リースが満足げに頷く。
アレン「これ、マジでかっこいいっすね……」
アレンがハンドルを握り、電力を流し込むと、車体が「ギュイィィン」と低い電子音を立てて目覚めた。
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翌朝、出発の刻。
マキナが倉庫に現れ、その巨大な「異物」を目の当たりにした。
マキナ「……アレン、これが答えか」
アレン「……はい。オーバーテクノロジーっす。……不満なら、今すぐバラしますけど」
マキナは車体に手を触れ、薄く笑った。
マキナ「……フン。我々が常識に縛られてどうする。……死神が鉄の馬に跨る、面白いではないか。……アレン、お前が舵(ハンドル)を取れ。アラバスタを、この音速で駆け抜けるぞ」
アレン「了解っす、マキナ様!!」
一週間の休暇が終わると同時に、アレンの新たな挑戦が始まった。
砂漠の国アラバスタ。
反乱軍と国王軍が睨み合い、歴史の闇が渦巻くその地に、時代を数百年前倒しにする「雷鳴の咆哮」が今、響き渡ろうとしていた。
マキナ「出発だ! 全員乗り込め! 目指すは砂漠の果てだ!」
アレンの咆哮と共に、『ヘカテ・ランナー』が砂塵を巻き上げて爆走を開始した。
その助手席で「ちょっと、スピード出しすぎよ! 最低!」と叫ぶエリスの声も、加速する快感の中へと消えていった。
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