灼熱の太陽が照りつけるアラバスタの海岸線。完成したばかりの黒鉄の獣『ヘカテ・ランナー』の重厚なエンジン音が、乾いた空気を震わせていた。
アレン「よし……。じゃあ、出発前に一つ確認っす。みんな、前世で『運転免許』持ってた人、あるいは運転したことある人、いるっすか?」
アレンがハンドルを握りながら、後部座席や助手席に乗り込もうとする面々を見回した。
ライカ「めんきょ? 何それ、美味しいの?」
ライカがルーフに飛び乗りながら、不思議そうに小首を傾げる。
リース「……ん。……私は、自分の体をクラフトする専門。……乗り物を操作する概念、ない。……そもそも、私の世界に『車』なんて鉄の塊はなかった」
リースが無表情に答え、狐の尻尾を揺らす。
ユリナ「ウチも無理やわ。包丁は握れるけど、こんな丸い輪っか回して進むなんて、想像もつかへん。……マキナはどうなん?」
ユリナに振られたマキナは、腕を組みながら車体を検分していたが、静かに首を振った。
マキナ「……我々の階級では、移動は『歩み』か『飛来』、あるいは特殊な生物を操るのが常だ。……このような無機質な機械を御(ぎょ)した経験はない」
エリス「……Wait. 私も無理よ!」
エリスが助手席でシートベルトと格闘しながら叫ぶ。
エリス「私はイギリス出身だけど、10歳から日本にいたし、転生した時はまだ18歳になりたてだったのよ! 教習所に通う暇なんてあるわけないじゃない! 最低!」
アレンは深い溜息をついた。
アレン「……結局、俺だけっすか。あー、だっる。……交代要員なしのワンオペ運転っすね」
その時、マキナの鋭い瞳がアレンを射抜いた。
マキナ「……アレン。一つ聞き忘れていたが。……お前自身は『免許』とやらを持っているのか? それとも、経験があるのか?」
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アレンは一瞬、遠い目をして、前世の狂った記憶を呼び起こした。
アレン「……免許は、持ってないっすよ。俺も転生した時は18歳だったんで。……でも、経験なら、腐るほどあるっす」
エリス「Huh? 無免許なのに経験があるって、どういうことよ。あんた、前世でも犯罪者だったの?」
エリスが不信感を剥き出しにして身を乗り出す。
アレン「……いや、俺の世界の地球は、ちょっと特殊だったんすよ。……一言で言えば、**『拷問が合法』**な世界だったんすわ」
その言葉に、車内の空気が一瞬で凍りついた。
マキナ「……拷問が、合法?」
マキナが眉をひそめる。
アレン「そうっす。……俺のお袋が、その世界の最大手……『拷問コンサルティング会社』の社長やってましてね。……んで、お袋の趣味がまたぶっ飛んでて。サーキットとか私有地の広大な荒野で、重武装の車を使って『リアル・カーチェイス』をするのが三度の飯より好きだったんすよ」
アレンはハンドルを軽く叩きながら続ける。
アレン「10歳の頃から、助手席に乗せられて『アレン、次、あのターゲットのタイヤを撃ち抜いてから車体をぶつけなさい!』って叫ばれながら、ハンドルを無理やり握らされてたんっす。……敵の車をクラッシュさせるためのハンドリングとか、スピンターンで相手を路外に放り出す技術とか……。そういう『殺しの運転』だけは、英才教育で叩き込まれましたわ」
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アレンが語る、あまりにも「バイオレンス」な育ち。
昨日、ロックスのスパイを廃人にした冷徹な拷問技術の源泉が、その「お袋さん」にあるのだと全員が察した。
リース「……ん。……アレンの家系、ホラー。……死神より、よっぽど死神」
リースの尻尾が、珍しく怯えたように丸まる。
ライカ「あはは……。アレンくん、よくそんな家でグレずに育ったね……」
ライカが引き攣った笑顔を浮かべる。
エリス「Wait! じゃあ、あんたがこれからやる運転って、安全運転じゃないの!?」
エリスがパニック気味に叫ぶ。
アレン「……さぁ? スピードを出さないと落ち着かない体質にされちゃってるんすよね。……お袋がよく言ってたんっす。『アレン、ブレーキを踏むのは魂を売る時だけにしなさい』って」
マキナ「……その母親、一度会ってみたいものだな。私と気が合いそうだ」
マキナだけが、満足げに不敵な笑みを浮かべていた。
アレン「……じゃあ、出発するっすよ。……舌、噛まないように気をつけてくださいね」
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アレンが右足をアクセルに叩きつける。
アレン「**『ゴロゴロ・イグニッション』!!**」
アレンの体から放出された高圧の電流がモーターに直結し、ヘカテ・ランナーの巨大なタイヤが砂を巻き上げて猛烈な回転を始めた。
「ギィィィィィィィィィィィィィィン!!」
耳をつんざくような電子音と共に、漆黒の車体が重力を無視したような加速で砂丘を駆け上がる。
エリス「ぎゃあああああああああ!? 速すぎよ、最低ぇぇぇぇ!!」
エリスがシートにめり込みながら絶叫する。
ライカ「あはははは! 最高! 風が気持ちいいーー!!」
ライカはルーフの上で、風の能力を使って車体を地面に押し付けながら大喜びだ。
リース「……ん。……G(重力)がすごい。……アレン、これ、楽しい」
リースは無表情ながら、窓の外を飛ぶように流れる景色に釘付けになっている。
アレンは、かつて母親に叩き込まれた「獲物を追い詰める時の感覚」を呼び覚ましていた。
砂丘の頂上からダイブし、着地の瞬間にドリフトで方向転換。エンジン(モーター)の唸りは、アレンの心拍とシンクロしていく。
アレン「……あー、やっぱりこれっすね。……砂漠最高。障害物がないから、いくらでも飛ばせるっすわ!!」
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爆走すること数時間。
砂の中から、アラバスタの名物である巨大生物『サンドラトカゲ』の群れが、獲物を狙って飛び出してきた。
マキナ「アレン、前方に巨大生物の群れだ! 回避するか!?」
マキナが槍を握る。
アレン「……いや。お袋の教えを思い出しました。……『邪魔な障害物は、加速して粉砕しなさい』ってね」
アレンの瞳に、例の「凪」の光が宿る。
アレン「**『1000万ボルト・電磁衝突(レールガン・バースト)』!!**」
車体全体に電磁場を展開し、ヘカテ・ランナーそのものを巨大な弾丸へと変える。
アレンはハンドルを微塵もぶらすことなく、トカゲの群れの中央へと突っ込んだ。
「ドォォォォォォォォン!!」
衝突の衝撃はすべて電磁バリアで無効化され、トカゲたちは爆発に巻き込まれたかのように左右へ吹き飛んでいく。
「………………」
車内に沈黙が流れる。
エリス「……あんた。……本当に、最低。……でも、かっこいいなんて、死んでも言わないんだからね!!」
エリスが顔を真っ赤にして、シートの端を握りしめていた。
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日没が近づく頃。
通常なら徒歩で数日かかる距離を、彼らはわずか半日で駆け抜けていた。
遠くに見えるのは、反乱軍の拠点の一つ。
アレンがゆっくりとブレーキを踏むと、ヘカテ・ランナーは砂煙を上げながら美しく停止した。
アレン「……ふぅ。……お疲れっす。……とりあえず、今日はここで野営っすね」
アレンが運転席から降りると、足元が少しふらついた。極度の集中と発電による疲労だ。
そんな彼を、マキナが力強く支えた。
マキナ「……見事な御(ぎょ)し方だったぞ、アレン。……お前の『狂気』、この砂漠で存分に発揮するがいい」
アレン「……はは、ありがとうございます。……でもマキナ様、次はお袋みたいな無茶振りは勘弁してくださいよ……?」
マキナ「……善処しよう」
漆黒の車体の上で、夕日を浴びる死神海賊団。
アレンの「英才教育」がもたらしたオーバーテクノロジーの力は、アラバスタの運命を、誰も予想だにしない速度で変えようとしていた。
リース「……ん。アレン、汗だく。……今夜は、車内で特別なサウナ。……逃がさない」
アレン「だから、休息をくださいって言ってるじゃないっすかぁ!!」
砂漠の静寂を、アレンの悲鳴が再び切り裂いた。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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