シャボンディ諸島の修業生活も、ついに最後の一日を迎えていた。
かつては「だるい」「帰りたい」が口癖だった少年は、今やその佇まいだけで周囲の空間を熱変させ、大気を震わせる本物の「死神」へと変貌を遂げている。
だが、そんな彼であっても、どうしても頭の上がらない相手がいた。
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ヘカテ号の深部、最新鋭の「魔改造サウナ室」。
室温はアレンの熱によって常に調整されているが、そこには物理的な熱さ以上の、刺すような冷気が漂っていた。
リース「……ん。……アレン、右肩の筋肉が硬直している。……解除する」
アレン「……あ、あだだだだ!! リースさん、それ『解除』じゃなくて『破砕』になってるっすよ!!」
アレンはマッサージ台の上で悶絶していた。
修業の一環として行われるリースとの二人きりの「サウナ・メンテナンス(実質的な愛のムチ)」。かつてはエッチな雰囲気もあったはずだが、最近のリースは、甲板を溶かされた一件を根に持っており、その手つきは「解体作業」に近い。
リース「……当然の処置。……ヘカテ号の修繕費、いまだに未払い。……お前の給料10年分、既に私の口座に予約済み」
アレン「……そこなんっすよ! リースさん、お願いっす! 10年はあまりに長い! せめて……せめて5年にしてくれません!? 俺、新世界で美味しいものも食べたいし、マキナ様に献上する貢ぎ物も買いたいんっすよ!!」
リースは無表情のまま、アレンの背中に冷たいオイルを垂らした。そして、その耳元でボソリと囁く。
リース「……5年。……条件がある。……今夜、サウナの温度を私の限界まで上げろ。……私が『溶ける』まで、お前の龍の熱で私を……メンテナンスしろ」
アレン「……それ、交渉じゃなくてただの過酷な労働っすよね!? ……まぁ、いいっすよ。5年になるなら、一晩中付き合ってやるっすわ」
リース「……ん。……交渉成立。……新世界の給料、5年分は自由にしていい」
リースの狐の尻尾が、満足げにパタパタとアレンの頬を叩く。
そんなドタバタした「日常」も、今日で一度終わりを告げるのだ。
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夕暮れ。ヤルキマン・マングローブの影が長く伸び、シャボンディ諸島が黄金色に染まる頃。
島の北端、無人の海岸線にアレンとマキナは立っていた。
アレン「……マキナ様。三年間、本当に地獄だったっすわ」
アレンは背中の『斬月』を抜き放ち、静かに構えた。
その体からは、意識せずとも深紅の熱気と青い電光が漏れ出している。
アレン「だが、お陰で俺はもう、三年前の俺じゃない。……ロジャーにも、シキにも、ガープにも、今の俺なら届く。……そして」
アレンの瞳が、鋭い「竜の眼」へと変わる。
アレン「……今の自分なら、一瞬だけ……貴女を超えられるかもしれない。……傲慢っすかね?」
マキナは槍『灰塵』を緩やかに構え、不敵に笑った。
その全身から溢れ出す漆黒の覇気は、三年前よりも遥かに密度を増し、周囲の海面を重圧だけで押し下げている。
マキナ「……良い。……吠えたな、アレン。……その傲慢さ、三年前なら即座に首を刎ねていたところだが……今の貴様には、それだけの『積み重ね』がある」
マキナが一歩踏み出す。
マキナ「来い、アレン。……私を殺すつもりで来い。……そうでなければ、死神の右腕は務まらん!」
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アレン「……了解っす!! **『卍解』!!**」
ドォォォォォォォォォォォォォン!!
アレンの霊圧が爆発した。
漆黒の細身の刀、**『天鎖斬月』**。
さらに、全身が深紅の鱗に覆われ、巨大な翼と角、そして火炎ガスを噴射する排気口が露わになる。
**『ドラドラの実・人獣型』**。
アレン「**『2億ボルト・放電(ジャミング)・極(ゴク)』!!**」
アレンが地を蹴った瞬間、海岸の砂浜が一瞬でガラス化した。
雷速の踏み込みに、龍の推進力が加わる。それはもはや、見聞色の覇気ですら捉えきれない「特異点」の速度。
マキナ「……甘い!!」
マキナの槍が、紙一重でアレンの刀を受け止める。
キィィィィィィィィン!!
金属音ではない、空間が軋むような高周波が周囲を襲う。
アレン「**『ボルカニック・インパクト』!!**」
アレンは刀を押し込んだまま、肘の鱗から高圧の火炎ガスを爆発させた。物理的な力に、化学的な推進力が加わる。
マキナの体が、初めて数メートル後退した。
マキナ「……ほう、面白い小細工だ!」
アレン「……小細工じゃないっすよ。本気っす!!」
アレンは空中に跳ね上がると、口内に絶大な熱量と電力を凝縮させた。
**『龍雷・電磁プラズマ・ブレス』**。
青と赤が混ざり合った巨大な熱線が、マキナを呑み込もうと放たれる。
マキナ「……**『灰塵・大断裂』!!**」
マキナは逃げない。
漆黒の覇気を纏った槍を一振り。それだけで、アレンの放った熱線は真っ二つに両断され、背後の海を蒸発させた。
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アレン「……やっぱり、普通にやったんじゃ届かないっすね。……マキナ様は」
アレンは空中で、さらに集中力を高める。
心臓の鼓動をわざと狂わせ、体内のゴロゴロの電力を「古龍」の熱エネルギーで強制的に加速させる。
禁忌の技術――**『過負荷(オーバーロード)・龍神モード』**。
アレンの鱗が、赤から白銀色へと熱変し始める。
アレン「……これ、一瞬しか持たないっすけど。……受けてくださいよ、マキナ様!!」
アレンが消えた。
いや、光になった。
マキナの周囲、八方から同時に漆黒の斬撃が襲いかかる。
**『紅蓮・月牙天衝』**。
一撃一撃が、島の地形を変えるほどの威力。マキナはそれらを全て槍で捌き、あるいは自身の肉体(覇気)で受け流すが、アレンの速度はさらに加速していく。
アレン「……そこだっ!!」
アレンがマキナの死角、上空からの急降下。
刀の先端に、自分の全霊力、全電力、そして龍としての全生命力を一点に集中させる。
マキナが槍を突き出す。
マキナ「……滅べ!!」
衝突。
シャボンディ諸島全域が、一瞬だけ昼間のような明るさに包まれた。
海面は数百メートル陥没し、底の岩盤が露出する。衝撃波は近隣の島々にまで届き、海軍本部の地震計を振り切らせた。
静寂。
土煙が晴れた時、そこには二人の姿があった。
マキナの槍は、アレンの肩を数ミリ掠め、背後のマングローブの根を粉砕していた。
そして、アレンの『天鎖斬月』の先端は――マキナの首筋、わずか数ミリのところで止まっていた。
マキナの頬に、一筋の細い傷ができ、そこから赤い血が流れる。
アレン「……はぁ、はぁ……。……一瞬……。……一瞬だけ、届いた……っすよね?」
アレンは人獣型を維持できなくなり、人間の姿に戻ってその場に倒れ込んだ。全身の毛穴から蒸気が噴き出し、指一本動かせないほどの疲労。
マキナは自分の頬の血を指で拭い、それを慈しむように見つめた。
マキナ「……ああ。……届いたぞ、アレン。……今の貴様の速度、そして一撃……間違いなく、私を超えた瞬間があった」
マキナは槍を消し、倒れ込むアレンの元へ歩み寄った。そして、彼の頭を抱きかかえるようにして膝に乗せる。
マキナ「……見事だ。……死神の右腕。……これで、誰に恥じることもなく、新世界の王座を奪りに行ける」
アレン「……あー、だっる。……死ぬほど疲れましたよ……。……マキナ様、約束……覚えてます?」
マキナ「……ああ。……私が認める強さになった時、望む褒美を何でも一つ、と言ったな」
アレンは朦朧とする意識の中で、ニヤリと笑った。
アレン「……じゃあ、今夜だけ……リースさんのサウナから、俺を救い出してください。……あの狐娘、俺を本当に溶かすつもりっすよ……」
マキナは一瞬呆気にとられ、その後、島の森が震えるほどの高笑いを上げた。
マキナ「……くっ、ははははは!! 良いだろう! 今夜だけは、私の部屋で休むがいい。……リースが来ても、私が追い返してやろう」
アレン「……サンキューっす……。……マキナ様……」
アレンはそのまま、安らかな眠りに落ちた。
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翌朝。
シャボンディ諸島の海域は、昨夜の激闘の名残で霧が立ち込めていた。
リース「……アレン。……サウナの約束、破った。……根に持つ。……新世界の給料、やっぱり10年に戻す」
アレン「えぇぇぇ!? リースさん、それはないっすよ!! マキナ様、助けてください!!」
マキナ「フン、私は寝ていた間の契約には関与せん。……諦めろ、アレン」
アレン「ひどいっす!!」
賑やかな声が、ヘカテ号に響く。
三年前とは違う、圧倒的な覇気を纏った一行。
エリスの銃には冷徹な殺意が宿り、ライカの風は天候を支配し、シズの毒は神をも殺し、ユリナの炎は地獄を焼き、キースの影は深淵と繋がっている。
そして、雷を纏う龍となったアレンと、玉座を待つ女帝マキナ。
マキナ「……アレン、舵を取れ。……もう、隠れる必要はない」
マキナが新世界の空を指差す。
アレン「……了解っす、マキナ様。……新世界の連中、全員拷問する勢いで……全速前進っすわ!!」
新生ヘカテ号が、電磁加速によって海面を跳ねるように加速した。
伝説の三年。
死神たちは今、本当の地獄を、自分たちの「庭」に変えるために、赤の土の大陸を越えていった。
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