シャボンディ諸島の空に舞うシャボン玉を突き抜け、漆黒のヘカテ号は深海へとその船体を沈めていった。
修行を終えた死神海賊団の次なる目的地は、新世界。しかし、その入り口となる魚人島を目指す海底の航路は、平穏とは程遠いものとなった。なぜなら、三年の沈黙を破り姿を現した“女帝”マキナの美貌と威厳は、もはや政府の隠蔽工作すら通用しないほどに、世界中の「欲望」を刺激してしまっていたからだ。
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海底七千メートル。太陽の光も届かぬ深海において、ヘカテ号の周囲には異様な数の船影が蠢いていた。
エリス「……ねぇ、アレン。さっきからあの後ろの船、キモいんだけど。船首にマキナ様の等身大の像(しかも黄金製)を飾ってるわよ。趣味が悪すぎて吐きそう」
エリスが氷の銃を磨きながら、窓の外を指差して顔を顰める。
アレン「……あー、あれっすか。自称『深海の真珠コレクター』とかいう変態貴族の艦隊っすね。さっきから『マキナ様を私のコレクションの最上段に迎えたい』とかいう通信を垂れ流してるんっすわ。だっる」
アレンは操舵席に深く腰掛け、モニターに映る追跡者たちのリストを眺めていた。
修行を終えたマキナの美貌は、もはや「神々しさ」の域に達していた。その冷徹な眼差しに射抜かれたい、その足蹴にされたいという、歪んだ欲望を持つ権力者や海賊たちが、新世界の手前で待ち構えていたのだ。
リース「……ん。……解析完了。追跡船、合計二十四隻。……内訳、変態貴族の護衛艦十二、名を上げたい新人海賊八、マキナ様を妻にしたいという狂った老王の秘密艦隊四。……全艦、武装展開を確認」
マキナ「……フン。羽虫どもが、深海にまで湧いて出るとはな」
マキナは優雅にソファでワインを嗜んでいたが、その周囲の空気は絶対零度よりも鋭く研ぎ澄まされていた。
「アレン。……私は今、非常に機嫌が悪い。魚人島で旨い酒を飲む前に、この泥水のような視線(ノイズ)をすべて消し去れ」
アレン「……了解っす、マキナ様。……ちょうど、新しく手に入れた『これ』の試運転もしたかったところっすわ」
アレンが立ち上がると、その全身から深紅の霊圧が漏れ出し、コーティングされたヘカテ号の船内温度が急上昇し始めた。
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アレン「リースさん、ハッチを開けてください。外に出て一掃してくるっす」
リース「……ん。……コーティングの維持は任せろ。……アレン、やりすぎて船まで溶かすな。……給料15年に増やすぞ」
アレン「それはマジで勘弁っす!!」
アレンはヘカテ号の船外へと飛び出した。本来、深海の凄まじい水圧は生身の人間を一瞬で押し潰すが、今の彼には関係ない。アレンが指を鳴らした瞬間、漆黒の雷と深紅の炎が海中で爆発した。
アレン「**『ドラドラの実(幻獣種モデル:エンシェント・ドラゴン)』……獣型!!**」
ドォォォォォォォォォォォォォン!!
海底に、かつてない絶望の咆哮が轟いた。
アレンの体が膨れ上がり、全長数十メートルに及ぶ「深紅の古龍」へと変貌する。
その鱗は溶岩のように赤熱し、水圧を跳ね返すほどの霊圧を纏っている。アレンの周囲の海水は一瞬で沸騰し、巨大な気泡の塊となって暗闇を照らし出した。
「な……何だ、あの化け物は! 巨大な海王類か!?」
「いや、違う! 龍だ! 赤い龍が深海に現れたぞ!!」
追跡者たちがパニックに陥る。しかし、アレンに容赦はない。龍の姿となったアレンの瞳には、冷徹な「死神」の光が宿っていた。
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アレンは巨大な尾を一振りした。それだけで、水圧を利用した超破壊的な衝撃波が発生し、先頭にいた貴族の護衛艦三隻が紙屑のように粉砕された。
アレン「……まずは、その等身大マキナ様像が気に入らないっすね。……肖像権の侵害っすよ」
龍の口内に、莫大な電力と熱量が凝縮されていく。
**『メテオ・ストライク(極大プラズマブレス)』**。
海底に、一瞬だけ太陽が生まれたかのような光が走った。
放たれたブレスは、海水をプラズマ化させながら一直線に敵艦隊を貫いた。
ドゴォォォォン!! という振動が海底の地殻を揺らし、変態貴族の旗艦は分子レベルまで分解されて消滅した。
さらに、アレンは龍の翼を広げ、周囲の空間を「支配」し始めた。
**『絶対領域:焦土の庭』**。
深海であるにもかかわらず、アレンの周囲数キロメートルは、水が蒸発し、海底の岩盤が赤熱してドロドロの溶岩へと変わり始めた。
「あ、熱い! 海が、海が煮えている!!」
「助けてくれ! 船のコーティングが溶ける!!」
海賊たちの悲鳴が届くが、アレンは冷たく見下ろすだけだ。
アレン「……マキナ様に求婚? ……百年、いや、一億年早いっすよ。貴様らみたいな不純物が、あの人の視界に入るだけで不快なんっすわ。……消えてください」
アレンの咆哮。
**『古龍の咆哮(エンシェント・ロア)』**。
物理的な衝撃波に、ゴロゴロの実の超高周波の電撃が上乗せされる。
逃げ惑う残りの十数隻の船は、内部の回路を焼き切られ、乗組員たちは意識を飛ばし、水圧によって船体ごと圧壊していった。
深海に漂うのは、破壊された船の残骸と、アレンが放つ圧倒的な熱量だけ。
「求婚」という名の襲撃を仕掛けてきた亡者どもは、新世界の土を踏むことすら許されず、海底の藻屑となった。
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アレン「……ふぅ。……これ、獣型はエネルギー消費が激しいっすね。……だっる」
アレンは人間の姿に戻り、リースの誘導によってヘカテ号のハッチへと戻ってきた。
船内に入ると、そこには不機嫌そうに腕を組んだエリスと、満足げに頷くマキナが待っていた。
エリス「おかえり、アレン。……ちょっと、外の海がまだブクブク沸騰してるんだけど。環境破壊もいいとこよ」
エリスが文句を言うが、その顔にはどこか安心した色が浮かんでいる。
リース「……ん。……敵影、完全消失。……アレン、お疲れ。……肉の解凍、お前の熱でやっておいた。……褒美」
リースが、アレンの熱で半焼けになったステーキを差し出す。
アレン「……いや、それ料理っすか? まぁ、いいっすけど……」
マキナがソファから立ち上がり、アレンの元へ歩み寄った。彼女はその白い指先で、アレンの頬に残っていた龍の鱗の名残を優しく撫でた。
マキナ「……見事だ、アレン。不浄な輩をすべて焼き尽くしたか。……貴様の熱、船内まで届いていたぞ」
アレン「……マキナ様。……新世界に入れば、もっとこういう奴らが増えるっすよ。……俺、そのたびに全員叩き潰して、龍のブレスで炭にしてやるんで。……安心して、女王様(マキナさま)でいてくださいよ」
マキナはフッと妖艶に微笑んだ。
マキナ「ああ。……期待しているぞ、私の死神。……さあ、魚人島だ。ロックスの足跡を追い、この海すべてを我々の影で塗りつぶしに行くぞ」
ヘカテ号は、海底の静寂を切り裂き、光り輝く魚人島の光芒へと突き進んでいく。
マキナの美貌は、もはや「災厄」を呼ぶトリガー。
そして、それを守るアレンは、真の「龍神」へと進化を遂げた。
リース「……ところでアレン。……さっきの『焦土の庭』で、ヘカテ号の外装塗装が3%劣化。……給料20年に上方修正」
アレン「リースさん、話が違うっすよぉぉぉぉ!!」
アレンの絶叫が、海底一万メートルの闇に虚しく響き渡った。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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その他(他作品とのクロスオーバー)
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