ONE PIECE 死神伝   作:ぐちロイド

47 / 80
第46話  ゴッドバレー事件:後編「死神の慟哭、神の谷の終焉」

 

 

ゴッドバレーの空は、もはや何色でもなかった。

数多の強者たちが放つ覇気が大気を歪め、光を屈折させ、ただひたすらにどす黒い混濁だけが世界を覆っていた。

 

だが、その混沌を一瞬にして静止させたのは、一人の男の「絶望」だった。

 

アレン「……あ……ああ……」

 

アレンの視線の先。

ロックスの放った闇の奔流と、海軍中将たちの猛攻が重なった地点。そこには、三年間共に地獄を這い、笑い合い、飯を食った仲間の姿があった。

 

ユリナの自慢の料理人の腕は、もはや動かない。

キースの影は実体を失い、地面に力なく溶けている。

シズの毒蜂の羽音は、二度と聞こえることはない。

 

三人の生命の灯火が、このゴミ溜めのような戦場であっけなく踏みにじられた。

 

アレン「……うそ……だろ……。……ユリナ……?……キース……シズ……?」

 

アレンの喉から、掠れた声が漏れる。

修行時代の厳しいメンテナンスも、リースの毒舌も、エリスのツンデレな叱咤も、すべてはこの一瞬のためにあったわけじゃない。

新世界を獲り、マキナを玉座に座らせ、みんなで美味い酒を飲む……その未来が、今、無惨に砕け散った。

 

アレン「……グ……ルゥ……アァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

爆発。

アレンの体内にある『ゴロゴロの実』の雷と、『ドラドラの実』の古龍の血、そして死神としての霊圧が、怒りと悲しみを触媒にして「核融合」を起こした。

 

---

 

 

リース「……ん。……アレン。……熱量が、計測不能。……逃げて、みんな……アレンが、壊れる……」

 

リースの警告は、もはや誰にも届かない。

アレンの体躯は急激に膨れ上がり、深紅の鱗は熱変を通り越し、漆黒に近い「虚無の赤」へと染まっていく。

全長百メートルを超える巨大な**『獣型:エンシェント・ドラゴン』**。

だが、その瞳には理性のかけらもなく、ただ世界を呪う冷徹な殺意だけが宿っていた。

 

アレン「……殺す。……この島にいる……すべてを……灰にするっすわ……」

 

龍の口が開く。

そこには、雷でも炎でもない、次元を焼き切るほどの「高密度プラズマ」が凝縮されていた。

 

ガープ「おい、冗談だろ……! あのガキ、何を持ち出しやがった!!」

 

戦っていたガープが、本能的な恐怖に顔を引き攣らせる。

 

センゴク「……逃げろ、ガープ! 全員島から離れろ!! あれはもう、生物の技じゃない!!」

 

センゴクが叫ぶ。

 

だが、アレンは待たなかった。

 

「**『終焉の咆哮(メテオ・クライ)』……!!**」

 

ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 

放たれたのは、熱線ですらなかった。それは「消滅」の奔流。

アレンの放った極大ブレスは、ゴッドバレーの半分を飲み込み、島の中央を抉り取った。

轟音すら遅れてやってくる破壊。

土、岩、木々、そしてそこにいた数千の海賊と海兵。そのすべてが、一瞬で分子レベルまで分解され、蒸発した。

 

ブレスが収まった後、そこには**巨大な三日月型のクレーター**が、まるで島に刻まれた呪いのように残されていた。

 

マキナ「……あっ……エリス!? ライカ!?」

 

マキナの悲鳴が響く。

アレンの暴走した破壊は、敵味方の区別をつけなかった。

避難が遅れたエリスとライカ。二人は、アレンが放ったブレスの余波に呑み込まれ、その三日月型の深淵の底へと消えていった。

 

アレン「……あ……。……あぁ……」

 

アレンの龍の眼が、自分のしでかした惨劇を捉える。

守りたかった仲間を、自分の力で殺した。

絶望が、アレンをさらなる狂気へと突き落とす。

 

---

 

 

島の北側。

そこには、ガープとロジャーの共闘によって、ついに追い詰められたロックス・D・ジーベックがいた。

 

ロックス「ハァ……ハァ……。流石だな、ガープ、ロジャー……。だが、世界はまだ……俺を……」

 

ロックスが不気味に笑い、最後の闇を練り上げようとしたその時。

 

上空から、漆黒の雷を纏った「死神」が、隕石のような速度で降り立った。

 

アレン「……貴様のせいだ。……全部……貴様の……」

 

アレンは獣型のまま、ロックスの脳天を巨大な鉤爪で踏みつけた。

ガープとロジャーが、驚愕で動きを止める。

 

ガープ「おい、小僧! 止めろ、そいつは俺たちが――」

 

アレン「うるさい。……死ね」

 

アレンは龍の口をロックスのゼロ距離に押し当てた。

 

「**『零距離・断末魔(エンド・オブ・デス)』**」

 

バチィィィィィィィィィィン!!!

 

ロックスの叫びすら許さない。

最強を自称した男の頭部は、アレンの放った至近距離のプラズマによって一瞬で消滅した。

伝説の海賊ロックス・D・ジーベック。

その最期は、ガープでもロジャーでもなく、理性を失った死神の手によって「横取り」される形で幕を閉じた。

 

ロックスの巨躯が、力なく地面に崩れ落ちる。

 

---

 

 

ロックスを殺した瞬間、アレンの巨大な体から、不自然なほど急激に力が抜けていった。

 

アレン「……が、はっ……」

 

漆黒の鱗が剥がれ落ち、巨大な龍の姿が霧散していく。

現れたのは、ボロボロになり、全身の皮膚が焼けただれた人間のアレンだった。

彼は白目を剥き、意識を失ったまま、崩壊した大地へと倒れ込んだ。

 

戦場を支配していた異様な覇気が、嘘のように消えていく。

 

ロジャー「……終わったのか。……こんな、最悪な形で……」

 

 

ロジャーがエースを鞘に収め、三日月型のクレーターを見つめて呟いた。

 

ガープ「……ああ。……だが、世界はこれを『海軍の勝利』とするだろうよ。……こんな地獄、表に出せるわけがねェ」

 

 

ガープは、アレンの倒れている場所を一度だけ見やり、背を向けた。

 

生き残ったのは。

 

血に塗れ、槍を杖にして立ち尽くす船長・**マキナ**。

傷ついたヘカテ号の影から、震える手でアレンを抱き寄せた**リース**。

そして、意識を失い、廃人のようになった**アレン**。

 

シズ、ユリナ、キース、エリス、ライカ。

かつてヘカテ号の甲板を彩った笑顔は、一人も残っていない。

 

リース「……アレン。……起きて。……戦いは、終わった」

 

リースの声が、死の静寂に包まれたゴッドバレーに響く。

だが、アレンは答えない。

彼が目覚めた時、そこにあるのは「最強」の称号ではなく、癒えることのない喪失感だけだ。

 

歴史から消された島、ゴッドバレー。

そこには、神も仏もいなかった。

ただ、すべてを失った死神たちの、慟哭だけが風に舞っていた。

 

マキナは、夕闇に染まる海を見つめ、低く、力強く呟いた。

 

マキナ「……それでも、我々は生きている。……アレン。……リース。……行くぞ。……この地獄の続きを、描きに」

 

漆黒のヘカテ号が、傷ついた翼を広げ、死の島を離れていく。

ゴッドバレー事件、終結。

しかし、それは世界の終わりではなく、新たな「魔王」の誕生を告げる序曲に過ぎなかった。

 

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

  • 精霊
  • フェンリル
  • ドラゴン
  • 吸血鬼
  • 上位悪魔
  • その他(他作品とのクロスオーバー)
  • その他(コメントで書いて下さい)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。