ゴッドバレーの空は、もはや何色でもなかった。
数多の強者たちが放つ覇気が大気を歪め、光を屈折させ、ただひたすらにどす黒い混濁だけが世界を覆っていた。
だが、その混沌を一瞬にして静止させたのは、一人の男の「絶望」だった。
アレン「……あ……ああ……」
アレンの視線の先。
ロックスの放った闇の奔流と、海軍中将たちの猛攻が重なった地点。そこには、三年間共に地獄を這い、笑い合い、飯を食った仲間の姿があった。
ユリナの自慢の料理人の腕は、もはや動かない。
キースの影は実体を失い、地面に力なく溶けている。
シズの毒蜂の羽音は、二度と聞こえることはない。
三人の生命の灯火が、このゴミ溜めのような戦場であっけなく踏みにじられた。
アレン「……うそ……だろ……。……ユリナ……?……キース……シズ……?」
アレンの喉から、掠れた声が漏れる。
修行時代の厳しいメンテナンスも、リースの毒舌も、エリスのツンデレな叱咤も、すべてはこの一瞬のためにあったわけじゃない。
新世界を獲り、マキナを玉座に座らせ、みんなで美味い酒を飲む……その未来が、今、無惨に砕け散った。
アレン「……グ……ルゥ……アァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
爆発。
アレンの体内にある『ゴロゴロの実』の雷と、『ドラドラの実』の古龍の血、そして死神としての霊圧が、怒りと悲しみを触媒にして「核融合」を起こした。
---
リース「……ん。……アレン。……熱量が、計測不能。……逃げて、みんな……アレンが、壊れる……」
リースの警告は、もはや誰にも届かない。
アレンの体躯は急激に膨れ上がり、深紅の鱗は熱変を通り越し、漆黒に近い「虚無の赤」へと染まっていく。
全長百メートルを超える巨大な**『獣型:エンシェント・ドラゴン』**。
だが、その瞳には理性のかけらもなく、ただ世界を呪う冷徹な殺意だけが宿っていた。
アレン「……殺す。……この島にいる……すべてを……灰にするっすわ……」
龍の口が開く。
そこには、雷でも炎でもない、次元を焼き切るほどの「高密度プラズマ」が凝縮されていた。
ガープ「おい、冗談だろ……! あのガキ、何を持ち出しやがった!!」
戦っていたガープが、本能的な恐怖に顔を引き攣らせる。
センゴク「……逃げろ、ガープ! 全員島から離れろ!! あれはもう、生物の技じゃない!!」
センゴクが叫ぶ。
だが、アレンは待たなかった。
「**『終焉の咆哮(メテオ・クライ)』……!!**」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
放たれたのは、熱線ですらなかった。それは「消滅」の奔流。
アレンの放った極大ブレスは、ゴッドバレーの半分を飲み込み、島の中央を抉り取った。
轟音すら遅れてやってくる破壊。
土、岩、木々、そしてそこにいた数千の海賊と海兵。そのすべてが、一瞬で分子レベルまで分解され、蒸発した。
ブレスが収まった後、そこには**巨大な三日月型のクレーター**が、まるで島に刻まれた呪いのように残されていた。
マキナ「……あっ……エリス!? ライカ!?」
マキナの悲鳴が響く。
アレンの暴走した破壊は、敵味方の区別をつけなかった。
避難が遅れたエリスとライカ。二人は、アレンが放ったブレスの余波に呑み込まれ、その三日月型の深淵の底へと消えていった。
アレン「……あ……。……あぁ……」
アレンの龍の眼が、自分のしでかした惨劇を捉える。
守りたかった仲間を、自分の力で殺した。
絶望が、アレンをさらなる狂気へと突き落とす。
---
島の北側。
そこには、ガープとロジャーの共闘によって、ついに追い詰められたロックス・D・ジーベックがいた。
ロックス「ハァ……ハァ……。流石だな、ガープ、ロジャー……。だが、世界はまだ……俺を……」
ロックスが不気味に笑い、最後の闇を練り上げようとしたその時。
上空から、漆黒の雷を纏った「死神」が、隕石のような速度で降り立った。
アレン「……貴様のせいだ。……全部……貴様の……」
アレンは獣型のまま、ロックスの脳天を巨大な鉤爪で踏みつけた。
ガープとロジャーが、驚愕で動きを止める。
ガープ「おい、小僧! 止めろ、そいつは俺たちが――」
アレン「うるさい。……死ね」
アレンは龍の口をロックスのゼロ距離に押し当てた。
「**『零距離・断末魔(エンド・オブ・デス)』**」
バチィィィィィィィィィィン!!!
ロックスの叫びすら許さない。
最強を自称した男の頭部は、アレンの放った至近距離のプラズマによって一瞬で消滅した。
伝説の海賊ロックス・D・ジーベック。
その最期は、ガープでもロジャーでもなく、理性を失った死神の手によって「横取り」される形で幕を閉じた。
ロックスの巨躯が、力なく地面に崩れ落ちる。
---
ロックスを殺した瞬間、アレンの巨大な体から、不自然なほど急激に力が抜けていった。
アレン「……が、はっ……」
漆黒の鱗が剥がれ落ち、巨大な龍の姿が霧散していく。
現れたのは、ボロボロになり、全身の皮膚が焼けただれた人間のアレンだった。
彼は白目を剥き、意識を失ったまま、崩壊した大地へと倒れ込んだ。
戦場を支配していた異様な覇気が、嘘のように消えていく。
ロジャー「……終わったのか。……こんな、最悪な形で……」
ロジャーがエースを鞘に収め、三日月型のクレーターを見つめて呟いた。
ガープ「……ああ。……だが、世界はこれを『海軍の勝利』とするだろうよ。……こんな地獄、表に出せるわけがねェ」
ガープは、アレンの倒れている場所を一度だけ見やり、背を向けた。
生き残ったのは。
血に塗れ、槍を杖にして立ち尽くす船長・**マキナ**。
傷ついたヘカテ号の影から、震える手でアレンを抱き寄せた**リース**。
そして、意識を失い、廃人のようになった**アレン**。
シズ、ユリナ、キース、エリス、ライカ。
かつてヘカテ号の甲板を彩った笑顔は、一人も残っていない。
リース「……アレン。……起きて。……戦いは、終わった」
リースの声が、死の静寂に包まれたゴッドバレーに響く。
だが、アレンは答えない。
彼が目覚めた時、そこにあるのは「最強」の称号ではなく、癒えることのない喪失感だけだ。
歴史から消された島、ゴッドバレー。
そこには、神も仏もいなかった。
ただ、すべてを失った死神たちの、慟哭だけが風に舞っていた。
マキナは、夕闇に染まる海を見つめ、低く、力強く呟いた。
マキナ「……それでも、我々は生きている。……アレン。……リース。……行くぞ。……この地獄の続きを、描きに」
漆黒のヘカテ号が、傷ついた翼を広げ、死の島を離れていく。
ゴッドバレー事件、終結。
しかし、それは世界の終わりではなく、新たな「魔王」の誕生を告げる序曲に過ぎなかった。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
-
精霊
-
フェンリル
-
ドラゴン
-
吸血鬼
-
上位悪魔
-
その他(他作品とのクロスオーバー)
-
その他(コメントで書いて下さい)