ONE PIECE 死神伝   作:ぐちロイド

49 / 80
第48話 精神世界:変わり果てた摩天楼、再契約:死神の覚悟

無人島の夜は、波音だけが静かに響いていた。

 

ヘカテ号の甲板。アレンは独り、月明かりの下で愛刀『斬月』を膝に置いていた。マキナとリースの「愛の地獄」とも呼べる更生カリキュラムが始まってから一週間。肉体はリースの治療とマキナのシゴきで形を取り戻しつつあったが、肝心の「魂」が欠けたままだった。

 

アレン「……はぁ。……出ねぇ。どうしても、奥の方が詰まってる感じがするっすわ」

 

アレンは右手に力を込め、かつて何度も発動させたあの感覚を呼び起こそうとする。漆黒の霊圧、身体を駆け巡る高揚感、そして世界を切り裂く全能感。

 

アレン「……『卍解』……!!」

 

……何も起きない。

ただの虚しい呟きが、夜の潮風に消えていく。以前なら、叫ぶまでもなく意識を繋げるだけで溢れ出した黒い奔流が、今は頑としてアレンの呼びかけを拒んでいた。

 

アレン「……だっる。マジで、俺、空っぽになっちまったのか……?」

 

能力を無理やり心の奥底、絶望の檻に封じ込めた反動だ。二つの悪魔の実と死神の力を強引に蓋したことで、アレンの霊子回路は複雑に絡まり、拒絶反応を起こしていた。下手に無理をすれば、体内で龍の熱と雷が衝突し、自爆して死ぬ。

 

アレン「……しょうがねぇ。一度、あの中(・・)に入って、直接話を聞くしかないっすね」

 

アレンは目を閉じ、深く、深く、己の深層意識へと沈んでいった。

 

---

 

 

目を開けると、そこはかつての「精神世界」だった。

空にそびえ立つ無数のビル群。しかし、以前は活気に満ちていたはずのその場所は、今やゴッドバレーの悲劇を象徴するように、三日月型の巨大なクレーターにえぐられ、瓦礫の山と化していた。

 

空は重苦しい鉛色で、雨は降っていないが、湿った絶望の匂いが立ち込めている。

 

アレン「……ひでぇな。俺の心の中、こんなになってたのかよ」

 

アレンが瓦礫の上を歩き出すと、背後から聞き慣れた、だがどこか楽しげな声が響いた。

 

斬月「――よう。ようやく来たか。情けないツラをしておるのう、アレン」

 

アレンが振り返ると、そこには崩れたビルの屋上の端に、優雅に腰掛ける女性がいた。

漆黒の肌、金色の瞳。紫色の髪を高く結い上げ、橙色の羽織を肩にかけた、凛々しくも妖艶な美女。

 

アレン「……夜一……さん?」

 

斬月の意思。それは以前からアレンの精神世界で、四楓院夜一に酷似した姿と口調で存在していた。

 

アレン「夜一さん、じゃないっすよね。アンタは俺の刀でしょ。……何で卍解させてくれないんっすか。今の俺、マキナ様に殺されそうなんっすわ」

 

斬月「カカッ! 妾(わらわ)が拒んでおるのではない。お主が、妾を見ようとしておらんのだ」

 

夜一(斬月)は屋上から軽やかに飛び降り、アレンの目の前に着地した。猫のようなしなやかな動き。彼女はアレンの胸元を指先で突き、呆れたように鼻で笑った。

 

斬月「見ろ、この惨状を。お主が『仲間を殺したくない』と願って閉ざした檻のせいで、妾も、あの龍も、雷も、みんなこの瓦礫の下で窒息しそうになっておるぞ」

 

---

 

 

アレンが周囲を見渡すと、瓦礫の隙間から、赤い龍の鱗や青い火花が、毒々しい黒い鎖に縛られているのが見えた。

 

アレン「……あの鎖……」

 

斬月「お主が自分で作った『罪悪感』という名の呪いじゃ。お主の力があまりに強すぎるゆえに、その自責の念もまた、神の加護すら捻じ曲げるほどの呪縛となっておる」

 

夜一はアレンの周りを歩き回り、その耳元で囁いた。

 

斬月「アレン。お主は『暴走が怖い』と言ったな。だが、本当は違う。……お主は、力を取り戻した瞬間に、あの五人がいない現実を、再び『力を持った自分』として突きつけられるのが怖いだけじゃ」

 

アレン「……っ、うるせぇよ!」

 

アレンが声を荒げる。精神世界が、彼の感情に呼応して激しく揺れた。

 

アレン「俺のせいで、エリスもライカも……あいつら、俺を見て笑ってたのに! 俺が全部、消しちまったんだ! こんな力、もう二度と……!」

 

斬月「――なら、そのまま死ね」

 

夜一の瞳が、一瞬で鋭く、冷徹な狩人のものに変わった。

彼女の足が、アレンの腹部に目にも止まらぬ速さで叩き込まれる。

 

アレン「が……はっ……!?」

 

アレンは瓦礫の山をいくつも突き抜け、崩壊したビルに叩きつけられた。

 

斬月「お主の主(マキナ)は言ったはずだぞ。『お前の命はもう、お前だけのものじゃない』とな。……お主が力を捨てることは、死んでいった五人の『生きた証』を、文字通りこの世から抹消することに他ならん」

 

夜一は瞬歩でアレンの目の前に現れ、彼の首を掴んで持ち上げた。

 

斬月「妾は斬月。お主の魂そのもの。お主が絶望し、立ち止まるなら、妾がお主を食い殺して終わらせてやろう。……どうする、アレン。このまま、マキナとリースの優しさに甘えて、無能なペットとして一生を終えるか?」

 

アレン「……だっる……い、っすよ……。……ペットなんて、俺の趣味じゃないっすわ……」

 

アレンの右手が、無意識に夜一の腕を掴んだ。

その掌から、小さな、本当に小さな火花が散った。

 

---

 

 

 

アレン「……夜一さん。あんた、口が悪いっすね。……知ってるっすよ。あんたがそうやって俺を煽るのは、俺に『怒り』を思い出させるためでしょ」

 

アレンがニヤリと、かつての不敵な笑みを浮かべた。

 

アレン「悲しみじゃ、力は出ない。……でも、自分への怒りなら、ガソリンになる。……俺は、俺を許さない。……だから、この呪いの鎖ごと、俺の力、全部使い倒してやるっすわ」

 

アレンの霊圧が、内側から鎖をミシミシと押し広げる。

精神世界の鉛色の空に、一筋の青い亀裂が走った。

 

斬月「ホォ……。ようやく目が覚めたか。……だが、忘れるな。封印を解くということは、あの時以上の『地獄の熱』を再びその身に宿すということ。一歩間違えれば、お主は今度こそ、二度と人には戻れんぞ」

 

アレン「……いいっすよ。トカゲでも、化け物でも。……マキナ様の隣に立てるなら、なんだっていい」

 

アレンが夜一の手を振り払い、大地に拳を叩きつけた。

 

アレン「……来い、『斬月』!!」

 

瓦礫の山が爆発し、黒い鎖が次々と弾け飛ぶ。

夜一(斬月)は、満足げに笑い、猫のように目を細めた。

 

斬月「カカッ! 良い返事じゃ。……ならば、まずはこの瓦礫をすべて片付けるところから始めようかのう。……修行の続きは、現実世界で、あの怖い女たちにたっぷり絞られるが良い!」

 

---

 

 

ハッ、とアレンが目を開けると、そこはヘカテ号の甲板だった。

夜風は相変わらず冷たかったが、アレンの身体の芯には、先ほどまではなかった「確かな熱」が灯っていた。

 

アレン「……あー、だっるい。……あの中、あんなに荒れてたなんて……」

 

アレンは立ち上がり、ゆっくりと『斬月』を抜いた。

以前のような、全方位を威圧するような暴力的な霊圧はない。しかし、刀身からは微かな、だが力強い「鼓動」が伝わってくる。

 

アレン「……『卍解』は、まだ無理っすね。……でも」

 

アレンが指先を鳴らす。

パチッ。

小さな、青い火花が闇を照らした。

能力の完全封印は、今、解かれた。

 

マキナ「――ようやく自分の中のゴミ掃除が終わったようだな、アレン?」

 

背後から、冷ややかな、だがどこか安堵したような声。

マキナが、手配書を眺めながら立っていた。その横には、注射器を弄ぶリースもいる。

 

アレン「……マキナ様。……お待たせっす。……とりあえず、火種くらいは取り戻したっすわ」

 

マキナ「……フン。一週間もかかってそれか。……まあいい。アレン、今日から修行のステージを上げる。……貴様のその小さな火花が、新世界を焼き尽くす大炎になるまで、一秒も寝かせんぞ」

 

リース「……ん。……夜の部も、強度が上がる。……アレン、覚悟して」

 

二人の女帝と死神に挟まれ、アレンは天を仰いだ。

 

アレン「……あー、やっぱり、だっるい世界っすわ……。……でも、悪くないっすね」

 

空から、再び一枚の手配書がひらりと落ちてきた。

自分の「28億」の手配書。

アレンはそれを今度は、迷うことなく、青い雷で焼き捨てた。

 

復讐への第一歩。

死神の魂は、再びその刃を研ぎ始めた。

 

---

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

  • 精霊
  • フェンリル
  • ドラゴン
  • 吸血鬼
  • 上位悪魔
  • その他(他作品とのクロスオーバー)
  • その他(コメントで書いて下さい)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。