新世界の荒ぶる海流が、その場所だけは静まり返っていた。
空は重苦しい雲に覆われ、時折、青白い稲妻が音もなく水平線を走る。かつて「ゴッドバレー」と呼ばれた海域から遠く離れた、名もなき冬の島付近。
海賊王を目指す男、ゴール・D・ロジャーは、オーロ・ジャクソン号の甲板で、自らの体を蝕む「死」の気配を感じていた。不治の病。世界を掌握せんとする男に突きつけられた、残酷なタイムリミット。彼は自身の余命が一年余りであることを悟り、最後の航海に決着をつけるべく、双子岬からクロッカスを船医として迎え入れたばかりだった。
ロジャー「……ガッハッハ! クロッカス、早速だが仕事だ。酒を回せ。この喉の痛みは、潮風のせいか、それとも寿命のせいか、確かめてくれ!」
クロッカス「笑い事ではないぞ、ロジャー。貴様の命は、今や薄氷の上にあるのだ」
クロッカスが呆れたように医療鞄を広げた、その時だった。
レイリー「……ん?」
副船長、シルバーズ・レイリーが、眼鏡の奥の鋭い瞳を細めた。
レイリー「ロジャー……。霧の向こうから、とんでもない『重圧』が来るぞ。この気配……まさか」
霧が、まるで意志を持っているかのように左右に割れた。
そこから姿を現したのは、十年前、ゴッドバレーで歴史の裏側に消えたはずの、あの漆黒の船――**『ヘカテ号』**であった。
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オーロ・ジャクソン号のクルーたちに緊張が走る。
シャンクスやバギーといった見習いたちは、その船から漏れ出す圧倒的な霊圧に、立っていることすらままならず膝をついた。
バギー「な、なんだよ……あの船。黒い霧を纏ってて、まるでお化け船じゃねーか!」
シャンクス「バカ言えバギー、ありゃあ本物の『死神』だ……!」
ヘカテ号の舳先には、一人の男が立っていた。
十年前の、どこか危うく、だるそうにしていた少年ではない。
漆黒の死覇装を纏い、背中には巨大な『斬月』を背負い、その全身から青い火花と深紅の龍の覇気を滲ませる、完成された「怪物」。
**“古龍の死神” アレン・コルテス。**
アレン「……あー、だっるい。ようやく見つけたっすわ。……ロジャーさん。アンタの気配、相変わらず派手すぎて探すのが楽で助かったっすよ」
アレンの声は、低く、深く響いた。
その横には、十年の歳月を経て神々しいまでの美貌と王者の威厳を纏ったマキナ、そして冷徹な理知の光を瞳に宿したリースが並んでいる。
ロジャー「……ガッハッハッハ!! まさか本当に生きていたとはな! 死神のガキ……いや、アレン。そのツラ、だいぶ修羅場を潜ってきたようじゃねェか!!」
ロジャーは、激しい咳き込みを抑えながら、満面の笑みでヘカテ号に呼びかけた。
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ロジャーの招きに応じ、アレン、マキナ、リースの三人はオーロ・ジャクソン号の甲板に降り立った。
レイリーが剣の柄に手をかけたまま、アレンを注視する。
レイリー「……アレン。十年前、ゴッドバレーでお前が見せた『暴走』。あれ以来、世界中がお前を探していたが……なるほど、その力を完全に手なずけたというわけか」
アレン「……レイリーさん。……まぁ、いろいろあったんっすよ。……それより」
アレンの瞳が、青い電光を帯びてロジャーを見つめた。
十年の修行で極まったアレンの見聞色の覇気は、単なる気配だけでなく、相手の「生命の残火」までも可視化させていた。
アレン「……ロジャーさん。……アンタ、死ぬんっすね」
その言葉に、甲板が凍りついた。
クロッカスが鋭い視線を送るが、アレンはそれを無視して、ロジャーの胸元を指差した。
アレン「……アンタの細胞、内側からボロボロっすよ。……雷(俺)の視点で診れば、アンタの生命エネルギーの回路が、もう焼き切れる寸前っす。……あと一年、持つかどうか」
ロジャー「……フン。死神を自称するだけあって、目の付け所が違うな、アレン」
ロジャーは隠すことなく笑った。
ロジャー「ああ。不治の病だ。俺の航海は、これが最後になる。……だが、だからこそ会いたかった。……お前たちのような『規格外』が、ゴッドバレーの後に何を思い、何を見てきたのかをな」
マキナが、槍『灰塵』を突き立て、冷徹に告げる。
マキナ「……ロジャー。私たちは、お前に引導を渡しに来たわけではない。……ただ、新世界を終わらせる前に、お前の『最後』を確認しておきたかっただけだ」
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リース「……ん。……解析、終了」
リースが、自律型ビットから投影されたホログラムを見つめながら呟いた。
リース「……ロジャー。……お前の病。……原因は、過剰な覇気の使用による細胞の崩壊、および未知のウイルスによる多臓器不全。……シズが生きていれば、あるいは『毒を持って毒を制す』治療が可能だったかもしれない。……だが、私の今の医療データでは、進行を遅らせるのが限界。……完治は、不可能」
ロジャー「……シズ、か。あの毒使いの嬢ちゃんも、ゴッドバレーで……そうか」
ロジャーが悲しげに目を伏せる。
アレン「……でも」
アレンが、ロジャーの肩に手を置いた。
その瞬間、アレンの指先から、微弱で、だが極めて精密に制御された「青い電流」がロジャーの体内に流れ込んだ。
ロジャー「……っ!? 何だ、痛みが消えて……体が軽い!?」
アレン「……『強制細胞活性(エレキ・リブート)』っすよ。……俺のゴロゴロの力で、アンタの神経系を一時的に再起動したっす。……根本的な解決にはならないっすけど、最後の航海、咳き込んで台無しにするのは嫌でしょ?」
アレンはだるそうに頭を掻いた。
アレン「……ロジャーさん。……アンタが死ぬまでに、この海がどう変わるか。……俺たちが、特等席で見届けてやるっすわ」
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その夜、オーロ・ジャクソン号とヘカテ号は並走しながら、両船のクルー(といっても死神側は三人だけだが)による、静かな、だが熱い酒宴が開かれた。
ロジャー「……アレン。お前の懸賞金、44億を超えたそうじゃねェか。……俺を超えちまう勢いだな!」
アレン「……あー、だっる。……俺、そんなに有名になりたくないんっすけど。……マキナ様が『世界に恐怖を刻め』ってうるさいから……」
マキナ「……当然だ、アレン。……私たちは、失った五人の想いを背負っている。……お前が頂点に立つことが、あいつらへの唯一の供養だ」
マキナがワインを煽る姿に、レイリーが感心したように頷く。
レイリー「……ゴッドバレーの後の十年間。……お前たちが何をしていたかは聞かないが、その眼を見ればわかる。……お前たちは、ロジャーが目指す『自由』とは別の、もっと過酷な『秩序』を獲りに行くつもりだな」
アレン「……秩序、なんて高尚なもんじゃないっすよ。……ただ、マキナ様を玉座に座らせて、邪魔な奴らを俺が全員『掃除』する。……それだけっす」
アレンは、酒を飲みながら、オーロ・ジャクソン号の若手であるシャンクスを見つめた。
アレン(……麦わら帽子。……ロジャーから、あいつへ引き継がれるのか。……でも、この歴史には俺たちがいる)
アレンの指先で、青い火花がパチパチとはじける。
アレン「……ロジャーさん。……最後の航海、邪魔はしないっす。……好きなだけ暴れて、歴史をひっくり返してきてくださいよ。……アンタが死んだ後の世界は、俺たちが責任を持って……もっと『だるくない』場所に変えてやるっすから」
ロジャー「……ガッハッハッハ!! 頼もしいことだ!! アレン、お前なら本当にやりかねねェな!!」
ロジャーは、アレンの差し出した杯を飲み干し、豪快に笑い飛ばした。
死期を悟った男と、死の淵から蘇り、死を司る力を手に入れた男。
二人の間に流れるのは、奇妙な連帯感と、互いへの深い敬意だった。
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翌朝。霧が晴れ、新世界の荒波が再び姿を現した。
ロジャー「……じゃあな、アレン! マキナ、リース! 死ぬんじゃねェぞ!!」
ロジャーの叫び声が、風に乗ってヘカテ号に届く。
オーロ・ジャクソン号は、ラフテルへの、そして世界の真実への最後の一歩を踏み出すべく、黄金の翼を広げて加速した。
アレン「……行ったっすね」
アレンは甲板で、遠ざかるロジャーの船を眺めていた。
彼の隣には、リースの冷徹な眼差しと、マキナの覇気がある。
リース「……ん。……ロジャーのバイタル、一時的に安定。……残り寿命、14ヶ月。……その間に、彼は世界を獲る」
マキナ「……そして、その後に私たちが世界を塗り替える。……準備はいいか、アレン、リース」
マキナが槍を振り上げると、ヘカテ号の漆黒のエンジンが唸りを上げた。
ゴッドバレーから十年。
アレンは、仲間の死を乗り越え、暴走する力を統べ、今や海軍本部すらも恐れる「世界の特異点」となった。
アレン「……了解っす、マキナ様。……まずは、アンタに逆らう不届き者どもを……一人残らず、俺の卍解で黙らせに行くっすわ」
アレンの背負う『斬月』が、共鳴するように黒い霊圧を放った。
死神海賊団、再始動。
ロジャーが作り上げる「大海賊時代」の裏側で、彼らは、誰も知らない本当の「審判」を下すための航海を再開した。
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転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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