ワノ国の空は、新世界のどこよりも高く、透き通っていた。
花の都の喧騒は、三人の「死神」にとっても心地よい休息の場となっていた。アレン、マキナ、リースの三人は、都の茶屋で山盛りの三色団子を平らげた後、腹ごなしを兼ねて都の外れへと足を伸ばしていた。
アレン「……あー、だっるいけど、あの団子はマジで絶品っすね。特にあんこが、前世の記憶にある老舗の味を凌駕してたっすわ」
アレンは満足げに腹をさすりながら、藤山のふもとへと続く街道をぶらぶらと歩いていた。その後ろを、ワノ国の最高級の着物に身を包んだマキナとリースが優雅についていく。マキナは深紅の、リースは夜空のような濃紺の小袖を纏い、都の浪人たちが思わず三度見するほどの美しさを放っていた。
だが、山のふもとに近づくにつれ、アレンの足が止まった。
アレン「……? 何っすか、これ」
アレンの背中に背負われた『斬月』が、共鳴するように微かに震え、黒い霊圧の火花を散らした。同時に、前方の古びた、しかし妙に派手な装飾が施された一軒の家から、異質な「オーラ」が漏れ出していた。
リース「……ん。……この波動、ただの鉄の匂いじゃない。……アレンの斬月や、私の『蛇尾丸』に極めて近い、魂の指向性(ベクトル)を感じる」
リースがモニターを展開し、その家から放出される霊子エネルギーを解析する。
マキナ「……行くぞ。この国には、まだ私の知らない『深淵』があるようだな」
マキナが興味深げに槍の石突で地面を叩き、三人はその奇妙な家――看板に「NO 刀, NO LIFE!」と書かれた工房へと足を踏み入れた。
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工房の扉を開けた瞬間、爆音のようなリズムと熱気が一行を襲った。
刃那比「ヘイヘイヘイ! 鋼が鳴ってるゼ! 魂(ソウル)が叫んでるゼ! チェケラ!!」
そこには、異様な光景が広がっていた。派手なモヒカンに丁髷をミックスした頭、サングラスをかけ、背中に「肆壱〇壱」と書かれたハッピを羽織った女が、タップダンスのような足さばきで金槌を振るっていた。晒しを巻いた豊かな胸元が、打ち込みの衝撃で激しく揺れる。
アレン「……何っすか、このファンキーな姉ちゃんは」
アレンが呆気に取られていると、その女――夜飛神 刃那比は、金槌をピタリと止め、サングラスをずらして三人を見据えた。
刃那比「オゥ……? 珍しい客だゼ。九里の風も鈴後の冷気も運んでこねえ、真っ黒な死の匂いを纏った連中だ。……ん? 待て待て待て、ソコのアんた!!」
刃那比は豹のような動きでアレンに詰め寄り、その鼻先数センチまで顔を近づけた。
刃那比「アンタの背中に背負ってるソレ……ただの『名刀』じゃねえな? 鉄の中に……得体の知れない『魂』が、意志を持って居座ってやがる。……見せな!! 今すぐオレに、そのソウルをぶつけてみな!!」
アレン「え、ちょっ……近いっすよ! 離れてくださいっすわ!」
アレンがたじろぐ中、刃那比は彼の腰から、そしてリースの腰から下げられた得物を見つめ、全身を戦慄させた。
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マキナ「……いいだろう。アレン、見せてやれ。この女、ただの狂人ではない。鉄の声を聴く者だ」
マキナの言葉を受け、アレンは諦めたように溜息をつき、背中の大刀を抜いた。
アレン「……あんまり驚かないでくださいよ。こいつは俺の魂そのものっすから。……『斬月』」
漆黒の刀身が姿を現した瞬間、工房内の空気が一変した。黒い霊圧が渦巻き、周囲の失敗作の刀たちが恐怖したようにカタカタと震え始める。続いてリースも、静かに腰の太刀を抜いた。
リース「……『蛇尾丸』。……解析対象外の、魂の欠片」
刃那比は、二振りの刀を凝視したまま、言葉を失った。サングラスが床に落ち、その美しい、だが狂気的な瞳が露わになる。
刃那比「……ウ、ウソだろ……。これ、これさァ……鉄を打って作ったモンじゃねえ……。魂を、魂そのものを『形』に固定してやがる……」
彼女の指が、震えながら斬月の刀身に触れようとする。
刃那比「……『浅打』から育てたワケじゃねえ……持ち主の内なる世界から直接引き摺り出したのか!? 嘘だゼ……ワノ国の伝説にも、鳳凰殿の記録にも、こんなの存在しねえ! **『斬魄刀(ざんぱくとう)』……!!** 本物が、目の前に、二振りも!!」
刃那比は地面に膝をつき、まるで神を拝むように興奮して叫んだ。
刃那比「チェケラァァ!! 生きててよかったゼ! この世界に、魂を喰らう刃が存在するなんて!! アンタら、これ、どうやって手に入れた!? 誰が打った!? いや、アンタら自身が打ち手なのか!?」
アレン「……いや、これは前世の……って説明してもだるいっすよね。とにかく、俺の一部なんっすよ」
アレンが苦笑いしながら刀を引こうとすると、刃那比はガシィッとアレンの腕を掴んだ。
刃那比「待て、行かさねえゼ! アンタのその力……雷と龍の覇気、この『斬月』に完全に通ってねえだろ!? 宝の持ち腐れだゼ、ブラザー!!」
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刃那比の言葉に、アレンの眉が動いた。
アレン「……通ってない? 俺はいつだって全力で雷を流してるっすよ」
刃那比「ノーノー、甘いゼ! アンタのはただ『上から塗ってる』だけだ! ワノ国にゃあ**『流桜(りゅうおう)』**って概念がある。纏うだけじゃねえ、内側から流し込み、対象の奥深くまで浸透させる技術だ!」
刃那比は工房の隅にある鎖で吊るされた剥き身の刀『鞘伏』オマージュの傑作を指差した。
刃那比「いいか、アンタの雷も龍の力も、今のままじゃ『鎧』でしかない。それを『流体』として刀に流し込み、刃の先から外へ『流す』。そうすれば、斬魄刀の魂(ソウル)とアンタの覇気が完璧にシンクロして、暴走の危険もなく出力を1000%に跳ね上げられる!」
アレン「流し込んで、流す……」
アレンは目を閉じ、刃那比の言葉を反芻した。
十年前、ゴッドバレーで仲間を殺しそうになったあの暴走。それは、力が溢れすぎ、器である自分や刀から「漏れ出した」結果だった。だが、もしそれを意図的に「流し、循環させる」ことができたなら。
リース「……ん。……流桜の概念をアレンのゴロゴロの実の出力に変換すれば……理論上、攻撃範囲を一点に凝縮しつつ、内部からの崩壊を誘発できる。……アレン、やってみて」
リースが解析データを視覚化し、アレンの脳内に送り込む。
アレンは斬月を構え、深呼吸した。
アレン(封じ込めるんじゃない……俺の雷を、龍の熱を、斬月の鼓動に合わせて『流す』んだ……)
パチッ……。
斬月の刀身に、これまでのような荒々しい火花ではなく、静かで、しかし触れるものすべてを消滅させるような「高密度の霊圧の帯」が纏わりついた。
アレン「……っ、これだ。だるくない。力が、俺の意志の先まで繋がってる感じがするっすわ」
刃那比「ソレだゼ! 最高のグルーヴだ! アンタ、やっぱ素質あるゼ!!」
刃那比は興奮してタップダンスを踊りながら、愛槌『零』を振り回した。
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マキナ「アレン。……その感触、忘れるな。それが、新世界でさらに上の怪物どもを葬るための『鍵』となる」
マキナが満足げに頷く中、刃那比がギラギラとした目でアレンとリースを交互に見た。
刃那比「さあ! 授業料は貰うゼ! その『斬月』と『蛇尾丸』、オレに一晩預けな!! 研ぎ直してやる……じゃねえ! オレの『魂振(たまふり)』で、その魂、もっと鮮明に引き摺り出してやるゼ!!」
アレン「え、一晩っすか? いや、それはちょっと……」
刃那比「NO 刀, NO LIFE! 最高の素材を前にして指をくわえて待ってろってのか!? 断ったら、この工房ごと爆破して無理やり奪い取ってやるゼ!!」
刃那比は背負った失敗作の刀をジャキジャキと抜き放ち、挑発するように笑った。
アレン「マキナ様、どうします……? この姉ちゃん、技術は本物っすけど、性格がだいぶだるいっすわ」
マキナ「……構わん。預けてみろ。死神の刃が、ワノ国の異端児の手でどう化けるか……それもまた、一興だ」
マキナの許可が下りると、刃那比は「イエァ!!」と叫んでアレンとリースの手を強引に引き、工房の奥へと連れ込んだ。
刃那比「チェケラ! 今夜はオールナイトで打ち込むゼ! 水槽の水も美女の幻影で満タンだ! アンタらの魂(ソウル)、オレのビートで昇天させてやるぜ!!」
アレン「……なんか、変な意味に聞こえるっすわ」
アレンはだるそうに頭を掻きながらも、自分の力がさらなる高みへと昇ろうとしている確信に、少しだけ胸を高鳴らせていた。
ワノ国の静かな夜に、かつてない激しい金属音と、ファンキーな叫び声が響き渡る。
死神の刃が、今、ワノ国の技術と魂を吸収し、さらなる「厄災」へと進化しようとしていた。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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