ONE PIECE 死神伝   作:ぐちロイド

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第55話 覚醒の予兆:真の名への一歩

ワノ国の夜は更け、鈴後の冷たい風が廃寺の隙間を鳴らしていた。

 

外では刃那比が「NO 刀, NO LIFE!」と叫びながら、新たな合金を求めて金槌を振るう音が断続的に響いている。その喧騒から離れた奥の間で、アレンとリースは互いに背を向け合い、静かに瞑想に入っていた。

 

二人の手元には、刃那比によって打たれた新たな「器」――二刀となった『斬月』と、猛々しく進化した『蛇尾丸』が置かれている。

 

彼らが今成すべきは、肉体の鍛錬ではない。新たな器に馴染もうとする己の「魂」と向き合い、その真の名を、真の姿を、深層意識の底から引き摺り出すこと。

 

 

 

アレン「……行くっすよ、リースさん」

 

 

リース「……ん。……内面世界で、待ってる」

 

二人の意識は、現実の境界を越え、それぞれの精神世界へと沈み込んでいった。

 

---

 

 

 

アレンが目を開けると、そこはかつての「摩天楼」ではなかった。

ゴッドバレーの悲劇、そして仲間を失った絶望を反映した「瓦礫の都」が、どこまでも果てしなく広がっている。空には三日月が二つ。一つは冷たい青い光を、もう一つは禍々しい赤い光を放ち、交差する位置で不吉な漆黒の渦を巻いていた。

 

アレン「……あー、相変わらずだるそうな風景っすね、俺の心の中は」

 

アレンが瓦礫の山を歩き出すと、前方から二つの気配が迫ってきた。

一つは、聞き慣れたしなやかな猫のような足音。そしてもう一つは、地響きを立てるような、巨大な生物の這いずる音。

 

斬月「カカッ! 待ちくたびれたぞ、アレン。その二刀の重み、今の主(ぬし)には少々荷が勝ちすぎてはおらんか?」

 

瓦礫の頂に、黒い肌を月光に濡らした『夜一(斬月)』が立っていた。彼女の瞳はかつてないほど鋭く、その背後には、巨大な「漆黒の龍」が、青い稲妻を纏いながらとぐろを巻いている。

 

アレン「……夜一さん。それに……『ドラドラ』の龍の意識か。……二刀になったってことは、あんたら二人が別々に形を持ったってことっすか?」

 

斬月「半分正解で、半分間違いじゃな」

 

 

夜一は軽やかにアレンの目の前へ着地した。

 

斬月「お主が手にした二刀。長い方は妾(わらわ)、すなわちお主の『死神の力』。そして短い方は、その龍……お主の『本能と悪魔の力』を具現化したもの。……今までのように妾の陰に隠してはおけん。お主は今日から、この暴れ龍を直接飼い慣らさねばならんのじゃ」

 

龍が咆哮を上げる。その衝撃で精神世界のビルが崩落した。

アレンは短刀の斬月を握る感覚を思い出し、龍を見据えた。

 

アレン「……だっるい。……俺が俺の力に飲み込まれるなんて、十年前でこりごりっすわ。……おい、トカゲ。あんたのその熱すぎる覇気、俺の斬撃の一部として大人しく流させてもらうっすよ」

 

龍はアレンの言葉に呼応するように牙を剥く。

夜一は不敵に笑い、アレンの胸に掌を当てた。

 

斬月「良い眼じゃ。……では、教えよう。妾たちの『真の卍解』への入り口をな。……アレン、お主が今まで『天鎖斬月』と呼んでいたものは、あくまで妾の力を借りた仮の姿。……真の卍解とは、妾とこの龍、そしてお主の魂が、一滴の混じり気もなく融け合った時にのみ訪れる『絶望の終わり』の名前じゃ」

 

アレン「……絶望の、終わり……」

 

斬月「……そう。お主がゴッドバレーで失った五人の命。それを『重荷』ではなく『力』として、この二振りに流し込めるか。……それができぬ限り、お主は真の名前を呼ぶことはできぬぞ」

 

アレンは二振りの刀を構え、夜一と龍、二つの巨大な意志に立ち向かった。

 

アレン「……五人の分まで、俺が背負うって決めたんっすよ。……だるいけど、あんたらを纏めて一本の『道』に繋げてやるっすわ!!」

 

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一方、リースの精神世界は、静寂に包まれた「毒の熱帯雨林」であった。

巨大な植物から滴る雫はすべて猛毒であり、空気中にはシズが遺したレシピの如き数千の化学式が光の文字となって浮遊している。

 

その森の中央に、異様な巨体が鎮座していた。

胴体は巨大な狒狒(ひひ)。しかし、その尻尾は岩をも砕く巨大な大蛇となっている。

**『蛇尾丸』。**

 

リース「……ん。……久しぶり。……形が変わった。……不快ではないけれど、少し『重い』」

 

リースが淡々と告げると、狒狒の頭部が低い声で唸った。

 

蛇尾丸『……増長するな、小娘。……器が大きくなったのは、お前だけの功績ではない。……失われた毒使い(シズ)の執念が、我らの牙を研ぎ澄ませたのだ』

 

さらに、蛇の頭部がリースの耳元で冷たく囁く。

 

蛇尾丸『……左様。お前は今まで、狒狒の膂力にばかり頼り、蛇の『毒』と『狡猾さ』を蔑ろにしてきた。……双王の名を冠する今、我ら二つの王を同時に御せぬ者に、真の卍解は許されぬ』

 

リースは静かに、自らのビットを周囲に展開した。

 

リース「……理解している。……力(狒狒)と、理(蛇)。……その両輪が揃って初めて、死神海賊団の軍師としてマキナを支えられる。……シズの遺志は、私の血液に混ざっている。……拒絶は、無意味」

 

蛇尾丸『……ならば見せてみろ! その無機質な魂の中に、どれほどの激情が眠っているかを!!』

 

狒狒が巨大な拳を振り下ろし、蛇が毒の牙を剥いてリースに襲いかかる。

リースは感情を殺した瞳の奥で、青い火花を散らした。

 

 

リース「……蛇尾丸。……お前たちの牙は、私の言葉一つで世界を噛み殺すためにある。……伏して、従え」

 

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精神世界での対話は、肉体的な衝突を超え、魂の「再定義」へと移っていった。

 

アレンは、夜一の猛攻を短い方の刀(龍の力)で受け流し、長い方の刀(死神の力)でカウンターを狙う。だが、二つの力が喧嘩をし、霊圧が四散してしまう。

 

アレン「……クソッ! 混ざらねェ……雷と龍の覇気が、お互いに主権を主張してやがるっすわ!」

 

斬月『カカッ! 当たり前じゃ! お主が片方を「外付けの武器」だと思っておるからじゃ! どちらも、お主自身であろうが!』

 

夜一の言葉がアレンの脳裏を打つ。

 

 

アレン「……そうかっすね。……俺が雷で、俺が龍で、俺が死神だ。……分ける必要なんて、最初からなかったんだ……!」

 

アレンの霊圧が、赤と青の混濁から、透明な「漆黒」へと変化し始める。

二振りの刀が、アレンの手の中で初めて重みを失った。

 

同時刻。

リースもまた、狒狒と蛇の猛攻を、シズの毒の知識を用いた空間制御で封じ込めていた。

 

 

リース「……力は知性によって導かれ、知性は力によって証明される。……狒狒の腕、蛇の牙。……二つで一つ。……これが、私の『双王』」

 

リースの腕に、狒狒の毛皮を模した籠手と、蛇の頭部の刃が完璧な調和を以て定着した。

 

---

 

 

 

アレン「……はぁ……はぁ……」

 

アレンとリースが同時に目を開けた時、窓の外には朝日が差し込み始めていた。

二人の全身からは、昨日までとは比較にならないほど洗練された、静かな、だが深淵のような霊圧が立ち昇っている。

 

アレンが横に置いた二振りの斬月を手に取る。

 

 

アレン「……夜一さん。あんたのもう一つの名前……少しだけ、聞こえた気がするっすわ」

 

斬月『……フム。良かろう。ワノ国の冬が終わる頃までには、その喉から絞り出してみせるが良い』

 

アレンの瞳には、かつてのだるそうな光の中に、一切の迷いがない「死神」の決意が宿っていた。

 

リース「……ん。……リース。……準備、完了。……蛇尾丸の『蛇』の側が、ようやく私を認めた。……次は、卍解のさらに先へ」

 

リースもまた、静かに立ち上がり、蛇尾丸を腰に収めた。

 

部屋の外では、マキナが腕を組んで待っていた。

 

マキナ「……終わったようだな。……顔つきが変わった。……アレン、リース。ワノ国の侍どもに、その進化した魂を刻み込んでやる準備はいいか?」

 

アレン「了解っす、マキナ様。……だるい修行も、これでようやく面白くなってきたっすわ」

 

アレンの二刀が、微かな黒い稲妻を放つ。

彼らはまだ、真の卍解の「名」を完全には手にしていない。

しかし、その入り口に手をかけた死神たちの前には、もはや新世界のどんな怪物も、ただの「獲物」に過ぎなかった。

 

ワノ国の雪を溶かすほどの、漆黒の霊圧が廃寺を満たしていく。

新生死神海賊団。その真の武力が、今、静かに、しかし確実に完成へと近づいていた。

 

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

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