ワノ国の厳しい冬が去り、鈴後の地に薄紅色の桜が舞い始めた。
季節は春。だが、廃寺の広大な荒れ地を支配しているのは、のどかな春の陽気ではない。空間そのものが悲鳴を上げ、大気がねじ切れるような、圧倒的な「暴力の予感」だった。
刃那比「ヘイヘイ! どうしたアレン、リース! 魂(ソウル)のビートが守りに入ってるゼ! もっと内側からブチまけな、流桜(りゅうおう)ってのは『放出』だ。溜め込むんじゃねえ、その先の景色へ流すんだゼ!!」
派手なハッピをなびかせ、刃那比が愛槌『零』を軽やかに振り回しながら叫ぶ。彼女の横には、腕を組み、ただ立っているだけで周囲の重力を数倍に跳ね上げているマキナがいた。
マキナ「アレン、リース。……遊びは終わりだ。今日、ここで貴様らの『完成』を見せろ。できぬのなら、その魂ごとこの地に埋めてやる」
マキナの冷徹な宣告とともに、組手が始まった。
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アレンは二振りの『斬月』を構え、深く腰を落とした。
右手の長刀、左手の短刀。かつては喧嘩し合っていた死神の力と龍の力が、今は一つの大河のようにアレンの体内を巡っている。
アレン「……あー、だっるい。マキナ様、手加減なしっすか。……最高っすね」
アレンの足元から、青い稲妻と黒い霊圧が、まるで生き物のように地面を侵食していく。これまでの「纏う」覇気ではない。刃那比から教わった、内側から外へと無限に循環させる『流桜』の極致。
アレン「……行くっすよ。……はぁっ!!」
アレンが地を蹴った。瞬間、彼がいた場所の岩盤が内部から粉砕され、噴水のように土砂が舞い上がった。アレンの動きは、もはや視認できる速度を超えている。
一方、リースもまた、進化した『蛇尾丸』を手に、刃那比と対峙していた。
リース「……ん。……計算、完了。……力の流動、100%。……狒狒と蛇、それぞれの『意志』を一つの論理(ロジック)で縛り上げる」
リースの腕の籠手が猛々しく脈打ち、蛇の刃が冷たい毒の霧を吐き出す。
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刃那比が金槌を打ち鳴らし、タップダンスのような足さばきで地面を爆破しながら迫る。
刃那比「チェケラ!! 来な、アレン!! その二振りの『真実』を叫んでみな!!」
アレンは空中で二刀を交差させた。
頭の中に、精神世界で聞いたあの「声」が、雷鳴とともに響き渡る。夜一の妖艶な笑い声と、漆黒の龍の咆哮が重なり、一つの「名」となった。
アレン「……分かってるっすよ。あんたらの名前、そして俺の魂の本当の姿。……もう、迷わない」
アレンの全身から、天を衝くほどの漆黒の霊圧が噴き上がった。
アレン「**『卍解』――『二刀斬月』!!**」
姿が変わる。漆黒の死覇装はより洗練され、背中には龍の翼を模した影が実体化する。そして何より、右手の長刀から放たれる死神の絶望と、左手の短刀から放たれる龍の熱量が、完璧な均衡を保って「一つ」の極光へと収束していった。
同時に、リースもまたその真の名を解き放つ。
リース「……逃がさない。……噛み殺せ。……**『卍解』――『双王蛇尾丸(そうおうざびまる)』!!**」
リースの背後に、巨大な大蛇を尾に持つ狒狒の王が幻影として立ち昇る。それは単なる幻ではなく、彼女の覇気が具現化した実体。リースの理性が、二つの暴力を完全に制御(コントロール)していた。
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刃那比「カカッ! 良い、最高だゼ、アンタら!! だが、耐えられるか!? オレの魂の最高傑作、ぶつけてやるゼ!!」
刃那比が、背負っていた無数の失敗作を空中に投げ上げ、それらを金槌で弾き飛ばす。一本一本が流桜を纏い、流星のごとき速度でアレンへと降り注ぐ。
アレンは冷静だった。
二刀を胸の前で十字に交差させる。右手の漆黒と、左手の青白い輝きが混ざり合い、中心点に「虚(ホロウ)」の黒点にも似た、絶対的な崩壊の塊が形成される。
アレン「……ワノ国の荒れ地、少し掃除させてもらうっすわ」
アレンの瞳が、漆黒に染まる。
「**『月牙十字衝(げつがじゅうじしょう)』!!**」
放たれたのは、十字の形をした巨大な斬撃。
だが、それはただの斬撃ではない。流桜の効果により、触れた瞬間にその対象の「内部」へとエネルギーが浸透し、原子レベルで崩壊を連鎖させる。
ズガァァァァァァァァァァン!!
一瞬、世界から音が消えた。
次の瞬間、目の前に広がっていた巨大な岩山、荒涼とした大地、そして地平線の彼方まで続いていた荒れ地が、まるでキャンバスを消しゴムで消したかのように「更地」へと変わっていた。爆発ですらない。そこにはただ、塵一つ残らない「完全な空白」だけが生まれていた。
アレン「……あー。……やりすぎたっすかね」
アレンが着地すると、その一振りだけで、数キロメートルに及ぶ荒れ地が、住宅地をいくつも作れるほどの完璧な平地へと作り変えられていた。
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一方で、リースと対峙していた刃那比は、かつてない戦慄を味わっていた。
刃那比「な、なんだ……この計算し尽くされた殺意は……っ!」
リースの『双王蛇尾丸』が、蛇の如きしなやかさで刃那比の逃げ道を塞ぎ、狒狒の如き剛力で彼女の金槌を弾き飛ばす。
リース「……逃走経路、812通り。……全て封鎖。……王の裁きを受けるがいい」
リースが指を鳴らすと、巨大な狒狒の腕が刃那比を地面へと叩きつけ、同時に蛇の頭部が彼女の喉元にピタリと突きつけられた。
流桜を極めたリースの覇気が、刃那比の体内のエネルギー循環を強制的に停止させる。
刃那比「……が、はっ……」
リース「……おしまい。……刃那比、あなたの負け」
刃那比は、膝をついた。
全身から力が抜け、リースの冷徹な、だが確かな敬意が込められた瞳を見上げる。
刃那比「……チェ、チェケラ……。完敗だゼ、リース。……アンタ、いつの間にこんな、王者の風格まで身につけやがった……」
刃那比は、自分の打った刀が、持ち主の魂とここまで完璧に融け合い、神の如き業を見せたことに、悔しさよりも先に「刀鍛冶としての至福」を感じ、その場にへたり込んだ。
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更地となった広大な平原の真ん中で、マキナがゆっくりと歩み寄ってきた。
マキナ「……フン。合格だ。アレン、リース」
マキナの言葉に、アレンは卍解を解き、だるそうに肩を回した。
アレン「……あー、疲れましたわ。……でも、これでようやく、政府の連中ともう一度遊んであげられるっすね」
リース「……ん。……流桜と真の卍解の統合、成功。……これより、ヘカテ号の再出航準備に入る。……ワノ国の静寂も、今日で終わり」
リースが平然と報告する。
刃那比は膝をついたまま、空を見上げて笑った。
刃那比「イエァ……。とんでもねえ化け物を、オレは解き放っちまったみたいだな。……アレン、リース。……いいか、その刀のソウル、死ぬまで離すんじゃねえぞ。……アンタらが世界の王(トップ)に立つ時、その一振りにはオレのビートも刻まれてるんだからな!」
アレンは、更地になった大地に一輪だけ残った桜の花を見つめ、不敵に笑った。
その背中には、もう迷いも、抑えきれない暴走の影もない。
あるのは、すべてを刈り取り、すべてを統べる「死神」の静かな殺意だけだった。
アレン「……行くっすよ。……俺たちの、本当の『死神海賊団』を世界に見せつけに行くっすわ」
春の風が、新しく生まれた広大な平地を吹き抜けていく。
ワノ国での修行を終えた三人の影が、再び海へと向かって伸びていた。
世界はまだ知らない。
真の姿を取り戻した死神たちが、かつてない絶望と、そして新たな秩序を携えて帰還することを。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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