ONE PIECE 死神伝   作:ぐちロイド

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第57話 邂逅:白ひげ海賊団

ワノ国の滝を下り、再び新世界の荒波へと戻ってから、二年の月日が流れた。

 

その二年間、海軍本部は「死神海賊団」の行方を追い、幾度となくバスターコール級の艦隊を差し向けたが、返ってきたのは「壊滅」の二文字を記した無残な残骸のみであった。アレンの放つ『月牙十字衝』は海を割り、リースの『双王蛇尾丸』は空を噛み、マキナの覇気は海兵たちの戦意を根底から粉砕した。

 

彼らは気まぐれに海軍を蹂躙し、あるいは調子に乗った新世界の海賊たちを「だるい」という一言で海の藻屑に変えながら、ただ静かに、その時を待っていた。

 

そして今、新世界の海に、二つの巨大な伝説が邂逅しようとしていた。

 

---

 

 

 

数日前まで、この海域には世界を震わせるほどの覇気が渦巻いていた。

「海賊王」ゴール・D・ロジャーと、「世界最強の男」エドワード・ニューゲート。二つの怪物が三日三晩、拳と刃を交え、笑顔で別れたという伝説的な戦いの一週間後。

 

白ひげ海賊団の巨大な母船『モビー・ディック号』が、穏やかな海を進んでいた。

 

マルコ「……親父、前方から一隻、妙な船が近づいてくる」

一番隊隊長マルコが、雲を突くような巨体の男、白ひげに見上げた。

 

白ひげ「……グラララ、分かっている。あのどす黒い霊圧と覇気……マリージョアを更地にしたという、あのガキどもか」

 

白ひげは、体の至る所に巻かれた包帯も厭わず、巨大な薙刀『むら雲切』を傍らに置き、悠然と座っていた。ロジャーとの死闘を終えたばかりの彼は、今は戦うことよりも、その戦いの余韻を酒で流し込みたい気分だった。

 

ヘカテ号が、音もなくモビー・ディック号の横に接舷される。

甲板に立つアレンが、だるそうに頭を掻きながら声をかけた。

 

アレン「……あー、お久しぶりっすね、白ひげのオッサン。……今ここでやり合ってもいいっすけど、アンタ、だいぶお疲れみたいじゃないっすか」

 

白ひげは不敵に笑い、大きな酒瓶を掲げた。

 

 

白ひげ「グララララ! 粋なことを言う。ロジャーの野郎とやり合ったばかりでな、今は腹の底まで酒で満たしてぇ気分なんだ。……戦うのが目的じゃねぇなら、上がってこい。死神の酒の味、確かめてやろうじゃねェか」

 

アレン「……了解っすわ。……マキナ様、行きます?」

 

 

マキナ「ああ。世界最強の男の酒、断る理由はない」

 

---

 

 

マキナを先頭に、アレンとリースがモビー・ディック号の甲板へと飛び降りた。

 

その瞬間だった。

 

「……っ!? な、なんだ……この空気の重さは……!」

「おい、息が……っ!?」

 

モビー・ディック号にいた、数千人を超える白ひげ海賊団の若手や新人たちが、一斉に胸を押さえてその場に崩れ落ちた。

 

三人は戦う意志など見せていない。ただ「歩いている」だけだ。

しかし、ワノ国での二年に及ぶ修行を経て、彼らの魂そのものが発するエネルギー――死神としての霊圧と、流桜を極めた覇気が、もはや常人の器に収まるレベルを超えていた。

 

アレンが一歩踏み出すたびに、モビー・ディック号の頑丈な甲板が、霊圧の圧力に耐えかねてミシミシと悲鳴を上げる。彼の全身から無意識に漏れ出す黒い稲妻が、周囲の空間をチリチリと焼き焦がしていた。

 

マルコ「……あ、おい! しっかりしろ! 新人ども!!」

 

 

ジョズやビスタといった幹部級ですら、肌に刺さるような激痛を感じ、無意識に防御の覇気を纏う。

 

だが、並の海賊たちに、その猶予は与えられなかった。

マキナが放つ、王者の威厳を通り越した「絶望の重圧」。

アレンが纏う、龍の凶暴さと死神の冷徹さが混ざり合った「死の気配」。

リースから漂う、全ての論理を否定する「未知の威圧」。

 

ドサッ、ドサササッ!!

 

 

 

「……っ、親父……すまねェ……」

 

 

白ひげの傘下の船長たちでさえも、意識を保てずに白目を剥き、バタバタと甲板に倒れ伏していく。

 

わずか数秒。

モビー・ディック号の甲板に立っていられたのは、白ひげ本人と、マルコをはじめとする極一部の隊長格のみであった。

 

---

 

 

 

アレン「……あー、すんませんっすわ。……これでも、だいぶ抑えてるつもりなんっすけどね」

 

アレンは気絶した海賊たちの山を避けるように歩き、白ひげの前で足を止めた。

白ひげは、自分の息子たちが一瞬で沈められた光景を見ても怒ることはなく、むしろ感心したように目を細めた。

 

白ひげ「……グララララ……。道理で、ロジャーがあいつらには構うなと言うわけだ。……小僧、お前ら、もはや人間(ヒト)の域を捨ててやがるな」

 

アレン「……人間なんて、だるいだけっすよ。……俺は俺の、マキナ様はマキナ様のやり方で、世界の頂点(テッペン)まで行かせてもらうっすわ」

 

マキナが白ひげの正面に立ち、槍『灰塵』を背負い直した。

 

 

マキナ「……ニューゲート。貴様の器、確かめさせてもらった。……私の部下たちが無意識に放つ覇気を受け止めてなお、これほど泰然としていられるとはな。……ロジャーが認めるだけのことはある」

 

リース「……ん。……白ひげ。……細胞組織の強靭さ、推定不能。……だが、蓄積されたダメージも甚大。……酒は、ほどほどにしておくべき」

 

リースの冷静な診断に、白ひげは豪快に笑い飛ばした。

 

 

白ひげ「ぬかせ! 医者の説教はクロッカス一人で十分だ! ……野郎ども! 意識がある奴は酒を持ってこい! 今夜は、この『若き化け物』どもと、夜通し語り合おうじゃねェか!!」

 

意識を保っていたマルコたちが、冷や汗を拭いながら酒樽を運び始める。彼らの視線には、かつての「新顔」を見るような軽視は微塵もなかった。そこにあるのは、自分たちと同じ、あるいはそれ以上の「歴史の主役」に対する、剥き出しの畏怖であった。

 

---

 

 

 

倒れた新人たちが介抱され、モビー・ディック号の甲板には巨大な酒宴の席が設けられた。

 

アレンは白ひげの隣に座り、巨大な杯に注がれた酒を煽る。

 

 

アレン「……なぁ、オッサン。……ロジャーさん、何て言ってました?」

 

白ひげ「……あァ? あの野郎か。……『これからの世界は、俺たちの想像を超えるほど面白くなる』とだけ言い残して、あいつは去っていったよ。……お前らのことを見据えていたのかもしれねェな」

 

白ひげは月を見上げ、遠い昔の戦友を想うように目を細めた。

 

 

白ひげ「……小僧。お前たちが何を成そうとしているのかは知らねェ。だが、この海を壊しすぎるなよ。……俺には、守らなきゃならねェ『家族』がいるんでな」

 

アレンは酒を喉に流し込み、不敵に笑った。

 

 

アレン「……分かってるっすよ。……俺だって、守りたいもんがあるから、ここまで強くなったんっすから。……でも、マキナ様が『邪魔だ』って言ったもんは、例え神様でも、この二刀で斬り捨てるっすわ」

 

アレンの腰に刺さった二振りの『斬月』が、月光を反射して不気味に輝く。

白ひげの覇気と、死神たちの霊圧。

二つの巨大な力が交差するこの夜、新世界の海は、歴史の転換点を静かに見守っていた。

 

白ひげ「……グララララ! 気に入った。……マキナと言ったな、女帝。……お前の時代が来た時、この老兵が邪魔にならねェよう祈っておくことだ!」

 

酒宴は夜通し続き、伝説たちが笑い合う声が、静かな海にどこまでも響き渡った。

それは、嵐のような「大海賊時代」が幕を開ける前の、最後の平穏な夜であった。

 

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

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