巨大な爆鳴の余波が静まり、かつて「無人島」と呼ばれた陸地は、今や海に浮かぶ一軒の小屋ほどの岩礁へと成り果てていた。
その中央、砕けた岩肌の上に、世界最強と謳われた「百獣のカイドウ」が、白目を剥き、体中から漆黒の霊圧を燻らせて大の字に気絶していた。その胸には、アレンの『月牙十字衝』によって刻まれた、決して消えることのない十字の傷跡が深く刻まれている。
アレンは、だるそうに肩で息をしながら、二振りの斬月を鞘に収めた。
アレン「……ふぅ。マジで頑丈っすね、このトカゲ。島一つ分のエネルギーを流し込んだのに、まだ心臓が動いてやがるっすわ」
アレンは気絶したカイドウを一瞥し、空中に浮遊する漆黒の船――ヘカテ号へと跳躍した。
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甲板に降り立つと、そこには腕を組んだマキナと、淡々とデータを記録するリースが待っていた。
リース「……お疲れ様、アレン。……カイドウのバイタル、低下しているが安定。……戦闘継続不能。……完全勝利」
リースの報告に、マキナは不満げに眉をひそめ、海面に浮かぶ「小さな岩礁」を見下ろした。
マキナ「アレン。なぜ息の根を止めなかった? 貴様の今の力ならば、あの怪物を塵に還すことも容易かったはずだ。……私たちの覇道に、あのような『不確定要素』を残しておく理由はどこにある?」
マキナの冷徹な問い。かつての彼女なら、敵対した者は例外なくその魂ごと消滅させていた。アレンはポリポリと頭を掻き、遠い空を見つめながら答えた。
アレン「……あー、いや。マキナ様、あいつはまだ死んじゃダメなんっすよ。……あいつは、この世界の『原作(シナリオ)』において、もっと重要な役割を背負ってるっすから。ここで俺が殺しちゃうと、将来出てくるはずの面白いガキたちの出番がなくなっちまう」
アレンの口から出た「原作」という言葉。マキナはその単語の真意をすべて理解しているわけではなかったが、アレンが時折見せる「未来を見通すような予知に近い直感」を信頼していた。
マキナ「……フン。未来のガキどものための布石か。……貴様がそう言うのなら、良かろう。……あのような敗残兵、いつ殺しても同じだ」
リース「……ん。……マキナの決定を支持。……カイドウ生存ルートを確定。……進路、シャボンディ諸島方面へ。……次の『うねり』が近づいている」
アレンは、二人の美貌を見つめ、満足げに笑った。
アレン「……了解っす。……さ、だるい喧嘩の後は、美味いもん食って寝るっすよ」
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それから一年の月日が流れた。
世界を激震させるニュースが、新聞の紙面を、そして海賊たちの魂を駆け巡った。
**【ゴール・D・ロジャー、ラフテル到達。史上初の『海賊王』誕生】**
その一ヶ月後。
シャボンディ諸島からほど近い、凪いだ海の上。
漆黒のヘカテ号と、黄金のオーロ・ジャクソン号が、再びその舳先を並べていた。
かつてアレンが細胞活性を施したロジャーは、当時よりもさらに「死」の気配を濃くしていたが、その瞳には、この世のすべてを見通したような、晴れやかで、どこか悪戯っぽい光が宿っていた。
ロジャー「……ガッハッハッハ!! 来たな、アレン! マキナ! リース! 会いたかったぞ、この化け物どもめ!!」
ロジャーの豪快な笑い声が、海風に乗って響く。
両船の間に板が渡され、甲板の上には最高級の酒樽が並べられた。
アレン「……ロジャーさん。おめでとうございます、っすね。……本当に辿り着いちゃったんっすか、あの場所(ラフテル)に」
アレンは、かつてのような「だるさ」を見せつつも、ロジャーの全身から溢れ出す圧倒的な「情報の重み」を感じ取っていた。
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宴が始まると、レイリーやシャンクス、バギーたちも加わり、海賊王の誕生を祝う酒宴となった。だが、そこには奇妙な緊張感と、それ以上の深い敬意が漂っていた。
ロジャーは、手にした杯をアレンに差し出し、少し真剣な顔をして問いかけた。
ロジャー「……アレン。お前なら、聞きたいだろ? あの島に何があったのか。……世界の真実が、空白の百年に何が起きたのかを。……俺は、すべてを知った。教えようか?」
その言葉に、周りのクルーたちが息を呑んだ。
世界の王になれる情報。政府がひた隠しにする、歴史の答え。
しかし、アレンは酒を一口煽ると、あっさりと首を振った。
アレン「……あー、結構っすわ。興味ないっす」
シャンクス&バギー「……えっ!?」
シャンクスやバギーが声を上げる中、マキナもワイングラスを傾け、不敵に微笑んだ。
マキナ「ロジャー。貴様が見た真実など、私たちには不要だ。……私たちが欲するのは、誰かが用意した過去の答えではない。……私たちが、自分たちの手で創り上げる『未来の絶望』、そして『新たな秩序』だ」
リース「……ん。……情報の価値は、それを使う者次第。……他人の答えを聞くことは、私の演算能力(プライド)が許さない。……ラフテルに何があろうと、死神海賊団の目的は変わらない」
リースの淡々とした、だが拒絶の意志を明確に含んだ言葉。
ロジャーは一瞬、呆気に取られたように目を見開いたが、次の瞬間、腹を抱えて笑い出した。
ロジャー「……ガッハッハッハ!! 痛快だ! まったくお前らという奴は!! ロックスの影を引きずっているかと思えば、そんな矮小な場所にはもういないんだな!!」
ロジャーは涙を流しながら笑い続け、アレンの肩を叩いた。
ロジャー「……いいか、アレン。俺たちは……早すぎたんだ。……だが、お前たちは、これから来る『最高の時代』の、文字通り死神になるだろうな」
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宴が夜更けまで続き、月が海面を銀色に染める頃。
アレンとロジャーは、船の舳先で二人きりになった。
アレン「……ロジャーさん。あんた、もう決めてるんっすよね。……自首、するんでしょ?」
アレンがぼそりと呟いた言葉に、ロジャーは驚かなかった。
ロジャー「……ああ。俺の命はもう、火が消えかけている。……だが、ただ死ぬのは勿体ねェ。……俺の死をもって、この窮屈な世界をブチ壊す『火蓋』を切ってやるつもりだ」
アレンは『斬月』の柄を撫でた。
アレン「……だるいっすね。……俺たちは、あんたが作ったそのメチャクチャな時代を、後ろから掃除していく係っすわ。……天竜人も、海軍も、あんたの死後に調子づく海賊どもも……俺たちが全部、刈り取ってやるっすよ」
ロジャー「……頼もしいぜ、死神。……お前が、俺の意志を継ぐガキたちの『壁』になってくれるなら、俺も安心して地獄へ行ける」
ロジャーは立ち上がり、ヘカテ号へ戻ろうとするマキナとリースを見つめた。
ロジャー「……マキナ。……アレンを、頼んだぞ。こいつは強すぎるあまり、いつか自分自身の力に焼き切られかねねェ」
マキナ「……言われずとも。アレンは私の魂の一部だ。……リースと共に、最後まで添い遂げる」
マキナがアレンの腰に手を回し、自らの所有権を主張するようにロジャーを見据える。
リースもまた、アレンの腕に静かに寄り添った。
リース「……ん。……アレンのバイタルは、私が管理する。……ロジャー、貴方の死後の世界は、私たちが監視(コントロール)する。……安心して、死ねばいい」
ロジャー「ガッハッハ! そいつは心強い!!」
二つの船は、ゆっくりと離れていく。
海賊王としての航海を終え、死へと向かうオーロ・ジャクソン号。
そして、完成された武力を持ち、次なる時代の「審判」を下すべく闇に潜むヘカテ号。
アレンは、遠ざかる黄金の船に向かって、一度だけ右手を上げた。
アレン「……じゃあな、ロジャーさん。……あんたの作った時代、最高にだるくて面白いものにしてくれよな」
水平線の向こう、夜明けの光が差し始める。
「海賊王」という伝説の終わりと、アレン、マキナ、リースという「死神」たちが支配する、さらに苛烈で、さらに美しい時代の幕開けが、すぐそこまで迫っていた。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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