ONE PIECE 死神伝   作:ぐちロイド

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第61話 時代の産声:海賊王の最期

東の海(イーストブルー)、ローグタウン。

かつて「始まりと終わりの町」と呼ばれたその場所は、今日、世界の歴史が塗り替えられる「終わりの聖域」へと変貌していた。

 

空は重苦しく、泣き出しそうな灰色の雲に覆われている。

広場を埋め尽くす群衆の熱気と、それを抑え込もうとする海兵たちの殺気。処刑台の周囲には、後の時代を担う若き怪物たちが、それぞれの想いを胸にその時を待っていた。

 

その喧騒の最中、広場の片隅にある時計塔の影に、三人の男女が佇んでいた。

彼らは極限までその圧倒的な覇気を殺し、霊圧を内側へと封じ込めている。しかし、その立ち姿には、周囲の凡庸な人間とは一線を画す、深淵のような静寂があった。

 

アレン「……あー、だっる。……人、多すぎっすね。……ロジャーさん、本当に稀代のエンターテイナーっすわ」

 

アレンは深いフードを目深に被り、口元を隠したまま、広場の中央に鎮座する高い処刑台を見上げた。彼の左右には、同じく身を隠すようにマントを羽織ったマキナとリース。

 

マキナ「……当然だ。自らの死を以て、世界という巨大な檻の鍵を開けようとしているのだ。……観客が多くなくては、舞台は成立せぬ」

 

マキナの紅い瞳が、処刑台へ続く階段を歩む一人の男――ゴールド・ロジャーを捉えた。

 

リース「……ん。……バイタル、限界。……アレンが施した『強制細胞活性』の余波も、もう消えかけている。……ロジャー、本当に、今、この瞬間に死ぬために……生きている」

 

リースの淡々とした言葉が、風に溶ける。

三人の視線の先で、海賊王が処刑台の上に座した。

 

---

 

 

 

ロジャー「……ガッハッハ!!」

 

死を目前にしているとは思えない、底抜けに明るい笑い声。

ロジャーは、自分を縛る手錠を嘲笑うかのように、広場全体を見渡した。

 

「……おい、海賊王!! 集めた宝はどうしたんだ!?」

 

群衆の中から放たれた一言。

その瞬間、アレンは肌が粟立つのを感じた。来る。時代が、音を立てて軋み始める。

 

ロジャー「……俺の財宝か? 欲しけりゃくれてやる……」

 

ロジャーの言葉が、世界中の人々の耳を、そして魂を震わせた。

 

ロジャー「探せ! この世のすべてをそこに置いてきた!!」

 

ドンッ!!

 

処刑人の刃が振り下ろされる。

一国の王よりも尊大に、一人の男として、彼は笑って死んだ。

その瞬間、広場には歓声と号泣が爆発し、大海賊時代の幕が開けた。

 

アレン「……言っちゃったっすね。……これで世界は、あんたの思い通りにメチャクチャになるっすよ、ロジャーさん」

 

アレンは、首を落とされた友であり王であった男を、一度だけ見据えた。

広場のあちこちで、若き日のシャンクスが泣き、バギーが叫び、後に七武海や四皇となる男たちが、その瞳に「自由」という名の毒を宿していく。

 

マキナ「……行くぞ、アレン、リース。……見世物は終わりだ。……ここからは、ロジャーの期待に応え、この荒れる海を私たちが『支配』する番だ」

 

マキナが背を向けた。

三人は、熱狂する群衆の中を、逆流するように静かに去っていった。

 

---

 

 

港へと続く裏路地。

喧騒が遠のき、潮の香りが強くなる場所で、その男は待っていた。

 

路地の出口を塞ぐように、巨大な体躯の男が壁に寄りかかっている。

白い正義のコートを羽織り、犬の被り物を無造作に足元に転がした、海軍の英雄。

 

ガープ「……やはり来ておったか。死神のガキども」

 

モンキー・D・ガープが、その鋭い眼光をアレンたちに向けた。

アレンは一瞬、斬月の柄に手をかけようとしたが、ガープから殺気が感じられないことを悟り、だるそうに肩の力を抜いた。

 

アレン「……英雄ガープ。……職務放棄っすか? ロジャーさんの最期、あんたも特等席で見たかったんでしょ」

 

ガープ「……黙れ。わしは非番じゃ。……それよりアレン、お前。……ロジャーの最期、どう見た」

 

ガープが重い一歩を踏み出し、三人の前に立った。

マキナが冷徹に、ガープを見返す。

 

 

マキマ「……見事な最期だった、と言いたいのか? ……否。あれは、世界に向けた最大の『呪い』だ。ガープ、貴様ら海軍が守ろうとしていた秩序は、今この瞬間、あの男の笑い声によって粉々に砕け散ったのだぞ」

 

ガープはしばらく沈黙し、それから豪快に笑い声を上げた。

 

ガープ「……カッカッカ! まったくだ! あやつ、死に際までわしの手を焼きおって!! ……だが、死神よ。お前らがいるからには、これからの海は、ただの『海賊時代』では終わらぬだろう?」

 

ガープの拳が、微かに握りしめられる。

 

ガープ「……アレン。お前はマリージョアを荒らし、カイドウを退けた。……わしはお前を捕らえねばならん立場だが……今日だけは、その気になれん」

 

「アレン……へぇ。嬉しいこと言ってくれるっすね、ジジイ」

 

ガープ「……ただし、一つだけ聞かせろ」

 

 

ガープの覇気が、急激に膨れ上がった。

 

 

ガープ「……お前らは、ロジャーが撒いたこの火種を、どう料理するつもりじゃ。……秩序を壊し、混沌を広めるだけの輩なら……今ここで、わしのゲンコツでお前らを海の底へ沈めてやる」

 

---

 

 

ガープの覇圧に対し、アレンは一歩も引かず、むしろ楽しげに目を細めた。

アレンの全身から、漆黒の霊圧が静かに漏れ出し、路地裏の石畳がチリチリと焼け焦げる。

 

アレン「……料理、なんて大層なことはしないっすよ。……ただ、あんたたちの言う『正義』も、ロジャーさんの言う『自由』も、俺たちにとっては関係ない。……俺たちは、俺たちの仲間(五人)が遺してくれたこの命を使って、マキナ様を本当の『世界の王』にするだけっす」

 

リース「……ん。……解析、終了。……海軍の『正義』には限界がある。……混沌を管理し、新たな理(ことわり)を敷く。……それが死神海賊団の航路」

 

リースの言葉を受け、アレンがガープの目を真っ直ぐに見据えた。

 

アレン「……ガープのジジイ。あんたが可愛がってる部下や、これから出てくるだろう威勢のいいガキどもに伝えておいてくださいよ。……『死神の領域(ナワバリ)』を荒らす奴は、海賊だろうが海軍だろうが、この天鎖斬月でまとめて地獄に送ってやるってな」

 

ガープは、アレンの瞳の奥に宿る「真の卍解」の片鱗を見出し、その背筋に走る戦慄を隠さなかった。

 

ガープ「……カッカッカ! 恐ろしいことよ。……ロジャー、お前の言った通り、このガキは……もはやわしらの時代の手に負える存在ではないわい」

 

ガープは道を譲り、アレンたちの横を通り抜けようとした。

その時、アレンにだけ聞こえるような小さな声で呟いた。

 

ガープ「……あやつ、最期にお前に『例の件』は頼まなかったのか」

 

アレンは足を止め、空を見上げた。

 

 

アレン「……さぁ、どうでしょうね。……でも、もしそんな『約束』があったとしても……俺は俺のやり方で、だるくないように片付けるだけっすわ」

 

ガープは一度も振り返ることなく、人混みの中へと消えていった。

 

---

 

 

 

港に停泊していたヘカテ号へ戻った三人は、すぐに錨を上げた。

ローグタウンの空からは、ついに雨が降り始めていた。それは、過ぎ去った時代への涙か、あるいは新しい時代の産湯か。

 

マキナ「……アレン。ロジャーとの『約束』とは、あの子(エース)のことか?」

 

マキナが甲板で風に吹かれながら問いかける。

 

アレン「……たぶん。……でも、俺はアイツの『保護者』になるつもりはないっすよ。……アイツがアイツ自身の足で立って、俺の目の前に現れた時……その時初めて、俺は死神としてアイツを『試して』やるだけっす」

 

アレンは二振りの斬月を腰に差し直し、水平線の先――荒れ狂う新世界へと視線を向けた。

 

アレン「……さぁ、行こう。……だるいけど、最高に面白い時代の幕開けだ。……まずは、ロジャーがいなくなって調子に乗ってる『四皇』予備軍の連中を、少し黙らせに行きますか」

 

リース「……ん。……次なる目的地、決定。……大海賊時代の覇権、私たちが掌握する」

 

ヘカテ号は、雨を切り裂き、加速する。

背後ではローグタウンが、そしてロジャーの死が遠ざかっていく。

死神海賊団。

彼らが真の「世界の裁定者」として君臨する物語は、ここから、さらに苛烈に、さらに鮮やかに加速していく。

 

大海賊時代。

それは、死神が微笑む時代でもあった。

 

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

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