建国宣言から一週間。新世界の荒波に突如として現れた「ゴッドエデン」は、まさに海の常識を根底から覆す異形の活気を呈していた。
島を囲むのは、リースの演算によって構築された「全方位迎撃型・超大型円形浮遊ドック」。それは数キロメートルにおよぶ巨大な円環状の人工島であり、本島への「関所」として機能していた。
そこでは、対照的な二つの光景が日常となっていた。
一つは、リースの厳格な入国審査をパスし、夢のような理想郷での交易や移住を夢見て目を輝かせる商人や冒険者たちの列。
そしてもう一つは、建国宣言を「世迷い言」と切り捨て、力ずくでこの財宝の山を奪おうと、雄叫びを上げて突撃してくる野蛮な海賊たちの「末路」である。
「ヒッハァー! 死神だか神だか知らねェが、メイドなんざに何ができる! この島は今日から俺たち『ブラッディ・ボーン海賊団』のナワバリだァ!!」
数隻の海賊船が、円形ドックの接岸部へとなだれ込む。
だが、そこに立ちはだかったのは、フリルの付いた純白のエプロンドレスを完璧に着こなした、数人の「プレデター」たちだった。
アルファ「……侵入者を確認。ギルド規定第肆条に基づき、排除を開始します」
先頭に立つギリシャ文字の名を持つメイド、**アルファ(α)**が冷徹に告げると、彼女の背後からリースの開発した「霊子振動刃」が抜かれた。
「メイドが……包丁でも振ってろォ!!」
海賊たちが一斉に斬りかかる。だが、次の瞬間、アルファの姿が掻き消えた。アレン直伝の「瞬歩」である。
アルファ「……遅い」
一閃。
流桜を纏い、超振動する刃が、海賊たちの武器をバターのように切り裂き、その肉体に致命的な「圧」を叩き込む。絶叫すら許されず、野蛮な男たちが次々と円形ドックの床に転がっていく。それは戦闘ではなく、文字通りの「捕食」であった。
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円形ドックの端。そこには、一隻の海軍中型艦が、まるでゴミ回収車のように待機していた。
甲板からその惨状を眺めているのは、まだ若く、しかし既に「怪物」の片鱗を隠しきれない三人の海軍中将たちだ。
ボルサリーノ「……あらら、恐ろしいねぇ。あんな可愛らしいお嬢さんたちが、一瞬で一千人近い海賊を『お掃除』しちゃうなんて。こりゃあ、海軍の出る幕はないよ」
黄色いストライプのスーツに身を包み、サングラスの奥で目を細めるボルサリーノが、間延びした声で呟く。
サカズキ「……徹底的にやりすぎだ。あやつらは『更生』という言葉を知らんのか。……だが、効率的であることは認めざるを得ん」
赤いシャツの襟を立て、不機嫌そうに腕を組むのはサカズキだ。その周囲には、漏れ出す熱気で陽炎が立っている。
クザン「……まぁまぁ、サカズキ。あいつらがこうして『ゴミ』を片付けてくれるおかげで、俺たちは縄をかけるだけで手柄が手に入るんだ。これほど楽な仕事はないぜ」
青いシャツにアイマスクを頭に乗せたクザンが、懐に手を突っ込んで欠伸をする。
彼らは政府の命を受け、この「ゴッドエデン」の実態を調査しに来ていたが、一週間経っても「不法入国者の処刑」という正当防衛以外の隙が見つからず、ただただプレデターたちの圧倒的な武力を見せつけられる日々を送っていた。
そこへ、背後から緊張感のない足音が近づいてきた。
アレン「……あー、だっるい。……やっぱりあんたたち、毎日来てるっすね。海軍も暇なんっすか?」
三人が振り返ると、そこには三色団子を片手に、二振りの斬月を腰にぶら下げたアレンが、メイドの**アルタイル**を伴って歩いてきていた。
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アレンは海軍艦のすぐ傍まで歩み寄り、サカズキの放つ熱気も、クザンの冷気も、全く意に介さない様子で団子を口に運んだ。
アレン「……あ、ボルサリーノのオッサン。昨日回収した海賊、あれ結構な賞金首だったっすよ。仲介料、ちゃんとリースの口座に振り込んでおいてくださいね」
ボルサリーノ「怖いねぇ……アレン君。相変わらずお金にがめついねぇ。……しかし、君が育てたこの『プレデター』とやらは、どうなってんのかね。うちの精鋭部隊でも、これほどの統率力はないよ」
ボルサリーノが皮肉混じりに笑う。
サカズキが鋭い視線をアレンに向けた。
サカズキ「アレン。貴様のやっていることは、実質的な私軍の保有だ。世界政府への叛逆と見なされても文句は言えんぞ。……その首、いつまでも繋がっていると思うな」
アレンは団子の串をペッと吐き捨て、サカズキの顔を正面から見据えた。
アレンの瞳が一瞬だけ、漆黒の霊圧に染まる。
アレン「……怖いっすねぇ。サカズキのオッサン。……でも、あんたらの言う『正義』じゃ、あそこで泣いてたメイドさんたちは一人も救えなかったっすよ。……文句があるなら、いつでもこの島を攻め落としに来ればいいっすわ」
一触即発の空気が流れる。サカズキの右拳がマグマへと変じ、クザンが周囲の海面を凍らせ始める。
だが、その緊張を破ったのはアレンの軽い笑い声だった。
アレン「……まぁまぁ、堅苦しいのは無しっすよ。……せっかく遠いところから来たんだ。……どうすっか? 下手にここでやり合うより、街で一休みしていったらどうっすか?」
アレンは親指で、円形ドックの向こうに広がる美しい街並みを指した。
アレン「……うちのメイドたちが作る飯は絶品っすよ。……あ、勿論、どうしても『戦闘』をご希望なら、俺が直々にブチのめしてあげますけど? 丁度、昨日の修行で少し体が鈍ってるんっすよね」
アレンが『斬月』の柄に手をかけた瞬間、円形ドック全体の重力が一変した。
流桜を極めた彼が無意識に放つ「死」の予感。
クザンは頬を伝う冷や汗を拭い、苦笑した。
クザン「……おいおい、アレン。その誘い方は『歓迎』とは言わねえぞ。……だが、まぁいい。俺はあのアイスクリーム屋ってのが気になってたんだ」
ボルサリーノ「……わしも、あのリースの嬢ちゃんが作ったという最新の通信機器には興味があるねぇ。……サカズキ、たまには羽を伸ばそうじゃないの」
ボルサリーノに肩を叩かれ、サカズキは鼻を鳴らしてマグマの熱を引かせた。
サカズキ「……貴様らの末路を見届けるまで、私は死なん。……案内しろ、死神」
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アレンは、プレデターの**アルタイル**に目配せをした。
アレン「……アルタイル、この『赤い人』と『光る人』と『凍る人』を、中央広場のテラス席へ案内してやって。……粗相(そそう)がないようにな」
アルタイル「……了解いたしました。アレン様。……海軍の皆様、こちらへ。武器の携帯は許可いたしますが、抜刀および能力の使用が確認された場合、即刻、我が国の『害獣』として排除対象に設定いたします」
アルタイルがスカートの裾を掴んで優雅に一礼する。その礼儀正しさの中に潜む、絶対的な殺意。
サカズキたちは、アルタイルの案内で街へと足を踏み入れた。
そこには、かつての奴隷たちが、自分の店を持ち、誇りを持って働く光景が広がっていた。
最新の自動掃除ドローンが道を清め、空飛ぶ運送ビットが荷物を運び、広場では子供たちが笑い合っている。
クザン「……信じられんな。……ここが本当に、新世界のど真ん中か?」
クザンが呆然と呟く。
彼らが今まで見てきた「正義」の名の下にある海軍支部よりも、この「死神の理想郷」の方が、遥かに平和で、幸福に満ちていたからだ。
サカズキ「……ふん。……まやかしだ。強大な武力によって強引に抑え込まれた、偽りの平和に過ぎん」
サカズキはそう切り捨てたが、差し出されたメイド手作りの激辛カレーを一口食べると、そのあまりの美味さに一瞬だけ言葉を失った。
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三人を見送ったアレンは、円形ドックの縁に腰掛け、海を見つめていた。
背後から、無機質な足音と共にリースが近づいてくる。
リース「……ん。……サカズキ、クザン、ボルサリーノ。……脳波および心拍数から、彼らの警戒レベルが15%低下したことを確認。……『ゴッドエデン』の利便性が、彼らの正義を侵食している」
アレン「……リースさん。あいつらも、いつかは大将になって俺たちの前に立ち塞がるっすよ。……でも、今日ここで見た『平和』は、あいつらの心に棘みたいに残るはずっすわ」
アレンは三色団子の最後の一個を口に入れた。
アレン「……『海軍の正義』じゃ作れない世界を、俺たちは作っちゃったんっすからね。……だるいけど、あいつらにも見せてあげたいっすよ。……死神が作った世界の方が、あんたらの世界よりマシだってことを」
海の上では、プレデターたちが次々と海賊船を沈め、その戦利品を整理している。
水平線の向こう、新世界の夕陽が沈んでいく。
アレン「……さて。……マキナ様が待ってるっす。……今夜は海軍の接待費で、贅沢な晩餐にするっすよ」
アレンは立ち上がり、ヘカテ号の影が落ちる美しい街へと歩き出した。
海軍本部、四皇、世界政府。
あらゆる勢力が注目する中、ゴッドエデンは、ただの「国家」を超えた「新時代の象徴」として、その輝きを増していく。
死神が笑い、メイドが舞い、王女が君臨する島。
そこには、誰にも邪魔できない、最高に不敵な「自由」があった。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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その他(他作品とのクロスオーバー)
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