「ゴッドエデン」の建国から月日が流れ、島の周囲はリースの敷設した霊子結界と、アレンが鍛え上げた「プレデター」たちの哨戒網によって、鉄壁の守りを誇っていた。
しかし、新世界の海は常に流動的だ。特に四皇同士の小競り合いや、予期せぬ海流の変化は、時に理想郷の近海にまで「毒」を運んでくる。
アレン「……あー、だっるい。……なんで俺がわざわざ見回りなんてしなきゃならないんっすか。シエルたちだけで十分でしょ、マキナ様」
アレンは、ヘカテ号の設計を凝縮し、漆黒の装甲と最新の霊子エンジンを搭載した小型高速艦『アランカル号』の甲板で、大きく欠伸をした。
シエル「……アレン様、滅相もございません。……マキナ様は、『アレンの覇気を定期的に外海へ放っておかねば、雑魚が寄ってくる』と仰せでした。……それに、本日は我らプレデター選抜組の『実地研修』も兼ねております」
隣で背筋を伸ばし、完璧なメイドの所作で答えるのは、プレデター筆頭・**シエル**。
その背後には、鋭い眼光を海に向ける**アルタイル**と、どこか気怠げながらも隙のない立ち振る舞いの**オメガ**が控えていた。
リース「……ん。……マキナの判断は合理的。……アレンの霊圧、広域拡散により、半径50海里以内の海王類および低級海賊の戦意喪失を確認。……航行、順調」
船内のスピーカーから、本島に残っているリースの無機質な声が響く。
アランカル号は、鏡のような海面を滑るように進んでいた。
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アルタイル「……待ってください。……前方に、異常な高エネルギー反応。……および、空間の歪みを感知」
アルタイルが、リースの補助なしに自らの見聞色で異変を察知した。
アレンもまた、だるそうに閉じていた目を開く。
アレン「……げっ。……マジっすか。……この、胸糞悪い『ねっとりした覇気』と、暴力の塊みたいな『熱い覇気』。……新世界でこれを持ってるのは、あの二人しかいないっすわ」
水平線の彼方、空が割れていた。
片や、巨大な雷雲を纏い、プロメテウスの炎を撒き散らす「ビッグ・マム」シャーロット・リンリン。
片や、青龍の姿で天を舞い、周囲の山々を消し飛ばさんばかりの熱息を吐く「百獣」のカイドウ。
四皇二人が、偶然か必然か、この近海で真っ向から衝突していたのだ。
一撃交わすたびに、海は逆巻き、空は真っ二つに裂ける。その余波だけで、並の海賊船なら木っ端微塵になるほどのエネルギーが全方位に放射されていた。
シエル「……アレン様。……いかがいたしますか? ゴッドエデンの防衛圏内ではありませんが、このままでは海流が乱れ、交易船に影響が出ます」
シエルが冷静に問う。
アレンは一瞬、斬月の柄に手をかけようとしたが、すぐに首を振った。
アレン「……いや、いいっすわ。……あの二人、やり合うと一週間は止まらないっすよ。……関わるとだるいし、マキナ様に『余計な喧嘩を買うな』って言われてるしね。……そっと、気づかれないように立ち去るっすよ。……リースさん、アランカル号のステルス機能を最大にして、全速力で離脱っす」
リース「……了解。……霊子遮蔽カーテン、展開。……微速転舵。……刺激しないよう、静かにお暇(おいとま)する」
アランカル号は、音もなく向きを変え、怪物の宴から距離を置こうとした。
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だが、新世界の神々は、死神の「静かな離脱」を許さなかった。
ビックマム「ゼウス!! プロメテウス!! …おれの邪魔をするなカイドウ!!」
カイドウ「ウォロロロォ!! どけババァ!! **『熱息(ボロブレス)』!!**」
カイドウが放った、山を貫く超高温の熱線。
ビッグ・マムを狙ったその一撃は、彼女の『威国』によって大きく弾かれた。
弾かれた熱線の「先端」――わずか数パーセントの余波が、空間を焼き切り、直進した。
その先にあったのは、ステルスを展開し、回避行動に入っていたアランカル号の船首だった。
ジュッ……、という、嫌な音がした。
アレン「……あ」
アレンの言葉が止まる。
アランカル号の美しい漆黒の船首。リースが心血を注ぎ、マキナが装飾を指示し、アレンが「かっこいいっすね」と自慢していた特注の装甲が。
カイドウの吐息が掠めただけで、飴細工のようにドロリと溶け落ち、見る影もなく変り果てていた。
リース「…………」
船内に、沈黙が流れる。
スピーカーからは、リースの、先ほどまでとは明らかにトーンの違う声が聞こえてきた。
リース「……計測終了。……船首装甲、35%消失。……霊子回路、損傷。……アレン。……私、これ作るのに三ヶ月かけた。……しかも、先月のメンテナンスで、アレンが『絶対にぶつけない』って、約束した。……怒ってる。……私、すごく、怒ってる」
リースの声は静かだったが、それが逆に恐ろしかった。
リース「……マキナにも、報告した。……マキナも、言ってる。……『私の許可なく、私の国の資産を傷つけるとは……そのトカゲ、干物にしてくれる』……って」
アレンは、溶けた船首をじっと見つめていた。
震えていた。
怖さではない。
リースに怒られるという絶望。そして、自分の「家」の一部を、あのだるいトカゲの「外した一撃」で汚されたことへの、沸点を超えた怒り。
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アレン「……シエル、アルタイル、オメガ」
アレンの声が、低く、重く、船底から響くような音に変わった。
彼の周囲から、漆黒の霊圧が物理的な衝撃波となって噴き出す。
シエル「……はい、アレン様」
オメガ「……準備は、できております」
メイドたちが一斉に、メイド服の下に隠した武器に手をかける。彼女たちもまた、自分たちの主が心血を注いだ船を傷つけられ、その魂に火がついていた。
アレン「……あー、だるい。……本当にだるいっすわ。……俺、平和に帰りたかったんっすよ。……リースさんに怒られたくないから、必死に避けてたんっすよ」
アレンがゆっくりと、二振りの『斬月』を抜いた。
その瞬間、アランカル号の周囲の海が、重力崩壊を起こしたかのように凹んだ。
アレン「……なのに。……あのトカゲ野郎、外しやがった。……外して、俺の船を溶かしやがった」
アレンの瞳が、深紅から「完全な虚無」の色へと変わる。
**『卍解』――『天鎖斬月』。**
アレン「……リースさん。……船の修理代、あの二人の首で払わせるっす。……シエル、船の制御を頼むっすよ。オメガとアルタイルは船に飛んでくる攻撃から守ってくれっす……俺は、あのバカどもを、黙らせてくるっすわ」
アレンの背中に、巨大な古龍の翼が展開される。
それは以前カイドウと戦った時よりも、遥かに禍々しく、遥かに巨大な「死」そのものだった。
アレン「……行くぞ、クソトカゲ。……食い散らかしてやるっすわ!!」
ドォォォォォォォォォォォォォン!!
アランカル号の甲板を蹴り、アレンが弾丸となって空へ飛び出した。
その背後には、彼に続くように、黒い稲妻を纏ったアルタイルとオメガが、主の怒りを体現するかのように加速していく。
新世界の空を割っていた二人の四皇。
その中心へと、今、世界で最も怒らせてはいけない「死神」が、文字通りの暴風となって乱入しようとしていた。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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その他(他作品とのクロスオーバー)
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