前回週一程度でっと言いましたが、毎週月曜の23時に週一で死神伝を投稿します。
なので次の投稿は13日になります。引き続き読んでいただけると幸いです。
凪の帯(カームベルト)。
風もなく、海流もない。巨大な海王類たちが微睡むこの死の海域を、アランカル・ミニは霊子エンジンの静かな駆動音だけを響かせて進んでいた。
アレン「……見えてきたっすね。あれが、あんたたちの故郷『アマゾン・リリー』っす」
アレンが船首で顎をしゃくると、ハンコック、サンダーソニア、マリーゴールドの三姉妹が一斉に身を乗り出した。巨大な睡蓮のような形をした島、険しい断崖に刻まれた「九蛇」の文字。
ハンコック「……あぁ。……あぁ……! 懐かしい、私たちの島……!」
ハンコックの瞳から、大粒の涙が零れ落ちる。地獄のようなマリージョア、首を絞める爆弾の首輪、絶望に暮れた日々。それらすべてを越えて、彼女たちはついに「家」へと辿り着いたのだ。
だが、再会の感動に浸る間もなく、島の周囲から無数の小舟――九蛇の快速船が矢のような速さで接近してきた。
「止まれ! 余所者め! ここは男子禁制の聖域、アマゾン・リリーだ!!」
「……男だと!? 忌まわしい、汚らわしい男が九蛇の海域に侵入したぞ!!」
船上に立つのは、蛇を弓に変え、覇気を纏わせた矢を番える女戦士たち。彼女たちの殺気は凄まじく、アランカル・ミニの周囲には、警告を兼ねた「覇気の矢」が次々と突き刺さった。
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アレン「……あー、だるい。……やっぱりこうなるっすよね」
アレンは頭を掻きながら、飛んできた矢の一本を指先でヒョイと受け止めた。
アレン「……落ち着いてくださいよ。……こっちは喧嘩しに来たんじゃないんっすわ。……あんたたちの同胞を、送り届けに来ただけっす」
「黙れ! 男の言葉など信じぬ! 全員、射抜け!!」
戦士たちのリーダー格が叫ぶ。一斉に放たれる覇気の矢の雨。
だが、その雨が三姉妹を貫こうとした瞬間――。
ハンコック「……やめなさい!!!」
ハンコックが叫んだ。
その幼い少女の声と共に、空気が、空間が、世界そのものが激しく震動した。
ハンコックから放たれた無色の衝撃――**『覇王色の覇気』**。
「なっ……!? がはっ……!!」
先頭の小舟に乗っていた戦士たちが、白目を剥いて次々と海へと崩れ落ちる。意識を保っている者たちも、その圧倒的な「王の資質」に気圧され、弓を引く手が止まった。
アレン「……ハンコック。……いい筋っすね。……今の、最高っすわ」
アレンが感心したように彼女の頭を撫でると、ハンコックは一瞬だけ少女の顔に戻って頬を染めたが、すぐに戦士たちに向けて凛とした声を張り上げた。
ハンコック「……私は、九蛇の戦士、ボア・ハンコック! ……マリージョアから、このアレン様に救い出され、ようやく帰還したのだ! ……この御方は、私たちの恩人! 弓を下ろせ!!」
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島の上陸地点。そこには、騒ぎを聞きつけた先代皇帝、ニョン婆(グロリオーサ)が杖を突いて待ち構えていた。
彼女は、アレンから放たれる「底の知れない漆黒の霊圧」と、ハンコックが覚醒させた覇王色を、老練な眼差しで見抜いていた。
ニョン婆「……同胞を救い出したという話、真実であるならば九蛇を代表して礼を言おう。……だが、男よ。……貴様、ただの人間ではないな。……その背後に見える死神の影、そして新世界を騒がせている『ゴッドエデン』の王配……。……そんな危険な男を、この平和な島に入れるわけにはいかん」
ニョン婆は杖を地面に突き立てた。
ニョン婆「……ハンコックたちを引き渡すというのなら、条件がある。……貴様の力が、この島に害をなさぬものか、九蛇の伝統に基づいた『闘技場での試練』を受けてもらう。……我ら戦士百人を相手に、一歩も引かずに立ち回って……」
アレン「……あー、いや、いいっすわ。……そんな面倒なことしなくて」
アレンがだるそうに言葉を遮った。
ニョン婆「……えっ?」
アレン「……俺、別にこの島を支配しに来たわけでも、居座るつもりもないんっすよ。……マキナ様に『送り届けてこい』って言われたから、そうしただけ。……用が済んだら、さっさと帰るっすわ。……家でリースさんのメンテナンスが待ってるんでね」
アレンはひょいとハンコック、ソニア、マリーゴールドを船から降ろし、彼女たちの背中を優しく押した。
アレン「……ほら、行くっすよ。……ここからは、あんたたちの物語っす」
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ハンコック「……お、お兄様! 待ってください!!」
ハンコックが、アレンのコートの裾を必死に掴んだ。
ハンコック「……本当に行ってしまうのですか? ……私は、まだ貴方に何も返していない……! ……いつか、私がもっと強く、もっと美しくなったら……その時は……!!」
アレンは一瞬、足を止め、彼女の方を振り返った。
その瞳には、かつて奴隷だった少女の面影はない。未来の海を統べる「蛇姫」としての、眩いばかりの光が宿っていた。
アレン「……ハンコック。……あんたなら、なれるっすよ。……世界を跪かせる、最高の女帝に。……その時まで、その美しさを磨いておくっす。……もし、またどうしようもなく『だるい』ことに巻き込まれたら……いつでもゴッドエデンを頼るといいっすわ」
アレンは彼女の頭を最後にもう一度撫で、ニョン婆に向き直った。
アレン「……婆さん。……この子たち、頼むっすよ。……天竜人の紋章(ひづめ)を背負ってるかもしれないけど……その魂は、誰よりも誇り高い九蛇の戦士だ。……もし、あんたたちがこの子たちを虐げるような真似をしたら……」
アレンがスッと、腰の『天鎖斬月』の柄に手をかけた。
その瞬間、島全体が「死」の色に染まった。
空は暗転し、大地は震え、九蛇の森に棲む猛獣たちが一斉に悲鳴を上げて逃げ出す。
アレン「……俺が、この島ごと、真っ二つにするっすわ。……冗談抜きでね」
ニョン婆「……っ……!? ぜ、善処しよう。……九蛇の誇りに懸けてな」
ニョン婆は冷や汗を流しながら、死神の脅迫に頷かざるを得なかった。
アレンは霊圧を収めると、軽やかにアランカル・ミニに飛び乗った。
アレン「……じゃあ、みんな。……元気で。……だるいけど、あんたたちを助けて良かったっすよ」
エンジンの音が鳴り響き、小型船が白い波紋を描いて凪の帯を逆走し始める。
水平線の向こうへと消えていく黒い船影を、ハンコックはいつまでも、いつまでも、手を振って見送っていた。
ハンコック「……待っていてください、アレン様。……わらわは必ず……貴方に相応しい女になってみせますわ!!」
その叫びは、死神の耳に届いたかどうか。
アレンは船のキャビンで、リースの持たせてくれた三色団子を頬張りながら、ひとりごちた。
アレン「……あー、やっと一人っすわ。……さて、帰ってマキナ様に報告しないと………」
アレンの乗る船は、黄金に染まる夕陽の中を、一路、ゴッドエデンへと向かって加速していった。
九蛇の歴史に刻まれた、たった一日の「死神の来訪」。
それが、後に「海賊女帝」を誕生させる、最大の転換点となったのである。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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精霊
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ドラゴン
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吸血鬼
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上位悪魔
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その他(他作品とのクロスオーバー)
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