「ゴッドエデン」の建国から幾星霜。
アレン・コルテスという男の名は、今や世界の裏側、五老星や四皇たちの間では「絶対に触れてはならない死神」として定着していた。しかし、当の本人はといえば、相変わらずその肩書きの重さに辟易している。
アレン「……あー、だっるい。……休暇、マジで休暇っすわ。マキナ様もリースさんも、一回スイッチ入ると24時間体制で俺を使い倒すんだから……」
原作開始12年前。
アレンは数年越しにぎりぎりでもぎ取った「完全プライベート休暇」を謳歌するため、単身、小型高速艇を駆って『東の海(イーストブルー)』へとやってきていた。
新世界の嵐や、偉大なる航路の狂った磁場に慣れきったアレンにとって、この「最弱の海」の穏やかさは、まるでぬるま湯に浸かっているような心地よさだった。
アレン「さて、どこ行くっすかね……。何もないのが東の海のいいところっすけど」
海図も広げず、ログポースも無視して、ただ風の吹くままに船を走らせること数日。
アレンの目に飛び込んできたのは、のどかな草原と、ゆっくりと回るいくつもの風車。
どこか懐かしく、そして「物語」の始まりの予感をさせるその島――『ドーン島・フーシャ村』だった。
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港に船を停め、アレンは適当な足取りで村へと入った。
村人たちは、腰に二振りの刀(斬月)を下げ、どこか浮世離れした雰囲気を持つアレンを珍しそうに眺めていたが、彼の放つ「毒」を抜いた穏やかな霊圧のせいか、誰も警戒する様子はない。
アレン「……腹減ったっすね。……まずは酒場っすわ」
村で唯一の酒場『PARTYS BAR』。
木製の扉を押し開けると、カランコロンと涼しげな音が鳴り、中から騒がしい笑い声と、陽気な宴の歌が漏れ出してきた。
シャンクス「ハハハ! 飲め飲め!! 宝払いだ!!」
ラッキー・ルウー「おいおい、頭(おかしら)! またそんなこと言ってマキノさんに怒られるぞ!」
その声に、アレンの足が止まった。
カウンターの奥、赤い髪を無造作に伸ばし、麦わら帽子を背中に垂らした一人の男が、ジョッキを片手に豪快に笑っている。
アレン「……あ。……あの赤髪」
アレンの脳裏に、かつてロジャーの船で「見習い」として走り回っていた、生意気で、それでいて真っ直ぐな瞳をした少年の面影が重なる。
アレン「……よぉ、赤髪。……ずいぶんとデカくなったっすね、シャンクス」
静かだが、喧騒の芯を貫くようなアレンの声。
酒場が一瞬にして静まり返った。シャンクスの部下たち――ベン・ベックマンやラッキー・ルウが、一瞬で「戦士」の目になり、腰の武器に手をかける。
だが、シャンクスだけは違った。
彼はゆっくりと振り返り、アレンの顔を認めると、信じられないものを見たかのように目を見開いた。
シャンクス「…………え、ア、アレン……さん!? 死神のアレンさんか!?」
アレン「……相変わらず声がデカいっすね。……『さん』はいいっすよ。……もう、ロジャーの船にいた頃のガキじゃないんだから」
アレンが歩み寄り、空いているカウンター席にだるそうに腰を下ろすと、シャンクスは破顔した。
シャンクス「ハハハハ!! こいつは驚いた! 10年以上ぶりか!? まさかこんな東の海の果てで、アンタに会えるなんてな!!」
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アレン「……で、シャンクス。……立派に船長やってるみたいっすけど」
アレンはマキノが出してくれた酒を一口飲み、それからシャンクスの「左側」へと視線を落とした。
彼の左袖は、肩のあたりで不自然に結ばれ、風に揺れている。
アレン「……その腕。……どうしたっっすか? あんたほどの男が、この平和な海で、腕一本持ってかれるなんて……何があったんっすか」
アレンの問いに、ベックマンたちが一瞬、複雑な表情を浮かべる。
シャンクスは少しだけ照れ臭そうに鼻を掻き、空いた右腕で傍らにいた小さな少年の頭をクシャクシャと撫でた。
シャンクス「ハハハ! これか? ……いや、ちょっとヘマしちまってな。……このガキを助けようとしたら、近海の主に食われちまったんだ」
シャンクスの影に隠れるようにして座っていたのは、額に大きなガーゼを貼り、真っ赤な目でシャンクスを見つめている、まだ7歳のルフィだった。
ルフィー「……シャンクス……ごめん……おれのために……」
シャンクス「気にするなルフィ! 腕の一本くらい、安いもんだ……お前の命に比べりゃあな!」
シャンクスは豪快に笑う。
アレンは、その光景を黙って見つめていた。
原作の知識として知ってはいた。だが、実際に目の前で、かつての見習い少年が、新時代の「種」を守るために自らの体の一部を賭けた事実を突きつけられ、胸の奥が熱くなるのを感じた。
アレン「……ルフィ、っすか。……いい名前っすね。……おチビさん、あんた、この赤髪に命を救われたんだ。……そりゃあ、一生かかっても返しきれないほどの『借金』っすよ」
アレンがルフィに視線を向けると、ルフィは涙を拭い、力強く言い返した。
ルフィー「わかってるよ! おれ……おれはいつか、シャンクスみたいな、すげェ海賊になるんだ! ……それで、シャンクスたちよりもっと強くなって、世界一の宝を見つけて……!!」
アレン「ほう……海賊王に、なるってか?」
アレンが微かに霊圧を漏らす。普通の子供なら腰を抜かすような重圧。だが、ルフィはその大きな瞳をそらすことなく、真っ直ぐにアレンを見つめ返した。
ルフィー「……ああ、なるぞ! 海賊王におれはなるっ!!」
アレン「…………ハハッ、言うっすね」
アレンは思わず笑ってしまった。ロジャーと同じ言葉。同じ熱量。
このガキこそが、自分が「原作を壊さないように」と守り続けてきた未来の正体。
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アレン「……シャンクス。……本気なんっすね」
シャンクス「ああ。……アレンさん、アンタならわかるだろ。……こいつを見てると、あの時のロジャー船長を思い出すんだ。……おれは、この新時代に『賭けて』きた」
シャンクスの瞳には、一切の後悔も、曇りもなかった。
腕を失った代わりに、彼は未来という名の確信を手に入れたのだ。
アレン「……だるいっすねぇ。……アンタも、ロジャーさんも、そんな格好いいことばっかり言って。……残された側の気持ちも考えてほしいっすわ」
アレンは三色団子の串を口に咥え、ルフィをひょいと抱え上げた。
アレン「……いいっすか、ルフィ。……この赤髪のオッサンが賭けたのは、単なる腕じゃない。……世界をひっくり返すための『希望』っす。……絶対に、中途半端な男になるんじゃないっすよ」
ルフィー「わかってるってば! おれはやるぞ!!」
アレン「……よし。……じゃあ、お近づきの印に、俺からも一つプレゼントっす」
アレンは、自身の懐から小さな、しかし眩いばかりの青い石を取り出した。ゴッドエデンの霊子を極限まで圧縮した、最高純度の護符。
アレン「……これを持っておくっす。……あんたが本当に死にそうになった時、一度だけ俺が助けに来てあげる……かもしれない、お守りっすわ」
ルフィー「うおぉ! すげェ! きれいな石!! ありがとう、おっちゃん!!」
アレン「……『おっちゃん』はやめてほしいっすけどね……」
アレンは苦笑しながら、シャンクスとグラスを合わせた。
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その夜、フーシャ村の酒場では、かつてないほど盛大な宴が繰り広げられた。
アレンはシャンクスと肩を組み、ロジャー時代の思い出話や、今の新世界の情勢、そしてマキナやリースの「恐ろしさ」について語り合った。
シャンクス「……ヒェ〜! アレンさん、相変わらず女性陣に尻に敷かれてるんだな! あの美しい統治者マキナ様が、そんなに怖いなんて信じられねェよ!」
アレン「……シャンクス。……あんたも、いつかゴッドエデンに来るといいっすよ。……リースのメンテナンス(拷問)を受ければ、その『新時代への賭け』がどれだけ甘っちょろいか分かるっすわ」
シャンクス「ハハハ! それは勘弁だ! おれは自由な海が一番だよ!」
宴の喧騒の中、アレンはふと、窓の外の月を見上げた。
腕を失ったシャンクス。そして、その意志を受け継ぐルフィ。
物語の歯車は、着実に、力強く回り始めている。
アレン「……マキナ様、リースさん。……俺の休暇、もう少しだけ延びそうっす。……この『新時代』、もう少しだけ近くで見ておきたくなったっすわ」
アレンの呟きは、陽気な宴の歌声に溶けて消えた。
死神が立ち寄った小さな村。そこで交わされた約束と、託された想い。
大海賊時代の真の幕開けまで、あと12年。
アレン・コルテスは、自分たちが創り上げたゴッドエデンが、この少年が作り出す未来とどう交差するのか。それを楽しみに、静かに酒を煽るのだった。
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