ONE PIECE 死神伝   作:ぐちロイド

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第86話 楽園への浸食、黒い毒と死者の人形

 

 

スレナとヴァイパがゴッドエデンの傘下に加わり、マキナによる容赦のない「女王の洗礼(教育)」とリースの先進医療を経て、その強力な武力を国のために振るい始めてから数ヶ月。

新世界の海には、いつになく不気味で澱んだ空気が漂い始めていた。

 

ヴァイパ「……ねぇ、アレンお兄さん。最近、ウチらが前にいた海域の方でさ、なんか変な噂が回ってるんだよねー☆」

 

王宮のテラスで、相変わらず胸元を大きく開けた革の上着を揺らしながら、ヴァイパがストローで炭酸飲料を啜りつつ言った。

 

アレン「変な噂っすか?」

 

ソファでだらりと寝転び、新世界特産の甘味を口に放り込んでいたアレンが、眠そうな目を半分だけ開けて問い返す。

 

スレナ「ああ。ワシの耳にも入っている」

 

隣で腕を組み、金髪のボブカットを風になびかせたスレナが、低い声で言葉を継いだ。

 

スレナ「『一粒飲めば、どんな過酷な労働も痛みを忘れてこなせる』……。あるいは『どんな格下の悪党でも、一瞬で覇気使い並みの力を得られる』という、奇妙な錠剤(ドラッグ)が闇市場で急速に出回っているらしい。名を通称、**『黒い洗礼(ブラック・ルキア)』**。出所は一切不明だ」

 

アレン「へぇ……。痛覚麻痺に、一時的な身体能力のブーストっすか。数ヶ月前にあんた達が撃ち込まれたあの狂化薬と、何だか似たような嫌な臭いがするっすね」

 

アレンが身を起こしたその時、テラスの自動扉が静かに開き、ホログラムのウィンドウを無数に浮かべたリースが、いつも以上に無機質で冷徹な瞳を光らせて歩み寄ってきた。

 

リース「……アレン、マキナ。およびスレナ、ヴァイパ。……緊急事態。……ゴッドエデン下層の港湾検問所にて、異常な霊子反応および特定有害化学物質の流入を感知。……私が先週配備した『新型・多機能麻薬探知自動警備システム(バイオ・スキャナー)』が作動した」

 

リースの言葉に、その場にいた全員の表情が引き締まる。

世界政府の干渉すら跳ね除け、独自の技術と圧倒的な武力で新世界に君臨する絶対の中立国家、ゴッドエデン。その強固な防壁を潜り抜け、件の「毒」を持ち込もうとした愚か者が現れたのだ。

 

---

 

 

 

アレン「……行くっすよ。ウチのシマにそんな怪しいもん持ち込もうとした奴がどんな面拝してるか、確かめないとね」

 

アレンを筆頭に、リース、そして実戦訓練を兼ねてスレナとヴァイパの四人は、瞬時に下層の港湾ゲートへと転送(テレポート)した。

 

ゲート前では、プレデターの警備兵たちが、一人の薄汚れた身なりの男を取り囲んでいた。男は新世界のどこにでもいるような、しがない闇のブローカー風の商人だった。だが、彼の前には、リースの開発した浮遊型探知機が赤く明滅しながら、不気味な警告音を鳴らし続けている。

 

『警告。対象の携行貨物内から、未登録の神経変性有機化合物、および未知の微弱な電磁誘導物質を検出。危険度、レベル4』

 

「な、なんだよこれは! ワシはただ、この国で新しく商売を始めようと、珍しい香辛料や強壮剤を持ってきただけだ! 濡れ衣だ、国家の横暴だぞ!」

 

男は必死に声を荒らげ、冷や汗を流しながら周囲のプレデターたちを睨みつけていた。

 

リース「……見苦しい」

 

リースが一歩前に出ると、男の背後にあった頑丈な鉄製のトランクが、彼女の遠隔操作(ハッキング)によってガチリと音を立てて強制開錠された。

 

パカッと開いたトランクの奥。厳重に梱包された香辛料の瓶のさらに底から、どす黒く濁った、しかしどこか妖しく明滅する漆黒の錠剤が詰まった小瓶が、何十本も姿を現した。

 

ヴァイパ「あーあ。思いっきりアウトじゃん、おじさん☆ ウチらの探知機、世界政府の最新鋭よりも100倍優秀なんだから、隠し事なんて無理無理〜!」

 

 

ヴァイパが呆れたようにため息をつく。

 

スレナがその大柄な体躯で男に影を落とし、紫色のプラズマの火花を指先で弾かせながら、凄まじい威圧感で問い詰めた。

「おい。これが今、新世界を騒がせている『黒い洗礼』だな? 貴様、これを我がゴッドエデンの民に売り捌き、内側から国を腐らせるつもりだったのか。……誰に頼まれた。吐け。さもなければ、この場でその脳味噌をプラズマで消し炭にしてやる」

 

---

 

 

 

男はスレナの覇気に圧され、ガタガタと膝を震わせた。アレンの「死の霊圧」もまた、男の退路を完全に塞いでいる。もはや言い逃れは不可能だった。

 

「ひ、ひぃっ……! わ、ワシは悪くない! ワシはただ、新世界の闇ルートで『これをゴッドエデンの下層の酒場に流せば、一生遊んで暮らせるほどの金をやる』と、あの男に言われて……!」

 

アレン「……『あの男』? 誰っすか、そいつ。名前か、あるいはそいつがいた場所を教えるっす」

 

アレンが静かに、しかし有無を言わせぬトーンで男の顔を覗き込んだ。

 

「そ、それは……、その男の名前は……、ア、アッ……」

 

男がその名前を口にしようとした、まさにその瞬間だった。

 

「――が、はっ……!?」

 

突如として、男の言葉が途切れた。

男は自分の喉を両手で激しく掻きむしり、その瞳が、白目を剥くほどに大きく見開かれた。

 

スレナ「おい、どうした!? 演技なら通用せんぞ!」

 

スレナが不審に思って手を伸ばそうとしたが、アレンが「待て、スレナ!」と叫んで彼女の服の襟を強引に後ろへと引き剥がした。

 

「あ、ガ、グギギギギギギギギッ!!!」

 

男の口から、どす黒い、ヘドロのような血液が大量に噴き出した。それだけではない。男の皮膚の下を、まるで無数の蟲が這い回っているかのように、血管が不気味に黒く膨れ上がり、激しく波打ち始めたのだ。

その体表面からは、数ヶ月前にスレナたちが暴走した時と酷似した、あの不浄な「どす黒いオーラ」が、陽炎のように立ち上っていた。

 

リース「……っ! 体内の霊子バランスが急激に崩壊。……細胞の自己融解および、心臓の強制停止シグナルが、脳幹から直接発信されている。……これは、毒ではない。体内のファクターが、外部からの命令で『自爆』している……!」

 

 

リースが目まぐるしくホログラムを操作しながら叫ぶ。

 

「アハ……、あははははは!! 『神』の……、お、仰せの、ままに……!!」

 

男は、自分の意志ではない「何者かの声」をその喉から発するように、狂ったような引きつった笑みを浮かべた。そして次の瞬間、彼の身体のすべての血管が内側から一斉に弾け飛び、男は大理石の床にどす黒い血の海を広げながら、ピクリとも動かなくなった。

 

即死だった。

そこには、証拠を隠滅するため、喋ろうとした瞬間に命を刈り取るという、冷酷極まりない「仕掛け」の痕跡だけが残されていた。

 

---

 

 

 

アレン「……だるいっすねぇ。本当に、胸糞悪い真似をしてくれるっすわ」

 

アレンは泥を払うように息を吐き、死体となった男を見下ろした。

現場は騒然となったが、プレデターたちは即座に動き、死体の回収と周囲の除染作業を開始した。

 

数時間後、王宮の最深部にあるリースの研究室(プラント)。

巨大なカプセルの中に保管された男の死体と、押収された漆黒の錠剤『黒い洗礼』のサンプルを前に、マキナ、アレン、リース、そしてスレナとヴァイパが集まっていた。

 

マキナ「……リース。解析の結果はどうだ。あの男の死、そしてこの毒の正体は」

 

玉座に似た椅子に腰掛けたマキナが、冷徹な声で尋ねる。

 

リースは、いくつかの分子構造モデルと、男の脳の断層スキャンデータを空中に展開した。

 

リース「……結果を報告する。非常に、不愉快かつ脅威度の高いテクノロジー。……この『黒い洗礼』と呼ばれるドラッグは、単なる麻薬ではない。……これを一度でも摂取した人間は、体内の細胞、および神経系を、特定の『霊子波形(あるいは電磁波)』に対して極めて過敏に同調するよう、強制的に書き換えられる」

 

アレン「同調……? つまり、どういうことっすか?」

 

アレンが腕を組んで尋ねる。

 

リース「……一言で言えば、**【遠隔操作の人形】**。……この薬を飲んだ者は、どれだけ離れた場所にいようとも、発信源となる『親機』を持つ者の命令に、肉体ごと支配される。意識が残っていても、身体が勝手に動く。……そして、先ほどの男のように、秘密を漏らそうとしたり、親機の持ち主が『死ね』と念じるだけで、脳内の神経物質が過剰分泌され、心臓と全身の血管を強制的に爆発させることができる」

 

リースの恐るべき解析結果に、ヴァイパが自分の身体を抱きしめるようにして、ゾッと身震いした。

 

ヴァイパ「じゃ、じゃあ何……? あのおじさん、自分の意志でウチらの国に麻薬を売りに来たんじゃなくて、誰かに『操られて』来させられたってこと……?」

 

リース「……その可能性、94.2%。……そして、数ヶ月前にスレナとヴァイパが襲われたあの針。……あれは、この薬の成分を濃縮し、強制的に一瞬で『最大同調状態(暴走)』に引き上げるための試作品。……今回の錠剤は、一般の人間や、海賊たちに広く深く浸透させるための『普及版』」

 

話の規模が、一海賊の嫌がらせの域を完全に超え始めている。

新世界に流通しつつあるこの『黒い洗礼』。それがもし、何万人、何十万人という人間に摂取されれば、その供給元は、一瞬にして世界中に「絶対に裏切らない、いつでも自爆させられる不死身の人形兵団」を手に入れることになるのだ。

 

---

 

 

 

マキナ「……フフ。面白い、実に面白いではないか」

 

沈黙を破ったのは、マキナの冷たい笑い声だった。その紅い瞳には、ゴッドエデンの絶対的な支配者としての、激しい憤怒と、それを遥かに凌駕する「狩猟」の愉悦が宿っていた。

 

マキナ「我が楽園を、自らの操り人形の実験場にしようなどと……。どこの馬の骨か知らぬが、その不遜な首、私の足元に転がしてやらねば気が済まんな」

 

アレン「マキナ様……。リースの追跡データだと、これの製造元、やっぱりあの『百獣海賊団』か、あるいはそれと繋がってる闇の組織の線が濃厚っす。……カイドウのオッサンか、あるいはその裏で糸を引いてる『ジョーカー(ドフラミンゴ)』あたりか……」

アレンが斬月の柄を優しく叩きながら言った。

 

アレン「誰であれ、関係ないっすよ。……ウチのプレデターたちや、この国の民に手を出す前に、探知機で防げたのはリースの手柄っすね」

 

リース「……ん。アレンに褒められるの、悪くない。……すでに、この『黒い洗礼』の電磁波シグナルを完全に無効化し、逆に発信源を逆探知するための『妨害・追跡ビーコン』の試作に入っている。……次、我が国にこの波形が近づけば、その発信元の居場所を、世界のどこであろうと特定する」

 

リースの頼もしすぎる言葉に、スレナが不敵に拳を打ち鳴らした。

 

スレナ「へっ、上等じゃねェか! ワシらを一度は狂わせ、この楽園を汚そうとした黒幕だ。居場所が分かり次第、今度はワシがそのアジトをごと、プラズマで跡形もなく焼き尽くしてやる!」

 

ヴァイパ「ろう、ウチも行くー! 音速でそいつらの首、チョンパしちゃうんだから☆」

 

ヴァイパもまた、その銀髪を揺らして闘志を燃やす。

 

アレンはテラスの向こう、怪しい雲が広がりつつある新世界の海を見つめた。

 

アレン「遠隔操作の麻薬、ねぇ。……歴史の裏でコソコソ動くネズミにしては、ちょっとばかり大掛かりすぎる仕掛けっすわ。……でも、どれだけ巧妙な糸を張ろうが、俺の『月牙』なら、その糸ごと、操り主の命まで一刀両断にしてあげるっすよ」

 

大海賊時代の荒波の中、ゴッドエデンを狙う、目に見えない「黒い手」。

だが、彼らはまだ知らない。その手が、死神アレンと、冷徹なる女王マキナの逆鱗に触れてしまったということを。

楽園を脅かす毒の連鎖を断ち切るため、ゴッドエデンの真の反撃の火蓋が、静かに切って落とされようとしていた。

 

---

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

  • 精霊
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  • 吸血鬼
  • 上位悪魔
  • その他(他作品とのクロスオーバー)
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