ONE PIECE 死神伝   作:ぐちロイド

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第87話 虚無の結社、禁忌の異物と新世界崩壊の算段  終焉の序曲:静かに迫る危機

 

 

新世界のどこかも知れない、いかなる海図にも載っていない孤島。

その地下深く、外海の荒波の音すら届かない完全な閉鎖空間に、蝋燭の火だけが朧げに揺らめく石造りの円卓があった。

 

世界政府、海軍、四皇、革命軍。

世界を動かすいかなる組織の紋章もそこにはない。ただ、果てしない「虚無」と「悪意」だけがその暗がりに満ちていた。

円卓を囲むようにして座っているのは、頭からすっぽりと漆黒のフード付きコートを被った三人の影。

男が一人。女が二人。

彼らこそが、新世界に急速に流通しつつある遠隔操作麻薬『黒い洗礼(ブラック・ルキア)』の供給元であり、数ヶ月前にスレナとヴァイパの首筋に狂化の針を撃ち込ませた、歴史の影に潜む黒幕たちであった。

 

「……ゴッドエデンに送り込んだ潜入人形(ブローカー)のバイタルサインが消滅した。脳幹への自爆シグナルが作動したのを確認したわ」

 

最初に口を開いたのは、円卓の右側に座る、妖艶で、しかし蛇のように冷徹な声を持つ女(女1)だった。黒ずくめのローブの隙間から、紫色のマニキュアが塗られた細い指先が覗き、卓上のグラスを弄んでいる。

 

「ふん。やはり、あの国に『黒い洗礼』を内側から浸透させる計画は失敗に終わったか。噂には聞いていたが、元アランカルだというあの小娘――『リース』の頭脳と科学力は侮れんな。我が結社の誇る最高機密の毒を、こうも容易く検知して見せるとは」

 

円卓の中央に座る、低く掠れた声の男(男1)が、不快そうに鼻を鳴らした。フードの奥で、彼の隻眼がギラリと不気味な光を放つ。

 

「スレナとヴァイパの二体を用いた『死神アレン』の暗殺計画も、あの男の規格外の武力によって不発。ドラッグによる内政崩壊も、リースの探知機によって未然に阻止……。ゴッドエデンという国家、あまりにも隙がなさすぎる。世界会議(レベリー)で五老星どもを脅しつけ、一国の関税を丸ごと毟り取ったという女王マキナの覇気も含め……あの国はもはや、この世界の既存の秩序では測れん『特異点』だ」

 

男の言葉には、確かな焦りと、それ以上の歪んだ執念が混ざり合っていた。

 

---

 

 

 

「当然の帰結よ」

 

それまで沈黙を守っていた、円卓の左側に座るもう一人の女(女2)が、静かに、しかし絶対的な確信を込めて声を響かせた。

彼女の声は冷徹な機械のようでもあり、同時にすべてを見通す預言者のようでもあった。フードを少し揺らしながら、彼女は卓上に一枚の、どこか不気味な幾何学模様が描かれた羊皮紙を広げた。

 

「世界政府の最高権力たる五老星が平伏し、海軍本部が遠巻きに見守るしかない理由……それは、ゴッドエデンが保持する『武』と『叡智』の絶対量が、この世界のキャパシティを超えているからに他ならないわ」

 

女(女2)は淡々と、ゴッドエデンの戦力を分析していく。

 

「死神アレン・コルテス。二振りの『斬月』を操り、古代種の龍に変貌し、あまつさえ自然系最強と謳われる『ゴゴロの実』の雷をも我が物とする、文字通りの化物。海軍大将が三人束になってかかろうが、今のあの男を仕留めるのは不可能」

 

「……」

男と、もう一人の女(女1)は、反論することなくその言葉を黙って聞いていた。彼らとて、アレンの恐ろしさはこれまでの実験(戦闘)データで嫌というほど理解させられている。

 

「さらに、女王マキナの持つ、数万の兵を一瞬で平伏させる覇王色の覇気と、冷徹な統率力。そして、あの国のすべてのインフラと防衛兵器を司るリースの頭脳……。この三柱が揃っている限り、四皇カイドウやビッグ・マムを嗾(けしか)けようが、世界政府がバスターコールを掛けようが、ゴッドエデンを『滅ぼす』ことは絶対にできない。この世界の法則(ルール)に則って戦う限り、あの国は無敵よ」

 

「ならば、どうするのだ?」

男(男1)が身を乗り出し、机を叩いた。

「ワシらの目的は、あの忌々しき死神の首を獲り、ゴッドエデンを歴史の表舞台から完全に消し去ることだ! 世界政府や四皇の力でも太刀打ちできないというのなら、これ以上どうやってあの楽園を崩壊させるというのだ!?」

 

女(女1)もまた、フードの奥から冷たい視線を向けた。

「まさか、諦めろとでも言うつもり? 随分と弱気になったものね」

 

「まさか」

女(女2)の薄い唇が、暗闇の中で、邪悪に、そして狂気じみた歪な弧を描いて微笑んだ。

 

「この世界の力(システム)で勝てないのなら――この世界に『本来は存在してはならないもの』を使えばいいだけのことよ」

 

---

 

 

 

「本来、存在してはならないもの……?」

男が訝しげに眉をひそめる。

 

悪魔の実、古代兵器、覇気、世界政府の最高機密。この『ONE PIECE』の世界における究極の力は、そのどれもがゴッドエデンによって対策され、あるいは上回られている。これ以上の「力」がどこにあるというのか。

 

女(女2)は、ローブの奥から、一つの奇妙な形をした「容器」を取り出した。

それは、この世界のいかなる金属や宝石、あるいは貝(ダイアル)とも異なる、未知の素材で作られていた。表面には常に、目視するだけで精神が狂いそうになるほどの、ドロドロとした幾何学的な「数式」と「記号」が発光しながら走り続けている。

 

「……っ!? な、何だ、その不気味な塊は……!」

女(女1)が、本能的な嫌悪感から椅子の背もたれに体を引いた。

その容器が卓上に置かれた瞬間、蝋燭の炎が激しく怯えるように縮み、周囲の空間の『重力』や『空気の密度』が、物理法則を無視してデタラメに歪み始めたからだ。

 

「これは、この世界の神(作者)すらも想定していない、外宇宙、あるいは別次元から引きずり出した【異物の概念】よ」

 

女(女2)の言葉は、常軌を逸していた。

「悪魔の実の呪い(海の嫌われ者)などという、この世界のちっぽけな理(ルール)は、これには一切通用しない。これは触れたすべての物質の『存在確率』を書き換え、あらゆるエネルギー、覇気、霊圧、悪魔の実のファクターすらも、等しく『無(ゼロ)』へと還す、崩壊の触媒……」

 

彼女がその容器のロックを僅かに解除すると、中から、光すらも吸い込むような、完全なる『漆黒の虚無(反物質・概念結晶)』の破片が、チリチリと音を立てて姿を現した。

 

それは、覇気で防ぐこともできなければ、自然系(ロギア)の流動体で受け流すこともできない。なぜなら、それに触れた瞬間、その肉体が「存在していたという事実」そのものが、世界の歴史から消滅してしまうからだ。アレンがどれほど強力な『斬月』を持っていようが、どれほど光速の雷を操ろうが、この【異物】の前では、ただの儚いデータの塊に過ぎなくなる。

 

「これを用いれば、ゴッドエデンを囲むあの強固な結界も、リースの防衛システムも、アレンの死神の霊圧も……すべて一瞬で融解し、ただの塵に変わるわ。国ごと、新世界の海から消し去ることが可能よ」

 

---

 

 

 

暗黒の破片が放つ、言語を絶するほどの狂気と破壊のプレッシャー。

円卓を囲む男(男1)と女(女1)は、その圧倒的な「異質さ」に、全身の産毛が逆立つのを感じていた。だが、同時に彼らの胸の内には、これまでゴッドエデンに対して抱いていた劣等感と、死神アレンへの激しい憎悪を、完全に満たしてくれるという最高の歓喜が湧き上がっていた。

 

「……ハハ、ハハハハハ!! 面白い! 実に素晴らしいではないか!!」

男(男1)が、狂ったような笑い声を上げて拍手した。

「世界政府の老いぼれどもがどれだけ怯えようが、海軍がどれだけ腰を抜かそうが関係ない! この世界の理の外にある力ならば、あの傲慢な死神と、あの不遜な女王の鼻を完全にへし折り、地獄の底へと叩き落とせる!!」

 

女(女1)もまた、妖艶な笑みを取り戻し、紫色の指先でその容器を愛おしそうになぞった。

「ええ……いいわね。最高にゾクゾクするわ。あのゴッドエデンの民たちが、自慢の楽園ごと、何が起きたかも分からずに『無』へと消えていく様……。想像するだけで、身体が熱くなってきちゃう。ねぇ、これの実験はいつにするの?」

 

「準備はすでに最終段階に入っているわ」

計画の立案者である女(女2)が、容器を再び厳重に封印しながら言った。容器が閉じられると、部屋の歪んだ物理法則は元に戻ったが、三人の心に宿る狂気は、もはや引き返せないところまで膨れ上がっていた。

 

「近いうちに、新世界のいくつかの加盟国を実験台として、この【異物】の出力を調整する。そして、ゴッドエデンがその異変に気づき、動き出したその瞬間こそが……あの『死神』の命日であり、楽園の落日の始まりよ」

 

「異議なしだ。ワシらの持てるすべての闇のルート、そして『黒い洗礼』に適合した人形たちを総動員し、実験の舞台を整えよう」

男(男1)が力強く頷く。

 

「フフ、私も手伝ってあげるわ。あの生意気なスレナとヴァイパが、今度はどんな絶望に染まった顔をするのか、今から楽しみで仕方がないもの」

女(女1)が、蛇のような舌を唇に滑らせた。

 

---

 

 

三人の黒ずくめは、円卓の上でそれぞれの不浄な手を重ね合わせ、悪魔の盟約を交わした。

世界政府も海軍も、この新世界のいかなる覇者たちも関知し得ない、世界の法則そのものを破壊する禁忌の計画。

 

「――ゴッドエデン。貴様らの楽園の神話も、次で終わりよ」

 

女(女2)の冷酷な宣告と共に、蝋燭の火がぷつりと消え去り、地下室は完全な闇へと包まれた。

 

一方その頃、ゴッドエデンの王宮では、アレンがソファで大きなくしゃみをしていた。

「……ハックシ! ……んあー、なんか誰かに噂されてるっすかね。だるいっす。リースさん、ちょっと室温上げてくれないっすか?」

「……アレン、室温は常に24.5度に固定されている。……風邪の初期症状、あるいは知能の低下を疑う」

「知能の低下って何すか!? 酷いっすねぇ!」

 

いつも通りの平和な、そして退屈な時間が流れるゴッドエデン。

だが、彼らがどれほど最強であろうとも、どれほどリースの科学力が進歩していようとも、世界の外側から迫り来る「本来存在しないはずの脅威」の足音には、まだ誰も気づいていなかった。

 

大海賊時代を揺るがす最大の嵐が、今、確実な破滅の形を成して、楽園へと近づきつつあった。

 

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

  • 精霊
  • フェンリル
  • ドラゴン
  • 吸血鬼
  • 上位悪魔
  • その他(他作品とのクロスオーバー)
  • その他(コメントで書いて下さい)
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