仮面ライダープリズム   作:晩舞龍

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第一話

 西暦2109年。

 

 東京都との県境近くにある海に面したその都市を、夜闇に光る真っ赤な炎が照らしていた。

 

 全身をオレンジの炎のような強化装甲に身を包んだ戦士……仮面ライダーマグマ。名前の通り、その腕に漲らせた超高熱の炎は、次の瞬間、人々が多く集まっている大通りに向けて放たれた。

 

 途端に起きる爆発、火災。轟音とともに周囲の人々が逃げ惑う。エアビークル(2100年代、実用化済みの飛行自動車)が飛び交い、そのうちの一つにも仮面ライダーマグマは目をつける。

 

「ハァァァァ……フンっ!!」

 

 狙いを定めて打ち出されたマグマ弾がエアビークルを捉えたと思われた、その刹那。

 

『プリズム』

 

 眩い緑色の発光が輝いた。同時に、マグマの攻撃を一刀両断し、眩く輝く戦士が現れた。

 

 彼の名は、仮面ライダープリズム。この町の東地区を守る、正義の仮面ライダーだ。

 

 仮面ライダーマグマは狙いをプリズムへと変え、火炎を纏わせた体で突撃してくる。

 

 対峙するプリズムの右手には、彼と同様に輝く緑の剣。先ほどマグマ弾を切り裂いたそれを再び構え、マグマの突進を待ち構えた。

 

「今静めてやる……龍脈のエネルギーを」

 

 そう口走り、プリズムは剣での一閃を放った。胸に斬撃を食らったマグマの装甲が炎とともに霧散し、仮面ライダーマグマへと変貌していた男があらわになる。

 

 気を失った男を抱きとめたプリズム。そこに、通報を受けた警察がようやく駆けつける。

 

 プリズムは男の身柄を警察に引き渡し、常人では不可能な仮面ライダーならではの跳躍力で夜闇へと姿を消した。

 

 その様子を警察と町の人々が見送る。彼らの顔に安堵の表情が戻った。

 

 

 

 時は遡り、一か月前……

 

「だいぶ金使いすぎたな……そろそろ帰るか」

 

 東地区にある大学に通う男子学生・東堂 (ひかる)は、大学の空きコマにゲーセンへと立ち寄っていた。

 

(やっぱサークルに入ったほうが良いか? でも、いろいろ面倒もありそうだしなあ)

 

 サークルに入っておらずやることのない光は通い詰めたゲーセンでひとしきり遊んだ後、今日はもう授業がないので繁華街から少し離れたアパートへと帰宅することにした。

 

 少し人通りの少ない道へ入った時、彼は虫の知らせともいうべき悪寒を感じた。

 

(このイヤな感じは……まさか、仮面ライダーか!?)

 

 東堂 光はゆっくりと振り向き、背後に立つ赤紫の戦士を見た。

 

 ここで、この町を取り巻く状況を東堂 光は思い返した。

 

 

 この街は地球のエネルギーが多く表出することが過去の研究で判明しており、近年では龍脈と称して研究されていたのだが、数年前から活発化の一途を辿り、ついに人間へ悪影響を及ぼし始めたのだ。

 

 人間が龍脈のエネルギーにあてられることで、それぞれ固有の能力を持った装甲に身を包んだ戦士……過去にこの街に存在した類似した存在から、仮面ライダーと呼称する……へと"変身"してしまうのだ。そして、ほとんどのケースで本人の意思とは関係なく暴走し暴れまわってしまう。その力は町の人々の生活や命を脅かす。

 

 当初は警察や自衛隊が対処に苦慮していた仮面ライダーの暴走。そこに光明が差した。

 

 この町の東西南北に分かれた各地区で、龍脈からの力を得ながら(つまり、仮面ライダーになりながら)暴走しない存在が現れたのだ。

 

 彼らは各地区で独自に、仮面ライダーの事件に対処し始めた。

 

 町は平穏とはいかないまでも、事件への対抗策を手に入れた。

 

 しかし、仮面ライダーも永遠ではない。東地区を守っていたライダー……仮面ライダーメタルは、正体を明かしてはいなかったが高齢を理由に先日、引退したと報道された。

 

 

 話は現在に戻り……いま、東堂 光は、守ってくれるライダーのいない東地区で、暴走ライダーに出会ってしまったのだ! 

 

『パペティアー』

 

 暴走するライダーは赤紫の両腕から発光する鎖を打ち出し、四肢をそれに捕らわれた光は身動きを封じられる。

 

(なんだ、これ……!? しかし、今聞こえた声……パペティアー……パペット……人形遣いのライダーか!)

 

 仮面ライダーパペティアーが人形を操るように指を動かすと同時に、鎖がギュンとしなり、光はその勢いで壁に叩きつけられる。

 

「ぐああっ!!」

 

 背中を打ち、地面に倒れこむ。

 

(まずい、近くに誰もいない……助けを呼べずに死ぬ!!)

 

 今度はその鎖を光に叩きつけようと近づいてくるパペティアー。

 

 その時、光が体を預けていた地面が眩く輝いた。

 

(これは、龍脈のエネルギー……よかった、これで俺も暴走するかもしれないけどひとまず助かる!)

 

 光はその力が体に流れ込んでくるのを受け止める。

 

 刹那、体が緑に輝くボディに包まれる。

 

「変身」

 

 それは無意識に零れた言葉。次の瞬間そこには、新たな仮面ライダーが誕生していた。

 

 そこで光は違和感を覚える。

 

(あれ……暴走してない、意識がはっきりしている!)

 

 彼自身、緊急事態であったがために龍脈のエネルギーを心から受け入れたことが幸いしたのか、珍しく暴走していない仮面ライダーとして彼は変身を成し遂げたのだ! 

 

「なら、やることは一つ……目の前の暴走を止める、か」

 

 戦士のいない東地区で渇望される存在になったことで、高揚感が湧き上がってくる光。

 

 ふん、と気合を入れると、パペティアー出現時と同様に体の奥から音が聞こえてくる。仮面ライダーとしての特性を示す如きその音声は。

 

『プリズム』

 

「そうか、俺は仮面ライダープリズムか! やってやるぜ!」

 

 腕に力を籠めると右腕に緑の剣が現れる。

 

「俺の力は剣と……」

 

 左手には同じく緑の意匠の入った盾も現れた。

 

「ありがたいぜ、こちとら喧嘩の経験なんてないからな」

 

 近づいてくるパペティアーの放った鎖。

 

 それを盾――ビッカーシールド――で勢いを殺し、剣――プリズムソード――で切り裂く。

 

(いいぞ、俺……初めてにしてはよく戦えてる!)

 

 鎖を破られ攻め手の無くなったパペティアーに、プリズムは盾を構えたまま急接近する。

 

 剣のリーチに入った彼はプリズムソードを握りなおし、体中に湧き上がるエネルギーを剣先に集中させるようにイメージする。

 

「そこだぁ!!」

 

『プリズム・マキシマムドライブ!』

 

 体の奥から変身時と同じ音が聞こえ、体中のエネルギーを解き放つ必殺攻撃が突き出される。

 

 斬撃を受けた仮面ライダーパペティアーが、変身を解かれ会社員らしきスーツを着た女性が倒れる。

 

「俺が、この町の……風都の新しい仮面ライダーだ」

 

 かくして、東地区に新たな仮面ライダー・プリズムが誕生した。

 

 今日も、街のシンボル・風都タワーは、変わらず街を見守っている。

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