ガンプラ完成度判定AIだって遊びたい!   作:砂上八湖

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リアル世界で活動するためのモビルドールって、割と不思議なサムシング存在ですよね
っていう話です。
 
 



第10話

 

 

「身体の具合はどない?

 関節がギクシャクするとか、四肢の感覚に違和感があるとか、問題があるようなら()うてなー?」

 

 何処のどなたか存じ上げない女の人が「動いて動いて~」と勧めてくるので、取り敢えず質問は後回しにして言われた通り身体を動かしてみるか。

 あ、女型エルダイバーだからか簡素な服は着せられてる。

 アバターと同じ巫女服は完成次第、って感じかな?

 

 まずは左右の手をグッパーグッパー。

 パーフェクトグレードで採用されている多重関節構造を参考にしているのか、指や手首の動きは滑らかだ。人間の身体みたいに筋肉の連動がないので、小指だけキレイに曲げられる。

 これなら岸辺露伴がやってた準備運動もラクショーだぜ!

 

 続いて左右の腕を曲げたり回したりしてみる。

 うん、こちらも違和感なく可動できてるね。肩も問題ない。

 様々なポージングがとれるタイプの美少女プラモを、エルダイバー用に進化させたボディっぽい?

 さすがに「人形の関節」は剥き出しだけど、見た目は極力「人間の関節部分」に近くなるよう設計がされてる。

 

 膝の屈伸。連動して足首や股関節、腰、背中も動く。

 身体の内側に背骨のような機構が組み込まれてるっぽいけど、胴体の方にも人間にはない複数の可動域が設定されてる。これが肉と骨の代用かな?

 ポッター君に促す様な深い御辞儀も、ボア・ハンコック様みたいな()()りも可能みたい。

 いやこれ地味にスゴくない?

 

 首をグルリと回す。

 その動きに合わせてセミロングの黒髪──女の人の解説によるとエルダイバー用に開発されたカーボンファイバー製の擬似毛髪らしい──もシャラ~ンとなびく。

 おおおお!?

 正直、髪に関してはプラスチック製の固定タイプだと思ってたので、心底ビックリしてる。

 寒暖による伸縮の影響も少なく、耐久力も高いそうだ。

 要望があれば頭部パーツを交換して、髪の長さやヘアスタイルを変更できるんだとか。

 

「モヒカンにもできるでー?」

 

「モヒカン紫巫女とかドコに需要があるんだ」

 

 ……そうか、世紀末ヒャッハー系ロールプレイにも対応できるように一応は用意してるのか。

 そういや一部のダイバーに、そんなロールプレイして遊んでるフォースがいたなあ。たしか頭部にモヒカン的な意匠を施した機体で統一した集団で、世紀末風アインラッドを乗り回し「水やガソリンをよこせー!」と(主に荒廃都市エリアで)暴れてるんだったかな?

 黒く塗装した風雲再起に乗る騎士(ナイト)ガンダムがリーダーで、部下達からは「剣王(けんおう)様」と呼ばれてたハズ。

 噂によると幹部連中はトンチキ拳法の使い手とかなんとか。

 ……いろいろアウトでは?

 

「その剣王サマの中の人が、頭をモヒカンにしとるエルダイバーやで」

 

「ウッソだろ、絶対(ぜってぇ)会いたくねえ」

 

 なにしてんだよ御同輩!

 地味にフラグ立てたっぽくて嫌だな、おい!

 

「ん?」

 

 ここまで普通に会話してて違和感なかったけど、私ってば普通に喋れてる? 口部分(つまりは顎関節)も可動してるけど、どうなってるのコレ?

 胴体内部に魂であり心臓でもあるビルドデカールが組み込まれてるのは感覚で(わか)るけど、頭部内にある「何か」と接続されてるっぽい?

 

「ファーストタイプのモビルドールとは別の義体やで」

 

 無意識に喉へ手をやった事から察したのか、女の人が嬉しそうに解説してくれる。

 ファーストタイプというと……サラちゃんの事だろうか。

 そういえば彼女の義体って「いかにもメカ少女!」な見た目だったなあ。

 

「最近はアバターと合わせて、頭部の表層に人工皮膚を使(つこ)うとるんよ」

 

 そう言われて私は右手で自分の頬を触ってみた。

 なるほど、柔らかい素材(ひふ)の下にプラっぽい内殻(ないかく)があるのが感触で伝わってくる。

 というか触覚センサーもあるのか。

 ナノテクノロジーを流用してるみたいだけど、もしかしなくても結構な高性能(ハイスペック)ボディでは……?

 

「声が出せるのは頭部に超小型スピーカーを仕込んどるからやな。

 これはファーストタイプから変わっとらん仕様やけど」

 

 口や目蓋(まぶた)が可動式になったんはホンマつい最近やで~、と女の人は自慢気だ。

 

「……もしかして義体の製造費用とか請求される流れだったりします……?」

 

 人工皮膚とか、顔部分の可動部位とか、カーボンファイバー製の髪とか、触覚センサーとか……クッソ高い金額を請求されそうで怖いんですが。

 え、いや、マジでこの身体って総額おいくら万円なの!?

 払えなければ馬車馬のごとく働けーッ!みたいな未来が待ってたりします?

 あのよく分からん石臼みたいのを回す棒を押しながら鞭を打たれたり?

 聖帝十字陵を築くために大きな石を背負わされたり?

 

「思考が世紀末やん」

 

 剣王サマと相性ええんと違う?とか言われたけど、こちとら無一文やぞ。こんな高性能機を一方的に与えられてガクブルなんですが!?

 燃え残った全てに火を点ける傭兵にさせられる!?

 それとも9課っぽい感じにスパイアクションを!?

  

「心配せんでも運営に製造費とか払う必要はあらへんよ?」

 

「おお……運営さん太っ腹だなあ……!」

 

「ウチが代わりに支払(しはろ)うたからな!」

 

「あ、御奉仕先が個人になっただけですねコレ」

 

 借金の肩代わりに御奉仕させられる流れだ!?

 巫女ダイバーからメイドにジョブチェンジ!?

 イヤらしいことする気でしょう!? 同人誌みたいに!

 それとも大穴で地球の未来に御奉仕するニャン的な事を!?

 

 ネオンちゃんの頭の中に、変なミームと共に警鐘が鳴り響く。ワーニン! ワーニン!

 

 しかし女の人は(てのひら)をヒラヒラさせながら、事も無げに理由を語る。

 

「まあウチがネオンちゃんの『保護者』にさせてもろたから、っちゅうのもあるんやけどな?」

 

「──保護者?」

 

「せやで。

 あー、そういや自己紹介がまだやったな。

 ウチは紅音(クイン)百合蒔(ゆりまき)クインや」

 

 分厚いビン底メガネをクイッと上げながら、ボサボサの茶髪をポニテにしたヨレヨレ白衣の女性──クインさんはキメ顔でそう言った。

 

「GBNに出資しとるスポンサーの1つ、マーキュリー・インダストリアルの社長をやらせてもろうとる」

 

「ファッ!?」

 

 思わず変な声が超小型スピーカーから転がり落ちた。

 そのビン底メガネのビジュで女社長なの!?

 ……いや、外見と経営手腕は無関係だな。偏見によるルッキズムは良くない、良くないぞ。つい勢いで彼女に失礼なことを考えてしまった。

 反省猛省。

 

 さて。

 GBNは全世界規模の娯楽コンテンツだが、当然ながら慈善事業ではない。顧客にエンターテイメントと満足を与えつつ、利益を得るための様々な運営戦略を()る必要がある。

 小さい所では有料アバターの配布だったり、機体を強化する課金パーツだったり。

 大きな所では個人で運用可能なGBN専用ダイブ筐体の開発・販売だったり、オンライン上での大会やアイドルのコンサートといったイベント企画な付随する広告収入や関連商品のマーケットに掛かるマージンだったり。

 とはいえ、企業や個人が複雑に絡み合う事業を単独のゲーム運営組織が扱いきれる筈もない。

 複数のスポンサーによる経営連合としてバックアップされているからこそ、GBNは一大コンテンツとして成立しているのだ。

 

 マーキュリー・インダストリアルは、そんなスポンサーの1つである。

 保有する株式こそ全体の8%ほどだが、GBNに関係する工業的な分野の殆どに携わっているため、その発言力は極めて大きい。

 なにせ私を始めとする「ガンプラ判定AI」を開発したのも、クインさんが社長を務めるマーキュリー・インダストリアルなのだ。

 言ってみれば彼女は私の母 親(ゴッドマザー)みたいな存在である。 私とネオンの事情は知らないだろうけど、クインさんが名乗った「保護者」とはよく言ったものだ。

 

 よくよく周囲を見渡せば、運営が所有している広くて多くの職員が詰めている開発施設ではない。

 もっと手狭で趣味的な空間を感じさせる、機材がひしめく個人的な研究室っぽい部屋である。

 

何故(なにゆえ)そったら社長様が(わだす)なんがの保護者なんぞに……?」

 

「何で急に東北っぽく訛ったん……?」

 

 女社長の眉毛が八の字に下がる。

 いや、ついノリで。

 クインさんも深い意味は無いと早々に判断したのか、気持ちも眉毛の角度も切り替えて事情を話し出す。

 

「実はネオンちゃんにやってもらいたい事があってな。

 それで運営にムリ言うて保護者にさせてもろたんよ」

 

「やってもらいたい事とな?」

 

 判定AIとしては兎も角、エルダイバーとしては生まれたばかりの「ネオン」に?

 ちょっと雲行きが怪しくなってきたというか、キナ臭くなってきましたぞ……?

 

「──ネオンちゃん、ちょっと世界を救ってみぃひん?」

 

「……ほわっと?」

 

 あー……うん。

 借金の肩代わりは「地球の未来に御奉仕するニャン」の方だったかー。

 そんな大穴は当てたくなかったなあ……

 

 

 




 
クインさんには「フレディ」君という腹違いの幼い弟がいます。
音楽の才能があるらしい。
 
 
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