ガンプラ完成度判定AIだって遊びたい!   作:砂上八湖

5 / 8
本作では少し違う世界線の『ビルドファイターズトライ』が『ビルドダイバーズ』シリーズと繋がってるという設定です。


※ちょっと前後で矛盾する箇所を見つけたので加筆修正しました。


第5話

 

 ■

 

 転送は一瞬だった。

 さすがは疑似タキオン粒子回線*1だ。

 いくら誕生直後のエルダイバーとはいえ、莫大な情報量を内包する個体を一括で転送しても何ともないぜ!

 

「まあ、エルダイバーになったからには運営に連絡しなくちゃならないんだけど……」

 

 転送された先は、彼女(ネオン)が私の部屋に転移する前にいたと語っていた場所。

 GBNに登録されたガンプラが最初に格納され、ダイバーも愛機のゲーム内メンテナンスや交流の場にも使ったりする区画(ブロック)──いわゆる『格納庫』だ。

 

 ここはログインした際に送られるエントランスや通常オープンワールド、個別に設けられるクエストステージとは隔離された仮想空間で、登録された()()全てのガンプラがここに収納・管理されている。

 なのでちゃんと「ザ・モビルスーツの格納庫!」といった感じの屋内施設にデザインされていたりする。

 

 ダイバーはクエストクリアの報酬で入手したパーツを装備したり、それによって変化した機体のステータスを確認したりできるぞ!

 オープンワールドで機体を召喚する時は、ここからデータ転送される仕組み。逆にクエストを受けていない状態であれば、ダイバーも『格納庫』にワープできる。

(ここではダイバー本人への攻撃判定が無効になるので、緊急避難的な側面もあるっぽい)

 

 まあ長々と説明したけど、ついに念願の「外界(GBN)」へ進出した最初の場所であり、自分が採点したガンプラが集結する夢のような場所に私はいるのだ!

 確かに運営に連絡を入れないといけないかもしれない!

 でもここからですよ、ここから! ここから(ネオン)の人生がスタートするんですよ!

 思わず右手を力強く天へと突き上げちゃう!

 

 ヒィヤッハァーッ!

 我が生涯に一片の悔い無しッ!!

 

 ちょっとぐらい!

 ちょっとぐらいなら遊んでもいいんじゃないかなと!

 まずは初心者用クエスト受けてクリアしてモビルスーツの素体をゲットしなきゃ、いや()ずはネオンとしてのアバターデザインを私としてカスタマイズすべきか、いやいや何はともあれ広大なGBN の世界を一通り見て歩くべきか、それともエントランスへ飛んで個性豊かなダイバー達と交流しまくるのが先かナ!?

 

 選択肢がありすぎて迷っちゃうなあ、困っちゃうなあ!(満面の笑み)

 

「ねえ、そこのキミ」

 

 おわー!?

 第一GBN村人(の方から)発見んんっ!?

 夢想していたイベント全部すっ飛ばしてダイバーとの第三種接近遭遇しちゃったぞ、どうしよう!?

 

 というか何故(なにゆえ)私は話し掛けられましたか?

 エントランスでなら兎も角、この『格納庫』で縁も所縁(ゆかり)もない見ず知らずのダイバーに話し掛けられるなんて全く想定してなかったぞ!?

 

「巫女っぽい女の子が満面の笑顔で右手を突き上げたまま動かないから、心配になって声を掛けたんだけと……」

 

 あああーっ、それはそうですよねぇーっ!?

 そりゃ目の前に「右手を天へ突き上げたままニコニコ顔で固まってる紫袴の巫女巫女ガール」がいたら、心配になって声を掛けるか「何この()……怖……」って見なかった事にするかの二択ですよね!

 前者を選んでくれたって事は、この第一GBN村人──見た目は高校生ぐらいの少女のアバターだ──きっと「良い人」なんだろう。

 ……これも何かの「縁」かな?

 

「大丈夫、ちょっと心の奥底から沸き起こる歓喜を身体(からだ)で表現してただけだよ」

 

「……独特の感情表現だなあ」

 

 私式拳王様ポージングを解除しつつ、声をかけてくれた少女を(値踏みするような視線にならないよう)観察してみる。

 体を得て初めての美少女(なま)ウォッチングだぜ! テンション上がるなあ!

 は? 彼女は「バ美肉おじさん」かもしれないって?

 AIや情報生命体からしてみたら誤差の範囲だぜ! だからテンションをリアルに引き戻すような事は……言うなっ!(迫真)

 

 なにせ栗色の長髪をポニテに結んだ、活発そうな女の子だぞ。

 どのぐらい活発そうかって、その豊満なボディー(あっぱいとおしり)をピッチピチでパッツパツの桃白タンクトップとスパッツに包んだスポーティーな姿をしているぐらい。

 おじさんが趣味全開でデザインして許されるアバターじゃないでしょ? だから──

 だから……

 ………

 ……

 

 痴女だコレーーッ!?(ガビーンッ)

 

「なんてこったっ!

 人生最初に邂逅した人類がエチチコンロ全開のムチムチ露出愛好家だったなんてっ!?」

 

「エチチ……? あ、いや、違うっ!

 私は露出愛好家なんかじゃあないよっ!?」

 

 あ、やべえ、心の声がダイレクトに洩れちゃった。

 今は多様性が求められ許される時代。

 技術の最先端であるAIと情報生命体のハイブリッドである私が理解を示さないでどうする。

 考えてみればプライベート区画以外のフィールドでは裸になれない*2のだから、あの格好はGBNで狙えるギリギリの露出なのだろう。一応、ゲームに配慮してかれてると考え感謝すべきなのかもしれない。

 

「……なんか、とんでもない勘違いをされてる気がする!

 本当に違うからね!? GBNが運用される前のガンプラバトル大会から認められてる競技服*3だからね!?」

 

「ええっ、公認衣装なの?」

 

 運営、未来に生き過ぎじゃない……?

 

「こんな勘違いされたの初めてだよ……

 ──公式競技服を知らなかったり、さっきも『人生最初に邂逅した』とか言ってたり……もしかしてGBNをプレイするの、初めて?」

 

 露出愛好家あらためスパッツ少女は困惑しつつも、声を掛けた手前だろうか、私とコンタクトを試みてくる。

 

「……そうだね、初めてログインしたんだ」

 

 嘘は言ってない。

 システムの一部だったけど、それはGBNにログインしていた訳ではないからね。

 

「今どき珍しいね?」

 

「ガンダムやガンプラは好きだけど、ゲーム自体には縁が無くてねえ」

 

 なにせ生まれた頃からカマボコ板ボディーで仕事してたもので。 

 

「そういう人もいるのねぇ。

 あっ、私はフミナ。ホシノ・フミナ。

 ようこそGBNの世界へ!!」

 

 少女は何かを概念的に飲み込むように天を仰いだあと、思い出したとばかりに自己紹介して、私に歓迎の意を示してくれた。

 おっと私としたことが。

 アイサツを忘れるとは実際シツレイに当たる。

 

「ドーモ、ホシノ・フミナ=サン。ネオンです」

 

 合掌からのオジギによる完璧なアイサツ! ワザマエ!

 

「あ、どーもどーも」

 

 フミナさんがペコペコとお辞儀を返してくれる。

 

 ……いかん、スベった。

 袴の色こそ紫だけど、なまじ巫女の姿をしているものだから、神職(もしくはそういうロールプレイの一環)として普通に丁寧な挨拶してきたのだと思われたっぽいな。

 ネットミームを一般使いしてはならない。

 いいね?

 アッハイ(セルフ返事)

 

「ここにいるって事は、初出撃前の機体メンテナンス?」

 

「うんにゃ、私まだ機体を組んでなくてね。

 ここにはダイバーのガンプラが並んでるっていうから、ちょっと参考がてら見学してたってわけ」

 

 光の速さで編み出した「その場の思い付き」を澱みなくスラスラと口から吐き出していく。

 まあ実際、ここに来たからには皆の作ったガンプラを見て回りたくもあったから、完全に出鱈目(でたらめ)ってワケでもない。

 

「フミナさんは?」

 

「メンテナンス。

 この間のクエストで手に入れたパーツを組み込んでたんだけど、ちょっと私とは相性が悪かったみたいなの。

 だからパーツを外して、微調整って感じ」

 

 そう言ってフミナさんは、すぐ側で格納されている機体──ガンプラを見上げる形で目をやる。

 つられて私も視線を向けると、そこにはSDガンダムと呼ばれるシリーズの機体が──白と黄を基調に塗装されたガンダムが起立していた。

 なんか見覚えあるな……?と思ったら、評価AIとしてのデジタルな記憶がフワッと呼び起こされる。

 

 半年ぐらい前に登録された《スターウイニングガンダム・ベクトレックス》という名前の機体だったはず、

 そういえば登録者の名前は「ホシノ・フミナ」だったわ。

 たしか「SDモード」「リアル頭身モード」「超高機動型コアブースターモード」の3段階に変形できるギミックだったな。

 前身の《スターウイニングガンダム》の弱点を補う改修をした後継機って位付けだとかなんとか。

 既存のガンダム機体をベースにしておらず、ゼロの状態から作っているのに、この完成度の高さ。

 彼女の造形技術の高さが伺えるというものよね。

 

「(95点の判定を付けた記憶があるなあ)」

 

 三段変形させようって発想自体がロマンだし、それを形にしてしまうのもガンプラ愛が成せる(わざ)だよ。

 いつもの甘々判定が、さらに火を吹いちゃうのも仕方無いよね。

 

「いい機体だね」

 

「ふふふ、ありがとう」

 

 フミナさんは私に目線を戻して柔らかく微笑んでくれる。

 推定JKだけど、こんな笑顔をアバターでも浮かべられるなら、現実でも同様の笑顔を周囲に振り撒いてるはず。

 きっと同級生や後輩の男子なんかを(よほどの朴念仁でもない限り)ドギマギさせてるに違いない。

 

 ……さすがにリアルでピチピチ衣装は着てないよね?

 

「これからネオンさんはどうするの?

『格納庫』見学を続ける?」

 

「そうだなあ。

 ガンプラ持ってないから通常クエも受けれないし……

 素体をクリア報酬でもらえるビギナーズクエストを後で受けるつもりだけどね」

 

「一応、ガンプラ持ってないダイバー向けのクエストもあるにはあるけどね」

 

「あ、そうなんだ」

 

 いくらシステムの一部だとはいえ、クエストやゲームシナリオを全て把握してる訳じゃないからにゃあ。

 なるほど、そういうのもあるのか。

 うっかりガンプラ持ってくるの忘れちゃうダイバーもいるだろうしね。

 

「だったらさ!

 無料だから無改造限定になるけど機体のレンタルもできるし、もし良ければ一緒にクエスト受けてみない?」

 

「いいの!?」

 

 マジかよ、良い人過ぎんかフミナさん!

 渡りに船というか、ちょっと都合が良すぎやしないかというか、もしかして初心者狩りを目的にした詐欺じゃないかとか、思うところは色々あったけど──フミナさんの機体からは「嫌な感じ」は受けないので信用してもいいかなって気はする。

 

 なんというか自分でも驚きなんだけど……この《スターウイニングガンダム・ベクトレックス》から、フミナさんが込めたガンプラへの愛とか情熱とか浪漫とか、そういうキラキラしたものが感覚的に(わか)るっぽい。

 そして機体自体がフミナさんに全幅の信頼を寄せているって事も。

 

 たぶんこれ、ガンダムやガンプラへの『想い』が核となって誕生する電子生命体──エルダイバーだからこそ感じ取れる独自のものなんじゃないかな?

 そういやエルダイバー第1号であるサラちゃんもガンプラの心を読み取ってた……なんて話を都市伝説系G-Tuberが解説してたような。

 

 まあ、何はともあれ。

 これだけは言っておかないとね。

 

 

「機体はドムでお願いします!」

 

 

 フミナさんがちょっと引いてた。

 なんでや。 

 

 

 

*1
光より速く大容量のデータを送受信できる数学的な概念素子を用いたネット回線。たぶんプラフスキー粒子の親戚。独自設定。

*2
センシティブな行為に対する抑止機能の1つ。要はエロいの禁止システム。子供もいるからね。仕方ないね。

*3
どうもそうらしい。




でもフミナパイセンの格好って実際センシティブですよね。

センシティブ判定AI「ヨシ!(例のポーズ)」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。