御待たせしました、いよいよガンプラバトルです。
フミナさんは『トライ』同様、セカイ君やユウマ君と共に「トライファイターズ」をフォースとして結成し所属しています。
ギャン子のフォースとは仲良く喧嘩してそう。
たぶんネオンとギャン子は出会った瞬間マブダチになれる。
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それから私はフミナさんのメンテナンスが終わるまで『格納庫』を散歩して回った。
GBNで遊べる嬉しさから少しテンションがおかしくなってたので、気持ちを落ち着ける必要もあったのだ。
さて。
日本サーバーのみとはいえ、それでも膨大な数のガンプラが格納されている。
しかしさすがはAI由来のデジタル頭脳、私が実装されて以降に登録され判定したガンプラは、総合評価を含めて全て記憶されていた。
(私が判定AIとして稼働してる時に海外サーバーから移籍してきた機体については、私達の判定を受けないので今回が初対面)
地球のジオン軍残党のために送られ寒冷地仕様に改修を受けたエース専用機という、宇宙世紀Ifモノの主役機としてガッチガチに設定した「ザク
破損箇所や故障部分をジャンクパーツのみで現地改修したという設定の、左右非対称な局地戦用機「ガンダムアストレイ・
ゴッドガンダムの肘や膝から先を肥大化させることでカートゥーン的なマッシブさを追求しつつ、胴体と頭部を女性型に改造した「ゴッデス(女神)ガンダム」さん。79点。
エルメスを可変MAとして再定義し、MS形態に変形するとクシャトリヤっぽくなるようゼロからパーツを削り出して造られた
パーツ(腕と脚)を換装することで様々な攻撃に対応したバリアを展開できる、パーティー戦を重視した防御力特化型の
AEUへの横流し品で、ドイツ系軍事企業により300mm×50口径長滑空砲を6門もガン積みされるという魔改造を受けたって設定の「T-ELENG/カノーネンカイザー」君。82点。
等々。
懐かしいなあ。
改めて思うけど、ガンプラって自由だよね!
最初に挙げた「ザクⅢ/ICE」を作ったダイバー君なんて、自身と愛機を主役にした二次創作小説を添付してきたからね!
スゴい! ガンプラの評価に1ミリも反映されないのに、この
機体が健在ってことは、今も元気にネオジオン軍人のロールプレイをやってるんだろうなあ。
って感慨に耽ってるうちにフミナさんの作業が終わり、いよいよGBNのエントランス・エリアへと移動してきたのであります。
カレンダー上では平日なのにログインしてる人多いなあ。
見える範囲だけでも100人以上のダイバーを確認できる。ガンプラ判定を通じてGBNの──ガンダム人気の高さは感じていたけど、実際に五感を通じて熱気を体験すると筆舌に尽くしがたい感情が湧いてくるね……!
私が感動してる間にフミナさんが受付でクエスト受注を含めた手続きしてくれて、無事に念願のドム・トローペン(無改造)をレンタル完了。おお……マジ感謝やでフミナん……!
そしたら彼女と顔見知りらしい『ガタイの良いイケメンなオネエ』に「GBNにようこそ~(はぁと)」と歓迎されたりという新たな出会いを挟みつつ、いよいよ人生初のクエストに出発したのであります大佐!
どんなクエストなんだろ、楽しみだなあ~!
■
「ネオンちゃん! 1匹そっちに行ったよ!」
「アイアイサー!」
フミナさんの声に応と返す。
私の無改造ラケーテン・バズが(文字通り)火を吹くぜ!
熱核ジェットホバーによって大地を舐めるように疾走しながら、肩に担いだMSサイズの巨大ロケットランチャーの狙いを定める。
GBN内でガンプラを操作するために構築されたコクピット空間。ドム・トローペンの
即座に私は右手で握るレバーのボタンを強く押し込むと、殆どタイムラグ無しにドム・トローペンの人差し指がトリガーを引いた。
GBNはフルダイブ型仮想現実空間で形成されるオンラインゲームである。なのでアバターの挙動は全て脳波を読み取る思考制御によるものだ。
当然それはゲーム内でモビルスーツを操縦する時にも当てはまる。
ただ、どうしてもシステム処理の関係で「脳波を読み取って」「行動としてゲームに反映させる」のに僅かなタイムラグが発生してしまう。
さっきのトリガーを引く行動で例えるなら、ダイバーが思い浮かべた「今だ、撃つ!」というイメージ(脳波)を読み取っても、ゲーム内でアバターがトリガーを引く行動に反映されるタイミングは同時ではないという事だ。
まあタイムラグといっても小数点以下にゼロが2つ並ぶぐらいのものだけど。
それでも反射神経が高い人だと、アムロみたいに「機体の反応が遅い!」状態になるみたい。
「(まあそれも『人間』の話、だけどね)」
私の場合は少し違う。
ああいや……私の場合は、というか『生まれたてのエルダイバーの場合は』の方が正確か。
GBNから発生した電子生命体であるエルダイバーは、システムと意識が直結しているので「思考→反映」までのタイムラグが存在しない。なにせGBN自体が思考しているようなものだからね。
なので「トリガーを引く!」と考えれば、場合によっては「大パンチキャンセル昇竜拳」ならぬ「アバターの指を動かす行動キャンセルMSの指を直接操作」なんてことも可能だったりするのだ。
なんたるチート!
まあ、やりませんけどね!!
せっかく身体を手に入れたんだから「体を動かす」感覚を楽しみたいじゃあないか!
大好きなドムを! あの『0083』で大活躍したドム・トローペンを! 自分の手で操作できるんだよ!?
……ただ「外部にデータを移していないエルダイバー」という性質上、どうしてもタイムラグの消失は生じてしまうのだけど。
今のラケーテン・バズを操作したみたいにね。
発射されたロケット弾が、白煙の軌跡を空中に残しながら目標へと高速で襲い掛かる。
相手の動きを読んでの偏差射撃だ。
フミナさんに追い込まれて回避行動中だった相手に、これを避ける
吸い込まれるように胴体へ直撃し、炸裂した。
爆発の反動で目標は吹っ飛ばされながら転倒し、その機能を永遠に停止させる。
「バクゥ1匹撃破ッ!」
四足機動という特異なフォルムのゾイd……モビルスーツ、バクゥの1匹を見事に仕留めた私はフミナさんに戦果という名の状況報告を入れた。
「一撃!? スゴいよ、ネオンちゃん!
ホントにガンプラバトル初めてなの!?」
まさかバトル初心者が偏差射撃を、しかも一発で獲物を仕留めるとは思ってなかったのだろう。フミナさんが感嘆の声を上げる。
ガハハ!
SEED系の機体にはPS装甲という質量兵器を(制限付きではあるけど)無効にするチートじみた機能を持ってることが多いんだけど、バクゥ君には積まれてないから安心してラケーテン・ハズを撃ち込めるってもんですよ!
「よしっ! 野生のバクゥの群れも、あと2匹!
一気に片付けるよネオンちゃん!」
「おかのした!」
「おかのした?」
あと……交流するうちに、いつの間にかフミナさんが私を「ネオンちゃん」呼びしてるんだけど、これは友達認定されてるってことで良いのかにゃ……?
GBNでは大先輩なので、私からは「フミナさん」呼びなんだけど──いつか「フミナちゃん」って呼べる間柄になれたらいいなあ。
それはともかく初クエストである。
GBNでの活動どころかガンプラバトルも初めてという事もあり、初心者向けのチュートリアルミッションをフミナさんが選んでくれたのだ。
それが《野生のバクゥを討伐せよ!》という、なんかモンスターをハントするゲームみたいなクエストで──
いやいや、何だよ野生のバクゥって。
バクゥって群れを作るもんなのかよ。
しかもNPCの村の家畜を襲うんかい。
なんか普段G-Tubeで視聴してたガンプラバトルと世界観が違うんだけど? フミナさん? チュートリアルとしてこれ正解なの?
そんな私の疑問を置き去りにしたまま、討伐はサクサク進み──
「こんのぅっ!」
頭部に内蔵されている二連装ビームサーベルを展開して接近戦を挑んできたラストのバクゥを、ヒートソードで迎撃する。
設定上、本体の質量としてはドムの方が軽い。
なので真正面から受け止めるのは質量差で圧し負ける可能性が高く危険だ。
ビームの刃と高熱の刃が交差して、オレンジ色の火花が咲く。
前世の頃にテレビで観た闘牛士の動きをイメージしつつ、バクゥの突進を斜め後方へ受け流す形で剣を走らせた。
強引な重心移動に機械仕掛けの獣は踏ん張れず、前足がつんのめり、体勢を大きく崩す。
素人剣術による即席カウンターだったが、なんとか成功。
ただこちらもドムの可動域からして相当に無理な体勢をとったので、このまま「即座に返す刀で返り討ち」とまでは繋がらない。
だけどそれは私が独りだった場合だ。
「フミナさん!」
「OK!」
今度は私の声にフミナさんが応と返す。
スターウイニングガンダム・ベクトレックスが、背面パックの
一瞬でトップスピードへと加速すると、その身体が浮いた。
バランスを崩したんじゃない。加速しながら変形し、空中を
超高機動型コアブースターモード──通称「
いや、それは
「
気迫一閃。
光の
スターウイニングガンダムは元のSDモードへ戻りつつ、大地を削りながら着地する。
逆に衝撃で宙を舞っていた獣の残骸は、幾つかの閃光を瞬かせた直後に大爆発を起こした。
ナムアミダブツ!
それを見届けると、スターウイニングガンダムは残心を解くかの如く排気口から勢い良く排熱する。
おお……っ! これがCランク以上のダイバーが使えるという高威力の固有スキル、いわゆる『必殺技』……!
光の翼に攻撃能力があるのは評価判定したので知ってはいたけど、まさか必殺技にまで昇華させてるとは……
しかも何やら漢字にカタカナのルビを振ったっぽい技名まである御様子……!
フミナ……恐ろしい子……!(白目)
「ネオンちゃん、お疲れさまー!
最後の美味しいとこ譲ってもらっちゃったみたいで……ゴメンね?」
謝罪してくるフミナさんに「とんでもない! ナイスプレー!」と返しながらも、ふと気になった点が。
「それはそうと……もしやフミナさんってば高ランクなダイバー様だったりします?」
少なくともCランクなのは確実だ。
するとフミナさんは照れくさそうな笑みを浮かべつつ──
「一応、Bランクよ」
「フミナさん、パないのぅ!?」
「いやいや、フォースの
思ってたより高ランカーだった。
Aランクは極少数の、本当に選ばれた一部のダイバーにしか与えられない(踏み入ることができない)領域なので、実質的にBなフミナさんは日本のトップランカーと言っても過言ではないんだよなあ……
そんな人に誘われてたのか私……
そんな人が「野生のバクゥを狩れ!」なんてトンチキクエスト受注してきたのか……
ん?
あれ?
「クエストクリアのアナウンスが流れない……?」
群れてた野生のバクゥは全滅させた筈だけど──
私の呟きにフミナさんも「え?」と虚を突かれた声を上げ、思わず周囲を見渡している。
プレイ経験が長く、クエスト内容を熟知してるであろう彼女の反応からすると、どうも想定外な事態っぽい。
サプライズを用意してるとかではなく、マジ困惑な様子だし。
とか考えていたら。
すぐ側に広がる森の奥から、バキバキバキッッと幾つもの樹木をへし折りながら近付いてくる重く乾いた音が響き渡った。
え、これ大丈夫?
フルフルとか出てこない?
《キュゴオオォォォンッッッ!!!》
機械音声的な咆哮が森を乱暴に切り分け、ついに発声主の姿を白日の
爪を
背部ターレットに装備された二連装ビームガトリング砲を威嚇するように空撃ちし。
獣を模した頭部のカメラアイに
その威風は正に森の王。
機械の獣を率いる群れのボス。
【野生のラゴゥが現れた!】
……。
…………。
いや、なんでだよ。
GBNでセカイ君の特訓に付き合ってる内に、フミナ先輩も必殺技が放てるようになったっぽい。
技名を考えたのはユウマ氏の模様。