常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する   作:鋼鉄の山本

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第十話

 今シーズンよりロサンゼルスへ移籍し、メジャーリーグへ挑戦している吉城暁の話をしよう。

 

 大卒1位で福岡サラマンダーズに入団。そして、すぐに2年連続レ・リーグ2位と首位まであと一歩足りないそのチームに優勝をもたらした。

 

 その後に6年連続となるリーグ、日本シリーズ優勝の第一歩へと導いたサラマンダーズ……いや日本が誇る大エース。

 

 入団初年度を含めた6年間全てで、二桁勝利を達成。通算タイトルは新人王、ベストナイン3回、ゴールデングラブ、最多勝2回、奪三振王、最高勝率1回、シーズンMVP、沢村賞2回。

 通算成績は防御率2.03 78勝33敗1セーブ。

 

 そんな、高く高く積み上げられた功績の中でも、ひと際輝く偉業がある。

 

 プロ2年目、リーグ2連覇に向けて順調に日程を進める様に見えたサラマンダーズだったが、出る杭は当然打たれる。

 

 シーズン前半まで首位をキープしていたチームだったが、オールスターゲーム以降、他球団からの徹底マークに遭い、一時期3位まで順位を落とすこととなる。

 

 負けが続き、どんどんと雰囲気の悪くなるチーム。

 残酷にも月日は流れ、8月も最終週。相手は現在首位。ゲーム差は7。残り30試合もない中、ここでの敗北は致命的。

 

 絶対絶命の状況。だがこの試合、長いNPB(日本プロ野球)の歴史に、伝説の一文が刻まれる。

 

 9回無安打無失点出塁数0――吉城暁、2年目にして完全試合の達成。

 

 リーグ優勝を手繰り寄せた会心の一勝。相手の心をへし折った渾身の一勝。

 

 この日を境にサラマンダーズは連勝に連勝を重ねる。

 そして9月終盤、残りゲーム数5試合の段階で首位に躍り出るとそのまま逃げ切りに成功する。

 

 チームが勢いに乗った……というよりは吉城暁の勢いに乗っかったと言った方が正しいだろう。

 

 低迷したチームは(エース)を中心に纏まりを見せ、吉城も中核(エース)としてチームを引っ張っていった。

 

 そして、本当の偉業はここからだ。

 優勝の原動力となった吉城暁への対抗心を見せた選手が翌年打点王を取りMVPとなった。

 

 吉城暁に憧れた男が、2年後二桁勝利を挙げ優勝へと貢献した。

 

 吉城暁が目をかけた選手が、3年後彼から最多勝を奪い取った。

 

 吉城暁と共に戦った選手達が、残りの4年間ただの一度も王座を明け渡さぬ、絶対的王者として君臨し続けた。

 

 吉城暁は、その全てを持って福岡サラマンダーズを日本一、勝利に飢えた軍団へと作り変えたのだ。

 

 ――それゆえに、王国より弾かれ流れ着いた幸村早南也にとって柿田の語る理想論は、机上の空論としか……いやもっと低俗な、子供のごっこ遊びのようなものにしか聞こえていなかった。

 

――――

 

「ど、どないしたん幸村? 急に暗くなって……どっか怪我でもしたか?」

「……いや、すまん。なんでもない。……郡さんに言っといてくれ。俺()どんなチームでも勝ちたいですって」

「おぉ、おぉ! そうか! いい返事が聞けたで! 俺ら同い年やし、これからお互い仲良くしようや! カキでええで!」

 

 俺の自主練習に付き合っていた時の態度はどこへ行ったのやら、急に馴れ馴れしく……いや親しみを持ってくれたんだな、きっと。

 俺が彼らの思想に賛同したと思っているのか、嬉しそうに俺の背中をバシバシと叩く。

 

「もしよければ、明日練習の一時間前にここに来てや。いつも、郡さん中心に先に練習始めとるから、歓迎するで! 投手中心やけど何人か野手もおるし――」

「練習なら今からでもいいじゃないですか、カキさん」

 

 誰も寄り付かなかった屋内練習場の一角。

 実際、俺がここで練習していた1時間は、柿田以外誰も来なかった。

 

 だがそいつは、今後のことを嬉々として話す柿田のことを遮りながら、グローブを片脇に俺へと話しかけてくる。

 名前はプレーで覚えさせられた。今日、好守で存在感を放った若手遊撃手。

 

「橋本」

「探しました、幸村さん。……その、なんというか、今から俺の練習を見てもらえませんか」

 

 ずけずけとやってきた割に、礼儀正しく頭を下げる彼。なぜだか、その様子を見て柿田が狼狽えているが……。だが、そんなことをしなくても練習ぐらい一緒に――

 

「俺も、3回のあの場面なら一塁になげると……いえ、それ以前に打球を止められたかどうかわかりません。でも、幸村さんは、しっかり止めた上で二塁に投げれる選択肢があった。……生まれて初めて、俺より守備の上手いやつにあった気がします」

 

 ――俺が了承しようとした、適当な返答をかわすように。ぎこちなさを感じるほど、慎重に言葉を選びながら話し始める。

 

 その言葉の端からは、彼のプライドの高さが窺える。それでも、今俺に頭を下げるのは、きっと。

 

「知ってしまったからには、俺もできる様になりたい。邪魔だけはしない様にします。……俺に、守備を教えてください!」

 

 もっともっと、野球が上手くなりたいっていう探究心が、純粋なほど野球に真摯に向き合うその姿勢はこのチームに来て初めて共感できるもので。

 

「……邪魔なもんか! 俺も練習相手いなくて寂しかったんだ……それより守備だけでいいの?」

「え、いや幸村さん、そんな打撃良くないような……」

 

 ……あれっ? こいつ結構失礼?

 

 

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