常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する 作:鋼鉄の山本
サラマンダーズ
1番 シェフィード 中※
2番 大目黒 ニ
3番 ルイス DH
4番 渡邉 一※
5番 勝 左※
6番 本木 捕
7番 国永 三
8番 斉藤 右
9番 津田井 遊
投手 リシュー※
ペンギンズ
1番 黒田 二
2番 林 中
3番 田中 一
4番 マシューズ 三
5番 石田 右
6番 米林 DH
7番 竹沢 左※
8番 幸村 遊
9番 藤本 捕
投手 柿田
(※付きの選手は育成登録選手)
通常、ペナントレースの日程はプロ野球リーグの関係者が作成する決まりとなっている。
一方で、オープン戦は非公式試合とあってか各球団ごとに試合を設定できる仕組みになっている。それぞれの営業担当同士で話し合い、日程と条件をすり合わせて決定されるのだ。
当然そのやり方だと各球団ごとに試合数にバラツキが生まれるし、1試合もしないカードも出てくることになる。
ちなみにだが、ペンギンズは毎年相当数の対戦が申し込まれるため例年試合数が多い。
なんでも他球団からすると、ペナントレース前に勝ち癖をつけるために丁度良い相手だとかなんとか……。
閑話休題。さて、このオープン戦というものははっきり言ってここで勝ったとしてもなんの旨味もない試合ではある。
プロ野球の本番である長いペナントレースに向け、主力選手はその最後の調整の場として、いわゆる1.5〜2軍の選手たちは最後のアピールの場としてこの期間を過ごす。
ここで勝ったとて、別にペナントレースで有利になるわけでもない。
選手としての目線からすると、ここで結果を残さないと不味いのだが、チームとしてみれば対戦相手のデータ集めなどの目的もある。
むしろここで調子に乗りすぎると「オープン戦で調子のいいチームは、ペナントレースだと勝てない」と言ったオカルトの対象になるかもしれない。
では、できる限り手を抜いて試合をするか?
――答えはNOだ。たとえ制限がある中でも常に最善を目指す。いや、目指さなければならない。そうでなくてはプロ野球選手ではないのだ。
――と俺は思っていたのだが。
2回表 1アウトランナー2塁
柿田は、初回から2失点となかなかによろしくない立ち上がりを見せる。
この回も先頭を出し、送りバントを決められ、またもやピンチ。
バッターは2番打者の大目黒。大卒2年目で、去年は一軍で30打席ほどの出場。出番こそ少なかったが、それでも2本のホームランを放った期待の新人。
一発のあるバッターに対して慎重に攻めて欲しいのだが、どうやら今日の柿田には、そういう警戒心がどうも薄いように感じる。
初球しっかり外へ外れたスライダーから始まり、逆玉、真ん中付近のストレートで2ボール1ストライク。
簡単なコースに投げ込み、はっきりとしたボール球でカウントを整えさせる。ある意味で教科書通りのピッチング。
4球目、先ほどは絶好球に驚き見逃した大目黒も二度目はない。柿田の投じたカットボールが、振り抜かれるバットへ吸い込まれるように変化する。
打ち上げられた打球は、理想的な弾道を描きレフトへ。
竹沢が必死に追いかける……だが、レフトオーバー。余裕のスタンディングダブルでサラマンダーズに3点目が追加される。
「あらら……また打たれてもーたわ。堪忍な! みんな!」
「気にしないでカキさん! 次抑えようぜ!」
「どんまいっすカキさん! 次々!」
打たれた柿田を励ますように、チームメイトたちが声をかける。……一見すると、正しいチームのような感じがする。
1アウトランナー2塁
バッターボックスには3番打者の助っ人外国人、ルイスが入ってくる。
今季から加入した選手で、主に3Aでの出場が中心だったらしい。
データは少ないが、先ほどは初球、外のボールをライトの奥まで運ばれた。
日本人だとなかなかいない、長い手足。
アメリカは日本よりインコースが厳しいと聞くし、日本の野球にもまだ慣れていないだろう。そろそろ内のボールへの対応も見ておきたい。……のだが!
外のボール球から入り、見逃される。2球目、インコース高めのボール球を要求する捕手。……が、変化球が指に引っかかってしまったのかボールはアウトコースの低めへ。
突然の
ぐわんと振るわれたバットは乾いた炸裂音を残す。打球は無常にもライトスタンドへ。
5対0。ペンギンズ、6試合連続の敗北が見えた瞬間である。
「オッケーオッケー。次気をつけようぜ!」
「どんまーい! 打てせてこー!」
今日のスタメンに入っているメンバーのほとんどが、若手と称される年代の選手達。
マシューズと石田さん以外に30代の選手はおらず、次に年長なのは今年25歳の俺、黒田、柿田の3人。
そして、そのほかの若い選手たちはまだ神田派に染まれるほど結果を残せていない……このチームでいうところの、郡派側の人間でほぼ固められている。
ここ数週間、郡派と過ごしてみてわかったのは、彼らの人となりというのはものすごく良い。皆練習熱心で、年上(同い年の柿田も含めて)は皆、面倒見がよく、年下は素直でまじめな子が多い。
上の選手ほど後輩に気をまわし、そんな後輩たちは先輩をリスペクトする、一致団結といった言葉がふさわしい関係性。
もしここが、普通の企業なのであれば、人間関係が良く、居心地の良い会社だったかもしれない。
だが、ここはプロ野球。勝敗を競い、成績を残せないやつは次々と消えていく殺伐とした世界。
そんな中で実力以前の、気のゆるみが目立つ選手をどう思うか。打たれた選手にどう対応するべきなのか。
少なくともいまいち緊張に欠け、この劣勢の中でもゆるりとした雰囲気を作り出すのが彼らのチームワークというのならば――それは決して、健全な関係とは言えないだろう。