常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する   作:鋼鉄の山本

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第十三話

「……なぁユキ、さすがにわかったろ、郡派(あいつら)のこと」

「郡派は大層なこと言ってる割には、中身が薄っぺらで大したことないってことか?」

 

 わかってんじゃねーか、と返すのは大卒3年目で、今日二塁手として出場する黒田 友喜(くろだ ともき)

 ポジションが近く、同い年ということもあり柿田、京水と同じくこのチームで仲の良い選手。

 

 そして、数少ない()()()の友人。

 

 柿田はホームランの後を何とか0で抑えるも、3回にも失点し3回6失点で降板。

 打線は3回に、竹沢と俺の連打でチャンスを作ると、1番打者に入った黒田の2点タイムリーで得点。

 

 そして現在5回の裏、ペンギンズの攻撃。6-2でサラマンダーズ優位の状況。

 そんなベンチ脇でのひっそりとしたやり取り。

 

「畑さんも蔵田さんも騒ぎすぎなんだよ。たった1回、神田さんと言いあっただけでお前を腫物みたいに扱ってよ」

「まぁ、端から見れば、郡派の一端に見えるんだろ」

「んな派閥とか気にするのごく一部の奴らの話なんだ。……ただの考え方(スタンス)の違いを、皆変な風に捉えすぎなんだよ!」

 

 黒田からしてみてもやはり俺の状況は異常なものらしい。

 せめて神田さんと話をしたいのだが、常に彼の取り巻きに追い返されている。

 その状態を重く見られてか、神田さんと同時に守備につく機会がなく、あの紅白戦以降まともに話す機会がない。

 

 さらに、練習をよく郡派とともに行っているのが気に食わないのか、神田派の人たちとどんどん溝が深くなっていくように感じる。

 そんな中で、俺とまともにかかわってくれるのが黒田なのだ。

 

「お前結構郡派嫌いだろ。見りゃわかるぜ、俺もそうだ」

 

 そんな黒田は、試合中だというのにずけずけと俺の本音に近いところを突いてくる。

 

「あくまで郡派の考えを……だぞ。孤立しかけた俺を掬ってくれたことに感謝してるし、人となりはすげー好きだよ」

「そこは完全に同意。だけどプロとしては間違ってると思ってる。だから、俺は神田派って言われても否定しない」

 

「オッケー米林(よねちゃん)ナイススイング!」

「いーよいーよ、ナイスバッチ!」

 

 ノーアウトから石田さんが出塁するも6番の米林がたった3球で空振り三振。ランナーを送ることもできず、工夫の見えない打席内容。ベンチからの声は、そんな選手にかける言葉には思えない。当の本人はというと気まずそうに、はにかみながら、よたよたとベンチへ戻ってくる。

 

「一部の連中がうるさいだけで、お前のこと認めてる奴は神田派にも多いよ。お前みたいな選手があんな甘い環境にいていいわけがない。今からでも遅くない、こっちに付かないか?」

 

 ……まったくこいつは。何を言い出すのかと思えば。彼の発言に思わず苦笑してしまう。

 

黒田(クロ)、お前自分で派閥に関係ないっていっといてそれはないだろ」

「あっ……いやそうなんだけど、それよりも今のお前がもったいないって思って……あー! うまい言い回しが思い浮かばねーんだよ!」

 

 1アウトランナー一塁。打席には竹沢。8番の俺はネクストボックスへ行くため立ち上がる。

 

「俺は別に郡派に入ったつもりはないし、神田派に与するつもりもないよ。それこそ考え方(スタンス)がどっちとも違うからさ」

 

 竹沢はきっちりと送りバントを成功させ2アウトランナー二塁。……やるな竹沢。初日から一軍キャンプに帯同していた彼は、この試合でも結果を残している。これは支配下登録も近いだろう。

 

 ここでサラマンダーズベンチも動く。新しい投手コーチが審判に選手交代を告げる。

 100球を超えた先発投手を下げ、別の投手がマウンドに上がる。その背番号は、またも3桁。育成の選手。

 

 オフシーズンにいくら補強したとはいえ、投手不足がサラマンダーズ一番の課題。それを埋められる戦力の見極めをしているのだろう。

 もちろんうちも、今日は若手中心のオーダーを組んでいるため、とやかくは言えない。

 

 ……だが、いくらオープン戦といえど、対戦相手を一方的な実験体のように扱ってくる姿勢には腹が立つ。

 たとえ古巣であろうとも、たとえNPBの王者であろうともそんなチームには負けたくない。

 打席に立つと体を仰け反らせてノビをすると、バットの先でベースを三角を描く様にたたいてゆっくりとフォームを整える。

 

 次に登板した投手のこともあまり知らない。彼も去年まで2~3軍での試合がメインの選手。関わりがない。ほぼ初見の対応。

 

 初球、ストレート、外角やや高めに決まる。1ストライク。なかなか速いな、電光掲示板に映された球速は147キロ。

 2球目、外角にボール球。これを見逃す。球速は143キロ。

 3球目、インコース低めへのチェンジアップを見送る。なるほど、この球はゾーンに来ればうちごろのボール。

 でも、おそらく見せ球として投げられただけ。もう投げてはこないだろう。

 4球目、スライダーが来るもカット。5球目カーブ、際どいためこれもカット。

 2ボール2ストライク。投手有利のカウント。決めに来るならここだろう。

 6球目、高めのストレート、151キロ。三振を狙いに来たつり玉。わかっていても手が出そうになる、がなんとか留まる。3ボール2ストライク。

 

 いったん大きく息を吐く投手。……結果が欲しいんだろ? 先発のリシューはほぼ5回2失点と結果を残した。ただでさえ少ない支配下の枠を、何としてでも掴みたいよな。

 サインがなかなか決まらない。4度目にして、ようやくサインに満足したのか首を縦に振る。

 

 投じた7球目、インコース高めに投げられたストレート。この日最速となる154キロが計測される。

 そして――もし、これをボールゾーンに投げる勇気があったなら、彼は今シーズン限りで引退しなかっただろう。

 

「は……入った! 8番幸村の2ランホームラン! これで2点差!」

「154キロをジャストミート! レフトスタンド中段まで持っていきやがった!」

 

 沸き立つスタンドとベンチ。決して少なくない歓声に心臓が跳ね上がっている。これでまだ試合はわからない。京水の言葉を借りれば……

 

「試合はまだわかんねーぞ! どんな状況であれサラマンダーズに勝てる! ここで結果だして開幕スタメン勝ち取ったろーぜ、お前ら!」

 

「「「応!!」」」

 

 ありったけの想いを込めた俺の言葉に沸き立つのは主に郡派の選手。

 だが中には黒田を含めた神田派の若手もいる。シーズン前とはいえ、サラマンダーズに勝つのはいい自信になるだろう。このまま……。

「ユキムラ! キョースイ!」

「! はい監督!」「うっす!」

「次カラショート交代ネ、ユキムラハゴクロー様」

 

 はい!……はい? え、俺終わり!?

 

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