常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する 作:鋼鉄の山本
6戦目VS湘南シープス(
7戦目VS仙台ボアーズ(
8戦目VS仙台ボアーズ(H) 4-1 勝ち
9戦目VS仙台ボアーズ(H) 2-2 引き分け
3月もそろそろ中頃、開幕戦まで残り二週間といったところで、平日の試合にも春休みの子供達がやってくる日が増えてきた。
そんな中でペンギンズは、8戦目にしてついに初勝利を掴み取る。
短い期間ではあるが連敗もなく、オープン戦も折り返しを迎えた。
活躍が目立った選手を挙げると、投手としてはチーム初勝利を飾った郡龍士と先発した2試合で
野手ではオープン戦打率.305の好調を評価され、昨日支配下登録された
――オープン戦残り9試合。開幕前の残り少ないチャンスを次に掴み取るのは誰か? 今後のペンギンズに、ますます期待をしていきたい。
「っと、とりあえずネット用の記事の下書きはこんなところかな?」
最近、オープン戦でのアウェイ帯同が多く、久しぶりに帰ってきた東京。今日もペンギンズはボアーズ相手に引き分けとまずまずの結果を残した。
いつも一緒にいる古市さんは、今年度分の有給消化が終わってないとかで珍しくこちらに来ていない。
一人だけでの取材、とは言っても会見でも試合でもなく、小さなイベント。
選手にインタビューするわけでもないし、気楽なものだ。
行われている4人の選手によるファン交流会――と言っても明後日も試合があるためか、トークショーとサイン会ぐらいなものだが、それなりに賑わいを見せている。
「黒田ー! 今年こそ活躍してねー!」
「黒田選手今年調子いいね、息子ともども応援してるよ!」
「あざっす! 応援よろしくね、少年!」
最近調子のいい黒田選手の周りにはたくさんの子供たちが並んでいる。小柄でお世辞にもプロ向きと言えない体格ながら、常に全力プレーを見せてくれる選手で人柄もいい。そんな彼は、親世代からも人気のある選手のように見える。
「きゃー! 京水くーん!」
「あっあの、しゃ、写真を撮っても……あの! だいじょうぶですか!」
「なんでママの方が緊張してるの?」
「……。」
一方、昨年NPBイケメンランキングで3位。整った顔立ちと、常にクールな表情を崩さないと評判で、女性人気の強い橋本選手。そんな彼の列には、子供よりもお母さんや女性ファンが集中して並んでいる。
普段はあまりこういうイベントに参加するイメージがないが心境の変化でもあったのだろうか? ……慣れないイベントのストレスか、はたまた列の勢いのせいか、評判の表情はだいぶ強張っている。
「畑ー! お前最近出てないけど大丈夫なんかー!」
「ベストナインもう一回とってくれよー! 期待してるぜ!」
「当たり前だろーが、今年の俺を見てろよ!……ところでなんでヤローしか俺に来ないの?」
先ほどの2人ほどではないが畑選手も大盛況だ。話しやすそうで、いい意味で男臭いというか……。ただそのせいで、橋本選手と対照的に、少し年齢層の高い男性達が主に並んでいる。サインや握手目的というより子供待ちの親達からの冷やかしがほとんどでその対応にたじたじだ。
「ほら、ここ空いてるし、もうこの人でいいんじゃない?」
「えー、黒田か京水がいいー!」
「もー、誰だって同じでしょまったく!」
「ははっ……」
一方で新加入ゆえか、はたまた未だにオープン戦で出番があまりないからか、幸村選手の前にはあまり……いや、全くと言っていいほど人が集まっていない。
他の選手の列待ちのついでと言った人たちが数人やってくるレベル。このイベントって確か新加入の彼の紹介イベントも兼ねているはず。
というか、未だにこの選手のこと掴めないんだよなぁ。
実力は間違いなくあるんだろうけど、神田選手と早々に揉めたエピソードのインパクトが強い……けれど神田さん周り以外とはだいぶ良好な関係を築けてるように見える。
周りの選手や関係者の話だと真面目でストイック。
人当たりは悪くないけど、付き合いが悪くて、隠しきれていないプライドの高さが鼻につくなど。
まぁ、黒田選手や畑選手のような子供受けするタイプではない。正直このイベントに関しては人選ミスって感じだ。
……ちょこちょこ目が合うの気まずいなぁ。スタッフも忙しいのわかるけどちょっとは相手してあげなよ……。ってあれ? こっちに来る?
――――
「ほら、ここ空いてるし、もうこの人でいいんじゃない?」
「えー、黒田か京水がいいー!」
「もー、誰だって同じでしょまったく!」
「ははっ……」
なんか、ごめんね。……ものすごく気まずいな、ここ。
ペンギンズのオープン戦は結構長い。サラマンダーズやワイルズは確か12試合ぐらいの予定だったか。一方ペンギンズは18試合もおこなう予定だ。
その合間に挟まれた子供向けのトークイベント。
ぜひ参加して欲しい、とマネージャーさんに言われたため来てみたのだが、……この状況を鑑みるに参加を渋る
呼んでくれたマネージャーさんも、最初は気を使って隣にいてくれたが次第に賑わう黒田と京水の列に駆り出された。
そして、トークショーも黒田と畑さんでほぼ回っていたので、今日の俺は戦力外レベル。次も仕事来るかな。
……先ほどからチラチラと奥の方にいる少女と目が合う。
トークショーが始まった時から一人でいるけれど、親御さんはどうしたんだろうか。
多分、見た目的には中学生ぐらい。大人びた小学生と言われてもまぁ、違和感はないが。
それはともかく、親子イベントだというのに一人のところしか見ていない。
迷子か? それとも、弟妹あたりの付き添いできただけで興味がないだけか? ……あのぐらいの年頃で迷子だというなら、恥ずかしくて周りに言えないよな。
そろそろこっちから声をかけた方がいい気がする。もし、思い過ごしでもそっちの方がいい。周りのスタッフさんにお願いして……あれ?
周りにいたスタッフのほとんどは写真撮影や列の整理に大忙し。唯一、気まずそうにしながらも横にいてくれたスタッフもいまだに消えたまま。まさかチラホラいる記者の方を使うわけにもいくまい。
うん、もしかしなくてもこの場で1番暇なの俺だ。………………そんなことある!?
持ち場を離れるのはさすがにまずい……でも気づいたからには動かないと気持ちが悪い。
……よし、あとでちゃんと謝ろう。意を決して迷子の少女に話しかけにいく。
――土下座する幸村早南也がSNSでバズるまであと20分。
本日もう一話投稿します