常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する 作:鋼鉄の山本
「あっ柏田さん、高校
「確かに、幸村選手
「おおっと、遅れておいてなんだが結構打ち解けてるな……」
土下座事件の翌日、償いは晩御飯の奢りで無事にまとまり、やってきたのはそれなりにいいお値段の焼肉屋さん。
まさか女の子と二人きり、というわけにもいかないので俺は黒田を、柏田さんは古市さんを呼び出して4人での会食めいた形にした。(会計は全負担)
「この度は、お二人をあろうことか職業不詳の謎の野球親子とばかり……」
「いやいや、気にしないでよ。うちの会社でも延々言われ続けてるからさ」
「えっ、今衝撃の事実が聞こえたんですけど!」
「そんで結構失礼だぞお前。そんなだから無駄に敵作るんだぞ」
「えっ、今衝撃の事実が聞こえたんだけど……」
さて、それなりに会話も弾み、お腹も膨れてきた頃。古市さんが先ほどまでの穏やかな表情を捨て、代わりにツンとした声色で話始める。
「さて、食べながらでいいんだが、うちの柏田から聞いたけれど今日はなんでも答えてくれるんだって?」
「んぐ、ふぅ。はい。ただ、あくまで俺に関することだけですけれど。さすがにチームの機密情報みたいなのは喋れません」
「そりゃそうだな」
今日の償いのメインはご飯の奢りだが、相手はスポーツ記者。多少の情報提供もそれに入る。
今の俺のインタビューに大した価値はないが、ある程度のネタにはなるのだろう。
GMからも誠意を見せろと言われて来たし。
「じゃあまず……女性遍歴を教えてもらおうか」
「ぶっ!! なんですかその質問! もっと野球関連とか色々あるでしょ!」
「ええっと、まず……そのー、あっ! うん、高校時代にいたようないなかったような……」
「絶対嘘」
「帝楽男子高かつ全寮制じゃないですか。その程度しか思いつかないなら答えなくていいですよ」
はっはっはっと、イタズラを成功させたおっさんだけが陽気に笑う。ちくしょう、恥かいただけじゃないか。
「こほん……それではまずは招待していただいてありがとうございます。改めて大江戸回覧スポーツ部の
「そんな畏まんなくていいよ、仕事じゃなくて
こっちのおっさんみたいに、と黒田が古市さんに指を指す。……なんか気安いね。
「あ、この人今みたいな質問ばっかしてるから、今更畏れないんだよね」
「そうなんだ」
「続けますね!」
脱線しすぎた俺たちを戻すよう柏田さんが先ほどより声を上げる。気まずそうに俯く男3人を尻目に、先ほどまでの口調で質問を投げてくれる。
「ではまず軽い質問から……チームが始動してまもなく2ヶ月ですが、チームの雰囲気はどうでしょうか?」
「そうですね……ずっと最下位のチームって聞いてた割には練習量も多いですし試合中も活気があります。郡さんとか神田さんみたいなベテランの方達が率先して準備・練習に取り組んでいるので多分そう言うところで雰囲気は良いですね」
「おい、お前の答えか、それ?」
なるほど、とメモを取る柏田さんにはともかく、隣の
「ちゃんとした答えにさせてよ。万が一使われた時に揉めたくないよ俺」
「誠意」
「チームに関する機密なんで」
黒田とそんなやりとりをしていると、意外そう二人が見てくる。
「なんというか、土下座の時から思ってましたけど結構砕けた感じなんですね。もっと、冷静な人だと思っていました」
「コミュ症で周りに馴染めてないやつをクールって言い換えなくていいよ、柏田さん」
「おっ、反抗期かな? しっかりカルシウムとってよく寝ないと大きくなれないぞ、少年!」
「今チビって言ったか?」
余計な茶々を入れて良いのは言われる覚悟があるやつだけだぜ、と
「続けますね! 春キャンプの最初の頃は、神田選手との不仲論なども出ていましたが、その様子ですとチームにも馴染めてきたんではないでしょうか?」
青筋を立てる柏田さんの様子を見て一旦言い合いを止める。
しかし、難しい質問だな。彼女に萎縮しながらも、なんとか答えを探す。
「不仲ってほどではないです。実際、言及されてるプレーだってモーリス監督の言う通りお互いのコミュニケーション不足が出ただけのプレーだと思ってます。多分向こうも同じことを思ってくれているんでしょうけど……少し周りに気を使わせてしまってますね。ただ、お互い真剣に野球に取り組む中で、どうしても譲れない部分というのは出てくる。そう言った時はまた、ああ言う場面が出てくると思います」
少し喋りすぎた気もするが、先ほどと違いこれは結構本音。
以前黒田にも言ったが、俺は別に神田さんのことは嫌ってはいないし、あの件についても思うところは何もない。
……本当になんとかしたいものだ。
「なるほどね、結構付き合いが悪いって言う話も聞こえるけど、そう言う関係性の誤解から生まれた噂なのかな」
「いや、ちゃんと付き合い悪いですよこいつ」
「失礼な、約束とか予定なら行くぞ」
今日みたいに、と付け加えるも黒田の目線がそれを否定してくる……。いや、だって誘われる時って大体急なんだもん。実際、お前とか柿田とかとはいっつも行ってるじゃん。
「だから、それを見越して動けって言ってんの」
「いや、なんの予定もないなら練習したいし……」
「おいおい、今の時代はがむしゃらに頑張れば良いってもんじゃないだろ。そりゃ飲みニケーションが大事なんて言わないけど、チームメイトとの交流も必要じゃないかい?」
確かに、むしろ新参者の俺の方からチームに馴染む努力をすべきなのだろう。古市さんの考えには賛同できるものもある――けれど
「俺はヘタクソなんで……やりすぎぐらいがちょうど良いんですよ」
それが、本音。でも、周りの様子を見るにあまり良い表現ではなかったらしい。