常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する 作:鋼鉄の山本
先攻 大江戸ペンギンズ
1番 幸村 右
2番 神田 ニ
3番 畑 左
4番 マシューズ 三
5番 遠藤 一
6番 堀江 中
7番 森谷 捕
8番 橋本 遊
9番 郡 投
後攻 東京ギャロップス
1番 立原 中
2番 高杉 遊
3番 水嶋 ニ
4番 ブライズ 一
5番 小島 右
6番 尾形 三
7番 坂田 左
8番 山浦 捕
9番 百瀬 投
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1回裏 ノーアウトランナー無
幸村選手の凡退後、2番と3番をたった5球で押さえ込む百瀬選手。その姿にはどこか余裕を感じられる。
ここからギャロップスの攻撃に入る。
打席には、不動の1番バッターの立原選手。昨年打率.277と好調、盗塁も31個とリーグ3位。傍目から見ても理想的な1番打者だ。
対するペンギンズの先発は、こちらも不動のエースである郡選手。リーグ屈指の左の技巧派投手であり、昨年のチーム最多勝投手(7勝)。
サインを出すのは今年31歳となる
ペンギンズバッテリーは初球、いきなりカーブから入る。見逃されて1ボール。
2球目、3球目はストレート、内外に散らして1ボール2ストライク。
そして4球目、立原選手の顔が歪む。リリースの瞬間視界から消え、大きく、ゆっくりと変化しながら、左バッターの意識外から現れるスローカーブ。
彼の代名詞とも言えるウイニングショット。
立原選手も一流のバッターだが、今回は郡選手に軍配が上がる。かろうじて当てた打球を、ファーストが捌いて1アウト。
その勢いのまま、わずか3球で高杉選手を抑え2アウト。
1回裏 2アウトランナー無
ランナー無しの状態でクリンナップを迎える。3番打者の水嶋さんは今年でプロ10年目となる28歳。
昨年、自身2度目となるベストナインを受賞した選手。ゴールデングラブの候補にも選ばれていた、攻守に秀でたオールラウンダー。
それでも郡選手は、初球から振ってくる彼に対して、いつも通りに腕を振るう。打ってもファールにしかならないようなコースへテンポよく投げていく。
1つボールを挟み、1ボール2ストライク。4球目、外角低め、138キロのストレート。
追い込まれた水嶋選手が打ちに行くものの、カーブを意識しすぎたか、またはクセ球に翻弄されたのかタイミングがズレる。
打球は高く上がるも、飛距離は出ない。ライトの幸村選手が掴み取り3アウト。
郡選手は、わずか11球で初回を終わらせた。
「おぉ! 今日の郡選手は一段といいですね! これはもしかすると、もしかするんじゃ……!」
「いや、そんな甘くないだろ」
私の抱いた淡い期待に、横から冷や水をかけられる。
抗議の意味を込めて睨みつけるも、古市さんは私ではなくバッターボックスに向けて厳しい視線を送る。
2回表ノーアウトランナー無
打席には4番打者のマシューズ選手。昨年のチーム本塁打王。
初球をフルスイングするものの、外いっぱいに逃げるスライダーを捉えられない。1ストライク。
2球目、今度こそとでも思ったのかフルスイング。しかし向こうも同じようなスライダー。2ストライク。
3球目、タイミングを外しに来たボールゾーンのスローカーブにフルスイング。豪快な空振り三振。
……うわー、去年もよく見た何も考えてなさそうな豪快フルスイング。
あたればまぁ、飛びそうではあるけれど。
昨シーズン155三振はリ・リーグワースト1位。打率も規定到達者の中では最も低い打率.206。
そんな彼らしい打席ではあるが……。
「郡が好調なのは認めるが……ピッチャーがただ0で抑えても試合に勝てるか? 野球は投手が投げなきゃ始まらない……でも打線が打てなきゃ勝てないだろ? 今日の百瀬から点が取れるように思えるか?」
……正直ビジョンが全く浮かばないデス。
5番打者の遠藤さんも、わずか5球で三振。この回、1球もボールに触ってすらいない。しかも……
「百瀬選手、結構軽く投げてますよね。仮に幸村選手だけ全力で行ったとしても、最後まで余裕で持ちそうです」
「同感だ。しかも、投手がいいだけじゃなくて、こっちの打線は6番以降に全く期待できないんだよな。強いて面白そうなやつを上げるなら、一発がある森谷ぐらいか?」
その直後、この回最後のアウトコールが聞こえる。ペンギンズの攻撃は、わずか5分で終了する。
いそいそと守備に入るペンギンズ。なんだかなぁ、こういうところに苦言を呈されていると言うのに。
だからか、その中から勢いよく外野へと走る選手に目が行く。
いろいろと…………
どうやら古市さんも彼のことが目に入ったらしい。難しそうな顔をしながら、試合直前に言いそびれた違和感を話し出す。
「それに、変ってほどじゃねーがなんで幸村がライトなんだ? 幸村を外野で使うのはわかるし、石田の代役も確かに必要だが……」
「センターラインを
「……まぁ、そうだよな。ただ、ぶっちゃけちまうと、打球の追い方と送球の上手さは、堀江より幸村の方が上そうなんだよなぁ」
「ただの主観じゃないですか」
でも外野守備位置はともかく、あの百瀬選手からどう点を取るのか。ペンギンズに垂れこむ暗雲はまだ晴れそうにない。