常勝球団でレギュラーを取れずトレードの駒にされた俺は最弱球団で自分の強さを証明する   作:鋼鉄の山本

23 / 46
第二十三話

先攻 大江戸ペンギンズ

1番 幸村 右

2番 神田 ニ

3番 畑 左

4番 マシューズ 三

5番 遠藤 一

6番 堀江 中

7番 森谷 捕

8番 橋本 遊

9番 郡 投

 

後攻 東京ギャロップス

1番 立原 中

2番 高杉 遊

3番 水嶋 ニ

4番 ブライズ 一

5番 小島 右

6番 尾形 三

7番 坂田 左

8番 山浦 捕

9番 百瀬 投

 

――――

 

1回裏 ノーアウトランナー無

 

 幸村選手の凡退後、2番と3番をたった5球で押さえ込む百瀬選手。その姿にはどこか余裕を感じられる。

 

 ここからギャロップスの攻撃に入る。

 打席には、不動の1番バッターの立原選手。昨年打率.277と好調、盗塁も31個とリーグ3位。傍目から見ても理想的な1番打者だ。

 

 対するペンギンズの先発は、こちらも不動のエースである郡選手。リーグ屈指の左の技巧派投手であり、昨年のチーム最多勝投手(7勝)。

 

 サインを出すのは今年31歳となる森谷(もりや)選手。強肩の捕手で、投手からの信頼も厚い。打撃は低打率ながらも長打率はなかなか高く、ペンギンズの中でもっとも正捕手に近いキャッチャーと言ってもいいだろう。

 

 ペンギンズバッテリーは初球、いきなりカーブから入る。見逃されて1ボール。

 2球目、3球目はストレート、内外に散らして1ボール2ストライク。

 

 そして4球目、立原選手の顔が歪む。リリースの瞬間視界から消え、大きく、ゆっくりと変化しながら、左バッターの意識外から現れるスローカーブ。

 彼の代名詞とも言えるウイニングショット。

 

 立原選手も一流のバッターだが、今回は郡選手に軍配が上がる。かろうじて当てた打球を、ファーストが捌いて1アウト。

 その勢いのまま、わずか3球で高杉選手を抑え2アウト。

 

1回裏 2アウトランナー無

 

 ランナー無しの状態でクリンナップを迎える。3番打者の水嶋さんは今年でプロ10年目となる28歳。

 昨年、自身2度目となるベストナインを受賞した選手。ゴールデングラブの候補にも選ばれていた、攻守に秀でたオールラウンダー。

 

 それでも郡選手は、初球から振ってくる彼に対して、いつも通りに腕を振るう。打ってもファールにしかならないようなコースへテンポよく投げていく。

 

 1つボールを挟み、1ボール2ストライク。4球目、外角低め、138キロのストレート。

 

 追い込まれた水嶋選手が打ちに行くものの、カーブを意識しすぎたか、またはクセ球に翻弄されたのかタイミングがズレる。

 

 打球は高く上がるも、飛距離は出ない。ライトの幸村選手が掴み取り3アウト。

 郡選手は、わずか11球で初回を終わらせた。

 

「おぉ! 今日の郡選手は一段といいですね! これはもしかすると、もしかするんじゃ……!」

「いや、そんな甘くないだろ」

 

 私の抱いた淡い期待に、横から冷や水をかけられる。

 抗議の意味を込めて睨みつけるも、古市さんは私ではなくバッターボックスに向けて厳しい視線を送る。

 

2回表ノーアウトランナー無

 

 打席には4番打者のマシューズ選手。昨年のチーム本塁打王。

 初球をフルスイングするものの、外いっぱいに逃げるスライダーを捉えられない。1ストライク。

 2球目、今度こそとでも思ったのかフルスイング。しかし向こうも同じようなスライダー。2ストライク。

 3球目、タイミングを外しに来たボールゾーンのスローカーブにフルスイング。豪快な空振り三振。

 

 ……うわー、去年もよく見た何も考えてなさそうな豪快フルスイング。

 あたればまぁ、飛びそうではあるけれど。

 昨シーズン155三振はリ・リーグワースト1位。打率も規定到達者の中では最も低い打率.206。

 

 そんな彼らしい打席ではあるが……。

 

「郡が好調なのは認めるが……ピッチャーがただ0で抑えても試合に勝てるか? 野球は投手が投げなきゃ始まらない……でも打線が打てなきゃ勝てないだろ? 今日の百瀬から点が取れるように思えるか?」

 

 ……正直ビジョンが全く浮かばないデス。

 5番打者の遠藤さんも、わずか5球で三振。この回、1球もボールに触ってすらいない。しかも……

 

「百瀬選手、結構軽く投げてますよね。仮に幸村選手だけ全力で行ったとしても、最後まで余裕で持ちそうです」

「同感だ。しかも、投手がいいだけじゃなくて、こっちの打線は6番以降に全く期待できないんだよな。強いて面白そうなやつを上げるなら、一発がある森谷ぐらいか?」

 

 その直後、この回最後のアウトコールが聞こえる。ペンギンズの攻撃は、わずか5分で終了する。

 

 いそいそと守備に入るペンギンズ。なんだかなぁ、こういうところに苦言を呈されていると言うのに。

 

 だからか、その中から勢いよく外野へと走る選手に目が行く。

 

 いろいろと…………本当(ほんっっとう)にいろいろとあったせいで、顔見知り以上の関係性ができてしまった幸村選手。

 どうやら古市さんも彼のことが目に入ったらしい。難しそうな顔をしながら、試合直前に言いそびれた違和感を話し出す。

 

「それに、変ってほどじゃねーがなんで幸村がライトなんだ? 幸村を外野で使うのはわかるし、石田の代役も確かに必要だが……」

「センターラインを本職(堀江選手)に任せてる分、妥当だと思いますけど」

「……まぁ、そうだよな。ただ、ぶっちゃけちまうと、打球の追い方と送球の上手さは、堀江より幸村の方が上そうなんだよなぁ」

「ただの主観じゃないですか」

 

 でも外野守備位置はともかく、あの百瀬選手からどう点を取るのか。ペンギンズに垂れこむ暗雲はまだ晴れそうにない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。